国会会議録

【第166通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2007年5月15日)


○塩谷委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 情報化社会の進展のもとで、インターネットで測量成果を提供できるようにするなど、今回の法改正は当然のことだと考えています。

 私は、国土地理院の役割などについて質問します。

 この測量法改正案とあわせて、地理空間情報活用推進基本法案が議員立法で審議されています。藤本国土地理院長は、この二つの問題についても日刊建設工業新聞などでインタビューに答えて発言をしていますから、そこを少し聞きたいと思うんです。

 これらの法案ができることによって、国民サービスの向上がどのように図られるのか、国土地理院がどのような役割を果たすのか、この点について、国土地理院長にまず聞きたいと思います。

○藤本政府参考人 今回の法改正は、デジタル化社会への対応ということが一番のメーンでございます。

 そういう意味で、今回の測量法の改正におきまして、具体的には、一つは、地理院の最新の地図、これがインターネット上で手早く容易に入手できるようになるということが一点目でございます。

 それから、営利目的でも、先ほど来申し上げておりますように、インターネットの背景図ですとかあるいはハンディーナビの背景図、こういうものにそのまま私どものつくった地図を活用していただけるという道も開こうということでございますので、いろいろなビジネスチャンスがまた出てくるのではないかということがございます。

 それから、内部利用につきましては、そのまま使うものについては、従来は複製の承認手続が必要だったのですが、それを不要としようということでございますので、地図をいろいろ活用したいというふうな個人的な御利用をされる一般の皆さんあるいは地方公共団体等の事務の軽減、あるいは容易に入手できる、このようなことになろうかと思います。

 それから、ワンストップサービスの実現ということでございますけれども、これによりまして、ユーザーの皆さんあるいは測量会社や地図会社の皆さんが、地理院のインターネットの窓口に来れば、ワンストップで他の機関の作成した地図も活用できるようになる。

 そんなことで、いろいろな形で利活用が進むのではないかというふうに思っております。

○穀田委員 今るるお話がありました。それは今度の測量法についてはそうなんだけれども、今私が聞いたのは、地理空間情報活用推進基本法案との関連でどうか、そこはいかがかという点が少しないと思うんだけれども。

○藤本政府参考人 いろいろな情報通信技術が発達をしてまいりまして、流通する情報も、非常に膨大な情報が入手できる、あるいは送ることができる、こういうふうになってきておるわけでございます。

 そういう意味で、そういう大量の情報をどういうふうに分類、整理するか、あるいは有効活用するか、そのためには、地図というものをベースにしていろいろな情報を整理していく、これが非常に有効だというようなこともありまして、GISシステムというようなものも随分使われるようになってきたということだと思います。

 ただ、その場合に問題は、そういう地理空間情報を皆さんが十分にお使いいただくためには、そういうデジタル地図というものが十分流通をしないといけない、あるいはインターネットの活用が十分されないといけない。そういう意味で、地理空間情報の活用と今回の測量法の改正がセットになりまして、地理空間情報の活用を側面から支援するという形になるのではないかというふうに思っております。

○穀田委員 そこで、私は、測量と地図という問題についての理念というか、戦前と戦後の違いというか、その哲学について少し聞きたいと思います。

○藤本政府参考人 余り戦前のことに詳しくないのであれでございますけれども。

 地図につきましては、明治維新以来いろいろな組織の変遷がございますけれども、たしか明治の十七年ぐらいだと思いますけれども、参謀本部の測量局、ここに地図の作成が一元化されまして、そして、第二次大戦が終わるまでそこが所管をしておりました。その間は、軍事的な観点から、みずから測量をする、あるいは地図を作成する、こういうことでございまして、地図につきましても、その機密性が重視されたのではないか、こう思います。そんなことから、公開という部分について、不完全な部分が随分あったのではないか。具体的にどこがどうというのは、ちょっと今持ち合わせておりません。

 戦後、直ちに内務省の地理調査所という形に改組されました。軍の組織から内務省の組織に移管をされました。その後、いろいろな変遷をたどりまして、昭和三十五年に現在の国土地理院という名前になっておりますけれども、性格は同じでございます。

 特に、昭和二十四年に測量法が制定をされました。これによって、測量とかあるいは地図作成に従事するための資格制度が確立される。これは、当時は軍部が自分たちでやっておった、今度は民間の皆さんができるようにということで、資格制度が完備されたということでございます。

 それで、この測量法によりまして、地図につきまして、あるいは測量につきましては、測量の正確さ、そして重複の排除、無駄な測量をしないように、これが二つの大きな眼目でこの測量法ができております。そういう形で、地理院が一番基本になる基本測量をやる、公共団体等が公共測量を行う、こういう役割分担を行いながら、広くその結果を公開するということで、性格が変わったのではないかというふうに思っております。

○穀田委員 今お話がありましたが、基本的に地図、測量、そういうものがやはり戦前と戦後で大きな性格の違いがあるということだけは確認しておきたいと思うんです。

 次に、先ほど説明がありましたが、基盤地図それから位置情報などの基礎的インフラ、これを整備していくのが国土地理院の役割ということですが、基本法について、少し国交省に聞きたい。

 基本法の中に、人工衛星を利用して位置情報等を取得する衛星測位の利用の促進、つまり準天頂衛星システムがあります。国交省もこの計画に参加しているが、これはどういった内容でしょうか。

○佐藤政府参考人 準天頂衛星システムは、日本付近で常に天頂方向に一基の衛星が見えるように、都合三基の衛星を準天頂軌道に配置した衛星システムによりまして、GPSシステムを補完ないしは補強し、山陰やビル陰等に影響されず、高精度な測位を可能とするものでございます。

 このシステムは、GPSの利用に制限が生じるなどの不測な事態においても十分な測位を可能とする、将来的な自立性を持った衛星測位システムの構築に資するとともに、災害時等における救援ないしは対処作業において、被災地点などの位置情報の把握に有益な、官民の安全、安心にかかわる社会基盤として大きく期待されるものでございます。

 国土交通省におきましては、列車など高速移動体における測位を高精度かつリアルタイムで可能とするための技術開発及び電離層や大気の影響を補正して精密測量を可能とする技術開発等を行っているところでございます。

○穀田委員 この準天頂衛星システム計画の事業費は全体で幾らか、そして国交省の負担は幾らか。

○佐藤政府参考人 平成十八年三月の測位・地理情報システム等推進会議、ここで、準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針が取りまとめられたところでございます。

 この基本方針におきまして、まず第一段階といたしましては、一基目の衛星、技術実証、利用実証のための衛星打ち上げを行います。その結果を評価した上で、追加二基の準天頂衛星を打ち上げるような第二段階のシステム実証段階に移行する計画となっております。

 第一段階におきましては、準天頂衛星初号機のプロジェクト経費は、約三百三十億円と見積もられております。なお、このほかに、平成十五年度からの研究開発費の累計が約四百二十億円と見積もられており、これらを合計すると約七百五十億円となります。

 現時点で、第二段階までの準天頂衛星三基体制のプロジェクト経費の正確な見積もりを行うことは困難でございますが、昨年三月に試みの概算が行われております。三基体制全体で約九百五十億円との数字がございます。これに研究開発費の累計約五百億円を合計いたしますと、約千四百五十億円となります。

 そのうち、国土交通省の平成十八年度までの合計の予算額は、約二十一億円となっております。

○穀田委員 莫大な費用を投じたプロジェクトだということがわかります。

 先ほど説明がありましたけれども、もう一度そのことを踏まえながら聞きたいと思うんです。

 現在は、測地基準点測量などはGPSなどを利用して行っていると。先ほどあったように、いろいろなところが見えるんだということも言っているんですが、見えないという意見の人たちもいるんですね。この衛星を利用して、特にメリット、先ほどの話はわかりましたが、その上でメリット。あわせて利用する可能性ということについて、先ほど将来性があるんだという話がありましたけれども、現在もそういう見解ですか。その可能性と見解についてお聞きしたい。

○藤本政府参考人 基準点測量ということでございますので、私の方からお答えさせてもらいます。

 先生御指摘のように、基準点のいろいろな測量をする際に、最近ではGPSを使うケースが非常にふえてきております。ところが、先ほど来のお話のように、都市部とかあるいは山合いのところ、ビルや急峻な地形の厳しいところ、そういうところではGPSからの信号が遮られるわけでございます。それによって、受信のできる、見通し線上にあるGPSの衛星の数が少なくなる。この結果、少なくとも四つぐらいのものが見通せないとだめなものですから、測量できる時間が制限をされる、あるいはGPSが使いにくくなるというふうなことがございます。

 準天頂衛星がもし上に上がりますと、ほぼ天頂に常時もし一つあるとすれば、それだけそういう障害の影響が少なくなってくるということになろうかと思います。そういう意味で、測量という立場でいえば、測量が可能な時間がふえて、作業効率は高まるということがございます。

 また、もう一つ、準天頂衛星がもし仮にあるとすればどういう使い方ができるかということでありますけれども、GPS測量をいろいろなところでやります、これはある程度補正をしないといけない、その補正の信号をそれを使って皆さんにお届けをするというふうなことも可能性としては技術的にはあり得る、そういうふうな利活用の方法はあるのではないかというふうに思っております。

○穀田委員 上の方にある衛星がふえてGPSを補正し、そして信号等については補強できるということですね、簡単に言えば。

 しかし、測位精度は現行のシステムで余り支障はないということですか。そこはどうです。

○藤本政府参考人 先ほど申しましたように、いろいろな測量をする場合に、GPSだけで測量するわけではないので、GPSが使いづらいところは従来のトータルステーションとか、いわゆる望遠鏡のようなものを使いまして、見通し線と角度をはかって測量をする、そういうやり方を併用したり、いろいろなやり方をすることになろうか、こう思います。

○穀田委員 このシステムの状況について、大体十省庁が参加しているんですけれども、それは、皆さんのところでいくと、国土交通省は、この「準天頂衛星システムに関して」という報告の中において「各省庁として、S帯測位補強・通信の整備をする必要性の有無」というところには、「なし」こう答えているんですね。そして、「測位精度は現行システムで支障なし、通信も既存のシステムで十分」だ、こういうふうに言っているんですね。

 ですから、各省庁も、十省庁のうち余り必要がないと言っているのが圧倒的なんですね。だから、さして、それだけ金をかけてやる必要があるのかということだと私は思っていまして、余り役に立たないというのが現実ではないかと思っています。

 〇一年に、日本経団連が、宇宙の産業化ロードマップというところで提案したのが発端でありました。ねらいは衛星を使った放送通信事業、総事業費二千億円、民間が半分を負担する話だったのがもともとの話だったんですね。

 ところが、インターネットや地上デジタル放送網の普及で計画が瓦解をする。六年の二月には、もう民の側は撤退を決定する。結局、測位だけに絞った衛星を一基打ち上げて、費用は先ほど言った三百億円、全額国が負担するということになっちゃった。

 だから、その意味では、余り利用のめどがないこういう事業に参加すべきでない、こういうことだけに金を使うようなプロジェクトはやめた方がいいと私は思っているんですが、大臣にそこだけ聞きたいと思います。

○冬柴国務大臣 私は、ニュートラルにこの問題を考えますが、ただ、今日本で衛星測位というものは本当に普及していますけれども、これはアメリカのGPSをただで使わせてもらっているんですね。それが第一点あります。

 それから、ヨーロッパも測位衛星ガリレオを二〇〇八年に運用開始の予定ということで現実に進めている、そういうことが背景にあります。

 問題点ですけれども、ただで使わせていただいているGPSは、常に日本の上空にあるわけではない。場所や時間帯によっては、精度劣化や測位不能が発生する場合がある。そして、GPSに不測の事態が生じた場合、例えば、アメリカですから、アメリカの考え方によって、ただで使わすということをやめるということだって自由であると思いますが、日本の衛星測位が機能停止してしまう、そういう背景があると思います。

 そこで、準天頂衛星システムは、GPSシステムを補完、補強して、山陰やビル陰等に影響されずに高精度な測位を可能とする、常に日本の上空に衛星がとどまるために三基の衛星が打ち上げられるわけですが、平成十八年三月の測位・地理情報システム等推進会議で取りまとめた準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針におきましては、第一段階として一基目を技術実証、利用実証のために打ち上げて、その結果を評価した上で、追加の二基を打ち上げるような第二段階のシステムの実証段階に移行する計画というふうにしているわけでございます。

 したがって、国土交通省が担当する高精度測位補正に関する技術開発を確実に進めることにより、準天頂衛星システム計画の着実な推進に協力はしてまいりたい、こういうふうに考えております。

○穀田委員 アメリカの思惑は思惑でありまして、ヨーロッパでもちゃんと独自にやっているということは、それはあるんですよ。それはわかっているんですよ。だけれども、そういうものと協力してどうするかということはよく考えなきゃあかん。アメリカがただでやっているのは、ただでやっている理屈があるわけで、うまく後でやろうというふうな。

 最後に一つだけ質問したいと思うんです。

 そういう意味では、国土地理院の役割はすごく重要だと思っています。定員削減計画がありまして、その合理化計画の中に外部委託というのがあります。結局、業務量を減らすということになるんでしょうけれども、ふえるわけですね、業務量は。しかし、この五年間の人員削減計画で経費はどのくらい削られるのか、減らす人件費は幾らで、ふえる委託費は幾らかということについてだけ、最後にお聞きしたいと思います。

○藤本政府参考人 行政減量・効率化有識者会議というところの検討がありまして、政府全体の方針といたしまして、平成十八年度から五年間で七十人の定員を削減する、こういうふうになっております。

 こういう中で、定員の厳しい中で多様なニーズにこたえていくということで、業務の合理化ですとか外部委託の活用ですとか、あるいは電子処理の推進ですとか業務処理の集中化等々で、効率的、効果的な業務の遂行に努めていきたい、こう思っております。

 それで、先生御指摘の、減員分の人件費がどれぐらいで、それに関係するコストはどれぐらいだ、こういう御質問でございます。

 減員分の人件費の削減額、あるいはそれに対応した形でいろいろ外部委託等をやっていくための費用、これにつきましては、例えば削減される人員の役職はどうであるのかとか、あるいは外部委託等の業務の内容をどうするのか、どういう割合にするのか、そういうことによっていろいろ変化をしてまいります。

 そういう意味で、直ちに算定することは難しいわけでございますけれども、いずれにしましても、限られた予算、人員の中で、与えられた責務を精いっぱい全うするように頑張ってまいりたいと思っております。

○穀田委員 算定できないことはないんです。大体こういうめどでやっているという、人件費削減をやってくるから方針が出るわけで、私は、実際はそうやって定員は削減するけれども、外部委託して仕事をやって、経費全体は減らないということは言っておきたいと思うんですね。

 だから、そんな経費、当たり前の話であって、仕事はふえるわけだから、きちんと使ってよろしいと。そういう話の方で、準天頂衛星プロジェクトなんかは膨大な金がかかるんだから、そっちの方をやめたらええやないかということを言っているわけですよ。

 以上です。終わります。