国会会議録

【第164通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2006年6月13日)

 バリアフリー法案の参考人質疑。
 参考人にたいして、『1・「移動の権利」を明記すべきと考えます。その点の参考人のご意見を』『2・バリアフリーの実効あらしめるためには、当事者の参加こそが決定的と考えるがどうか?』の2点について意見を求めた。


○林委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 座らせていただきます。

 私は、今度の新しいバリアフリー法に移動の権利を明記すべきであると考えています。そこで、皆さんからその件に関して御意見をお聞きしたいと思います。既に川内参考人はそのことをお話しされましたので、秋山参考人、上薗参考人、小川参考人にお願いしたいと思います。

 秋山参考人は、「究極のバリアフリー駅をめざして」という著作の中で、「障害を持つ人も高齢者も誰もが地域でごくあたり前の生活ができる考え方であるノーマライゼイション社会を実現することである。ノーマライゼイションの保障は言い換えれば、憲法二十五条で保障されている人間として最低限度の生活、つまり生存権や生活権の保障をすることである。」と述べておられます。そういう立場からして、移動の権利を明記する点について御意見をお伺いしたいと思います。

 そして、上薗参考人、小川参考人には、実は国交省は、こういうことを言いますと、先ほど川内参考人からもありましたが、移動や利用の権利として認めれば、国が交通サービスを提供する責任を負うことになり、簡単に言えばコストがかかる、そして、国民的合意が得られていないという意見を必ず述べられます。私は若干違うと思うんですね。やはり、そういうことを明記することによって一歩一歩大きく前進することができるし、また、コストという問題を通じて国民的合意を図ることもできるという、いわばとても大切な問題だと私は考えているんですが、その辺の御意見をお二人にはお聞かせ願えればと思っています。

○秋山参考人 移動の権利というのは、ジャンルとしては非常に重要な分野でございますし、生存権、生活権を規定するかなり重要な条件になります。

 私自身は、このあたりは具体的に数字として言うべき時期に来ているということを理解しておりますので、例えば、地方都市ですと一日バス四、五便保障しましょうとか、それから、障害者でしたら週二回ぐらいは外出できるようにゴールをちゃんとしましょうとか、そういう意味で、目標とか、あるいは移動の最低保障をどうするかとか、そのあたりを議論することの方がよろしいかなと。権利ということを議論することはもちろん大事なんですが、最低保障をどこにするかという具体的なところで議論をした方が私はよろしいかなと。

 権利をやり始めると法律の手続論の入り口のところでとまってしまいますので、できれば、バス一日何便とか、あるいはスペシャル・トランスポートは障害者は週に二回は使えるようにしましょうとか、そういうところでぜひ議論をしていただきたいと私は思っております。

 以上でございます。

○小川参考人 私も、今の秋山先生が申された意見に近いんですが、権利の主張という状態の前に、我々がやはり社会的に自立という状態の、自分みずからの立場ということで移動ができるような社会構造を、先生、お願いしたい。

 こういうことになりますと、ハンディを持っている立場でございますので、移動の手段ということについてはやはり御理解のある御議論をいただけるような方向でバリアフリー法の成立を、もっと具体的な、先ほど私、前段で申し上げておりますけれども、中核都市あるいは繁華街に自転車をとめておくとか、店頭で、きっちりやはり決まりを守っていただけるような、そういう制度化もきちんとしていただければ、障害者の移動ということについて、大変私は移動可能になるのではなかろうかと。

 断片的でございますけれども、どうぞひとつお願いいたしたいと思います。

○上薗参考人 このバリアフリー新法に権利ということを書くことが難しいとおっしゃっていますが、以前、私たちの仲間でホームから転落した人が、事業者側に、視覚障害者は危険なんだから一人で電車を利用しないでくれというようなことを言われた人もいます。

 私たちは、自分が事故に遭って何か後ろめたい思いをするというのじゃなくて、私たちも一人の社会人である、切符を買って一人で乗りたいということで、利便性だけではなくて、事業者側はできるだけ、安全ということがこの新法案にも書いてありますので、では、その安全ということは事故の起きないことだよということを加味して、いろいろ考えていただきたい。

 事故があったときに、その事故に対してどういう対処をするかということが大事なことかと思います。

○穀田委員 ありがとうございました。

 先ほど来のお話をお聞きしていますと、すぐれた例として、共通して阪急伊丹の駅の例が出されました。私も実は、京都に住んでいますものですから、行ってまいりました。当時の関係者にも御意見を伺いまして、先ほど紹介しました「究極のバリアフリー駅」もわざわざ提供いただきまして、読ませていただきました。そして、その中で取り組みの過程を学びました。

 その中で、特に、利用者、障害者の参画が伊丹駅を変えた、こう言える取り組みに感動したものです。行政の側の率直な意見の開陳もありまして、例えば「今まで役所は市民の声を聞く時に、何々連合会の会長に参加していただいて審議会をやってきたわけですが、発言がないことが多かったと思います。」ということを述べて、それを大きく変えて、当事者の参画ですぐれた駅をつくり上げたわけです。

 そこで、川内参考人は、特にその著書の中でもおっしゃっているんですが、障害のある当事者としての参画という視点をとりわけ強調なすっています。その点で、参加と参画、そして、今問題となっている、今後こういう問題を基本計画素案その他の策定や実行の過程を通じてどのようにしていくべきなのかということについて、もう少し詳論していただければと思います。

○川内参考人 参加と参画については、ちょっと参画の方が上流からというかそういうふうなことは言えますが、どこから入れば参画かというふうな定義がないので、ちょっと用語が混乱するかもしれませんが、一応そういう形で申し上げます。

 実際のユーザーの、利用者の参加、参画が重要であるというのは、これはもう間違いのないことで、今まで設計基準では反映し切れていなかったニーズというものを掘り出して、それを反映していくという作業の中では、実際の利用者の意見がないと役に立たないわけですね。

 だけれども、それをする前というか、いきなり設計のところから入るのではなくて、まず、現在できているものを事後評価していく。やはり具体的なものを目の前にして初めて具体的な意見が出てくるというのが私の経験から得られたもので、そういう現在できているものにたくさん教科書があるわけですから、そこで評価をして、そこで得られたものを設計作業の中に反映していく。そのためには、そういうデータをきちんと整理して、そして新しいプロジェクトに提供していくというふうな仕組みが要るわけですね。

 ですから、参加、参画というのが、現在は、例えば行政の担当者が熱心で、その上の課長がやれと言ったらやるけれども、担当者が異動したらおしまいになったとか、そういうふうな形で、そこでせっかく集めてきた情報もどこかに行ってしまうというふうなことが往々にあるわけですけれども、データを継続して、そして社会の体制として、それをいろいろなプロジェクトに回しながら少しでもレベルの高いものをつくっていく、そういうふうな体制をいかにして物づくりの中に組み込んで、仕組みとして、システムとしてやっていけるかというのが一番重要な問題だろうというふうに考えています。

○穀田委員 再度、川内参考人にお聞きします。

 実は、川内参考人が取り組んでおられる運動の中で、今回の交通バリアフリー法に対して例えばこう述べています。高齢者、障害者等を初め関係者の参画により、関係者の意見が基本方針に十分反映されるよう努める旨、明記することを提案する、こう言ってはります。

 私も、今回一定の改善がなされたとはいえ、結局のところ、実際に使われる方々の意見を反映させることが、先ほど来いろいろな方々がコスト論を言っていますけれども、安全というコストもそうだし、それから実際につくっていくコストからしましても、そういう反映が大事だと思うんですね。

 ところが、今お話があったように、なかなかこれは担当者がかわったらできやしないとか、実際は、後で秋山参考人にもお聞きしますが、取り組んでおられる、例えばNPO等によるボランティア有償運送検討小委員会の議論で、運営協議会があるんですね。ところが、それがなかなか設立もはかばかしくないし、当事者が参加しにくいという実態があります。

 こういう二つの点を述べた上で最後にお聞きしたいのは、川内参考人に、今述べた、明記する旨提案する、こういう方針との関係で、今回の法案がより前進的なものと私は思いますけれども、さらに要望する点があったらお聞きしたい。そして、秋山参考人には、当事者、住民参加を進める上で、今の現実のもとでいろいろな側面があります。そこを見ながら、どうすればいいかだけお聞きしたいと思います。

○川内参考人 基本構想のときに市町村が協議会を設置するということが書いてありますが、これは、市町村が設置することができるになっているわけですね。ですから、そこで、別の項で障害のある方や高齢の方の意見を尊重するというふうなこともありますが、まず、設置というのができるではなくて、やはり、やる場合に設置しなくてはいけないということがはっきりと書かれるべきであろうと思います。

 設置した場合は、今回は、そういう高齢の方や障害のある方が委員に入るということは書いてあります。だけれども、もともとの設置するかしないかというのがはっきりしないと、やはり市町村の中には、面倒だとか、設置しなくてもいいのならやめるとか、あるいは非常に形骸化された形でやってしまうというものも見えてきていますので、そのあたりがどうもこの協議会の立場というのがぼんやりしているなという感じは受けています。

○秋山参考人 当事者参加について、私が具体的に参加している新宿区は、かなり障害者の人たちがよく勉強して非常にいい議論ができている、そういう理解をしています。ところが、別の区とか市町村に行くと、ほとんど障害者の人から意見が出てこないんですね。

 ということは、当事者参加だけが必ずしも解として正しいかというと、そうではないはずだと。そういったところでは、やはりユーザーエキスパート、障害者で多様な障害者のことを理解している人を派遣して補うとか、そういうことが必要だという認識に立っています。したがって、障害者にも勉強していただく人も必要ですので、単に当事者参加万々歳だけではないだろう。そういうことで、総合的によくするためにはそういうことも必要だと認識しております。

 また、運営協議会については、ビジョンなき運営協議会という理解をしています。なぜビジョンがないかというと、障害者、高齢者の交通を将来どういう構想で考えていって、その中でNPOを認めていくというのはどういう意味なのかということが、まだ日本社会では理解が十分得られていないという問題がございます。

 以上です。

○穀田委員 どうもありがとうございました。

 終わります。