国会会議録

【第168臨時国会】

衆議院・国土交通委員会 第4号
(2007年11月2日)

 衆議院の国土交通委員会で、私は、北朝鮮に対する入港禁止措置という日本独自の制裁措置を延長するという閣議決定の承認についての質疑を行ない、制裁措置の継続には反対するとの態度表明をおこなった。

○竹本委員長 以上で三日月大造君の質疑は終わりました。

 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 我が党は、北朝鮮に対する船舶入港禁止と日本独自の制裁措置に対して、昨年十月にこれが実施された際にも、ことし四月にこれが延長された際にも賛成してきました。それは、昨年十月に行われた北朝鮮による核実験という新たな重大な事態に対して、北朝鮮を対話の道に復帰させ、核兵器問題の外交的解決を図るための手段として日本独自の制裁措置をとる点は了とするという立場からのものでありました。

 まず、この制裁措置の目的、そもそもの制裁措置をとった理由について、逆に私は、ことしの十月九日に行った閣議決定に基づいて入港禁止の理由を述べられたいと思います。外務省、お願いします。

○伊原政府参考人 委員御案内のとおり、今回の措置につきましては、北朝鮮によるミサイルの発射、それから核実験等を踏まえまして、さらには拉致問題をめぐる状況、拉致問題について進展が見られないという状況を踏まえてとったということでございます。

○穀田委員 先ほど来問題になっていますけれども、入港禁止の理由は、閣議決定は、御承知のとおり、北朝鮮により核実験を実施した旨の発表がなされた、弾道ミサイルを発射したことに加え、核実験を実施したとしていることはけしからぬ、だからやった、こういうことで理由は書いていますね。そこははっきりせないかぬ。新しくは、その後の国際情勢云々かんぬん、こういう話ですね。

 そこで、私は、ことし五月二十五日、冬柴大臣とやりとりをしたときにも、この禁止措置の延長について議論したとき、こう言いました。私は、この禁止措置の延長が制裁のための制裁というのじゃなくて、日朝間、六カ国協議の誠実な履行、そのための対話を促進する手段であること、これを大臣との間で確認したところであります。

 また、私どもは、北朝鮮の一連の暴挙を糾弾し、国会決議に対して、国際社会の一致協力した取り組み、さらに、平和的、外交的手段で解決する、このことを盛り込むように主張し、努力したところであります。

 北朝鮮への制裁は、つまり、核実験の重大な脅威が重要なテーマであることは当然であります。その後、この核問題をめぐる北朝鮮の情勢について大きく変化していると言って差し支えないと思います。

 そこで、きょうは、この間の進展について具体的に外務省に聞きたいと思います。

 北朝鮮は、核問題に関して、ことしの二月の六カ国協議で合意された措置の対応をどのようにしてきたのか、また、十月の六カ国協議では核問題についてどのような合意がなされたのか、そして、今日の局面、どのような局面にあるのか、この点を具体的に述べていただきたいと思います。

○伊原政府参考人 現在行われております六者協議のプロセス、この大きな目標を設定しておりますのは二〇〇五年の九月の共同声明でございます。

 この二〇〇五年九月の共同声明においては、北朝鮮によるすべての核兵器及び既存の核計画の放棄ということがうたわれております。その目標を達成するために、今委員御指摘のとおり、ことしの二月に、特に初期段階の措置について合意をしたわけであります。

 この初期段階の措置については、北朝鮮は寧辺にあります核施設の活動を停止し、さらにそれを封印する、そしてこれをIAEAの要員が検証し監視するということが主たる内容でございます。

 その後、バンコ・デルタ・アジアの事件等もございまして、この初期段階の措置の実施は予定されたよりもおくれましたけれども、七月から八月にかけまして、活動の停止、封印、IAEAによる検証、監視というのは実施されました。

 その後、六者協議におきましては、次の段階で何をするかということを明確化する協議が行われまして、その結果が、先般十月三日に公表されました合意文書にあるとおりの約束でございます。

 この十月三日に採択されました文書によりますと、北朝鮮は、本年末までに、すべての核計画の完全な、そして正確な申告をするという約束を負うとともに、核施設につきましては、すべての核施設を無能力化するということを確認した上で、ことしの末までの具体的な行動としまして、寧辺にあります三つの核施設を無能力化するということを約束しております。

 そういう意味では、非核化のプロセスというのは一定の進展を示していると言ってよろしいかと思います。

 しかしながら、例えば無能力化につきましては、今、米国の核の専門家チームが一日から北朝鮮に入りまして、具体的な措置を今後とっていくということになっておりますけれども、こういった合意された文書、合意された約束というのを、今後北朝鮮がきちんと行動によって明確にしていくのかどうか、そういったことを引き続き注視し、かつ、六者のプロセスとして、その実施を担保していかなければならない。

 そういう意味では、今後、引き続き、日本といたしましては、米国を初めとします六者の関係国とよく連携をとりながら努力をしていくということが今重要であろうというふうに思っております。

○穀田委員 今の報告で明らかなように、北朝鮮が、核施設の無能力化、核計画の完全申告を柱とする次の段階の措置を行うことを明確にし、そして、ことし末までの具体的な内容も確認をする。あとはこれを実行させるかどうかという問題だということはそのとおりであって、結局、この六カ国協議の合意というのは、朝鮮半島の非核化への重要な一歩であって、国際社会の総意を背景に、六カ国が粘り強く協議を続けてきた結果であり、私どもは歓迎するものであります。

 大臣は、北朝鮮の核問題をめぐるこうした六カ国協議の合意と北朝鮮の対応について、また、アメリカが新しく入っていくという今日の情勢などについて、どのように認識しておられるのか、総論的にお述べいただければと思います。

○冬柴国務大臣 北朝鮮を中心とするその周辺国家が、中国、韓国、そしてロシア、日本、それにアメリカ、この六カ国でこの問題を協議する、解決するというのは、私は最良の枠組みだろうというふうに思います。

 したがいまして、ここで粘り強く協議を重ね、一定の成果を得ているということにつきましては、私は非常に歓迎すべきことであるし、担当される方々、中国の武大偉さん初め、日本の大使もやられた方でもありまして、こういう人たちの努力を多とするわけでありますが、では、反面、北朝鮮の対応はどうか。これについては、私は詳しいことはわかりませんけれども、どうも誠意というものが認められないように思われてならないわけであります。

 二国間の問題というふうに言われているけれども、そうではなしに、拉致の問題につきましても、人権問題として六カ国協議でやはり解決していただきたい。優先順位は別としましても、我が国にとっては、この問題が解決されない限り、この六カ国協議の結論であるとしても、日本国民の民意を考えたときに、それに乗っていろいろ北朝鮮に協力をする、そういうようなことはなかなかできにくい雰囲気だろうというふうに私は思います。

 したがいまして、我々がきょうお諮りをしております、北朝鮮籍船の我が国に対する入港を禁止するというこの強いメッセージというものが、拉致の問題を初め、核、ミサイルというものの脅威を取り除くことについての北朝鮮の誠意ある反応、態度というものを引き出すことができれば非常にありがたい、そうあるべきだというふうに思って提案しているわけでございます。

○穀田委員 今一定の成果を得ているということと、北がどういう対応をするか。これは先ほど来あったように、今の行動がどういう形で影響を及ぼしているかというのは、なかなかこれはわからぬわけですね。だから、基本となるべきものがやはり共同声明であり、また、日本の場合でいえば、日朝平壌宣言に基づいて履行を迫っていくという以外にないことは明らかだと私は思っています。

 そこで、先ごろ韓国と北朝鮮の首脳会談が開催されました。共同声明が発表されています。この会談と声明は核問題の解決へどのような進展があったのか。日本政府としての評価を含めて、外務省は明らかにしてほしいと思います。

○伊原政府参考人 先般、十月の二日から四日にかけまして、北朝鮮の平壌において行われました南北朝鮮の首脳会談でございますけれども、その結果として、今委員御指摘のとおりの宣言、南北関係発展と平和繁栄の宣言というのが発出されております。

 会談の概要につきましては、私ども、十月五日に盧武鉉大統領から福田総理に対して、それから同時に、同じ日に、この南北首脳会談のために訪朝いたしました韓国の外交通商部の沈という次官補から高村外務大臣に対して、それぞれ内容について説明がございました。

 私どもとしては、この首脳会談それから発表されました共同宣言は、南北関係の進展それから朝鮮半島の緊張緩和に資するものであったというふうに評価をしております。

 特に、今委員御質問の朝鮮半島の非核化との関係ではどうであったかということでありますけれども、これは私どもが承知しているところでは、金正日国防委員長の方から盧武鉉大統領に対して、朝鮮半島の非核化へのコミットメントが再確認されたというふうに伺っておりますので、この点においても、この南北首脳会談は有意義であったというふうに考えております。

○穀田委員 今ありましたように、わざわざコミットメントがあったという点では、一つ、先ほど、六カ国協議のそういう形で前進を図り、また実際に南北を分けている問題、そういう両国がその問題について改めて約束をするという意味では、私はさらに重要な内容だったと考えています。

 この制裁措置について、私は前も言ったんですけれども、中国、韓国を初め近隣諸国との協調のもと、国際社会の一致結束を強め、外交解決を図る方向で実施されるべきであると一貫して主張してきました。

 そこで一点だけ、簡単でいいですから、国際社会と近隣諸国の制裁措置の取り組みの状況について述べていただきたい。

○伊原政府参考人 北朝鮮の核実験の後、国連の場においては、安保理決議一七一八号が採択されまして、これによりまして、国連の加盟国は北朝鮮に対して、軍関連及び核、ミサイル、大量破壊兵器計画関連の特定品目について輸出を禁止する、あるいは奢侈品についても輸出を禁止するといった措置が決定されております。

 これにつきましては、私ども承知しているところでは、既に七十一カ国それから一機関が、EUですけれども、国連の制裁委員会に対して、どのような措置を実施しているかということを報告しております。

 これによりますと、我が国を初めとしまして米国、カナダ、欧州諸国、豪州等は、今申し上げましたような軍関連等の特定品目の輸出禁止や奢侈品の輸出禁止を既に実施しております。

 それから、中国につきましては、この決議一七一八号に基づく義務を履行するということは明らかにして報告はしておりますけれども、その内容については対外的に明らかにしていないところでございます。

 韓国につきましては、軍あるいは核、ミサイル、大量破壊兵器関連の輸出禁止はやっておりますけれども、まだ奢侈品については現時点では輸出禁止措置は実施していないというふうに承知しております。

○穀田委員 もちろん、これらの七十一カ国は、していないという内容も含めて報告が書かれているということですよね。それはそのとおりだと思うんです。

 最後に、では、先ほど来問題になっている拉致問題との関係について一点私どもは聞きたいと思うんです。

 私どもは、十月四日の衆議院本会議の代表質問において我が党の志位委員長が、日朝平壌宣言の精神に立って諸問題、核問題、拉致問題、過去の清算問題など包括的解決を図る立場が重要だ、包括的な解決を図る過程で、ある問題の解決が先行することもありますが、一つの問題で前向きな突破が図られれば、それは他の問題の解決の妨げになるのではなく、促進となるでしょう、すなわち、今進行しているプロセスで核問題の道理ある解決が図られるならば、拉致問題の早期解決の新しい条件が開かれることになるでしょうと述べていますね。

 私どもは、こういう見地が今大切じゃないかと考えていますが、大臣の所見を伺いたいと思います。

○冬柴国務大臣 非常に傾聴すべき意見ではありますけれども、現在、私どもは、やはり国連安保理決議一七一八号、これは憲章二十五条に基づいて加盟国がひとしく遵守しなければならないものであります。したがいまして、これは各国の主権の範囲で判断するんでしょうけれども、条約遵守義務という形から見れば、各国はひとしくここで示されたことは守らなきゃならないと思います。

 私どもは、そういう観点から、交渉の技術といいますか進め方としてはそうですけれども、やはり包括的に解決する、それが包括的に解決されることを条件に、また新しい、平壌宣言で約束をした日朝の国交正常化が図られていくというふうにも思うわけでございまして、どれか一つを解除するとか緩めるとかいうようなことは、今の段階ではまだ政府は考えることはできないのではないかというふうに思います。

○穀田委員 私どもは何かどこかを緩めろなんて言っているわけじゃなくて、やはり世界が今注目している朝鮮半島、東アジアにおける非核化のこういう道筋を大いに前進させることが、また拉致問題の解決にとってもええことなんやという立場で臨まなんだらあかんということを言っているわけですよね。

 日本独自の二つの制裁措置というのは、北朝鮮による核実験を契機としてとられた対応措置なんですね。その後、私が今きょうの質疑でも明らかにしたように、北朝鮮の核問題をめぐる情勢というのは、先ほど来ありましたように、重要な一歩前進を図られた。新しい条件が生まれ、前向きに進展しておって、その意味では私は制裁措置を続ける理由はないと思います。

 にもかかわらず、これらの制裁措置を継続するということは、核問題解決のために日本政府が積極的役割を果たす上で障害になりかねないという点を指摘しておきたいと思うんです。

 拉致問題の早期解決の上でも、六カ国協議の合意に即して、核問題の解決のための積極的な役割を果たすことが日本政府に求められていると考えます。そのためにも、制裁措置に対しては、情勢の進展に即した対応をとることが大切であると考え、したがって、反対の態度を表明して、質問といたします。

 終わります。