国会会議録

【第160通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2007年2月21日)

 先月1月20日、兵庫県宝塚市のカラオケボックス火災で、高校生ら3人が死亡、5人が負傷。国土交通省などが緊急点検と結果の報告を、地方自治体に求めていた。建築基準法では、防火設備や排煙設備や避難路など防火対策の最低基準を定めている。県の中には、 6割〜7割が建築基準法に違反し、消防法の違反ではさらに多い県もある。「これほどまでに、法違反が横行し、法律が守られていない事態は深刻」と対処を求めた。

○塩谷委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 私は、大臣に質問をします。

 冬柴大臣は所信で、安全、安心の課題に取り組むことを述べました。国土交通省の二〇〇七年度予算の説明などを見ると、国際競争力の強化を一番目に掲げています。〇六年度は、集中豪雨やJR尼崎事故、耐震偽装などがあったことも影響したのでしょう、安全、安心を筆頭に掲げていたことと比べると、いささかちょっと方向が違うんじゃないかなと私は思ったわけです。

 行政の本来の役割としておろそかにしちゃいけないという立場から、安全、安心の課題、建築物の安全に関して幾つか質問します。

 まず、カラオケボックス火災事件です。

 去る一月二十日、兵庫県宝塚市のカラオケボックス、ビートで火災が発生し、高校生ら三人が死亡、五名が負傷するという痛ましい事件がありました。哀悼の意を改めて表明したいと思うんです。なぜ火災事故が起きる前に防ぐことができなかったのか、これはだれもが感じることなんです。建築物の防火は建築基準法や消防法で厳しく規定されているはずなのに、どうなっているのか、規制制度に問題があるんじゃないかと考えてしまうわけです。

 この建築物は、鉄骨づくりで地上二階建て、事務所兼倉庫として一九八一年に建築確認されたものでした。しかし、新聞やテレビで皆さんも御承知のとおり、カラオケボックスへの変更届けはなされていなかったと言われています。こういう無届け営業や防火避難規定を初めとする建築基準法令に違反している事例はほかにもたくさんあるはずです。全国にあるカラオケボックスを調べて、緊急に対処すべきだと私は考えます。

 国交省は、一月二十三日に、各都道府県に対し緊急点検と点検結果の報告を要請しています。そのまとめた内容は現在どうなっているか、お伝えいただきたい。

○榊政府参考人 御指摘のように、一月二十三日に、全国の特定行政庁に対してカラオケボックスの緊急点検を依頼いたしました。基準法令への適合状況について、二月十六日までに点検結果の報告を求めていたところでございます。

 現在、報告内容に不備がございまして、内容の確認を行っているところでございまして、早急に点検結果を取りまとめまして、公表いたしたいと思っております。

 それから、未点検の物件につきましても、引き続き点検を実施いたしまして、点検が完了した段階で改めて公表する予定であります。

 なお、いわば速報値的といいますか中間報告的な感じで申し上げますと、報告のありましたカラオケボックスが六千三百件ございまして、そのうち基準法違反が約四割でございます。口頭も含めて是正指導を行った件数がその九五%という状態になっておるところでございます。

○穀田委員 ぜひ正確を期していただいて、命と安全にかかわる問題ですから、それは特定行政庁とよく突き合わせてやっていただきたいと思うんです。

 今、中間報告ということで速報値とありましたが、大体六千三百件のうち約四割が違反していると。これは、新聞報道などを私も丹念に追ってみますと、この事件があった兵庫県などでいいますと、大体八割近くは違反しているんじゃないか、こう言われている、もちろん正確の問題はありますから。埼玉では、報道によると、これはまた六割と。これは多分、建築基準法でこの程度ですから、消防法の関係の違反というともっと多くなる可能性が、普通はそうあるのではないかと推測できるということであって、驚くべき数字なんですね。これほどまでに建築基準法違反が横行している。法令遵守の形骸化は深刻だと思うんですね。

 建築基準法令はあるけれども、それが守られていないという実態が広範にある。こういう建築物の安全がないがしろにされている事態というのは深刻でして、今、是正その他ということを言い始めましたけれども、大臣はこの問題について、大枠、基本的な対処といいますか、どうするつもりか、お答えいただきたい。

○冬柴国務大臣 今答弁がありましたように、六千三百件中二千五百件が違反があったということは驚くべきことでありますが、そのうち九五%については是正を命じておりまして、その結果を見たいと思いますが、大枠でというお話もいただきました。

 そういうことで、緊急点検において建築基準法令に違反する事項が認められたものにつきましては、関係特定行政庁を通じまして、当該カラオケボックスの所有者等に対して、違反の態様に応じて速やかに是正措置をさせるなどの指導を行ってまいりたいというふうに思います。

 国土交通省としましては、今回の緊急点検の結果を早急に取りまとめるとともに、今後、特定行政庁による違反是正の状況につきましても、逐次把握をし、そして皆様方に公表していきたい、このように考えております。

○穀田委員 違反是正は当然であります。ただ、これは、今ようやく調べて、報告でいいますと、調べた瞬間に是正指導しているという経過もあるんですよね。今まであったものをずっと指導してきて、やっておったという話だったら別に、直っていないという問題がどうなっているのか、こうなるわけで、話としてはえらい調子いいわけですね。つまり、六千ある、二千五百がひどい、そのうち九割は是正した。そうすると、国民が見れば、では今は大丈夫なんだというふうにも聞こえるし、しかし、今すぐやったばかりだなというところもあるし、その辺はもう少し丁寧にやらないと、何か大丈夫だみたいな聞こえ方をするようでは困るんですよね。それは大臣も共有すると思うんです。

 私、指導や是正の強化というのは当然なんだけれども、この分野における建築行政の抜本的改善が必要だと思うんです。というのは、なぜここの分野で法令違反が多かったのかということや、見過ごしたのかとか、原因究明はどうだったのか、是正を指導してきたけれども従わなかったのかというあたりについては、これは、たくさんの人が住んでいるというふうな、マンションや住宅とあわせて、たくさんの若い人たちも含めて出入りをする、ある意味では、公共的に近いと言ったらしかられますけれども、そういう建物ですよね。だからこそその原因究明というのは必要だということを私は特に言っておきたいと思うんです。

 そこで二つ目に、アパの耐震偽装事件について聞きたいと思うんです。

 一昨年の十一月十七日、姉歯元建築士による耐震偽装事件が発覚し、建築物の安全性が大問題になりました。その後、福岡、札幌など、姉歯事件以外での偽装も発覚し、姉歯事件がまさに氷山の一角だったことが明らかとなったわけです。何度も言うように、国民の建築行政に対する不安と不信は広がったと思うんですね。

 こうした中、去る一月二十五日、新たな耐震偽装が発覚した。アパマンション株式会社が建築した京都市の二つのアパホテルで構造計算書の偽装及び耐震性の不足があったと発表されました。いずれも富山県の田村水落設計が構造計算したものであったわけです。偽装があったのは、主にアパグループが建築主となっている物件です。

 そこで聞きたいんです。国交省は田村水落設計が構造計算した物件を調査していますが、今月十四日までに報告されたものを含めて、調査の内容はどうなっているか承りたい。

○榊政府参考人 本年一月二十四日に京都市のホテルについて耐震性の不足が判明したことを受けまして、既に調査を実施していた四十二物件の抽出物件だけではなくて、設計に関与した百六十二物件すべてについて調査を行うことといたしました。その後、富山県から追加報告ですとか通報がございまして、百六十二件が現在二百三十一物件になっておりまして、二月十四日現在でこの二百三十一物件を対象に調査を進めております。

 今まで判明しているところ、百八件についての調査を終えております。京都市のホテル二件、成田市のマンション一件、それから大阪市のホテル一件について耐震性の不足がございました。その他四件について、耐震性は満たすものの、構造計算書や構造図に誤りがあったというのが四件という報告を受けておるところでございます。

○穀田委員 大要はそのとおりで、そこで、水落建築士は偽装を否定する見解をメディアに表明しています。国交省として偽装と判断した根拠は何かということを一点お答えいただき、国交省として耐震偽装と判断していることから、水落建築士やタムラ建築設計事務所など元請設計士など関係者の処分を検討しているのか、この二つについてお答えをいただきたい。

○冬柴国務大臣 国土交通省は、昨年十月三十一日に京都市から偽装ありとの報告を受けたわけでございます。それで、一月十九日に京都市から偽装内容の詳細な報告を受けました。

 京都市からは、アパヴィラホテル京都駅前につきましては、NGになると指摘を受けている柱について、その場で本人が手で計算を行い、NGであることを確認して、計算書の数値や活字を修正したと答えました。すなわち、京都市が行った十月十日のヒアリングで、「Ok」の「k」という字が大文字になっていた、本来は小文字で書く。これは書きかえた、本人もその事実は認めたということが一つです。

 アパホテル京都駅堀川通につきましては、構造計算書に二種類のヘッダーが出力されており、そしてそれが張り合わされたということで、偽装と判断せざるを得ないとの指摘に対して、本人がそう思うと答えた。これは京都市が行った十月二十三日のヒアリングでそうした。こういうことで、偽装があったということがまずわかったわけです。

 では、そのときになぜ発表しないんだということを怒られるんですけれども、しかし、水平耐力というものがそのときにどうだったのか。要するに、一以下なのか以上なのか、その点についてはまだ確認できていなかったんですね。そこの点についても、それはやはり足りませんでしたという報告が一月になってからありましたので、それで、我々は即それを公表したということでございまして、どう判断したのかという理由は今のようなことでございます。

 それから、そういう問題が、まだ今言うように二百三十六という多くのものがありますので、これの調査を今鋭意やっていますが、それの成り行きを見ながら、もちろん厳正に対処しなければならない、処分をしなければならないというふうに考えておりますが、現状はまだそういうふうにたくさんありますので、調査中でございますので、今どの段階かということを申し上げるのはちょっとお許しいただきたいと思います。

○穀田委員 簡単に言えば、そういう意見表明があろうが、現実には既に突合している段階で、一番肝心な点で、偽装があると判断している、こういうことですね、そう言ってくれればいいんですけれども、それはわかっているんですけれども。

 私、気になっているのは、今回、一連のケースで調査に時間がかかり過ぎと違うかと思っているんです。といいますのは、昨年六月に要請したサンプル調査四十二件のうち、まだ十六件が終わっていないんですね。報道は、東京都と千葉の例を比較して、自治体の対応が違うということまで言っているんですね。

 どう言っているかというと、都は、独自に検査し直せば相当な費用がかかるとし、建築確認した日本ERIに再確認を求めている、急ぐよう指導しているが、田村水落設計の協力が得られないようで、現時点でいつ終わるかわからない、ここまで言っているんですね。一方、千葉県は、構造計算用のソフトで独自に計算し直し、強度不足の確認を得た、こうしてやっているわけです。

 つまり、片や東京はいつわかるかわからぬ、こっちは必死になって独自にやった。これは住民やホテルの利用者の安全にかかわる問題で、これを受け取る側からすれば、国や自治体は一体何をやっているのか、もしかしたらという話をしているときに、まだ評価も出ないということでいいのかということになると思うんですね。

 国交省としては、対応を自治体任せにするんじゃなくて、検査方法を指示して迅速に終わらせるか、それとも直接検査するなどの援助をして、一刻も早く国民の不安にこたえるべきではないんでしょうか。

○冬柴国務大臣 もうお説のとおりですけれども、事情をちょっと申し上げさせてもらいますと、京都市のアパホテル二棟につきましては、昨年六月以降、京都市が特定行政庁として偽装の有無と耐震性の検証を行った。その調査の内容は、構造設計者や元請設計者、工事監理者、施工者、建築主からヒアリングを約五十回実施したということでございます。これに対してもなお彼は言い逃れをしようとしたわけですね。そういう意味で、市の判断が妥当かどうかについて、有識者委員会も設置して審査をいただいた、公表まで七カ月を要したのはそういうことがあります。

 あと、技術的に高度な物件については、我々国土交通省としては、財団法人日本建築防災協会が設けた違反是正支援委員会という専門家集団を活用してほしいとか、あるいは、適切な第三者の構造技術者の確保が困難な場合には、我々が、社団法人日本建築構造技術者協会、JSCAといいますが、そことの連携をとっていただきたいということで、構造に関する高度な専門知識を有する人を活用した検証を特定行政庁にも働きかけをお願いしているところでございます。

 物件が地域的に、富山が多いのは当たり前ですけれども、物すごい偏在しているとか、あるいは検証作業が非常に難易度が高い、物件が五棟、六棟に及び、それが一万平方メートルとか五万平方メートルと大変な物件になったり、いろいろな事情がそこにはありますので、一律に全部おくれているというものではなしに、努力していますので、よろしくお願いしたいと思います。

○穀田委員 努力を否定しているわけじゃないんですね。お説のとおりと言われたように、やはり事は安全にかかわる問題で、片や終わっている、片やめどが立たない、こういうところがあるわけだから。私、京都の例は知っていますよ、私はあそこに住んでいますから、それの事情もよく聞いているんですよ。問題はそういうのじゃなくて、東京や千葉という例があるわけで、そこまでやはりきちんとすべきだということを言っているんです。

 その上で、そうだとしたらちょっと聞きたいんだけれども、アパホテルが、偽装発覚後、水落建築士が計算した九ホテルの営業停止を発表しましたね。これを受けて大臣は、閣議後の記者会見で、強度が足りるか足りないかを度外視して、営業を休止するのはサービス業として良心的な判断、敬意を表したいと述べているんですね。大臣に聞くけれども、アパに敬意を表する理由というのは何がありますか、ちょっと教えてください。

○冬柴国務大臣 このアパグループは、二月五日、耐力不足のホテル等の構造設計を行った設計士が担当した物件につきまして、まだそういうものが全然確定していない中で、ホテルの新規予約の停止及び三月以降の営業停止をみずから公表した。それから、既設マンションの耐震性の自主検証と、耐力不足が判明した場合の補強工事費用をみずから負担するということで、現実に負担した。工事中のマンションの工事停止及び契約者との契約を解除した。これは、我々の方も宅地建物取引業法に基づいていろいろな指導をいたしまして、契約していたものを全部解約させた、それに応じたという点は、私は、まだ確定していないけれども、やはりお客さんの安全、安心というものをおもんぱかって、利益を度外視してそういう判断をしたということは、それは認めてあげていいんじゃないかという気持ちからそのような発言をいたしました。

○穀田委員 いや、契約解除するなんというのは、そういう指導は当然のことであって、別にそれに従ったからといってよかったねなんという話じゃないですよ。

 では聞きますけれども、アパがこの問題でどういう対応をしてきたか。京都の物件でいえば、今あったように二月二十六日じゃないんですよ。最初の提起は、京都市の担当者が昨年の十月二十三日に田村水落設計の水落一級建築士とアパグループの品質管理部門責任者と面談をして、下京区のアパヴィラホテル京都駅前、京都駅のすぐ西の方ですが、それが強度偽装と判断せざるを得ないと告げていた、しかし、アパグループは通常どおりホテル営業を続けていた、これは事実ですね。事実だけ言ってください。

○冬柴国務大臣 それは事実です。

○穀田委員 だから、少なくともこの時点で安全という結果が出るまで営業停止すべきだったんです、もしそう言うんだったら。

 そこでもう一つ。それだけじゃないんです。千葉県の物件は、埼玉の物件と同様に、建築確認を行ったイーホームズ社から、昨年の二月二十八日に千葉県に対して、そして同年三月三日に国土交通省に対して、構造計算に疑義があると通報があった物件なんですね。これらの物件は昨年当委員会でも取り上げられて、その後、工事を中止、十月には先ほど言った購入者との契約解除までしているわけです。だから、国交省にも報告があったわけです。これも事実ですか。

○冬柴国務大臣 いや、それはそのようにありましたけれども、千葉の物件は全部で五棟あるんですね。建築中ですから、それはやめました、売るのもやめました。そして、その後、調査したところ、実に四棟は構造計算上問題がないということになったわけですね。そのうち一棟につきましては、耐力が〇・七四ですか、不足しているということがわかりましたけれども、そういうものをつかむのに、先ほど京都の例でも申しましたように、特定行政庁としては、面積が非常に大きい、そして棟数も五つもあるというようなことから、私は、一生懸命やった結果の、相当期間の範囲内の問題だと思います。

 それから、先ほどのアパホテルの問題については、偽装されたということはわかるけれども、耐力がどう、耐震性がどうなのかという点については、結論は全く出ていなかったんですよ。しかし、それが足らないということがわかったということを言われて、そして営業を禁止したということは、私は、それはそれなりの評価をしてもいいんじゃないかというふうに思ったわけでございます。

○穀田委員 そこが普通の人たちの認識とは違うと言っているんですよ、褒めることじゃないと言っているんです。

 というのは、そのときにやめておいて、だって、京都市の担当者はわざわざ構造計算書に改ざんがあると説明し、強度偽装と判断せざるを得ないと詰めているわけだ。中身があるんですよ。単なる偽装だというんじゃなくて、もう強度偽装、強度がおかしいという話をしているんですよ。

 そういう点からしたら、そのときに、ああ、済まなんだと言って、これは危ないなと思って、やったら、それはそこそこでしょう。だけれども、ずっとそれまでやらなかった事実、要するに、営業を停止しなかった事実は残っているんですよ。だから、京都市民は、これはちょっとひどいなとみんな思っているんですよ。もちろんそうでない人もいるでしょうけれども、京都市民にとってみれば、その時点で京都市がおかしいと言っているということだけは確かだと思うんですね。

 しかも、アパグループの元谷会長は、これまでの対応を、水落建築士が大丈夫だと言うのを信用し過ぎた、認識が甘かったと謝罪しているんですね。強度が足りない、危ないかもしれないと指摘されているわけですよね。それにもかかわらず、そう言う建築士を信用して、強度不足が確定するまで放置していた、これが事実なんです、客観的には。だから、指摘されて、強度が不足しているんじゃないかということで、単なる偽装というんじゃない、強度が不足しているという指摘を受けてこのままやっていたということが、これが客観的事実なんですね。

 だから、そのグループというのは、偽装の指摘があっても、結局、先ほど大臣からもありましたし当局からもありましたように、非常に彼は言い分がいろいろあるわけですよね。そういうものを優先して、結局、安全確保の手だてを怠ってきた企業と言わざるを得ないと私は思うんですね。それが普通の常識だと思います。

 そこで、もう一つ聞きます。

 千葉と埼玉の物件に対して、アパは、昨年五月三十一日のホームページで、計算書の一部に不整合があることをイーホームズからさっき言った昨年三月に報告を受けて、工事中止するように指示をし、第三者の設計士を入れて再チェック中と、これはホームページで掲載をしています。翌日の六月一日付では、その他物件につきましては現在調査中でありますとしていたわけです。つまり、第三者の構造設計士を入れて既に一度調査していたことになるんですね、彼らのホームページによれば。

 ということは、まず一つは、自前の調査では偽装が確認されていなかったのか、二つ目は、確認されたが黙っていたのか、あるいは実際は調査していなかったのか、この三つのうちの一つなんですね、疑問がわくわけですよ。

 だから、アパは昨年三月に、水落建築士の計算書の一部不整合、つまり偽装があるということを認識しているわけですね、このホームページで明らかなように。そうすると、ホテルは京都の結論が出るまで放置していたのはなぜか、そもそも水落建築士と元請設計との関係はどうして生まれたのか、なぜ偽装したのか、そして偽装に結びつく圧力はなかったのか、これは姉歯事件のときにみんなが問題にしてきた諸点です。私は、こういう点で多々あると思うんです。

 したがって、国土交通委員会として、元谷アパグループ会長、水落建築士、元請設計のタムラ建築設計事務所など、関係者の参考人招致を行うべきだと思います。それを要請します。

○塩谷委員長 今の件については、理事会でまた協議したいと思います。

○穀田委員 最後に、大臣、事実はそれでそのとおりなんですけれども、この事件の背景というところに、私が一貫してこの間ずっと言ってきたのは、例のコスト削減競争というのがここにも出ているということをぜひ見ていただきたいんです。

 先ほども少しお話ししていましたけれども、例の積載荷重を建築基準法施行令の目安のほぼ半分で設定してやっていたということがあったわけですね。しかも、これは京都の例ですけれども、施工の段階でも、構造計算書で書かれていた筋交いの数を実際の施工図で大幅に減らし、筋交いの太さも細くしていた。二重にひどい手口なわけですね。

 だから、積載荷重を軽く設定することで床や柱などの材料を少なくできるために、この点で私が聞いてみますと、京都市は、コスト削減を優先した設計で、結果として耐震強度の不足につながったと見ているというふうに言われていました。だから、この事件の背景にも、姉歯事件と同様に、安全を軽視するコスト削減優先の仕組みがあったと言っていいと思うんです。

 アパの元谷会長は、アップルタウンという自社の雑誌で、欧米と比べ日本の住宅が高い理由を、日本だと、床にパチンコ玉を転がして一ミリの床の傾きまでチェックします、生活に支障がなくても、大体傾いている、ひびがある、すき間があるというのはすべてやり直しの対象になるのです、ここまで言っているんですよね。その後、この風潮の結果、みんなが割高のものを購入することになっている、こう言っているわけですね。

 だから、日本におけるそういうものがなぜやられてきたか。結局、地震対策を初めとした安全な建物という発想がずっと形づくられてきたものをこんな形でやゆしたりしているような状況があるわけですね。ヒューザーの小嶋社長も、例の、経済設計がどこが悪いと開き直った方ですよ。

 だから、私は、安全を軽視する行き過ぎたコスト削減競争、この点についていよいよ改める必要がある、そういう点での指導が必要になっていると思うんですが、その見解だけお聞きして、終わります。

○冬柴国務大臣 国土交通省は、安全、安心を確保して、我々の子供や孫たちが自信と誇りを持てる美しい国をつくるのが使命だと思っておりますので、あらゆる面でその安全というものを重視する政策をとってまいりたいと思います。

○榊政府参考人 委員の方から、京都のホテルの関係で、十月時点で耐力不足は判明していたのではないかというようなことの御指摘がありましたが、私どもからの報告の経緯を申し上げますと、昨年の十月六日に、ホテル二物件について不整合ありという第一報がございました。十月三十一日に、二物件とも偽装ありとの報告を受けております。ことしの一月十九日になりまして、偽装内容と耐震性の状況について詳細な報告を受けました。一月二十四日に、耐震性の状況につきまして、確定値について報告を受けました。したがって、十月の時点で耐力不足は私どもとして報告は受けておりません。

 また、京都市が昨年十月時点でアパに対して耐力不足が判明していることを伝えていたというような御指摘もございましたが、私どもは伺っておりません。

 それから、アパに対して不整合の事実及び耐震性の調査を開始する旨を伝えましたのは昨年十月時点でございますが、平成十九年の二月二十日に京都市から確認いたしましたところ、昨年の十二月二十日に、アパの担当者が構造基準に抵触し耐力不足となっている可能性があるという認識を京都市に伝えたというふうに伺っているところでございます。

○穀田委員 今ので二つ明らかになっているので、十二月二十三日には、あかんということをあっちも認識しているということがわかった、そのことが一つと、それと、十月二十三日段階でそういう強度不足、これを指摘している。おたくのところの話でいうと、そういう正確な話をどうやって上げるかといったら、それは確定しないと大変だから、だけれども、これは明らかに強度不足であるという話をしているんですよ。そういう二つの例からしても、その後も少なくとも営業していたということははっきりしているということを裏打ちした点で、極めて大事な報告が上がったと思います。

 以上です。