国会会議録

【第165臨時国会】

衆議院・国土交通委員会
(2006年12月5日)

 談合とダンピングは同根の犯罪 
 大手ゼネコンのダンピング 厳しく取り締まれ

○塩谷委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 きょうはダンピングの問題について質問したいと思います。

 福島県の知事、それから和歌山県知事、宮崎県などは、大型談合事件ということで摘発が相次いでいます。そのほか、全国の地方自治体でも問題になっていることは御承知のとおりです。国レベルでも、昨年の国や道路公団発注工事における橋梁談合事件、成田空港での電気関連工事談合、そして防衛施設庁発注事件をめぐる談合事件、ほとんどが官製談合でもありました。

 こうした談合の根絶に、検察や警察当局並びに公正取引委員会が全力を挙げることは当然だと思うんですね。同時に、多くの官工事を所管する国交省の談合排除の取り決めが極めて重要なことは論をまちません。国交省としては、この間、聞いていますと、談合が国民生活にもたらす弊害を、公共工事への取引制限、参入制限となって公共工事の公正公平性をゆがめる、さらに、高値受注による税金の無駄など国民生活に悪影響を及ぼす、したがってということで、指名競争から一般入札を二億円以上の工事に拡大したり、談合企業への指名停止措置の期間延長などのペナルティーをやっていますよね。

 一方、談合摘発が進む中で、一般競争入札などの徹底によって実は低価格入札やダンピング受注がふえています。このダンピング受注についてどのような弊害、問題があると認識しておられるか、まず大臣にお聞きしたいと思います。

○冬柴国務大臣 一般的に申しますと、ダンピング受注というものは建設業の健全な発達を阻害するとともに、特に工事の手抜き、下請へのしわ寄せ、あるいは労働条件の悪化、安全対策の不徹底等につながりやすいといった問題があります。

 特に、良質な社会資本整備を通じて豊かで安全、安心な国民生活を実現していくためには、公共工事の品質確保が重要であります。平成十七年三月、公共工事の品質確保の促進に関する法律が制定されたところでありますが、極端な低価格による受注は公共工事の品質確保等にも重大な支障を及ぼしかねないものと懸念をいたします。

 このため、従来から国土交通省では、低価格の入札があった場合に、その者が契約内容を履行できないおそれがないかどうか調査した上、慎重に契約手続を行っていますが、これに加えて、去る四月、重点的なダンピング対策を取りまとめ、その着実な推進を図っているところでございます。

 以上が、ダンピングというものに対する私の認識でございます。

○穀田委員 この間の施策を述べられましたが、御承知のとおり、談合は、入札の公正を害す行為として刑法上も当然、犯罪とされる。公正取引を規定した独禁法においては、不当な取引制限として禁止されています。一方、公共建設工事における低価格入札については、独禁法で禁止する不公正な取引方法の不当廉売として問題になっています。採算を度外視した極端な安値受注が繰り返されて、他の事業者が受注の機会を得られないことによって競争事業者の事業活動が困難になるおそれがある場合ということで、こういうあれを規定しているわけですよね。

 つまり、いずれも公正な取引に反する行為であって、しかも、今大臣からお話があったように、結果としてはそこが大事な問題なんですよね、国民生活に重大な影響を及ぼす行為だと思うんです。ところが、談合をやめたから、今度は価格競争で安ければ何でもいいというのでは困るわけですよね。そこで、私は、公共工事の公正な入札適正化をいかにして図るかということを、きょうは、短時間ではありますが議論をしたいと思っているわけです。

 そこで、ダンピング受注の件数は、いただいた資料では、地方整備局、地方運輸局、官庁営繕部、北海道局合計で、二〇〇五年度が前年の倍の一千五十七件、〇六年度上半期五百四十二件と増加傾向にあります。

 ダンピングは前からあったわけですよね。それで、なぜ起きるかということでいいますと、「建設マネジメント技術」という雑誌によりますと、従来のパターンというのは四つあると言われているんですね。実績つくり型、ダンピングの後の入札を有利にするために意図的に実績をつくるやり方。それから、ペーパーカンパニー型、建設業者としての実体がなくて、あとは丸投げして利益を確保するやり方。三つ目に敵対的競争型、特定の業者の落札を阻止する、意図的に低価格で入札するパターン。それから、四つ目に自転車操業型、競争激化で仕事がとれないため、従業員や機械を遊ばせておくよりは売り上げを稼いだ方がましだというもの。こういうことが、「建設マネジメント技術」誌によっては報告されていました。

 私は、新しい特色があるんじゃないかと。最近の特徴は、大規模工事を対象にした大手によるものがふえているんじゃないか。したがって、お聞きしたいのは、昨年度とことしの上半期で大規模工事の低価格入札の件数はふえていると思うけれども、間違いありませんね。それと、何が原因となっているのかについてお答えいただきたい。

○竹歳政府参考人 御指摘のように、国土交通省の発注する工事のうち、低入札価格調査制度の対象件数を見ますと、平成十四年度から十六年度まではおおむね年五百件台で推移してきましたが、平成十七年度には千五十七件と急増し、平成十八年度上半期も同様の傾向が続いています。

 また、あわせて御指摘がございましたように、政府調達協定の対象、国ですと七・二億円以上でございますが、そういう大規模工事において特に増加傾向を示しているところです。

 その増加要因ですが、今も四つの点の御指摘がございましたが、さまざまな要因があると思いますが、基本的には、公共事業が大幅に減少する中で、熾烈な受注競争が繰り広げられていることが考えられます。

○穀田委員 やはりふえていると。七・二億円以上の問題でふえているということが明らかだと。

 だから、従来に比べて大手のダンピング受注が増加している事態の中で何が問題かというと、結局、中小企業、下請企業への影響、しわ寄せが問題であることは明らかです。

 そこで、皆さんにお配りした資料を見ていただきたいわけであります。ゼネコン大手の大成建設が、ことし九月、沖縄総合事務局が発注した那覇港の海底トンネル工事を予定価格の六八・三%で落札しています。落札価格は、下請業者に請け負わせる価格を実際よりも一億円程度も安く抑え、報告していた。大成建設に対し、差額は当社が責任を持って負担するという誓約書、二ページ目ですね、出させているわけですよね。十一月二十一日付で契約を結んだと報道されています。

 こういう例は今まで、つまりこんな誓約書を出した例というのは、こういう問題でありましたか。

○中尾政府参考人 お答えいたします。

 今までの例では、こういう誓約書を社長名から出した例はないと聞いております。

○穀田委員 ないんですよね。初めてのこういう事件だということなんです。

 では、誓約書を出させたぐらいで契約していいのかと。

 そこで、今皆さんにお配りした、沈埋函の製作工事の大成建設との契約についてという文書の最後に、「契約後の措置」と書いていますよね。そこで、「不当廉売の恐れがあるとして、沖総局公正取引室への報告を予定。」と書いていますよね。これはしましたか。

○中尾政府参考人 お答えします。

 十一月二十一日に契約いたしまして、十一月二十八日に沖総局の公取室に報告したと聞いて……(穀田委員「十一月二十八日に報告したと」と呼ぶ)二十八日です。はい。

○穀田委員 不当廉売のおそれとして、明確な違反行為であるということですからね、これは、事実上。私は、誓約書を出させたぐらいで契約していいのかという問題をやはりここはやるべきだ、議論すべきだと思うんですね。

 ここに資料を出しました。皆さん、見ていただいたらわかりますように、大成建設の応札価格は、実際の価格を結果としては偽るわけですわね。虚偽の内訳書を出している。出なければ、下請に無理な工事をやらせ、工事の品質確保も危惧される事態にあったわけですね。これは、たまたま下請企業である日立造船鉄構というのがノーと言ったからこれが表に出て、普通であれば、言うことを聞かされて何も出ないというふうになったわけですわな。だから、まさにその意味では偽装なんですよ。このごろ偽装ばやりで、何でもかんでも偽装というのがはやっているんだけれども。

 こういうことを許して契約を結ぶということがまかり通れば、低価格入札調査制度のみならず入札制度そのものが形骸化するんじゃないのか。こういう虚偽の事例というのは契約を結ばないよう排除するのが当然じゃないでしょうか。その見解について、できれば大臣にお伺いしたいと思います。

○冬柴国務大臣 会計法というものがありまして、二十九条の六には、「契約担当官等は、競争に付する場合においては、政令の定めるところにより、契約の目的に応じ、予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相手方とするものとする。」これが原則でございます。「ただし、国の支払の原因となる契約のうち政令で定めるものについて、相手方となるべき者の申込みに係る価格によつては、その者により当該契約の内容に適合した履行がされないおそれがあると認められるとき、」には、あと、ちょっと省略しますが、「予定価格の制限の範囲内の価格をもつて申込みをした他の者のうち最低の価格をもつて申込みをした者を当該契約の相手方とすることができる。」ということでございまして、まず会計法では、これは国の発注だけです、地方はまた別異なんですけれども、最低で入れた者をまず相手にせないかぬということになっておるんです。

 しかしながら、その価格では本当に履行できるのかどうかということが疑われるようなことになってきた場合、本件がまさにそうです、それ、本当にできるのかどうかということをよく調査し、そしてそれができないということになれば、次の人に入れてよろしい。

 ここで一札を入れさせたというのは、相手方が大成建設、それは著名なゼネコンでもありますし、いろいろ調べたところで、下請との間で見積もりの価格で差があったという、そのことが書いてありますけれども、その点について、それは自分の方で負担をいたします、下請には迷惑をかけませんという誓約書を入れることによって、常識的には契約に適合した履行がされるということが担保されたと私は見ることができるものですから、この段階で契約をしたということでございます。

 ここの、契約の内容に適合した履行がされないおそれがあるかどうかということの判断は非常に難しいので、現在、そういう問題についてもう少し解釈の指針といいますか、そういうものを、どうしたらいいかということは内部で検討をさせております。

○穀田委員 それは法律の解釈からいえばそうだけれども、一億円も違うというような事態で、今皆さんが努力されておられる、「いわゆるダンピング受注に係る公共工事の品質確保及び下請業者へのしわ寄せの排除等の対策について」というようなものからして、これは明らかにこういうひどいことをやっているわけじゃないですか、実際上は。後になってそれが発覚すると、いや、うちのところで責任を持ちますわみたいな話をやっていること自体がけしからぬという姿勢がなけりゃ、そういうことを何度もやられるようじゃあかん。

 わざわざ誓約書まで出させるぐらい、これ、大変なことなんですよ。これを、誓約書を出させるんじゃなくて、こういうやり方が間違っているということをずばっとやらなければ、そういうことが次から次へと出るぞ、そのたびに誓約書を出させてやっているなんていう話はならぬ。そういうふうに言うのやったらほんまに法律を変えなくちゃならぬし、今皆さん方がやっているそういう努力に対しても報われぬことになるじゃないかということを、政治論として、私、言っているわけですよね。そこ、わかりますわな。

○冬柴国務大臣 ペナルティーを科す官庁と、我々、契約の相手方とするかどうかという問題とは、ちょっと次元が違うと思うんです。

 私どもとしましては、発注者としては、大成建設に対して、本件工事実施に当たって、品質の確保及び工事の安全確保を図るために、特に下請へのしわ寄せがないように措置を講じたわけであります。

 一つは、受注者側の技術者の増員を求めました。それから、工事が完成すると見えなくなる不可視部分についてはビデオできちっと撮影をさせていただく。それから、工事完成後に、実際にかかった費用については工事コストの調査及び実施並びに内訳の公表をする。

 そして、ペナルティーの部分については、不当廉売のおそれがあるとして公正取引委員会に報告をして、そして向こうの厳正な調査を求める、こういう立場をとったわけでございますので、御了解いただきたいと思います。

○穀田委員 私が言っている趣旨はわかっていただいたと思うんですけれども、なぜこんなことを言っているかというと、皆さんわかっているわけですよ。大体、談合をしている人たちというのはダンピングもやっているんですよ。

 私、国交省の直轄工事で落札した企業名を資料として提出してもらったんです。時間の関係上、そちらの時間ですよ、ことしの八月分、二億円以上の工事三十一件の入札に関してだけでした。そのいただいた資料を見ると、ダンピング受注の企業の中には談合企業もあるわけですね。新聞などはもう書いていて、談合して指名停止など処分された企業が処分が明けると今度はダンピングに走る、こういうことで、今大臣おっしゃった措置でまともにほんまにやれるのかということをきちんと見なくちゃならぬということだけ指摘しておきたいと思うんです。

 そこで、では最後に、ダンピングを排除していくという場合どうするかということなんですね。

 私は、いろいろなことを皆さんやっていますけれども、はっきり言って決定的な改善に至っていない。自民党も提言を出しています。私、それを見させていただきました。今、先ほどありました公共工事が減っているもとで、そちらの答弁によりますと、大手がそういう受注競争に走っているという状況のもとでは、弱肉強食型の競争に歯どめをかけるルールが欠かせないと思うんですね。ここが根本にある。

 やはり、見ますと、大手の身勝手を厳しく規制し、中小建設業の育成と共同を支援するということによって公正競争の前提が確保されるんじゃないか、ここに一つのポイントを置くべきではなかろうか。

 調べますと、中小建設業制度改善協議会、JKの会などは提言を出していまして、その提言によりますと、「公共工事の超低価格、ダンピング入札をなくし中小建設業の経営の存続と育成を」という文書の中には、受注ダンピングの防止のために緊急対策を提案しています。行き過ぎたコスト削減政策の見直しと公共発注価格の設定、明白な原価割れで入札する業者を排除する、それから、国の入札での最低制限の価格の導入と事前公表の廃止などであります。私は、ここが一つポイントだと。

 最後にもう一つだけ言うと、肝心な点は、労務の単価の問題、ここのところにもスポットを当てる必要があるというのが私のこの間一貫した考え方です。ですから、この間の建築士のときも設計報酬のダンピングを問題だと指摘し、大臣もそうだとお答えになりましたけれども、そういう中小企業を育成していく上での立場と今申し上げた団体からの提起、それから労務単価で見る、こういう二つがどうしてもやはりダンピングを防いでいく上でかぎとなるんじゃないかということについて申し述べて、もし見解があればお聞かせいただいて終わります。

○冬柴国務大臣 厳密には請負の会社と労働者との関係ですけれども、しかし我々も、そういうものが品質の低下とかあるいは我々が考えている品物ができないということにつながりかねないわけですから、そういう問題については、今言われたような建設業団体などを通じて指導を行うとともに、個別企業に対して立入調査を行うなどしてそういうものを断固として我々は監視していきたい、このように思っております。

○穀田委員 一言だけ。もう終わりますが、工事の品質が問題なんでしょう。そのときに、先ほど黄川田さんが、つくるのはだれだと言っていましたけれども、結局、働く人がつくっているわけですやんかね。その人たちの意欲と技術力にかかっているわけで、ここの安全も大事なんですよね。だから、そういう人たちの労務単価がこの間ずっと下がり続けているという実態にこそメスを入れる必要があるんだという角度から見れば、僕はもう少しわかりやすいんじゃないかと思うんですね。

 その点だけ指摘して、終わります。ありがとうございます。