国会会議録

【第168臨時国会】

衆議院・国土交通委員会 第3号
(2007年10月31日)

私は、「緊急地震速報」について、「国民がどう対応すべきかを理解していなければ意味がない」として、周知徹底と活用の問題を質問した。

○竹本委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 地震発生や火山噴火などを観測した場合、その情報をいち早く伝達し、被害の軽減に結びつけることは当然だと考えます。被害の拡大を防止し軽減するためには、一人一人の国民が被害の危険を認識し、みずからそうした行動をとれない人も含めて、その危険から身を守れるようにすることだと考えます。気象庁が行う予報、警報に対してどう対応すべきかを国民が理解していなければ、意味を持たない。

 緊急地震速報の本運用開始に係る検討会最終報告は、緊急地震速報利用に当たっての心得として、慌てずまず身の安全を確保する、このことを国民への周知徹底を図ったとしています。そして、その徹底度合い、いわゆる認知度というものについて、気象庁は緊急地震速報の認知度に関するアンケート調査を行ったとしています。

 そこで、気象庁に聞きます。

 緊急地震速報について、災害弱者への周知徹底と認知度の状況を聞きたい。特に、聴覚障害者や視覚障害者、外国人へはどうなっているか、明らかにしていただきたいと思います。

○平木政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員御指摘のとおり、緊急地震速報の周知、広報に努めてまいったわけでございますけれども、その中で、関係機関との連携のもとに、まず視覚障害者につきましては、点字広報誌に緊急地震速報の解説を掲載するということを行ってまいりました。そして聴覚障害者に対しましては、音声によって広報CDを作成して、図書館等に配布するということも行っております。そして、緊急地震速報の理解のために、これは聴覚障害者でございますけれども、字幕を入れた形での映像資料というものをつくりまして、これを市町村に配布してございます。そして、これは外国人でございますけれども、英語のみでございますけれども、関係機関に英語のパンフレットを作成していただいて、これを気象庁のホームページに掲載して、英語による緊急地震速報の解説を掲載するということも行っております。この他、緊急地震速報の災害時の要援護者への周知につきましても努めてまいったところでございます。

 今後も、関係機関などの御協力を得ながら、災害時の要援護者への周知、広報に努めてまいりたいと考えております。

○穀田委員 今お話があったのは、どうして広報したかという話、周知徹底の話はしたけれども、先ほどあったように、これを七割近くの方が認知しているという話、一般のものはあるんですよ。今私が聞いたのは、周知という話と合わせて、認知度という話を言ったよね。認知度はどないですか。

○平木政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の認知度は、インターネットを使った、迅速に情報を収集するという、そういう制限の中で行っておりますので、現在、聴覚障害者、視覚障害者、それらの認知度についてはまだ把握しておりません。今後検討してまいりたいと考えております。

○穀田委員 だから、把握していないということだと。これは極めて私は問題だと思うんです。これはあなた方が出しているものですよ、「あなたの命にかかわる速報です。」この内容がどういうふうに徹底されているか知らないで、どないして助けるわけですか。

 しかも、私は現場へ行っていろいろ聞いてみたんですね。そうしたら、聴覚障害者施設でもこういったことについて知らないと。とりわけ、聴覚障害者の方々にこうすべきだという話については、その施設にさえも伝わっていないというのが多々見受けられる実態です。私は、ではそこの場所はどこかと言われたって、それを言ったらまたそこを知らぬのかと言われて、そんな話になるから、それは違うけれども、あなた方だって認知度をつかんでいないぐらいだから、そういう実態だということはおわかりいただけると思うんです。

 それで、聴覚障害者団体事務局長の岩渕氏は毎日新聞の「発言席」というところでこう書いている。災害などが発生するたびに聴覚障害者は情報過疎に置かれると訴えて、「聴覚障害者は主に音声およびコミュニケーションに関して悩んでいるのだから、光、文字などで伝える方法を工夫してほしい」と述べているんですね。先ほどそういう若干の周知の話はありましたけれども。

 また、十月十三日の産経新聞、「私も言いたい」ということで、テーマが緊急地震速報の中で、こう書いてあるんですね。「速報開始は知っているが、私は聴覚障害者なので、速報が音で伝えられても聞こえないと思う。速報を知らせるランプがあっても、その場にいなければわからない。」と、同様の意見を述べているわけです。

 そこで、私はここに聴覚障害者災害対策マニュアルというのを持ってきました。これは、内閣府、総務省、厚生労働省、消防庁、NHK、日本民間放送連盟、聴覚障害関係団体が一緒になって、聴覚障害者の災害情報保障に関する調査研究の成果として結実したものであります。その中で、聴覚障害者にとって必要な情報保障を中心とした災害対策を強めることは地域防災にとって重要な課題ですと指摘しているんですね。そういった角度からも取り組みを強めることが私は重要だと思います。

 政府は、防災対策の重点として、災害時要援護者への支援とか、さらに迅速・的確な防災情報の提供などを明記しているんですね。そのもとで、行政と障害者団体、社会福祉協議会、ボランティア、NPO、医療関係者などで、こういう形で連携のあり方が議論されたり、各種ヒアリングなどを行って、どうしたら災害時、これは災害の後を中心にしていたのが今までは中心だったんだけれども、こういう制度が、新しく法律ができるとなれば、そういう努力を行う必要があると思うんですね。

 したがって、厚生労働省に聞きたいと思います。これと同じように、緊急地震速報の聴覚障害者への周知徹底の問題では、関係者の意見を聞くなど、関係者とよく協議して行うべきではないんだろうか。その点、一点だけお聞きします。

○中村政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のありました緊急地震速報につきましては、地震発生時における人的、物的被害の軽減が図られるものであることから、その仕組みにつきまして、本年六月十三日付の事務連絡によりまして、財団法人全日本聾唖連盟等の関係団体に対しまして通知して、聴覚障害者に対する周知を図っているところでございます。

 今後とも、緊急地震速報の周知を含め、災害時の聴覚障害者に対する避難支援対策につきまして、関係省庁及び関係団体等と連携いたしまして、万全を期してまいりたいというふうに考えております。

○穀田委員 通知しているのはわかるんだけれども、通知一本でわかるんだったら苦労はせえへんのです。今言っているように、気象庁はその認知度はわからぬと言っているわけでしょう。だとしたら、よく協議して、ヒアリングもして、きちんとやってくれるんですねということを聞いているんですよ。簡単に一言で言ってくれたらええんです。

○中村政府参考人 先生の御指摘も踏まえまして、万全を期してまいりたいと思っております。

○穀田委員 そこで、先ほどデパートの話もありました。私は、国土交通省ですから、駅、ターミナルの問題について一言聞きたいと思います。

 緊急地震速報、先ほど活用の内容については少しありました。速報をだれが察知し、察知した速報を施設内にどのように報告するかということもあるでしょう。それから、パニックなど起きないようにする必要もあるでしょう。従業員による誘導も必要でしょう。そのための教育や訓練も要るでしょう。

 先ほど引用した最終報告は、集客施設等においては、利用者が必ずしも放送に注意していないなどということで、利用者が発信されたことを迅速に知ることができる環境の構築を目指す必要がある、こう言っているんですね。さらに、施設管理者の対応策については、国が中心となって検討を行うことが適当であるとしているんです。

 そこで、気象庁にもう一度、多くの人々が集まる鉄道駅などでの利活用について、施設管理者にはどのように周知徹底しているのか、内容を明らかにされたい。簡潔にお願いします。

○平木政府参考人 お答え申し上げます。

 駅等の不特定多数の方が集まる施設におきまして適切に利用するために、各施設において、緊急地震速報の利用マニュアル等を作成する、その上で緊急地震速報を利用していただくということを勧めております。

 気象庁としましては、利用マニュアルの作成を支援するために、施設管理者の方々を対象としまして、緊急地震速報の利活用法などにつきましてポイントをまとめました緊急地震速報の利活用の手引きというものを作成しまして、既に関係各機関に配布しているところでございます。引き続きこれらの活動を支援してまいりたいと考えています。

○穀田委員 先ほどあったマニュアル、それから手引きをつくっている、ここはわかっているんですよね。では、施設管理者はこれを受けてどのように対応しているのか。つまり、国交省として、所管の鉄道駅などにおいて、聴覚障害者を含めた利用者の安全を図るために、緊急地震速報をどのように活用しようとしているのか、国交省の取り組みを聞きたい。

○榊政府参考人 鉄道の駅等の集客施設でございますけれども、まず、利用客に対する周知を行うとともに、適切な誘導を行うということによりまして、一層の減災が図られると考えております。このため、施設管理者におきまして、災害時要援護者への配慮を含めた基本的にはまずノウハウを蓄積していただいて、誘導等を適切に遂行していただくということが重要だと思っております。

 私どもとしては、事業者のノウハウがどの程度蓄積されているのか、誘導等の遂行能力がどのくらいあるかということを検証しながら、緊急地震速報がより有効に活用される方策というのを検討して、推進していきたいと思っております。

 それから、ぜひ事業者の方で、緊急地震速報を活用した訓練というのをきちっと実施していただきたいというふうにも思っておるところでございます。

○穀田委員 まず、どの程度実績、ノウハウを積んでいるのかということでしょう。検討していきたい、それから訓練をぜひやっていただきたいと。

 もう既に実施しているわけで、この法律は実際上やっているわけじゃないですか、十月一日から。今ごろになって、まだ検討しているだの、訓練をやってくれだの。訓練をやってこんなだった、こういう問題がある、だから、この法律の場合に、するに当たって、こういうことをやっていきたいと思っていますと言うんだったらわかりますよ。そう思いませんか、大臣。だから私、いまだ検討中というのは遅過ぎると。

 しかも、パニックをどう防ぐかという問題でいろいろ問題があるのは事実なんです。それは早急な対応が必要だと考えています。でも、簡単に言えば、今の話だと、緊急地震速報を聞くことができる、それから理解できる、必要な対応ができる、こういう人たちはいいかもしれないけれども、それでは、今駅のどこで、そういう人たちが、管理責任者が、そこの聴覚障害者や災害弱者にどう対応するのか、そのときにどういうふうにやってくれるのか、従業員をどうするのか、その結果どうなっているのかということが、依然としてまだ雲をつかむような話ではっきりよくわかっていないんですよ。それでは、うんと言っているわけだから、もう答弁は要らぬから。

 そこで大臣、こういうことではあかんのと違うか。それでは本当に災害被害への拡大防止、軽減することにならぬ。そういう点での大臣の見解を問いたい。

○冬柴国務大臣 今、総政局長からの答弁で、若干つけ加えさせていただくと、気象庁、国土交通省鉄道局、総政局、それから民鉄協の事業者等集まって、どういうふうにそういう問題について対処するかというのを、四回会合を持って、勉強しながら、いろいろなポスターをつくったり、マニュアルを作成したり、今やっているところでございまして、御勘弁いただきたいと思います。

 ただ、委員から御指摘の災害時要援護者への配慮ということは、御指摘いただいたように、重く受けとめてやっていかなきゃならないというふうに思います。

○穀田委員 一言、勘弁はいかないと。なぜかというと、だって、一番対応がおくれる人たちに対して、一番最初にするという視点が欠けていたんじゃないかということを率直に私は思うんですよ。災害弱者はいつもそう言っている。つまり、後に取り残されるという現実があって大変だと。

 これは、私と冬柴さんは少なくとも阪神大震災の問題で共通した事態を知っているわけですね。そうすると、こういう方々にいち早く知らせて、その認知度がどうかということを知って、しかも、検討会四回、勉強しながらじゃだめなんですよ。そういう法が義務化される時点では、少なくともいけるぞという話まで持っていくぐらいの構えが必要だった。だから勘弁はならぬということは言っておきたいと思います。努力せなあかんところは必死になってということだけ言っておきたい。

 最後に、長周期地震動対策について聞きたいと思うんです。

 これは、とりわけ超高層ビルが乱立している東京都心部に大規模地震が直撃した場合、ゆっくりした揺れである長周期地震動が発生して、いろいろな被害を受けるとされています。ことしの七月、新潟県中越沖地震のときに、震源から二百キロ以上離れた東京都内の超高層ビルが大きくゆっくり揺れています。東京では三分以上もそれが続いて、エレベーターが緊急停止するなどしています。

 この対策について、〇五年七月の中央防災会議の首都直下地震対策専門調査会報告や、さらには、昨年の十一月の日本建築学会と土木学会の共同提言などでも指摘されてきています。

 ですから、気象庁に、この長周期地震動とはどういったものか、そして国交省につきましては、この対策をどう考えているか、簡潔にお願いしたい。

○平木政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、平成十九年七月の新潟県中越沖地震で起こりましたような、周期が数秒から十数秒の揺れがあって、それが長期間続く、こういう長い周期の地面の揺れを長周期地震動と呼ばれております。

○和泉政府参考人 超高層建築物は固有周期が長いために長周期地震動の影響を受けやすく、昨年の十一月に、委員御指摘のように、土木学会、日本建築学会が発表した共同提言では、これまでの設計で想定された標準波による応答に対して十分余裕のある設計を行っていないと過大な損傷を受ける可能性がある、災害時にも安全に利用できるエレベーターの開発も考えるべき等の指摘がなされております。

 現行の建築基準法では、高さが六十メートルを超える超高層建築物については、構造耐力上安全であることについて、国土交通大臣の認定を取得することが義務づけられております。この認定に当たっては、第三者機関において厳密な評価を経て、一定の長周期成分を含む複数の地震動について、建築物がどのように揺れるかをコンピューターで解析し、建築物が倒壊、崩壊しないこと、外壁やガラスが落下しないこと等を確かめております。

 一方、平成十六年度、災害対策調整費調査などによって、既存の超高層建築物を対象として、その時点で想定される代表的な長周期地震動に対する耐震安全性検討を行ったところ、建築時に長周期成分を含む地震波による検討を行っていない初期の超高層建築物を含め、倒壊等の大きな被害が生じる可能性は低いという結論が得られました。

 本調査結果につきまして、本年五月に、建築基準法等の技術基準について検討を行うために設置した、学識者で構成された建築住宅性能基準検討会で検討いただき、おおむね調査結果のとおりという趣旨の結論をいただいております。

 しかしながら、同検討会から、より的確に超高層建築物に対する長周期地震動による安全性を確認するために、長周期地震動を考慮したモデル地震動の作成が望ましい、こういった提案をいただいておりますので、今後、そのモデル地震動の設定に向けて検討してまいりたいと考えております。

 あともう一点、エレベーター等の建築設備への影響につきましては、関係団体及び有識者による検討委員会を設置し、ロープがひっかかる可能性のある突起物等にカバーをつけるなどのひっかかり防止対策を講じるなど、長周期地震動対策を含む昇降機耐震設計・施工指針の見直しについても前向きに検討してまいりたい、こう考えております。

○穀田委員 わかりやすく言えば、法整備もこれからせなあかん、これからもう一つ、やはり可能性その他について、被害が少ないかもしれぬけれどもきちんとやらなあかん、こういうことですね。

 そうすると、私、さきの通常国会で民間都市再生事業の延長を議論した際に、これは大臣にも言いましたけれども、東京一極集中を加速させるやり方というのはあかん、危ないよということを言ったんですね。そのときに、都市開発の規制緩和だとかという問題について、さらに東京都心部には超高層ビル、マンションが乱立する形であらわれている。だから、同時に、一たび地震が発生した場合には、被害の拡大を想定せざるを得ない状況があるわけです。

 だから、最後に言っておきますけれども、この間、〇五年の七月に千葉で起こったときでは、超高層ビルでは六万四千台のエレベーターが停止しているんですね、七十八件もの閉じ込めが発生しているんです。したがって、超高層ビル、超高層マンションに対する災害対策は万全を期する必要があるということを言い、したがって、私は、一方でこういう緊急地震速報とやりながら、一方では超高層マンションについては今後そういう意味での法整備が必要だと言っているような状況というのは、やはりきちんとやらぬとあかんということを言っておきたいと思うんです。

 したがって、私は、国民の安全性を考える上で、まちづくりの問題からしても、こういうものを考え直す必要があるのじゃないかということだけ述べて、質問を終わります。