国会会議録

【第166通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2007年3月28日)

 高知空港での全日空ボンバルディア機胴体着陸事故などを踏まえ、衆院国土交通委員会で、 航空安全問題の参考人および政府に対する質疑が行わた。

○塩谷委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 日本共産党の穀田です。

 参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございました。座って質問させていただきます。

 私は、今回の胴体着陸についての認識を出発にしなくちゃならぬのじゃないかと思っているわけです。といいますのは、やはり危機一髪であって、大惨事寸前だったということが大事だと思うんですね。そういうことがあったらどうなっていただろうということについて、しっかり思いをいたしながら私どもは対応をしなくちゃならぬと思っています。

 そこで、最初に、国土交通省に一点だけ聞きたいと思うんです。

 高知県知事と県民は、ボンバルディア機に対して大変不安を抱いています。県議会さらには南国市議会は、国は事故原因の早急な究明を図り、代替機材の導入を含む万全な指導監督を求める意見書を採択しています。それをどう受けとめますか。

○谷政府参考人 今回、このような事故が発生したということで、ボンバルディア機が就航しております地元の皆さん方が非常に当該機に対する安全性、信頼性に対して不安を感じておられるという点については、十分理解するところでございます。

 これにつきまして、今回まだ事故原因がはっきり確定したわけではございませんけれども、とりあえず、前脚が出なかったということの原因につきましては、一応問題部位が確定しておりますので、こういったところに対する点検等の対策は既に実施いたしまして、まず同様の、同種のトラブル、事故が発生するということはないのではないかというふうに考えております。

 また、これまで同機で発生しておりますトラブルにつきまして、一つ一つその状況と、それからその原因を究明いたしまして、対策あるいはその再発防止策を講ずるということについて、メーカーはもちろん、それから、国内で運航しておる運航者におきましても、そういった対策の徹底をしておるところでございますので、一応、そのダッシュ8―400型機の安全性につきましては、それなりのレベルを維持しているものというふうに考えております。

○穀田委員 余り煮え切らぬ話ですけれども、参考人の河内さんと杉浦さん、今の国交省の発言についてどう思われますか。

○河内参考人 機種を選定するというのはエアラインの経営者の判断でありまして、国交省がこの機種をやめろとかそういう指示をするのは、私はむしろ望ましいことではないと思います。

 最終的には、お客さんがみんな嫌がってその機体に乗らなくなれば、当然経営者は判断すると思いますので、安全というものを乗客がどう判断するか。例えば、高知空港から大阪へ行くのに、飛行機だけではありません、船もあれば汽車もあります。そういうふうに、もし乗客の方で決心をしてもう飛行機には乗らないんだと思えば、当然経営者の判断も変わると思いますが、私は、その辺はそういうバランスで決まるものだと思っていて、国が指示をするのが望ましいとは思いません。

○杉浦参考人 私は、やはりこれだけ国民が不安を感じているわけですから、安全だというふうに納得させるというのはなかなか難しいのではないかなというふうに思います。ですから、当面、やはり中期的な伊丹の発着枠の問題を解決しないといけないと思うんですが、この問題は空港政策全体の問題なので、大変大きな問題だと思います。

 ただ、日本は、残念ながら、安全問題はその中だけで解決しようという意識が大変に強くて、これはなかなか本来の解決にならないのではないかというふうに思いますので、やはり今、国民の一人の命が大事だということを考えるのであれば、空港政策にも何らかの修正をするぐらいの踏み込んだ対応をやらないと、なかなか国民の理解というのは得られないのではないかなという気がいたしますので、やはり本来的には伊丹の発着枠の問題が安全の問題との中で解決をされていくといいますか、整合性をとった形で解決されていく方が望ましいのではないかというふうに私は思います。

○穀田委員 河内参考人にお聞きします。

 陳述でも、この高知空港の事故では、心配していた機体の心配していた箇所でトラブルが起きたという点が気がかりだとおっしゃっていました。さらに、設計、製造、運航にわたる経験不足とのお話がありましたし、久保参考人もやはり同じように、大手ほどの技術力を持っていないということだ、こうおっしゃっています。

 河内参考人のその根拠といいますか、いわばどの点が、なぜ心配していたことがそのとおりになったのかという意味をもう少し詳しくお話しいただくのと、それから久保参考人にも、技術力の比較というのはどこで見るのか、そこをちょっと教えていただけますか。

○河内参考人 私は報道による情報しか持っていませんので、航空局がボンバルディア社に対して異例の申し入れをするくらいやはり気になったという、既に航空界では気になっていた機種で、車輪は特に気になっていた問題であるという点です。

 それが起こるとなぜ私は気がかりかというと、事故を防止するというのは、どこを防止したら事故にならないかというのは非常に難しい問題で、ある一点を注意するとほかを見過ごしてしまうということもあり得るわけで、注意力をどこかに集中するとかえって危ないということもある。

 しかし、この問題は、今は逆に、ここに問題が起こりそうだから気をつけなさいと言っているのは比較的防止しやすい状況なんですが、にもかかわらず、するっと抜けてそこで事故が起こってしまったという点で気がかり、従来と違うという意味です。

○久保参考人 技術力が弱いんじゃないかとさっき私が申し上げましたのは、ボンバルディアというよりはむしろ運航しているエアラインのサイドですね。全日空にしてもJALさんにしても、しっかりした技術陣を抱えてやっておられるわけですけれども、どうしても、グループ会社といってもそこに派遣されている人数は少ないとか、それから、世界的に見ますと、余り技術なんか置かないで運航しているリージョナルのエアラインも多いわけですね。そうすると、きちっとメーカーとやり合って改善を強く求めていくベースになる、何が悪いのというところがメーカーに伝わりにくい。

 ボンバルディアの技術力については私はちょっとよくわかりませんけれども、文化の違いというのを先ほど言われていますが、私がいろいろなメーカーとおつき合いした限りでは、そんなに安全を軽視しているといいますか、やむを得ないと割り切っているようにも思わないんです。例えば私の経験で、エアバス社というのはなかなか初めは話がかみ合わなかったんですけれども、やはりしっかり話し込んでいくとわかってそれなりに対応してくれるというのはその後経験しました。

 多分ボンバルディア社も、こちらがきちっと状況をよく把握しながら強く働きかけていけば、今出ているような問題は解決できない問題だというふうには基本的には思っておりません。

○穀田委員 次に、辻村参考人にお聞きします。

 再三参考人は情報共有という話をしていました。一点だけ、このボンバル社はDHC8シリーズで胴体着陸が過去に七件あった、そういうことについて全日空の幹部はその記者会見を副社長が来て行ったとき初めて知ったというふうな事態なわけですけれども、ボンバル社のこういう姿勢についてどう思われますか。

○辻村参考人 これは冒頭の御報告でも申し上げましたけれども、我々協会といたしまして、各社共通のそういった安全対策向上に努めております。それで、個別のどういった機種を採用するかというものは、やはり個々の航空会社の高度な経営判断であるということだと思っております。それで、私どもは、少なくとも航空各社が安全に運航できないようなものを飛ばすということはないというふうに思っております。

○穀田委員 余りかみ合ってない感じがしますけれども、要するに、情報を共有するというのが事故をなくす上でも安全という問題でも決定的だということをお話ししたかったわけですね。そういう点をもう一度確認だけしておきたいと思うんです。

 では、杉浦参考人にお聞きします。

 実は先ほども、自分の命を担保にして安全を高めていくということについては私もどうかなと思うんですね。その前にもう一つは、対応について真剣さが欠けるということもお話がありまして、一つの飛行機で独占していて飛ばしているというときは、逆に言うと、安全に飛ばす、より安全にという努力が必要だという見解は、私、とても大事だと思ったんですね。

 そこで、聞いてみますと、例えばエアーニッポン、エアーセントラル、エアーニッポンネットワーク、エアーネクストの四乗員組合は、どうもこれは最初からおかしいということで、この飛行機に対してふぐあいを随分指摘していたみたいです。〇六年の春闘以来一貫して要求していたようですが、特に、あわせて整備体制についても言及しているんですね。

 ジェット機の場合は一フライトごとに整備士が行う、これは飛行間点検というんですか、これが実施されているが、この同型機は航空当局が安全が高いとして行われないことを承認している。ただ、そういう中で、十五カ所の飛行場のうち整備士が常駐しているのは五カ所に限られていて、点検は仕業前と最終便のみだということで、これは改善の必要性があるんじゃないかということを乗員の組合として随分要求していると思うんですね。

 私は、最低限こういったことについて今改善できる一つ一つの手だては打つべきじゃないかと思うんですが、その点の御見解はいかがでしょうか。

○杉浦参考人 組合からそういう御指摘があったというのはちょっと私は知らなかったんですけれども、やはり安全基準というのはなかなか簡単に判断することは難しいんだと思うんですね。ですから、何をやれば万全かということの指標というのはなかなか難しい。

 それから、一般的には、コストを削減すると安全性に響くんじゃないかという御指摘も一部にあるんですが、私はやはりこれはエアラインの考えだというふうに思うんですね。

 といいますのは、世界で今、格安会社で大変大きくなっているサウスウエストとかライアンエアとかそういう会社は、人数もすごいんですけれども、安全性も確立をしている。今、サウスウエストは年間八千九百万人ぐらい運んでいますけれども、一九七三年以降、乗客は一人も亡くなっていない、墜落事故はゼロだというようなことがあります。片やバリュージェットのように、安く飛ばすために整備費も削って、それで事故を起こしたという会社もあります。

 そういう点からしますと、コストと安全性というのは、必ずしも密接な関係があるだけではなくて、ここに経営の考え方というものが大きく作用しているんだと思いますので、やはりその部分だけをしっかり考えた上でのコストの合理化とかあるいは経営ということをやっていただかないと困る業界だなというふうに思います。

 ですから、今の御質問で、具体的にどこの空港に整備士というのは、正直申し上げて、私はそれで安全性が一〇〇%になるかと問われましても、ちょっと私には大変大きな課題なので御勘弁いただきたいと思います。

○穀田委員 おっしゃるとおりでして、個別の問題を聞いたのはちょっとあれでしたけれども、私の趣旨は、参考人からお話があったように、やはり安全に飛ばすという意味での最大限の努力、この点でまだ可能性がある、こういう点はまだできるというのは、すべからく努力をしてとことんやるべきだという考え方を私は持っているものですから。

 その上で、最後にもう一度、杉浦参考人に聞きますが、今出ましたコストと安全性という問題です。

 これは、私は当局を通じて杉浦参考人の著書も若干見せていただきました。その点で、規制緩和と安全性の問題、コストと安全性という問題はとても不可分の問題だと私は思っています。特に運輸分野における事故が多発していまして、JRの福知山脱線事故、それからJALのトラブル、それからトラック、バス、タクシーなど。

 参考人の著書では、「本来は運航の安全性に支障がない範囲で認められるキャリー・オーバー制度だが、危険を冒すケースにも用いられるようになったのは困ったものである。」こう書いていますし、航空自由化と予備機が消えた問題なども論じておられます。

 私は、JRのときにもJALのときにも質問しましたけれども、はっきり言って何が問題かといいますと、やはりもうけ第一と公然と言っているわけですよね、私は何度もJRのときにやりましたけれども。それから、こう言ってはなんですが、JALも一番最初にもうけ何億円体制ということをばんと掲げる、こういうのが一なんですね。二じゃないんですよ、一なんですよ、いつも。

 そういうところに、私ははっきり言って問題の所在が出てきてやしないかということを思いまして、今日の状況にも影響していないだろうかと規制緩和について疑念を抱くんですが、その辺の御所見を時間の範囲内で。

○杉浦参考人 それについては、ちょっと一時間ぐらい本当はいただきたいんですけれども、一言でというのはなかなか難しいと思うんですが、自由化になるから安全性が損なわれるというのは、そういう側面もあるとは思いますが、やはり短絡的だというふうに思います。

 たしか、運輸省時代に国交省さんも、日本の航空自由化に反対する理由の一つにそれを掲げていたと記憶しておりますが、現実に世界の航空会社を私が調べたところ、これは本に書きましたけれども、アメリカでもヨーロッパでも、自由化をやった後、安全率はむしろ高まっているんですね。これは、自由化をやったから高まったのではなくて、自由化をやっても安全率は高まっているというようなことからしますと、航空自由化をやれば安全性が損なわれるというふうに結論を出すことは、ちょっと私は短絡的だというふうに考えているんです。

 でも、やはり今先生がおっしゃるような側面があることは事実でありますので、そういう点をきちっと踏まえながら自由化を進めていかなくてはいけない。ですから、安全規則と経済規則をはっきり分けて、経済規則を自由化しながら安全規則は確認をしていくという作業も必要だと思います。

 それからもう一点は、おしかりを受けるかもしれませんけれども、このままの日本の航空会社の体質ではやはり海外の航空会社とまともに闘っていけない。ですから、私は、自由化の中で波に洗われながら安全性を、体制を確立していかないと、日本の航空会社の将来はないというふうに思うんですね。

 海外の格安会社でも、成功したところは、ビジネスモデルとしての利益を出す方法と同時に、安いコストで安全性を確立するということを両立した会社だけが生き残って繁栄をしているということから考えますと、これはやはり日本の航空会社に与えられた、あるいは日本の利用者に与えられた課題だというふうに思いますので、このあたりはぜひ今後も議論を深めていただきたいなというふうに思います。

○穀田委員 貴重な御意見をありがとうございました。

 私、事故が起こったその日の昼にちょうど質問をしましたし、理事会ではボ社の参考人質疑を要求しましたけれども、今のお話があって、いよいよ来てもらって直接お伺いしたいなということを述べて、質問を終わります。