国会会議録

【第169通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2008年6月3日)

領海及び内水における外国船舶の航行秩序を明確にすることによって、外国船舶の航行の秩序を維持し、もって領海及び内水の安全を確保する趣旨で本法を提案

○竹本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。穀田恵二君。

○穀田委員 私は、領海等における外国船舶の航行に関する法律案についてまずお聞きします。

 一九八二年、海洋法に関する国際連合条約、いわゆる国連海洋法条約が採択され、九四年に発効しました。この条約は、いわゆる海の憲法と呼ばれる海洋に関する基本的な条約です。我が国は九六年に批准しています。また海洋環境の保護、保全及び持続可能な開発についてのアジェンダ21が、これは九二年に採択されています。これは、国交省の説明では、政策面から国連海洋法条約を補完するものとありました。

 このような動きの中で、世界各国は、海洋の囲い込みを進め、かつ自国の権益を確保するために海洋の総合的な管理に取り組んできています。領海及び内水において不審な航行をしている外国船舶を規制する法律は、諸外国には同種の法制はありますが日本にはありません。整備しなかったのはなぜか、そして、どのような問題が生じて必要になったのか、まとめて大臣に問いたいと思います。

○冬柴国務大臣 我が国におきまして国連海洋法条約を批准した平成八年ごろに議論がなされたと聞いておりますが、海洋利用国家としての基本的立場から、海洋の自由を尊重し、必要最小限の制限とすべきであるとの考え方に基づきまして、法整備が行われなかったと承知をいたしております。

 しかしながら、その後、諸外国にも同種の法制度が存在をし、また不審船事案など海洋をめぐる情勢が変化をしております。海洋基本法におきましては、新たな海洋立国の実現に向けて、海洋の安全の確保のための施策を積極的に推進していくことが求められており、この法案はこれを受けて制定しようとするものでございます。

 四面を海に囲まれた海洋国家である我が国にとりましては、海洋の安全を確保することは我が国の安全を確保する上で重要であり、特に、領土に近接し、我が国の主権が及ぶ領海及び内水は我が国にとって極めて重要な海域であります。このため、今回、領海及び内水における外国船舶の航行秩序を明確にすることによって、外国船舶の航行の秩序を維持し、もって領海及び内水の安全を確保する趣旨で本法を提案させていただいた次第でございます。

○穀田委員 それぞれ領海と内水における安全を確保するということだ、その点は当然だと思います。

 本来、領海においても船舶の航行は自由ではありますけれども、正当な理由のない、そういう意味での停留や錨泊等を禁止し、その不審な行動を取り締まることについては、私も当然だと思います。それだけは確認しておきたいと思います。

 次に、明石海峡の船舶事故についてもう一回聞きたい。五月二十七日に質問しました。海上保安庁に一点質問します。

 四月二十八日に、保険会社がサルベージ船を使って調査を行ったと聞いています。明石海峡の沈没船の油漏れ対策について、どれだけ油が残っているかなど、調査で明らかにされているのか、これをつかんでいるのか、また、安全宣言等の問題についての所見をお伺いしたいと思います。

○岩崎政府参考人 四月の二十八日、二十九日の両日、先生御指摘の、ゴールドリーダーという船のPI、船主責任の保険会社でございます。これはイギリスでございますけれども、これが手配したサルベージ会社により、ゴールドリーダーの船体状況について、ロボットを使って調査を実施いたしました。

 この調査結果でございますけれども、現在、今申し上げたPI保険会社から委託を受けた専門家、これは外国人でございますけれども、この専門家によって報告書が取りまとめられていると聞いておりますけれども、まだ報告はございません。

 私どもは、こういうことはできるだけ早くきっちり関係者の方に調査結果を出して、どういう状況になっているかということを周知してくれ、こういうことを指導しているところでございますが、残念ながら、繰り返しになりますけれども、まだ報告はないという状況でございます。

 残っている油でございますけれども、正確なところはよくわかりませんが、一定の規模の油が衝突のときに出ましたけれども、まだかなりそのときの燃料油が船体の中に残っているんじゃないか、このように推定をしております。どのような状況で、タンクの中でちゃんと残っているのか、あちこちで漏れているのか、こういうことについて正確なことがよくわからないものですから、今申し上げたような、この船体状況の調査の結果を待っているところでございます。

 今の環境の状況はぽつぽつと油が出ている状況でございますので、この状況であれば、兵庫県、神戸市において水質調査が実施されておりますけれども、それらの調査では、環境に影響があるといったような、油分等は検出されなかったと聞いております。

○穀田委員 今答弁ありましたように、結局、外国の調査ということで、まだ発表されていない。でも、これは四月の二十八、二十九にやっているんですね。
もう一カ月もたっているのに、常識では、もちろんそれらの船との関係でいうと違うのかもしれませんが、問題は、我々日本国民ないしは兵庫県民その他、また漁業者が受けている被害の甚大さからして、早うしてくれというのはきちんと言ってくれなけりゃ困ると思うんですよね、これは。

 だって、風評被害やその他を初めとして、やると。今ぽつぽつとしか油は出ていないから、今の長官の言によれば、結局、安全宣言その他についてはもちろん県や市が行うものだということを類推させる発言なんですけれども、そういう問題だとしても、これは、例えば今あったように、船体の中に推定される、これは次にどうなるんだということもあるので、要するにどうすればいいのかということを含めた前提となるわけですから、きちんとそれはやっていただきたいということを特に要望しておきたいと思います。

 次に、日本船舶振興会の助成事業について聞きます。

 日本船舶振興会に対する交付金は公的な性格を持つものだと思いますが、その点に限っていかがかと。

○春成政府参考人 日本船舶振興会への交付金の性格等でございますけれども、御案内のとおり、日本船舶振興会の交付金は、いわゆるモーターボート競走という公営競技の売上金の一部をモーターボート競走法に基づきまして日本船舶振興会の方に交付しております。

 その交付金を用いまして、振興会の方から、海あるいは船舶関連、あるいは広く公益事業を対象にして助成金という形で交付されておりまして、私ども、このお金の内容につきましては極めて公益性の高いものというふうに認識しております。

○穀田委員 公的なもので公益性が高いものだと。もともと地方自治体がやっている競艇の売上金の約二・六%を交付している。だから、もともとお金自身が公的な性格を持っているわけですよね。

 そこで、その交付金による助成については透明性が当然必要だと思いますが、その点はいかがでしょうか。

○春成政府参考人 委員御指摘のとおり、この交付金による助成につきましては、公平性、公正性あるいは透明性というものが強く求められるというふうに思っておりまして、そのような観点で、モーターボート競走法の中にも、この使途については公正かつ効率的に行わなければならないという規定もございます。

○穀田委員 競走法によると、四十六条ではそう書いてあるということですよね、公正に行わなければならないと記載されている。

 ところが、日本財団の公正性に疑問を生じるような事実が問題となっている。
今、皆さんにお配りしたのがそれであります。宮城県石巻市の地元紙「石巻かほく」五月二十七日付のコピーです。

 石巻市には、小規模の場外舟券売り場、オラレの設置計画がありました。設置者は東京都青梅市です。東京都モーターボート競走会が運営しています。昨年八月に国交省に設置許可を申請し、九月に開設が許可された。しかし、許可の翌日から開かれた市議会で関連の条例案を市長が提案しましたが、否決されました。
市議会の反対で計画はストップした。しかし、市は一度計画を断念したけれども、改めて誘致の動きも起こっていると言われています。

 こうした中で、オラレを受け入れないと補助金が受けられないという声が出ていると言われます。オラレを受け入れられないと助成金は受けられないのか。配付した記事では、本年度、日本財団に交付申請した石巻市の団体への助成がすべて不採択になった、「オラレ問題が影響?」と報じています。事実関係はどうですか。

○春成政府参考人 ただいま御指摘の石巻市におけるオラレという小規模な場外舟券売り場でございますが、この件についての今御指摘の事実関係はそのとおりでございますが、石巻市のいろいろな団体が助成金の申請を船舶振興会にして、結果として不採択になったということでございます。これは、実際には、新聞記事は若干異なっておりますけれども、全体で八件ほど申請がありまして、うち七件が不採択になったということでございます。

 いずれにしろ、事実関係として、それぞれの助成金の審査の結果につきましては、それぞれ合理的な理由のもとに判定がなされたというふうに理解しておりますけれども、ただ、一部に、この新聞の報道にありますように、非常に不適切な御発言があったということは事実でございます。

 先ほども申し上げましたように、この交付金を、船舶振興会が得まして、それを助成金として各種事業に交付するということは極めて高い公益性を持ちますので、いわゆる透明性、公平性、公正さというのが求められておりますので、非常に不適切な発言だと思っております。

○穀田委員 不適切な発言だと。

 ただ、もう一度言うと、報道によれば「何らかの考慮をせざるを得ない」、こういうふうに書いているわけですね。しかも、六団体助成ゼロ、その後申請したものを、今度は、この報道が出たものでまずいというので一団体を採択しているという経過なんですよね。何か一つだけは採択になったというのではなくて、その点では、六団体が不採択で、その後、こういう記事が出て、もう一遍申請したものをやった、こういう経過なんですよね。だから、ちょっと何となくいいように言っては、それはあきまへんで。

 要するに、競艇の施設を受け入れた地域を優先する、それから、施設を拒否する地域には配分しないあるいは減らすということがこの新聞で、設置に反対がある一方で、既に受け入れ、やっている地域も存在する、「二つの状況を勘案した場合、何らかの考慮をせざるを得ない」全くこれは私はけしからぬと思うんですが、再度そのことについて発言を求めます。

○春成政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、この助成金の交付については公正かつ公平に透明性を持って行われるべきものと考えておりまして、このような御発言は極めて遺憾であると思っております。そういう意味で、今後、船舶振興会に対して、そういった基本的な考え方について厳正に指導していきたいと思っております。

○穀田委員 きちんと指導するということだと。

 そこで、実は石巻だけではないんですね。石巻地域以外でも、場外舟券売り場を受け入れないと、日本財団がやっているので一番多いのは福祉車両なんですが、福祉車両を受け入れられないとの声があります。事実関係を確認し、その点も今後ないようにという指導をすべきだと思いますが、いかがですか。

○春成政府参考人 そのようなことがないように、厳正に事実を確認し指導してまいりたいと思っております。

○穀田委員 モーターボート競走法の五十三条には、国土交通大臣は船舶等振興機関に対し監督上必要な命令をすることができるとありますから、きちんとやっていただきたいと思います。

 そもそも、船舶振興会を通じて助成金を配分するやり方自体に私どもは若干異論を唱えて一貫して言ってきました。だけれども、さらに、公正に行うという法の規定すら守らない、言語道断だということだけ指摘しておきたいと思うんです。

 今後、そういうことがないように、前も大体財団は不祥事件を一定起こし、何年でしたか、亀井さんが大臣の折には改善命令やそういう文書も出したという経過もありますから、きちんとやっていただきたい、最後にその点だけ指摘をして、終わります。

○竹本委員長 次に、高木陽介君。

○高木(陽)委員 領海等における外国船舶の航行に関する法律案について質問させていただきたいと思います。

 我が国は、排他的経済水域は面積でいうと世界で六番目という、日本は小さな国だといいながら、海洋においては本当に世界に冠たる大国であると思うんです。そういった中で、その安全を守っていくという、特にその実務を担っている海上保安庁、いろいろと御苦労があると思う中で、ようやくこういった法律ができるということは喜ばしいことであるなと思うんですね。ただ、これが実効性があるものであるのかどうか、ここが一番大きな問題だと思うんです。

 まず最初にお伺いしたいことは、我が国の領海内における不審船や、密輸、密航など犯罪にかかわる船舶または航行の秩序を損なう行為、これらの現状はどうなっているのか。例えば、今回の法律にもありますけれども、やむを得ない理由もなく停留等を行っている外国船舶は一体どの程度になっているのか、この点を最初に聞きたいと思います。

○岩崎政府参考人 領海内で停留や徘回を行っている船舶は、私どもで確認している範囲でございますけれども、年間四千隻ぐらいございます。大部分は、あらしがあったので少し波の静かなところによけるとか、エンジンが故障したとか、こういうものでございますので、こういうものは別に問題があるわけではございませんが、どうも正当な理由がなく何かやっているなというのが、これも私どもの確認した範囲でございますが、平均すると年間十隻程度ございます。

 そうしたものについては、この十隻程度、何でとまっているのかというのがよくわからないものもありますけれども、先生がおっしゃるとおり密輸や密航なんかを企てているんじゃないかとか、そういう怪しげなやつも中にはいるんだろう、このように推察をしているところであります。

○高木(陽)委員 やむを得ない理由もなく停留等をしているという、まさに犯罪にかかわるようなことをしているかもしれない、ただ、なかなか外から見ているのではわからないわけですね。

 だから、今回は、そういった形の中でさまざまな行動ができるようにするということなんですが、まず、今回の法律をつくること、制定することによって何が可能になるのか、この点をお伺いしたいと思います。

○岩崎政府参考人 今申し上げた、そういう怪しげなやつについては、私どもの方も、見つけ次第、立入検査や退去要請をしておりますけれども、これは今のところ任意の立入検査や任意の退去要請となっております。こうしたものについて、それぞれの怪しげなやつもかなり実効的にはきいているところもありますが、中には、それでもなかなか私どもの任意の立入検査あるいは退去要請に従わない、こういうものも、数は多うございませんが、現実にございます。

 この法律はそうしたものに対してきっちり罰則も適用して、強制的な措置を含む必要な措置をとることができるようにいたすというのがこの法案の目的でございます。この法案を通していただければ、私ども、これを使いながら、こうしたものを的確に運用して領海の安全の確保に努めていきたい、このように思っているところでございます。

○高木(陽)委員 今までは任意だったのが今度は強制的に立入検査ができると。任意で立入検査をするときに、まあいいですよと受け入れるということは、余りやましいことをしているわけじゃないわけですね。そこら辺のところで実行可能な形にしていくということは大切だと思うのですね。

 その中で、昨年の国会で海洋基本法が成立しました。この海洋基本法第三条で、基本理念の一つとして海洋の安全の確保をうたっている。これもちょっと遅きに失したかなと思うような形でしたけれども、ようやく海洋基本法というのができた。その基本法と今回の法律というのはどういう関係なのか、これも伺いたいと思います。

○岩崎政府参考人 海洋基本法をつくっていただきまして、海洋に関する諸施策を総合的に実施していこうということで、私ども政府としても取り組んでいるところでございます。

 海洋基本法には、基本的な施策の一つとして海洋の安全の確保というのが掲げられておりまして、我が国としてもそのための施策を積極的に推進していくことが求められております。また、海洋基本法を成立させていただいたときに、衆参両院でも附帯決議をいただいておりまして、必要な法制度についても積極的に考えるようにというような附帯決議もいただいております。こうしたことを踏まえて今回提案させていただいたということでございます。

○高木(陽)委員 まず、海洋基本法を見て、それに基づいた個別法みたいな形で今回の法律が位置づけられるというふうに思うのですが、その中で、本来であれば、これまでも不審な船、または密輸、密航、いろいろとあったわけですね。現実問題そういう任意でしかできなかったという不都合があったわけですね。何でこれまでこういった法律をつくってこなかったのか、もっと早くやるべきだったのじゃないかなと思うのですが、この点はいかがでしょうか。

○岩崎政府参考人 先ほど穀田先生の御質問に大臣からお答えさせていただきましたように、平成八年当時、海洋利用国家として、我が国はできるだけ海洋の自由を尊重する、海洋の管理的な法案は必要最小限の規制とすべきという考え方でございました。

 具体的に申しますと、例えば当時の議論でございますが、日本を含めて世界的に領海三マイルでやっていたところでございますが、領海十二マイルにしようという動きがあって、中には、幾つかの国では領海を二百海里にして、それでその領海内の通航についても必要な規制をしようというようなことも当時の議論としてはございました。

 そうした議論があったものですから、海洋をできるだけ自由に使っていきたい、貿易立国としてそうしていきたいというような議論で、平成八年当時、この件については、繰り返しになりますが必要最小限の規制とすべきという考え方で法整備は行わなかったと聞いております。

 海洋基本法も成立をさせていただきました、つくっていただきました。それから、諸外国にも同種の法制度がある。それからこの間、北朝鮮の不審船事案であるとか領海の警備をめぐるいろいろな問題が出てまいりました。こうしたことを踏まえまして、今回、法案を提出させていただいたというところでございます。