国会会議録

【第166通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2007年5月23日)

政府が今回の法案を、耐震偽装事件の再発防止策の仕上げの段階と位置づけていることに対し、姉歯事件以降も偽装事件が相次いでいること、事件の被害者救済が解決していないことなどあげ、「建築行政の失った信頼を取り戻すには、これでよしという状況にはない」と指摘。

西銘委員長代理 穀田恵二君。

○穀田委員 国交省は、耐震偽装事件の再発防止策としては、被害者救済対策である本法案が、まず建築確認制度、それから建築士法に続く第三弾の仕上げ段階と位置づけています。しかし、建築確認検査を民間にゆだねる枠組みはそのままにして、この間何度も議論してきましたけれども、さらに安上がりの経済設計を初め、安全を軽視し、行き過ぎた低コスト競争をあおる住宅の市場化を促進するなど、抜本策としては極めて不十分であると私は考えています。結果として、事件の被害者はいまだにもとの生活に戻れず、解決していません。

 さらに、姉歯事件以降も、構造計算の偽装、不適切事例が相次ぎ発覚し、アパグループの田村水落設計、静岡の月岡設計など、ことしになってもとどまるところがありません。

 国交省が実施したマンションのサンプル調査でも、約一割が不適切なものであった。また、大きな住宅状況を見ますと、一千万戸を超える旧耐震対応の既存住宅の耐震診断や耐震改修も思うように進んでいない。

 こういうことを見ますと、まさに建築行政の失った信頼を取り戻すためには、まだまだこれでよしという状況にはない、こう考えているところであります。

 そこで、建築行政に関連して、一件だけ、例のカラオケボックス問題について、最初に質問しておきたいと思うんです。

 これは、耐震偽装事件というのは建築物の設計段階で起こる問題ですが、エレベーターなど、カラオケもそうなんですけれども、確認後の検査、維持管理の問題です。そこで、対処が迫られている問題として、違反に対して是正の行政指導が行われたにもかかわらず改善されない事態について、カラオケボックスについて、どういう現状であるのかということを最初にお聞きしておきたいと思います。

○冬柴国務大臣 平成十九年一月二十日に発生しました兵庫県宝塚市におけるカラオケボックス火災を受けまして、全国の特定行政庁に対して、カラオケボックスに関する緊急点検を依頼したところでありますが、三月末日現在で、建築基準法令への違反件数は二千九百七件でございまして、是正済みが、うち三百九十六件となっております。

 現在、特定行政庁におきましては、違反建築物の所有者等に対して、例えば一、二カ月の期限を設けて是正計画書の提出を求め、是正指導に従わない場合には建築基準法第九条に基づく是正命令を行うなど、厳正に対処を進めていただいているところでございます。

 違反内容によりましては、防火区域の設置など大規模な改修工事が必要となるものもあるために、一律に期限を設けることはできませんけれども、特定行政庁では、事案に応じ、粘り強く是正指導に取り組んでいるところでございます。

 国土交通省としましては、特定行政庁に対し、引き続き違反是正に取り組むよう要請するとともに、定期的にフォローアップ調査を行って、是正の促進に努めてまいりたい、このように思っているところでございまして、建築基準法令に関する違反を把握した件数のうち、是正したものがその一三・八%という少ないものであることはまことに遺憾でありますが、今申し上げたとおり、粘り強くこれを進めなければならないというふうに思っております。

○穀田委員 粘り強く進めなければならない、それはそのとおりなんです。要するに、全部やってしまわなあかんということだと思うんです。

 ただ、私驚いたのは、今ありましたように、是正したのは三百九十六件、一三・八%だったと。大臣は、この間は、違反には是正指導するなど厳正に対処すると答弁しました。きょうは、その意味でいうと、各地方公共団体は、改修だとか大きなところもあるからなかなか大変だと言うんですけれども、でも、問題は、九割方がやはり是正指導しても、八割七分ですか、一三・八ですから八六・二が是正していない。これは放置されれば、法令規制が意味をなさなくなります。

 この分野でなぜこんなふうに法令そのものが守られないのか、是正指導すら守られないのはなぜか、こういった問題について国交省としてはどのようにつかんでおられますか。

○冬柴国務大臣 今申しました数字は十九年三月末日現在のものでございますが、十九年二月十六日現在におけるものについては、是正済みは八十七件にしかすぎなかったわけでございます。それが三百九十六件まで来たということは、一生懸命やっているけれども、大きい数字の中でございますので、一生懸命取り組んでいるということは御理解いただきたいというふうに思います。

○榊政府参考人 実は、違反内容なんですけれども、非常用照明設備を未設置みたいなところとか、防火区画に関する違反だとか内装制限に関する違反というような形で、違反の態様に応じて、すぐできるものと、それから防火区画ということになりますと、すぐにはできずに一カ月、二カ月かかるというような工事内容もございますので、違反が把握されているにもかかわらず、それが是正されないというのは大変問題だと思いますので、それが是正されるまできちっとしたお願いをしてまいりたいというふうに思っております。

○穀田委員 今、それは態様で時間もかかると。これは大体つくるときにきちんとやっておかなあかん話です。そういうふうに言っちゃうと、一たん是正指導しておるときに、そんなことがあるんだからというふうに言っていたんじゃ、聞いている人はそんなに、自分のところはこれでええなとは思わへんとは思うけれども、ちょっと余り勧められる話じゃないなと私は思うんですよ。

 というのは、これは建築行政の一つなものだから言っているだけで、人の命と安全を守る建築物にかかわる安全規制というのを本当に機能させていく上で、一歩も引かないということが大事なので、そこは、実際の指導ではいつやるんだ、できるんだということを確認しながらも、やはり厳正に、何か甘やかすような言い方じゃなくてやらなあきまへんよということを指摘しておきたいと思うんです。

 これは私は、やはり建築行政全体の安全規制に対する、私どもみんなが問われている、そういう行政の監視もしなくちゃならぬし、行政としては、そういうことが建築行政全般にとって見直しが必要なんだという受けとめをする必要があるということだけ指摘しておきたいと思うんです。

 次に、今度の法案について、一、二質問をいたします。

 もう今までいろいろ議論されてきまして、根本は住宅の瑕疵に対する消費者保護の行政、対策であることは論をまちません。そこで、住宅供給者である販売業者や建築業者に対してそういう義務づけを行うという新たな制度を設けるものであります。

 実は、私どもも昨年の四月、耐震偽装事件の再発防止に今何が必要かということで、うちの議員団としても提案を発表していまして、そのときに、「住宅の購入者の保護を図るため、瑕疵補償制度の拡充をはかる」と提案してきたところであります。

 そこで考えなければならないのは、この制度をつくるきっかけとなった偽装事件の被害者の救済の問題です。まず、被害者の救済の問題がこの法案をつくる際に考慮されたのでしょうか。そこは局長にお聞きしたいと思うんです。

○榊政府参考人 今回の事案への対応の中ということでございますと、最も緊急かつ重要なのは、危険な分譲住宅の居住者の安全の確保と居住の安定確保でございました。居住者に速やかに転居していただきまして、その安全を確保すると同時に、建物を早急に解体して近隣住民の安全と安心を確保することは、極めて緊急性、公益性が高いというふうに認識してまいりました。

 しかしながら、売り主でございます建築主の方で瑕疵担保責任が果たしかねるということでございまして、当初よりその瑕疵担保責任が果たせるかどうかというのが不明な状況でございました。刻々と時間が経過する中で、分譲住宅の居住者にすべてのリスクを負わせることはできない、こういう状況ではなかったかと思っております。

 私どもとしてみますと、建築確認審査という公の事務の中で、結果として構造計算の偽装を発見するに至らなかったという特別な事情にかんがみまして、これを純然たる民民の問題と割り切って分譲の居住者にすべてのリスクを負わせることは適当ではないだろうということで考えまして、災害時における類似の財政措置との均衡に配慮しつつ、最大限の、できる限りの支援を行うという考え方で制度を考えたわけでございます。

 したがいまして、こういったような危険な分譲マンションにつきまして、このような考え方に立ちまして、既存の地域住宅特別措置法に基づきます地域住宅交付金を活用いたしまして、類似の財政措置とのバランスにも配慮した上で、相談、移転から除却、建てかえといったような総合的な公的支援措置のスキームを設けたものでございます。

 こうした支援の結果、各物件で、全居住者の退去、建てかえに向けた事業や検討が現に進められてきているということから見て、特別な立法による措置は必要ないと考えていたところでございます。

 現に、今回も瑕疵担保責任の義務づけという形で新しい立法も考えているわけですが、これも新しい立法措置をとるからこそ義務づけができるということでございまして、いきなり遡及適用といいますか、新しく立法するには至らなかったというのが素直な実情でございます。

    〔西銘委員長代理退席、委員長着席〕

○穀田委員 榊さん、悪いんだけれども、特別立法のあたりから言ってくれれば別にええよ。だって、前の話はもう何回も議論しておって、どんな対処をしておられるかということについて、被害者対策を講じてきたということはお互いに知っているわけだから、そういう上に立って、これは自民党もプロジェクトチームをつくって、先ほど言った、特別立法はどうだ、うちも特別立法についてこの委員会でも協議の場を設けてはどうかという話を議論してきたわけで、そこからしゃべってくれれば、別に前の方はいいんです。時間を稼いでもらうとちょっと困るんだな。

 要するに、私が言いたいのは、そういう被害を受けている人にとっては新しい制度の恩恵はない、残念ながら考慮しなかったということなんですよ。そのことだけ言ってくれればいいんです。そういうことでいいますと、災害時だとかということで、阪神大震災を初めとして、さまざまなバランスの上になっているし、遡及はなかなかできない、このぐらいですね、そこを言ってくれればいいんだ。

 そこで、私は、その意味では、今回の被害者というのは、自然災害、震災被害者とはまた違うということはあると思うんですね。明確に加害者がいる、そういう犯罪被害者としてとらえるべきだと思っています。だから、各党も含めて、特別立法措置などの救済策を提案されたりしたわけであります。国にとっても、ある意味では立法不作為の責任があると思うんですね。

 だから、今回の保険制度創設というのは、そういうもの全般として、先ほど局長からありましたように、今までそういう体制がなかったということを初めとして、立法化しているわけです。今後は保険等で安心できる、でも被害者は救済されない、その辺が残念だ、情けないと思いませんか、大臣。

○冬柴国務大臣 非常に気の毒だとは思いますけれども、先ほどもおっしゃったように、阪神・淡路大震災を我々は経験しました。甚大な、自分の所有する家、家財一切を失い、なお家族の命まで失った人もたくさんいます。そういう人に対して国家がとったものと、今回の姉歯のような特定のいわば犯罪の被害者のような立場にある人と区別して、今回つくっている法律の遡及効を認める、それはやはり難しいと思います。

○穀田委員 その気持ちといいますか、そこはお互いに阪神大震災を経験した者同士として、ただ、いわば瑕疵担保ということをつくろうというきっかけになっているわけですから、そういう瑕疵でやられた、しかもそのことが、実際に救うことができない、二重ローンに困る、こういう現状を何とかしたいと思うのもまた当然だと思うんです。

 そこで、今回の瑕疵担保責任保証制度を考える上で、礎石といいますか、基本に据えるべきだと思うのは、やはり私は、事件の背景にあった住宅の安売り競争を進めた住宅建築販売業界、それから住宅ローンを扱う銀行など、関連業界などが社会的責任を自覚することがまず必要だ。その上で、あわせて、安全規制の整備を怠った国や、確認検査で見逃した特定行政庁が役割を果たしていなかったという事実を真摯に反省すること。つまり、単に個々の企業の責任だけではなくて、その人たちだけでは成り立たない保険制度を実効性あるものにしようとするわけだから、業界ぐるみで保険制度を支え合うことだとか、国や自治体などもそのために保険制度が役割を果たすように責任を果たすことが必要だ。要は、みんなで支え合おうということだと思うんですけれども、そういう点が基本にあるんだろうと思うんですが、そこのところは、大臣いかがですか。

○冬柴国務大臣 その思想はよくわかります。ただ、この瑕疵担保責任というのは、まさに製造者あるいは売り主が責任を負うべきものでありまして、そういう人が倒産したとか夜逃げしたとか資力がないとかいう問題が生じたときに、だれが責任を負うのかという問題に尽きると思うわけです。その際に、融資をした銀行に法的責任を負わせるということは無理があるように私は思います。

 しかしながら、こういう気の毒な方に対してどうするのかという立場から、例えば、返済を猶予する、金利を減額するというような形で、その被害を受けた方の損害を軽減するということについて、それに関与した、関係した一人として金融機関がそのような手を打つということはまことに好ましいわけでありますし、我々国土交通省としてもそのようなことを奨励いたしておるところでございます。

 したがいまして、住宅金融支援機構の既往ローンの返済に係る特例措置を一昨年の十二月二十日から講じたとか、あるいは、昨年一月二十三日に各民間金融機関団体に負担軽減措置を我々は要請しまして、これに基づきまして、二月十四日に、全国銀行協会あるいは全国信用金庫協会等、五団体・機関の連名の申し合わせによって、返済期限の延長、最大三年でございますが、あるいは返済据置期間の設定、最大三年、あるいは返済据置期間中の金利の引き下げ等、そういうものを申し合わせによって決めていただき、実行していただいているところでございます。

 したがって、法的責任というのはちょっと無理があると思うんですけれども、関係した一人として、気の毒な人の損害を軽減しようということについてそのような合意がなされ実行されているということは、私は歓迎すべきことだと思っております。

○穀田委員 そう言われると、私はちょっと、前半の方は、一番最初の結論はいいんですけれども、後半の方になりますとちょっと異論がある、それは御承知のとおりです。

 というのは、私は、この問題について、たしか二〇〇五年にも質問したと思うんですけれども、そのときにも言ったんですけれども、銀行の社会的責任はどうなのかということがあるんですね。それは、ヒューザーのマンションを購入する際に、被害者の方々はどう言っていたかというと、現地見学会にヒューザーと提携した銀行が来ていて、その場でローンが可能かどうか確認して、契約と同時にその銀行とローン契約を結ぶというのがほとんどだった、このぐらいまで言っているんですよ。だから、そういう意味でいいますと、銀行というのは、瑕疵、欠陥住宅をヒューザーと一緒になって売っていたじゃないかということに現実は見えるわけです。

 私は、今大臣が、いろいろなことをやっているということで、返済の猶予だとか利子とかと言っていましたけれども、実際はどうかというと、若干の支払い猶予は確かにしたでしょう、でも、結果的にはローンの利子すらまけていないんですよ、そんなに。結局、銀行は、ローンの利子でもうけて、ヒューザーに資金を貸し付けてもうける、担保価値のなくなった偽装マンションでももうける、さらに今後建てかえのローンでももうける。被害者から見れば、まさにもうけをむさぼる連中じゃないか、こういうふうに見えちゃうわけです。

 そういう点を私は、実際、市民の目から見て、被害者の目から見て、どうかと。そういうふうに言うんだったら、法的にはいろいろと言いますけれども、逆に、この担保物件に瑕疵、欠陥があれば、何らかのリスクを銀行だってしょって、その保険の関係について一部分を背負ったっていいじゃないかというふうに思いませんか。

○冬柴国務大臣 この貸し付けは確かにリスキーな貸し付けでして、担保物件がもう毀損しちゃっているんですよ。ですから、今二重ローンとかいろいろ言っているけれども、その人たちが払えないときは、それは貸し倒れ、損失は銀行が負うわけでありまして、それが最大の責任だと思います。

○穀田委員 これをやっていると、この論は尽きないわけですけれども、そこで、先ほど言った、要はみんなで支え合うという感じの中で、これは先ほどもずっと議論になっているんですけれども、関係業界の関与の仕方について聞きたいと思うんです。

 今回の法案では、残念ながら、保険制度を業界が一丸となって支えるというスキームではないんですね。資金力のある者は、簡単に言うと、先ほど出ていましたが、信用してくれ、お金を見せてくださいということなんだ、そういう人たちは供託でもよいという仕組みだと。

 法案の中身を見ていますと、供託する場合、仮に年間三十万戸建てる場合、十年間でいうと四十五億円ですから、一戸当たり一万五千円の負担なんですね。中小業者の場合には大体一戸八万円の負担となる。

 それで、供託の場合は、先ほど来議論になっていますように、故意、重過失による瑕疵についても消費者保護ができるように、新たに設ける基金制度、住宅購入者等救済基金、仮称ですね、これへの拠出が免除される、また紛争処理機関にかけなくてもよいなど、簡単に言えば、保険制度の枠外になっちゃう。保険は掛け捨てだけれども、先ほど来大臣はおっしゃっていましたが、供託というのは、十年たてば戻ってきて、供託している間の国債やその他の利子や配当は受け取ると。これらはそのとおりですね。

 したがって、僕は、そういう意味でいうと、みんなも議論しているように、大手が実際には、当初から問題になっていた保険をつくるというところの議論から出発をして、途中から供託が入ってきたんじゃないかというふうに思わざるを得ないんですね。

 そういうあたりの経過と、そして不公平感はないのかという点について聞きたいと思います。

○冬柴国務大臣 やはり大手が、性善説をとるわけじゃありませんけれども、何十万戸を供給する能力のあるところは、そういうところでいろいろな瑕疵のあるようなものをつくればその信用自体が毀損されるわけですし、ですから、その監理についても、自分の中できちっと監理をして、瑕疵のあるようなものをつくらないという努力をするわけです。そういう人たちと、瑕疵が生ずるかもわからないという人たちとは、保険危険、要するに瑕疵というものが生ずる度合いが、割合が変わってくるわけです。したがって、自己保険、自分でこれはやらせてもらうという自由があって、僕は正当だと思いますよ。

 そして、その人たちは、故意、重過失の場合も、供託金で、先取特権、それは供託金から被害者は回収することができるわけでございまして、そこら辺から、保険と供託はバランスがとれていると私は思います。

○穀田委員 それは大臣の見解なんですけれども、もう一遍、経過の中で、なぜそういうことになってきたのかというあたりはどうですか。

○榊政府参考人 昨年の段階では、保険制度について検討するということが先行したことは事実でございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、保険ということであれば故意、重過失を外さざるを得ないではないか、ヒューザーは倒産したから問題になったのに、故意、重過失なのに、実は、新しい制度をつくったら故意、重過失が抜けている制度をつくっていることになるではないかということがございまして、保険制度トータルとして、故意、重過失も含んだような保険制度にしたいということで制度を考えていったわけでございます。

 次に、今回の法律というのは、売り主の瑕疵担保責任のある意味で徹底追及なんだということであれば、売り主がまず瑕疵担保責任を負うというのが原則でございまして、その基本的な考え方に立てば、売り主がそれだけ、みずから自分の財産でもって、自分の自己資本によって対応できるということを証明できるならば、いわば自己保険という形で供託をしていただくという法制度が妥当なものではないか。なおかつ、供託ということであれば、これは故意、重過失を含めてすべて対応できる。逆に、保険制度を盛るとそれがおっこちてしまうというようなこともありまして、保険の方にも故意、重過失に対応できるような仕組みを入れて、供託、保険が並び立つ、こういったような制度にしたわけでございます。

○穀田委員 二つ言っておきます。

 大臣は、大手は、性善説をとるわけじゃないけれどもと言っていましたけれども、私は、この負担の違いというのは随分大きいと思うんですよ。中小業者だって、私のところだってそうですね。地場で工務店をやっている人たちは、それこそ地元でそんな失敗をしたら飯を食えないわけで、ですから、そういうことはないんですよ。

 そういう意味でいうと、皆さんがるる前段で、そういう保険の関係で中小業者に対しては一定の優遇をすべきだと言っている理屈があるわけでして、それは当然なんですよ。だから、今、大手の企業だけがそういう苦労をしているわけじゃなくて、中小業者だって苦労してやっている。しかも、その額でいえば、ならせば、負担の額は中小業者の方がはるかに大きい実態になる、幾ら減らしても。そういうことがあるから、私はおかしいと言っているんですよ、不公平じゃないのかと言っているんですよ。

 もう一つ、先ほども議論になっているけれども、もともと供託と保険という問題でいえば、それはいろいろ説明はありますよ、だけれども、先進国であるアメリカだって、住宅の瑕疵担保をどうするかという問題でいけば、これはちゃんとやっているわけですから、保険であそこだって賄っているわけですから、その辺の差異はきちんと見なくちゃならぬと私は思っています。

 そこで、先ほど言いましたように、銀行の問題をもう一つだけ聞きたいんですけれども、結局、住宅瑕疵担保責任研究会報告書を見ますと、保険以外の措置を活用した制度設計における課題と基本的方向性という文章の中に銀行保証の項目があるわけですが、その結論として、「履行確保措置の選択肢に含めることについては慎重な検討が必要と考えられる。」ということで書いています。そこで、きのう、全体の部会の中ではどんな議論をされたかと言ったら、いや、一つもしていませんというのが部会長の参考人質疑での議論でありました。

 その後、省としてはどのように検討されたのかということと、もう一つ、先ほど言ったように、住宅ローンという関係から、確かに保証制度は銀行は見送られているわけだけれども、今お話ししたように、住宅ローンという関係から、今回の保険制度、故意、重過失の場合の基金制度に、保険料の一部や基金への拠出金を銀行に課してもいいんじゃないかというふうに思うんですね。その二つだけ言ってくれますか。

○榊政府参考人 瑕疵担保研究会の報告書の中でございますけれども、基本的には、銀行保証も保険も客観的に見れば余り変わりがないという部分はあるんですが、私どもの保険の場合は、指定保険法人制度ということで、検査というチェック機能と保険という機能を合わせたような形の法人ということを考えております。銀行については、瑕疵発生リスクについてのノウハウがないということと、検査をする人をちゃんとそろえられるかということが問題だということと、十年間の保証ということになりますので、彼らのBIS規制上でいえば、それがどういう扱いになるかという問題点もあるということと、信用力の高い一部の企業に限定せざるを得ない可能性が高くなるということと、特定業界の与信枠を増加させるというようなこともあるという御指摘を受けましたので、なかなか、選択肢に含めることについて慎重な検討が必要だというような結論になったところでございます。

 それから、保険料の一部負担について銀行をという御指摘がございましたけれども、本法案自体が、先ほども申し上げましたように、売り主に対する瑕疵担保責任の履行のための義務づけということでございますので、保険料の支払いなり基金への拠出も、売り主の資力確保のための保険制度の一部でありまして、あくまで売り主が原則負担することが適切ではないかというふうに考えているところでございます。

○穀田委員 では最後に、私は、売り主ということだけじゃなくて、それを保証している、住宅ローンということで成り立っているところも関係者だ、だからそこを入れたらいいということだけは言っておきたいと思います。

 そこで、最後に一つ。故意過失に起因する瑕疵に対応するための基金制度スキームについて聞きたいと思うんです。

 生保、損保において、不払いという社会問題が生じています。指定保険法人の仮に払い渋りだとか瑕疵の過少見積もりなどを生じる心配はないんだろうかと、素人からしますと、思いますね。それで、査定をきちんと行う保証、それから査定の公正性を保つための研修や査定基準の公開、こういったことなどを含めた考え方はどうなっているか。そして、保険法人の監視など具体化すべき点が今後あるんじゃないか。その点についてだけお聞きしておきたいと思います。

○冬柴国務大臣 住宅の瑕疵担保責任保険法人というものは、瑕疵担保責任の期間である十年以上にわたり有効な保険を長期的、安定的に扱っていくべき法人でございます。

 このため、保険法人について、国土交通大臣が審査し指定することとしておりますが、指定に当たりましては、検査体制や査定体制など、保険業務を適切に実施することが可能なものとなっているかどうか、保険業務を的確に実施するために必要な財産的基盤を有しているかどうか等の観点から十分な審査を行っていこう、そのようにしておるところでございます。

 さらに、保険引き受け、保険金支払いに関しましても、適切な保険料の徴収、適正な保険金の査定等が行われているかどうかについて、適宜報告を求めたり立入検査を行うなどして、しっかりと監督を行ってまいりたい、このように思います。

○穀田委員 終わります。