国会会議録

【第165臨時国会】

衆議院・国土交通委員会
(2006年10月25日)

 国交省自身に係る偽装請負、労働者派遣法違反について質す。

○塩谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。穀田恵二君。

○穀田委員 大臣にきょうは質問します。

 大臣は、この間の十三日の所信のあいさつの中で、まず、国民の安全、安心のための取り組みが喫緊の課題、そしてさらに、国民の生命財産の保護に全力で取り組む、これを第一に挙げました。それを実現しようと思いますと、当然、まず一つは、国民の命、安全を守るための必要な予算を優先して確保する、それから二つ目に、実行するための人員の育成確保が必要です。さらに、その前提として、国や行政の責務、役割の自覚が不可欠だと私は思っています。

 国民の命、安全、生活を守る責務を果たす上で、ましてや法令遵守は最低限の責務ですが、これをじゅうりんする事件が発生しているのは御承知のとおりです。

 そこで、時間がそんなにありませんから端的に言いたいと思うんです。

 今回の違法行為は、国交省自身に係る偽装請負、労働者派遣法違反です。一方、所管の公益法人建設弘済会による偽装出向、これは職業安定法違反という、二つの違反行為がありました。まず、どういう違反行為が労働局から指摘されたのか、それぞれについて簡潔にお願いします。

○竹歳政府参考人 お答えいたします。

 国交省所管の公益法人と民間コンサルタント会社等との間の出向契約でございますが、これにつきましては、十月三日から六日にかけて、全国八つございますこの公益法人が各労働局から、出向は労働者供給事業に該当し、労働者供給事業を禁止している職業安定法第四十四条に違反するとして、是正の指導を受けました。

 次に、近畿地方整備局でございますが、二つの事務所につきまして、十月六日、大阪労働局から、請負契約として近畿建設協会へ委託している業務について、労働者派遣法第二十四条の二に違反する旨の指導をいただきました。この具体的内容は、業務委託契約におきまして、特記仕様書で業務に従事する協会職員の人数を指定していたということが一つ、二つ目に、協会職員の休暇について事前に報告書を提出させることにより国の事務所職員が休日の管理を行っている、この二点が指摘されまして、これらは厚生労働省が定める基準を満たしていないため、労働者派遣事業に該当することを指摘されたものでございます。

○穀田委員 そういうことなんですけれども、では、それぞれの違反行為について厚生労働省にお聞きします。

 違反行為とされる理由と、それから、大事なのは労働者保護の観点から違反行為が結局どういった不利益を労働者にもたらすのか、その点についてお答えください。

○岡崎政府参考人 お答えいたします。

 一つ目のコンサルタントの出向契約の関係につきましては、社会通念上出向と認められるような理由があればそれは出向としていいわけでございますが、そういうことがなく多数の方が出向する、こういうようなことになりますと、これは労働者供給事業ということになりまして、職業安定法四十四条で労働者供給事業が禁止されておりますので、この違反になるということでございます。

 それから、請負の関係につきましては、請負としてきちっとやられていればいいわけでございますが、発注元の方が指揮命令するという形になりますと、これは形としては労働者派遣事業になりますので、許可、届け出をしているような事業者がきちっとした形でやらない限りにおいては、これは労働者派遣法違反になるということでございます。

 いずれにしましても、そういうような形で、労働者供給事業であれ、あるいは労働者派遣事業でありましても、法令にのっとらない形でやられますと、例えば安全性その他、事業主がきちんとやらなければいけない事柄につきまして、だれが責任を持っているかというようなことが不明確になる、あるいは最終的にはこれが守られない事態になるわけでございますので、そういったいろいろな意味におきまして、労働者の保護に欠けるということになるというふうに考えています。

○穀田委員 だから、後ろの方を詳しく言ってほしいわけだ。前の方は竹歳さんが言うてはるんやから、同じことを言うてもしゃあないんだよね。

 問題は、今、民間大企業による偽装請負が社会問題化している、そういう中にあって、法令遵守を指導徹底すべき行政機関が法令違反を犯す、そのことによって労働者に対して非常に不利益をもたらすということがいいのかということなんですよね。私は断じて許しがたい問題だと思うんですが、大臣の認識をお伺いしたい。

○冬柴国務大臣 国の機関が国の機関から指導を受けた、まことに遺憾なことであると私は考えております。

 具体的に指摘された点につきましては、もう既に改善措置はとりました。今後とも、定員削減ということで、事務はたくさんあるわけなんですが、請負契約であればその契約の趣旨にのっとって、こっちは発注者ですから、発注者が請負人の従業員が行う事務について指図をしたり、先ほどのように休日管理をしてみたり、あるいは、こちらの職員と入りまじって作業をすると、請負なのか委託なのかちょっとわかりにくくなります。それから、そういう、例えば事務器具をこちらから貸し与えるとかいうようなこととか、疑われるようなことは一切やってもらったら困るということで、改善措置を講じたところでございます。

 まことに遺憾だったと思います。

○穀田委員 大臣、国の機関が他の機関から受けたから遺憾だ、それはそうですよね。でも、私は中身の問題だと思うんですね。

 それで、今お話あったように、現場でいえば混然一体になって仕事をしている、そこを分けて使ってそれでいいんだなんという話をしていたんじゃ、やはり根本問題がそれでいいのかと。それは、今までこういう偽装請負や出向などという偽装までしてやっているなんという事態について、どこに原因があるのかという問題を追及してこそ、大臣の大臣たる本務があるわけじゃないですか。今、現実のところで、パネルか何か立ててやっている、コピーのやり方もきちんとせい、そんなことをやってまともにやれると思いますか。私は、そこのところに、やはり今の根本問題が解決できることはおよそないなということをはっきり言って実感しました。

 いみじくも、定員削減の折、こう言っているわけですやんか。私は、なぜこのようなことが起きているのかという根本問題について、きょうは短時間ではあるけれども、議論したいと思っているんです。

 偽装請負も偽装出向も建設弘済会の職員にかかわる問題ですけれども、いただいた資料を見ますと、建設弘済会の職員は、八つあります、まとめて言うと、二〇〇六年の一月現在ですけれども、正規職員が二千二百六十八人、これに対して出向職員が三千七百十二人となっていて、合わせて五千九百八十人なんですね。出向職員が正規職員よりも多くて、六二%を占める。三人のうち二人が出向職員だ。これらの出向職員が、国交省の地方整備局の業務を簡単に言うと請け負っているということになるわけですね。

 だから、そもそも正規職員よりも出向者が倍いるという会社は余り聞いたことがない。そういう事態について、なぜそうなっているのかについて、きちんとただしていますか。

○冬柴国務大臣 今から五年前に国家公務員を五%純減するという目標を立てたわけですが、結果は〇・五%の純減しかできなかった。これはやはり、例えば空き交番をゼロにしようとかいうようなことになりますとそれだけでふえるわけでして、そういう需要があることは事実です。

 しかし、その中にあって、今、日本の財政というのは非常に大きな債務を抱えた状況で、これを改善するためにはやはり公務員の数というものを合理化しなきゃならないという大きな目標が一方にはあります。したがいまして、この五年間で今度は五・七%純減するというような目標が立てられているわけでございます。各種予算にしましても公共事業の予算にしても物すごく削り込んで、筋肉質の行政にしようという大きな流れから見ますと、その合理化は我々やはり政府一体となってやっていかなければならない。

 しかしながら、仕事が減らなければ、これは労働強化かサービスが不足するか、どちらかしかないわけですから、そういう意味で、事業仕分け、予算の項目一つ一つについて、これは本当に国家公務員がやらなきゃならない仕事なのかどうかという仕分けをして、そしてこれを、地方に任せるもの、あるいは民間に任せるもの、あるいはこの際廃止するもの、そういう仕分けをしようじゃないかということを提案しているわけでございまして、そういうものの一環として、必要な人数が足らない部分を民法上の請負という形で必要な行政をやらせていただいている。

 それが疑われるような、今言うように、正規の職員と請け負った職員が入りまじるとか、あるいは指揮監督をやっているように疑われるようなことがあるということについては改善しなきゃなりませんけれども、本質的には、穀田委員が御指摘のように、国家公務員の数が非常に急激に減っているというところに真因があると思われます。

○穀田委員 なぜ国家公務員を減らすか。それは、政府の理屈からしましても、私どもはそういうやり方はおかしいという意見を言っているわけですけれども、仮にそういう立場に立ったとしても、それは、今大臣からお話があったように、財政が切迫している、そういうもとで財政的な問題を一つはクリアしよう、それから、できる仕事はどういうふうに仕分けするかというふうに来ますよね。しかし、おっしゃったように、仕事が減らなければ人は要るということですよね。その三つの関係をどうやるのかという問題があるわけですよ。

 ちょっと事実を見てみますと、建設弘済会に委託している業務は、もともと地方整備局が正規職員、公務員を抱え実施していた業務だったわけですね。それを官から民へということでやっている。だけれども、公共的業務であるためにおいそれと民間に委託できないから、丸投げできないから、営利を目的としない建設弘済会などに委託せざるを得なかったわけですよね。ところが、今お話があったように仕事は減らない、そうすると、建設弘済会は、委託業務が拡大し、既存の弘済会職員では業務をこなせなくなる、したがって出向という形で雇うということですよね。

 では、それで金が減ったのかという問題を見ましょう。

 実は、朝日新聞の十月五日付、中部版なんですが、それを見ますと、いや、そうなっていないと。結局のところ、嘱託職員らが、同省が払った一人当たりの委託料の半分以下しか受け取っていないことがわかったと言っている。何のことはない、途中でピンはねをしているということになるわけですね。

 労働組合もその問題を非常に重視していまして、本来定員内職員が果たすべき仕事を業務委託職員に任せることについては、まずいと。その理由は、国民共有の土木技術が継承できなくなる、二つ目には、当時は部外秘であった予定価格の情報が流出するおそれがある、さらに、定員内職員の人件費が六百万から七百万程度であるのに対して、業務委託契約では一人当たりおよそ千五百万円を必要とする、税金の無駄遣いになる。ありとあらゆる角度からいってまずいということが言われ、同じくその点では朝日新聞も、嘱託職員の日給は八千円だ、国交省が協会に委託する、年間約六百万円近く払うが、嘱託職員の年収は約二百五十万前後だと。

 つまり、公共的なものとして安全、安心を保障する体制をつくらなければならないという問題を礎石に置いて、なおかつそれを公務としてやることによって無駄な金も省くことができる、ましてこういう不安定雇用もつくらないことができる、そういうところに根本的な解決があると思いませんか。どうですか。

○竹歳政府参考人 先ほどから先生も御指摘のように、大きな流れとしては、国土交通省の定員が国の定員削減方針に基づいてずっと減ってきた。昭和四十三年度から十八年度まで見ますと、約四割、一万三千人減少となっているわけです。

 それで、今幾つか、むしろ税金が余計にかかっているんじゃないかというような御指摘がございましたが、これはやはり計算の仕方がいろいろあると思うんです。したがって、今大臣も御答弁申し上げましたように、やはり、定員が減る中でどう適正な形で請負契約を実行していくかというのが今我々の直面している課題だと考えております。

○穀田委員 そういうもとで何が起こっているかということと、今、建設弘済会への業務委託のあり方検討委員会でその方向について出ているわけですね、その資料を見てほしいと私言っておきましたので見ていただいたと思いますけれども、その中で、出張所業務の実態というものがあるんですね。

 それを見ますと、出張所職員が現在でも最低四名しか確保されない、そうなるとどうなるかというと、「職員の実施すべき業務のうち、行政判断や権限行使、守秘性を伴わない業務については、最大限委託している。」と。しかし、それを見てください、職員数四名なんですよ。その下にありますやろ。全国平均は、道路管理のある出張所の平均は四・七ですよ。そして、河川管理のある出張所の平均は三・二ですよ。

 もしこれで事故があった場合どうするか、知ってはりますか。車で運転する方が業務委託の人だ、ところが正規の職員が二人乗る。道路に事故があってそこに行く。そうしたら、片一方で車をとめないとならぬ。両方道がありますから、こっちもとめないとならぬ。そうしたらだれが連絡するんですか。そんなこと、まさに責任持ってできないという事態になるからこそ、正規の職員がこんなことをやっておったんじゃだめなんだと。

 なぜそんなことを言うかというと、では、業務委託をやった方は住民のそういう要請にこたえて応答する権限はないんですよ。そういうものを考えたときに、やはりきちんとした、安全のところについて言えば、民間委託するんじゃなくて、ここの肝心なところはどうしても守るということが必要だと私は思います。

○冬柴国務大臣 限られた職員の数の中で与えられた使命を十分果たすために、いろいろな知恵を出しながらこれまでやっているわけでございます。

 先生の、労働者の立場とかあるいは社会一般が受ける不利益ということを考えれば、そんなに人減らしをするべきじゃないんじゃないかということにつながるわけでございますけれども、そういう考えは一方でもちろん一つあると思いますが、今、あらゆるところで、危機的な財政状況を解決するためには公務員の制度の見直しそのものもやらなければならないわけでありまして、道はまだ半ばです。私はそう思います。そういう中で、この定員削減の中で、純減の中で、やはり重要な仕事を知恵を絞ってやればどういうことなのか、それはやはり請負という形、それしか今のところはないと私は思うわけでございます。

 したがって、それによって国民が不利益を受けることのないように、我々は、あらゆる点から考慮して頑張っていきたいと思っています。

○穀田委員 国民が不利益を受けている、働いている現場の人たちも不利益を受けている、だからやめなさいと言っているんですよ。

 例えば、この資料に一緒に下にありますよ、過去二十年間の職員数の推移。これは政府の検討会の資料ですよ。十五名いたのが四名になっているわけですよ。もう終わりますけれども、この間、北側大臣もことしの五月にやったときに、五十キロの大和川で十四名しかいないんだ、とてもできやしない、これを縮小していく中で外部委託をしていったということを何度も言っているんですよ。これ自身が最大の問題であって、いわば、そのことによって不利益を得るのはだれか。

 国民の安全と安心を保つことができない、公共事業のまともな水準が確保できない、そして働く労働者が不利益を受ける、この三つの点から、私は、公の仕事を公がやるということをしっかりやらないとだめだということを指摘して、終わります。