国会会議録

【第166通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2007年6月8日)

住宅セーフティネット法案に関する一般質問を行なった。
 住生活基本法に基づく都道府県の「住生活基本計画」がほぼ出揃い(香川県除く)、公営住宅の供給目標量は112万戸に達するものの新規建設など新たに増える供給戸数は、 45,747戸 (2%)に過ぎないことが明らかになった。
○塩谷委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 住宅セーフティーネット法案に関連して、少しお聞きしたいと思います。

 住生活基本計画が、全国計画ですね、二〇〇六年九月十九日に閣議決定され、そのもとで都道府県計画が二〇〇七年三月までにほぼ策定されました。これは二〇〇六年度から一五年度までの十年間の計画です。

 この計画の策定過程で、住宅困窮者に対する住宅セーフティーネットの確保に関連して、「住生活の分野において憲法第二十五条の趣旨が具体化されるよう、」という文言が追加されました。

 私は、住生活基本法の審議の際にも、居住の権利という思想や考え方にこだわりました。その際にも、一九五〇年に制定された公営住宅法の目的には、「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、」中略しますが、国民生活の安定と福祉に寄与とあることも紹介し、憲法の精神がとても大切だということをるる議論したことを覚えています。このような規定が大変重要なことだと私は考えています。

 大事なことなので、大臣に、この盛り込まれた経過と、「憲法第二十五条の趣旨が具体化されるよう、」という意味合いについて最初にお聞きしたいと思います。

○冬柴国務大臣 住生活基本法六条に、今御指摘がありましたように、「住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤であることにかんがみ、」というふうに定められております。国民の住生活の安定、向上のための基本理念として、低額所得者等の住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保を図ることを規定しているわけであります。

 また、住生活基本法に基づいて、昨年九月に住生活基本計画、全国計画を閣議決定いたしました。その計画の策定に当たりましては、国民の皆様の御意見を反映させるためにパブリックコメントを実施いたしましたが、その際にいただいた御意見を踏まえまして、策定の趣旨を明らかにした「はじめに」の部分において、住宅分野において憲法第二十五条の趣旨が具体化されるよう、公平かつ的確な住宅セーフティーネットの確保を図っていくことが求められるというふうに明記を、パブリックコメントでいただいた御意見を踏まえて、そのような規定をしたところでございます。

○穀田委員 パブリックコメントはとても大事だと私は思うんですね。もちろん、住生活基本法の議論の際に、考え方、今住生活を基本として推し進める上で何が大事かということで、参考人の質疑の中でも出された問題でありました。したがって、私は、そこについて随分こだわったわけです。

 そこで、それらが具体化されている内容、ではどういうことかということについて次にお聞きしたいと思うんです。

 住宅セーフティーネットに関して、私は、肝心かなめな点は、公営住宅がどうなるかという問題をポイントにすべきじゃないかという意見を持っています。

 まず、全国計画では、公営住宅の供給目標量について、都道府県計画で「居住の安定の確保を図るべき世帯に対し必要な住宅供給を行う観点から設定すること。」としています。内訳も、新規の建設、買い取りの戸数、建てかえによる建てかえ後の戸数、民間住宅等の借り上げ戸数、既存公営住宅の空き家募集の戸数と、具体的に示しています。この合計戸数を供給の目標量とするように規定をしています。

 「居住の安定の確保を図るべき世帯」とは何を意味し、その数はどの程度なのか、答えてほしいと思います。

○榊政府参考人 住生活基本計画の目標量の設定の考え方で、「居住の安定の確保を図るべき世帯」とは、市場において自力で適正な水準の住宅を適正な負担で確保することが困難と見込まれ、公的な支援により居住の安定の確保を図るべき世帯のことでございます。

 都道府県の区域内におきまして、多様な住宅困窮者の居住の状況なり民間賃貸住宅の需給、家賃等の市場の状況等の住宅事情を分析して、これを踏まえまして、この世帯数を的確に把握するということにいたしております。

 各都道府県において見積もりました、公的な支援により居住の安定の確保を図るべき世帯の数というのが、都道府県計画について、四十六都道府県ベースで申し上げますと、百二十一万一千四百八十九世帯という形になっております。

○穀田委員 今、必要な供給数ということも言っているわけですけれども、「居住の安定の確保を図るべき世帯」というのは、自力では困難だということで、もともと考え方の根本はそこにあるわけですね。そうすると、必要な供給数というのは、少なくとも今述べた入居要件を満たす応募世帯がすべて入居できる戸数でなければならないはずだ。

 実は、今お話のあった入居資格者のうち、八期までやった五カ年計画によれば、当時の建設計画の目標では百七十六万が不足しており、入れかえが百万近くあるから、七十六万が必要とされた、これが当時、四年前でしたか、住生活の問題、住宅問題について議論をしたときの住宅局の局長の説明でありました。

 そうすると、数が極めて少ないということになると思うんですね。結局のところ、必要供給数が目標量に反映されるような規定がないというところが私は最大の問題だと思うんです。

 では、各都道府県の計画に記載された公営住宅の供給の目標量について、全国の合計は幾らか、そして、うち新規の建設、買い取りの戸数、建てかえによる建てかえ後の戸数、民間住宅等の借り上げ戸数、既存公営住宅の空き家募集の戸数はそれぞれ幾らか、お答えいただきたいと思うんです。

○榊政府参考人 これも四十六都道府県ベースになって恐縮でございますけれども、既に供給目標量を同意したという都道府県に限っての四十六でございます。

 都道府県計画に定める公営住宅の供給の目標量は百十二万七百三戸になっております。それから、新規の建設戸数でございますけれども、これが一万二千三百六十二戸、買い取り戸数が千五百九十二戸、建てかえによる建てかえ後の戸数が十九万八千五百十八戸、民間住宅の借り上げ戸数が七千六百六十六戸、既存公営住宅の空き家募集の戸数は九十万四千二百六十九戸となっております。

○穀田委員 そうすると、皆さん数を聞いてなかなかわからぬと思うんですけれども、要するに、結局純増でふえるのは四万五千七百四十七戸だというふうに見てよろしいですね。

○榊政府参考人 用途廃止があるので正確に見ようとするとまた別ですが、先生の御議論の趣旨からいけば、おっしゃるとおり四万五千七百四十七戸になると思います。

○穀田委員 別に私の数字じゃないんです。要するに、新規の建設と買い取りの戸数と建てかえと借り上げを足せば、四万五千七百四十七になるわけなんですよ。だから、何も私の数字じゃなくて、あなたが言った数字からいえばそうなんだと。何か私が独自の数字を書いているように言われたらあきまへん。あなたの数字を足したらこうなると言っているだけです。そこで何を言いたいかというと、新規の純増戸数というのは、わかりやすく言えば四万五千ぐらいしかないよということなんですよ。そこがポイントなんですよ。

 では、公営住宅の集中する東京や大阪についてはどうなっているか。これも、供給の目標量、そして新規建設など新たにふえる数、それから、既存公営住宅の空き家募集の戸数を東京と大阪それぞれについて言ってください。

○榊政府参考人 まず、東京都でございますけれども、公営住宅の供給目標量が十一万三千戸になっております。このうち、既存公営住宅の空き家募集の戸数が八万一千七百十戸でございます。新規の入居者向けに供給する戸数が千百五十二戸となっております。

 次に、大阪府でございますけれども、公営住宅の供給目標量が十二万六千戸でございます。このうち、既存公営住宅の空き家募集の戸数が九万三千七百七十八戸、それから、新規の入居者向けに供給する戸数が三千九百十四戸となっております。

○穀田委員 では次に、全国と東京、大阪の公営住宅の直近の空き家募集と応募数はどうなっているか。

○榊政府参考人 平成十七年度が直近でございますのでその数字で申し上げますと、全国で、公営住宅の募集戸数が九万六千三十戸、それに対しまして、応募世帯数が九十四万九千六百七十五、倍率にして九・九倍。東京都で申しますと、募集戸数が七千二十九戸、応募世帯数二十二万五千九百二十七、倍率で三十二・一倍。大阪府では、七千三百五十三戸の募集戸数に対しまして、応募世帯数が十一万五千五百八十五世帯となっており、倍率十五・七倍という形になっております。

○穀田委員 全国も東京も大阪も、供給目標、例えば、東京の場合は十一万、大阪の場合は十二万、それの八割は空き家募集なんですね。結局、既存の空き家募集戸数で八割は賄えるという供給量でしかないわけですね。

 なぜこんなことをお聞きしたかということを言いますと、応募の状況の倍率というのは全国で十倍あるんですね。これでいきますと、毎年、十世帯応募して九世帯が入居できないという現状になる。また、東京なんかの場合について言えば三十倍、大阪の場合は十五・七倍ということで、全く足りないということになるわけですね。

 だから、少なくとも、全国でいいますと、空き家募集の十倍が不足しているわけだから、供給目標量は、単純に考えて、若干の差し引きはそれはあるでしょう、事前に言っておきますと、あなた方は、募集の場合は年に二回やっているし、二回応募している人もいるんだ、そう言われるのはわかっているので、それは言わぬで結構ですから。しかし、そのままでも供給目標量は十倍なければおかしいわけですね。それがわずか一・二倍程度。それでは毎年の募集は今のままだということにしかならないわけですね。

 しかも、東京の場合を今例にとりまして質問しました答えを見ますと、実際に公営住宅を必要としている応募者数、応募世帯は約九十五万近くあるわけですね。九十五万の応募者数がいて、十年かけても半分しか埋まらない。

 こういう計画で公営住宅を必要とする方々に供給が満たされると言えるのか、この問題について見解をお聞きしたいと思います。

○榊政府参考人 委員の御指摘もありますが、応募世帯数に同じ者が重複されているという可能性もございまして、世帯数と供給量を単純に比較できないというところがあるんですが、委員御指摘のように、大都市圏を中心に相当の応募倍数になっているということは事実でございます。

 各都道府県が設定しております公営住宅の供給目標量でございますけれども、地域の住宅事情なり財政状況等を勘案いたしまして、先ほど申し上げました、市場において自力では適正な水準の住宅を適正な負担で確保することが困難と見込まれ、公的な支援が必要だという意味で居住の安定の確保を図るべき世帯の数を把握する、それに対して必要な目標を設定しているということでございます。

 例えば東京都でございますけれども、住宅統計調査等の統計調査等を活用いたしまして、計画期間内に民営借家に居住する収入分位が二五%以下の世帯で、現に最低居住水準未満の住宅に居住している方が実は八万二千世帯ございまして、これを公的な支援により居住の安定を図るべき世帯というふうに東京都の方では考えている。

 これに対して、新規の入居者向けの供給公営住宅が八万三千戸、それから公営住宅以外の公的賃貸住宅の活用戸数を八千戸と見積もりまして、合わせて九万一千戸を公的な支援によって居住の安定を図るべき世帯向けの供給というふうに見込んでいるところでございます。

 そういったような形で、東京都の場合は、新規の入居者向けに供給する戸数が八万三千戸、それから建てかえの際の従前居住者向けが三万戸ありますので、新規という意味では八万三千プラス三万で十一万三千戸、こんなような形になっておるところでございます。

○穀田委員 数字をいろいろ言って、だから私は最初に聞いたんですよ。新規の純増は幾らかと聞いているんですね。

 結局、建てかえ、空き家募集ということで、既存のものを出て行ってもらう形をどんどん推し進めて、また、当然、お亡くなりになったりその他含めて自然減もある。こういうものを計算してやって机上の数字が出ているんですよ。

 だから、私、前もちょうど言ったわけですね、この問題は大変になるよと。そうすると、今の現実は、私が当時、四年前に言っていたことの方が正しかったということなんですね。だから、榊局長は五年後も局長をやっているかどうか知りませんけれども、そういう現実が、私が正しかったかそちらが正しかったかというのは歴史が絶対判断しますよ。

 私が言っているのは、新規の建設はこれほどない、だから結局その倍数は埋めることができないということだけははっきりしている、問題はそういう応募倍率が十倍から三十倍ある現状に対して一刻も早く打開することが前提なんだ、そこにこそセーフティーネットということが必要なんじゃないのかと。そういう意味でいいますと、東京などは四・六%、二十件に一件しか供給されない現状でセーフティーネットといって、網がこんなに広がって、どんどん落ちこぼれていって、どないするのやということを私は言っているんです。

 だから、数字を述べて、皆さんはどっちの数字が正しいかということは余りわからぬとは思うのだけれども、肝心かなめの問題は、新規はそんなにつくらないということ、応募の倍率は毎年三十倍以上になっている、仮に一人で二件やったとしても十五倍という数字があるということ、それに見合った数字はできないということ、これだけは厳然たる事実なんです。だから、セーフティーネットといった場合、そこを広げるということ抜きにはだめなんじゃないかということを私は言っているわけです。

 そこの見解を少し大臣に。

○冬柴国務大臣 住生活基本計画におきまして策定したものは、配慮を要する人の世帯、そして、それが十年の間には入っていただけるような数字というものがやはり基礎になっていると思います。

 競争倍率は確かに熾烈で、東京なんか三十倍近くになる。しかしながら、これは一年に二回申し込んでいる人もあるわけで、特に高齢者の場合は四回やっているわけです。したがって、その人数と必要とする世帯の人数は必ずしも一致しないというふうに思うわけでございます。

 各地域におきまして、そのような住宅事情というものを各都道府県で詳細に計算した上で、その人たちが少なくとも十年以内にはきちっと入っていただけるような建設計画を立てるということでやっておりますので、歴史的に見て委員の方が正しかったかどうかというようなことは別にしまして、我々としましては、この立てた方針に基づいてきっちり履行していきたいというふうに思います。

○穀田委員 〇三年度までにも、全国の公営住宅応募者数は百万世帯を超えているんですね。それで、九九年から五年間、やはり三十万世帯もふえているわけですよ。そのふえ方の数字の、例えば二回応募しているとか四回応募しているとか、それはいろいろあるでしょう。だって、当時だってそういうことだったんですよ。だから、一方で応募者数はふえているんだが建設の供給増はほとんどなくて、九七年度に二十一万戸あった募集戸数も、二〇〇〇年度には約十万戸に減少しているんですよ。その現実をやはり見ていただきたい。

 私は、格差と貧困という問題が、認識はいろいろ違ったとしても、それがふえているということは事実だと思うんです。したがって、そのもとで住宅困窮者は増大していると何度も指摘してきたんです。住宅確保要配慮者という観点で見た場合、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、DV被害者、子育て家庭と言っているわけですね。そういう方々にとっては公営住宅を必要とするそういう度合いが広がるということを見なくてはならないと思っています。

 したがって、都道府県の計画がこうした変化に十分考慮して立てられているのかどうか、国交省としても精査して、不十分だったらきちんとした計画にするよう指導すべきである、このことを述べて、また、五年後にはそういう事態が立証されるであろう、したがって、今、本当に公営住宅の建設こそが求められているということを改めて述べて、終わります。