国会会議録

【第171通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2009年3月17日)


○望月委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 奄美群島振興開発特別措置法の五年前の改正で、振興開発計画の策定主体が国から鹿児島県に移行したことによって、地域が主体となった振興開発計画の策定が行われるようになったとされています。今議論になっているこの奄振の結果がどうであるかという問題について、多くの方々から、同僚議員から議論されました。

 そこで、私は角度を変えて、今言ったように、結局のところ、地元の市町村、それから地域住民、関係団体等、多様な主体の参画が、今までとどのように違って進化したのか、充実が図られたのか、こういう点が必要だろうと思うんです。そこを聞きたい。

 あわせて、地域が主体となった取り組みでは何が行われて、どのような成果があったのか。だから、地域ということを考えた、いわば地域が主体という意味での、どこが前進したのかということについて、五年前に法律を変えた趣旨との関係で聞きたいと思います。

○加藤政府参考人 前回の法改正におきまして、振興開発計画の策定主体がお尋ねのように国から都、県に移行しましたが、その際、具体的にどういう地域の主体的な取り組みをやってきたかということだと思います。

 具体的に申し上げますと、振興開発計画の策定に当たりましては、市町村が住民、関係団体等、地域の関係者に意見聴取を行いまして、その結果を踏まえて、奄美の場合ですと鹿児島県が計画を策定いたしました。小笠原の場合についても同様でございますが、東京都がパブリックコメントを実施いたしまして、その結果を踏まえて計画を策定したところでございます。これらを通じまして、地域の多様な主体の積極的な参画のもとに振興開発計画が策定されたものと理解をいたしております。

○穀田委員 もう一つ聞いたでしょう。だから、何が変わって、どんな成果があったんやということも聞いたでしょう。二つまとめて聞いたんやから、よう質問聞いてなあきまへんで。

○加藤政府参考人 実は、もともと、いろいろな事業がございますけれども、例えば振興開発事業なんかですと、地元の要望を聞いて、それで具体に、奄振と言っておりますが、奄振の事業については実施をしてきているところでございますので、個別の、皆さん、各地域の人方の意見を聞いた上で奄振の事業なんかは実施しているというふうに、ぜひ御理解をお願いしたいと思います。

○穀田委員 大臣、やはりこれは、何というのかな、大臣と話をせなあかんなという気がしませんか。結局、地元住民は一定の成果があったと言っている、こう言うわけだ。また、今の話のように、具体的には、市町村からお話を聞いています、それからパブリックコメントをやっていますと。そんな形式の話と違うねん。

 やはり地元が主体だ、それから、主体が参加してということでどのように変わって、その結果、目には見えないけれども、例えば、地域のいわば住民の力全体の活力がふえたとか、それから産業に取り組む姿勢が変わったとか、何があったのかということ。やはり数値の問題だけじゃなくて、何が変わってどう変化して、何がよかったと言われているのかという政治としての判断がないんだね。ちょっと私は驚くべき話だと思うんだよね。

 私は、前回の法案質疑の際に、あくまでも重心を下に置いた観点と、それから本当の主体は行政ではなくて住民でなければならないということを提起したんですね。

 奄美群島開発審議会の意見具申も、どう言っているかというと、「地元の発意による地域の個性と地元の創意を生かした地域主体の地域づくり」、地域づくりと言っているんですよ。

 だから、これは何なんだと。この大切さを説いて、このごろはやっている新たな公というんですか、それをはぐくむこと、これは言っていますけれども、それは、この間、政府が好きな言葉なんで私は余り気に入っていないんですけれども、地域の主体的な取り組みを一層進めるために、ボランティアやNPOの重要性を訴えているわけです。

 そこで私、調べてみたんですけれども、その開発審議会のいわば案を練る幹事会というのがあるんですね。そのメンバーは、奄美も小笠原も相変わらず全部役所の人間ばかりなんですよ。だから、こういうところに、やはりお役所の方でいうと中心的なところは何も変わっていないということが指摘できると私は思うんです。

 こういう点があるんだということを、まず大臣、認識していてほしいということ、これが一つ。

 二つ目。そこで、今、自立的発展というのがキーワードですよ。私は、自立的発展ということについて、先ほども同僚から大体こういうところにありましたよ。数値の問題というよりも、私は、次の三つが必要だと考えているんです、自立的という場合。

 一つは、主体者の自立の保障なんですね。二つ目は、自立する足場の確保。すなわち、産業の振興が基本となるのは言うまでもないんですね。今まで何度も指摘してきましたけれども、私は、公共事業中心のやり方で本当に自立が可能なのかと。上からのハードの押しつけではなくて、住民による産業興しが大切じゃないのか。つまり、自立の足場というもの自身をみんなでつくり上げる必要がある。三つ目に、財源の自立性というものを保障しているかどうかということだと思うんです。

 第一の問題は、今質問しました。

 そこで、自立発展のために、ソフトとハードとを一体とした総合的な施策の推進ということを一貫して奄振の審議会も指摘しています。これがどのように行われてきたと考えているのかを述べていただきたいのと、数字の問題だけ最初に聞きますから、では、手を挙げてはるからあわせて、振興の予算というのは、公共事業と非公共事業の費用の推移、すなわち、ハードとソフトの費用の実態について、この五年間の変化について、まず述べてください。

○加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 公共事業につきましては、平成十六年度、三百五十一億円でございましたが、平成二十年度におきましては二百九十六億円となっているところでございます。平成二十一年度予算案におきましては二百八十三億円が盛り込まれているところでございます。

 一方、非公共事業でございますが、これは平成十六年度、四・五億円でございましたが、平成二十年度におきましては四・一億円となっているところでございまして、平成二十一年度予算案においては同額の四・一億円が盛り込まれているところでございます。

○穀田委員 大臣、今聞いてわかりますように、ソフトの費用が飛躍的にふえているとは到底言いがたいわけですよ。

 公共事業が全部悪いなんて私ども言っているわけじゃないんですよ。そういうふうに一体となってなどと言っていることでいいますと、現実は公共の割合が高い。そして、非公共とされている予算額の中でも、私調べてきましたよ、そうしたら、非公共と言われている中に、例えば人材育成支援というのがあるわけですね。この中身を聞いてみたら、これは非公共なんですけれども、実際は図書館の建設費用だというんですね。

 だから、この程度で本当に、非公共といっても何に使われているかということを見ますと、この実態をよく見ていただかなければならないと思っています。

 さて、この法律については多くのメディアも論じています。課題としてはおおむね共通していまして、特に中心的なのは、先ほど同僚議員からありましたように、結果として、人口の定着という問題が、つづめて言えば、そこに集約される。若者が定着するという問題でもしかりです。

 私は、そのために、農業の振興、地場産業の育成、高齢者施策の充実と言っていいと思うんです。若者の定着には、何といったって雇用先が要るわけですよ。したがって、思い切った産業振興策が必要だと私は思うんです。

 先ほども大臣が言っていましたけれども、確かに、例えば黒糖のしょうちゅうというのが随分出ていると言っていました。私は、それはいいと思うんです。だけれども、農業や大島つむぎの振興のために、例えば、生産に対しての所得補償、それから一定の価格保証、従事する若者がひとり立ちできる、一定程度、例えば五年ぐらいの生活保障と訓練の保障だとか、それから、つむぎの今日的ニーズの掘り起こしだとか、生産家への手厚い補助だとか、販路の拡大だとか、つまり、インキュベーションの強化等が必要だと考えるわけであります。

 そういうのが必要と違うかということと、もう一つは、柱はそこからなんです、それらの援助の費用を地元で自由に使える形に変えることが決定的じゃないのか。やはり全部上で決めるんじゃなくて、これだけのことをやりたいということをお互いによく考えて、それをどうしたら補助できるかという仕組みに思い切って変える必要があるのと違うか。つまり、すなわち財源の自立性という問題が最後は出てくるんじゃないかと。

 今、産業興しと財源の自立性の問題について言いましたが、大臣の見解を伺いたい。

○金子国務大臣 自立的発展の部分で足場を固める、その主体が大事だということについて、私もよく認識をしております。そういう意味で、全部上から決めるんじゃないだろう、もっと地元でやりたいことをきちっとやれるように、予算の制度も交付金にしたらいいじゃないか、地元が使いやすいようにもっとしたらいいじゃないかというのが最後の一番の、きょうの委員のポイントだと思います。

 これはやはり、自立的主体というのがどんどんどんどん育ってきてくれて、そして、よし、これをやるよということでやってくれれば、上からなんて要らないんですけれども、ただ、まだなかなかそこは出てこないところがあるものですから、やはり公共事業というものをやって足場を固めようという発想になっているんだと思います。

 できるだけそういうことで、委員がおっしゃるように、地元がこれで伸びていく。ただ、さっき三日月委員からも御指摘ありましたけれども、この事業が、あるいは国の施策が成果を生ずるという検証というのは、やはりこれは大事だと思いますものですから、それがやれるような仕組み、今回、五年間の枠組みというのはそこを入れ込んだわけであります。

 それができるような財政の仕組み、そのためにはどっちがいいのか、今委員がおっしゃるように、交付金にしろよ、地元の人が何でも使えるようにしろよというお話はわかるんですけれども、そうなると、一方で今度は、この場合には、港湾にしても道路にしましても、補助率を非常に他の地域に比べて高くしているという部分がある。交付金方式ですとやはりちょっと違いが出てくるというようなことで、そういう財政的な部分は考えながら、検証できる枠組みというのをあわせて考えていく必要があるんだろうなと。

 ただ、言っている御趣旨はよくわかりますので、それは踏まえてやっていきたいと思います。

○穀田委員 補助率その他の問題は、それは実際に施行する上で決めたらいいわけで、問題は、考え方の基本なんですよ。そこを言っている。

 産業振興自身にもっと力を注ぐ、そういう点のやり方と、それから、そこにお金を使えば、これは、今まで二兆円使ってきてこういうのをやっているということの反省が必要なんですよ。だから、私は改めてそういう抜本的な問題を提起しているわけで、きちんと理解をしていただければと思います。

 あと二つだけ、小笠原諸島の不在地主の問題について、私、これも前回も取り上げたんです。これは未解決の問題です。

 私はこの問題について言っておきたいんですけれども、二〇〇三年の小笠原諸島振興開発審議会で東京都が問題点として、農地法の適用がなくて農地の転用について規制する方法がないと訴えています。改めて聞いたけれども、私、尋ねたんですが、農地転用が規制されないため一定の農地が保全されないという懸念があると述べておられます。

 自然遺産登録に向けて、開発と自然環境との調和の問題もいよいよ重大な段階に入ります。五年前にも指摘しましたが、発端は戦争中の強制疎開にあります。農地法の適用を含め、国の責任でしっかり解決することが必要ではないかと思いますが、一言。

○加藤政府参考人 小笠原の不在地主の関係でございますが、これは御指摘のように、農業適地の多くが遊休化しておって、その多くは不在地主の所有者であるというふうに考えております。

 このため、東京都、小笠原村あるいはJA、農協でございますが、連携して、新規参入者に農地が提供できますよう、農地の貸し手側の掘り起こしと借り手側の調整を行っていると承知しております。

 現時点においては、不在地主の存在が小笠原諸島の振興開発の大きな支障になっている状況にはありませんけれども、いろいろ、東京都を初め関係者と連携を図りながら、状況を確認し、適切に対処していきたいというふうに考えております。

○穀田委員 支障になっているとは思わないって、それはだめですよ。だって、土地の半分を要するに不在地主が占めておるわけだから、今後の、例えば自然を生かす場合にしても、開発を一定行うにしたって、それが問題になることが明らかなんです。その程度の認識だから、五年間何も進めへんわけではないですか。これはまた時がたてばたつほど大変なことになるということ、五年後にまたこんなことを言わせないようにね。大臣、しっかりやっておいてよ。いいわ。もうあっちが答えたってしゃあない答えしかせえへんし……(金子国務大臣「承ります」と呼ぶ)はい。承っていただいて、実行していただきたい。解決のために、これは誠心誠意努力をしていただきたいと思います。

 最後に、奄美振興開発基金の問題について聞きたいと思います。

 この基金の問題というのは、五年前に独立行政法人化されて、二〇〇七年には、閣議決定された独立行政法人整理合理化計画で、業務の縮小、重点化、そして抜本的な見直しの方針が示されています。

 三つだけ聞きたい。

 一つは、今後、融資や保証をやめたり減らすことを考えているのか。二つ目に、閣議決定では、自己収入の増加で収入改善すると述べているわけですが、収入をふやすために貸出利率や保証料を引き上げるのか。三つ目に、こうした見直しで中小事業者が融資や保証を受けられなくなるんじゃないか。

 これらの疑問に対してお答えいただきたい。

○加藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、今後、融資や保証を減らすことを考えているかということでございますが、これは考えてございません。

 次に、整理合理化計画で自己収入の増加を挙げているけれども、これが結果として貸し出しの利率とか保証を引き上げることになるのではないかという御指摘だと思いますが、これについては、奄美基金の一般管理費の抑制、債権回収の向上、リスク管理債権の削減等による財務の健全化に取り組むことによって自己収入の増加を図ることとしておりまして、整理合理化計画を理由として、今申し上げた貸出利率ですとか保証料率を引き上げることは考えておりません。

 最後に、奄美の振興開発基金については、国等が行います各種施策と一体となって、奄美群島の産業振興のため金融面から支援を行うものでございますので、今後とも、奄美群島内の事業者の資金需要に十分対応できるように取り組んでいきたいというふうに考えております。

○穀田委員 今、答弁では、変わらない、それから必要な融資や保証は続ける、こうなるわけですけれども、一方で、見直しをする、財政状況が厳しいということを言っているわけですやんか。

 本当に中小事業者への融資や保証が続けられるのかという問題を見ますと、基金は、独法化以降、担保設定が厳しくなって、一覧表を見たらわかりますよ、保証も融資も残高が減っているわけです。昨年末のセーフティーネット保証でも、奄美から百七十九件申し込んだけれども、借りられたのは三十七件だけ。

 今の大変厳しい経済状況のもとで「銀行その他の金融機関から資金の融通を受けることを困難とするものに対する小口の事業資金の貸付けを行う」、これが基金の目的なんですよ。だから、その目的に沿って切実な要請にこたえて、奄美の振興という肝心な役割を果たすべきだと私は考えます。

 この役割を果たしていく上での、大臣に、最後、明快な答弁を求めておきたいと思います。

○金子国務大臣 その目的にきちんとこたえられるように、奄美諸島産業振興のための金融支援ができるように、今後とも事業者の資金需要に十分対応できるように取り組んでまいりたいと思っております。

○穀田委員 今、取り組んでいきたいと思っておりますと言ったので、そのとおりやってほしい。

 というのは、現実は、銀行で貸さないものをこれでやるんだという場合があるわけでしょう。そういう位置づけなんですよ。ところが、銀行で借りられないからこちらに頼んだらだめだったという例が実際には出ているわけですよ。そして、しにせの商店なんかがそこで倒産をしたなどという事態が生まれているのが現実なんです。だから、現実をよく見つめて、今の答弁が必ず実行されることを特に要求して、私の質問を終わります。

○望月委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。