国会会議録

【第164通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2006年5月24日)

 建築基準法の審議。「被害者救済」を超党派で取り組むことを提案

○林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。穀田恵二君。

○穀田委員 きょうは、民間検査機関の建築確認について、まず最初に聞きたいと思います。

 民間指定確認検査機関が行った建築確認に見落としなどの瑕疵があった場合、その責任はだれが負うのかという問題について、最高裁ではこの間決定が下されました。

 そこで、現行法では、民間検査機関が交付した建築確認済証については、特定行政庁の建築主事が交付する確認済証とみなすとされています。ところが、指定確認機関から特定行政庁への報告は、私、一番最初にこの議論が始まったときにお見せしましたけれども、四ページなんですね。その報告書しかなくて、検査することはない。当然、瑕疵があった場合に責任を負えと言われても、その果たしようがないというのが現実であります。この矛盾を、今回、この法案はどのように解決しているのか聞きたいと思うんです。

 もし民間指定確認検査機関の確認検査で構造計算の偽装やミスの見逃しなどがあった場合、監督強化など、本法案による変更は現行法とどのように違ってくるのか、まずお聞きしたいと思います。

○山本政府参考人 特定行政庁が、民間機関の個別具体の確認事務について監督権限を強化できるように、民間確認機関に立入検査をすることができるようにいたしました。それから、逆に、今御指摘がありました民間確認機関から特定行政庁への報告でございますが、審査の状況についても、審査の主要なポイントについても、特定行政庁に報告するようにいたしました。このことによりまして、個別具体の確認事務についての特定行政庁の監督権限を強化したということでございます。

○穀田委員 後でも述べますけれども、監督権限を幾ら強化しても、現実に初歩的ミスがその指定機関や特定行政庁で行われている、見過ごしている現実を見たら、その程度で物事が解決するとはとても思えません。

 そこで、地方自治体からこんな御要請が出ています。国、特定行政庁及び指定確認検査機関の役割と責任について明確にすること、特に、指定確認検査機関の行った確認検査について、当該機関に法的責任があることを法律上明記することなどの要望が出されています。

 本法案によって民間検査機関の法的責任があることが明確にされたのか、また、逆に言えば、なぜ民間検査機関の責任を明確にできないのか、この点についてお答えいただきたい。

○山本政府参考人 ただいまの御指摘に端的にお答えいたしますと、現行法は、民間確認機関が建築基準関係規定に建築計画が適合しているかどうかを判定した上で確認済証を交付するということを規定しておりますので、その確認に、あるいは確認済証の交付に瑕疵があった場合には、民間確認機関が責任をとるということは建築基準法上明確だというふうに考えているからでございます。

○穀田委員 そうは簡単になっていないんです。では、法律上明記したらいいじゃないか、こうなるわけでして、そうならないのは理由があるんですよ。やはり、今、先ほど一番最初に私が触れましたように、要するに、特定行政庁の確認とみなすという規定そのものに矛盾があるんです。こういう規定はそんなに多くありません。

 建築確認というのは、特定行政庁の建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならないという原則があって、特定行政庁はその瑕疵ある場合責任を負っている。一方、指定確認検査機関にも、先ほど言った、みなすとしているけれども、その責任はやはり不明確だというのが多くの自治体からの意見なわけです。

 もちろん我々は、何度も言いますように、当時、この問題についての民間開放をする際の法律に対して、そういうやり方は間違っているということで反対したことは御承知かと思うんです。だから、建築確認は自治体の事務だから、そもそも公の事務を民間が行うことに問題があるというのが私どもの考え方ですが、そういう点で、あわせて、民間が行った公の事務を公の事務とみなす場合、その民間の法的責任を明確にしておくべきだったんですね。だから、そういう点なども九八年の法改正時に作業しておくべき問題であって、その矛盾が今回の事件で露呈したと考えています。

 だから、私どもは、民間検査機関の建築確認は、今後の問題ですよね、あくまでも自治体の事務の補完、補助であって、最終責任の伴う確認済証の発行まで任せてしまうべきではないと。この点を改めない限り、今後も同様の矛盾が起こると考えています。

 そこで、民主党に質問したい。

 民主党案では、確認済証の発行権限は特定行政庁に限定するとしています。これによって、最高裁判所の判例で建築確認は自治体の事務とされたことによる、先ほど来指摘している特定行政庁との矛盾、瑕疵ある場合の民間検査機関の責任の明確化などは改善されるんでしょうか。

○小宮山(泰)議員 先生御指摘のとおりでございますけれども、現状では、特定行政庁に責任は帰属するが、事前には審査が全くできないという状況にございます。これは制度上極めて問題があると言えますし、また、それによって、民主党案では、責任の丸投げを認めないで、確認済証や検査済証の発行権限を特定行政庁に限定することとしております。民間の指定確認検査機関が建築確認業務を行った場合でも、特定行政庁が確認済証や検査済証を出すこととなります。

 民間確認検査機関が不自然なチェックを行っていた場合や、民主党案で特定行政庁に設置が求められている苦情受付窓口に情報が入った場合、特定行政庁が再度精査することになり、法令違反に歯どめをかけることができるようになると考えております。

○穀田委員 では、その点と関係して、私はこの間、参考人質疑その他含めて、建築確認の民間開放についてをずっと質問してきました。構造計算書偽装問題に関する緊急調査委員会は、これは何度も私指摘したことですが、「一部の検査機関が、営利企業であることから「建築主に好まれる低料金で早く」という経済原理に基づく安易な審査に流れる傾向を招いた。」こう指摘しています。一部とはいえ、営利企業であることの弊害を認めています。

 この点について、民主党案ではこの安易な審査に流れる傾向を食いとめることができるのでしょうか。

○小宮山(泰)議員 そちらの方でございますけれども、確かに、安くて早くて審査が緩いところに流れる傾向というのがあったと思います。経済的にもやはり支配されるというのは、そういった状態が生じたというのは現実にあったことだと思っております。

 このような状態を解決するためにも、民主党案では、責任の丸投げを認めないということで、確認済証や検査済証の発行権限を特定行政庁に限定するということにしておりまして、特定行政庁の審査能力の向上、業務の適正化についても規定をしております。さらに、民主党案では、指定確認検査機関の業務適正化として、建築主が株式の所有関係、親族関係にある者等であるときは、確認検査等を引き受けることができないとしております。

 これらにより、指定確認検査機関が安易な審査を行うことを防ぐことができると考えております。

○穀田委員 ただ、今ありました民間の検査機関が現実に存在するというもとで、どうしてこれを、全体として、安全性を確保するための方策として実らせるかという問題については、若干の態度を私どもとしては既に発表していますので、また、多くの皆さんはそれを見ていただければと思っています。

 そこで、次に、丸投げ問題について聞きたいと思うんです。

 大手ゼネコンが工事を下請に丸投げすることが問題となりました。姉歯元建築士が偽装したマンションやホテル計九十八件のうち、二十二件が鹿島や太平工業など元請のゼネコンなどから木村建設に丸投げされていた。分譲マンションの丸投げは計九件だった。施工を元請したゼネコンが中小の建設会社に丸投げするケースは、一般の建築工事でよく見られます。しかし、大手業者の施工かどうかはマンション選びの重要な目安になっているにもかかわらず、実際は別の業者に丸投げされている。これは消費者から見れば不当表示です。

 国交省として、何らかの手は打ったのでしょうか。

○竹歳政府参考人 まず、現行の建設業法でございますけれども、民間工事におきましては、発注者の書面の承諾があれば一括下請は違法なものではありません。これは、発注者保護の観点から、発注者の信頼を裏切る行為である一括下請負を原則として禁じているものの、保護される対象である発注者自身が一括下請負を承諾している場合には、これを禁じるまでもないとの考えによるものです。

 しかしながら、今御指摘のように、分譲マンションの場合においては、発注者とマンションを買われるエンドユーザーが異なるという状況でございます。こういう場合には、購入者の信頼を損なうのではないかという御指摘がまさにあったと思います。

 このため、消費者の利益を保護する観点から、一括下請負については情報開示のあり方も含め検討することが必要であると考えておりまして、分譲マンションの広告における表示内容の適正化について、不動産業界の自主ルールを定めてもらうよう不動産公正取引協議会連合会等と相談しているほか、六月に総合政策局に建設産業政策研究会というものを設置する予定にしておりまして、そこで一括下請負を含む施工体制のあり方についても検討していきたいと考えております。

○穀田委員 情報開示は当然だし、それから、自主ルールといってもそれは要請しているだけで、だから、緊急調査委員会報告でも指摘しているわけで、マンションの場合というのは、何回も言うように、購入者は建築主ではないわけなんですよね。購入者の同意があればまだしも、大体、建設前には購入者は決まっていないわけだから、どう考えたってそれはおかしいわけなんですよ。

 そこで、大臣にこの点はお聞きしておきたいんです。

 緊急調査委員会報告でも「分譲マンションのような発注者(建築主)と、建設された建築物の最終所有者とが異なる場合は、互いの利益が相反することがある。」と指摘しているとおりだと私も考えるんですね。マンションなどの建築物というのは、要するに建築主の同意なんかを外せばそれはいいわけで、そういう法改正をすべきではないか。もちろん、研究会をやるというのはわかるんですよ。大臣の政治的な見解についてお聞きしておきたい。

○北側国務大臣 分譲マンションの場合に、建築主とそしてエンドユーザー、要するに住宅取得者が違うわけでございますから、その住宅取得者の保護を図るという観点から、私は、所要の見直しをすべきだということで大分前に指示をしているわけでございます。そういうことで、今竹歳局長が答弁したような取り組みもしているわけでございますが、今後、制度的に、単に自主的に云々ではなくて制度的に、表示についても、きちんと表示をしていくということについて義務づけすべきかどうか、そこはぜひ検討させていただきたいと思っております。

○穀田委員 研究会が開かれるし、それで見直しすべきだということがありますから、私は、法改正に踏み込んできちんとやろうということを改めて提起だけしておきたいと思います。

 次に、偽装問題についてもう少し触れていきたいと思うんです、後半は。

 この前、関西で初めてマンションで耐震強度不足が判明しています。また、国交省がこの間、民間検査機関から抽出した百三件のうち十五件に疑問があることも公表されています。さらに、ことしの四月二十四日には、不動産業者によるマンションの耐震性の再確認に関する調査結果が発表されていて、五件、強度不足物件が判明しています。このように、調べれば調べるほど問題物件が明らかになっているんです。

 そこで、第一に、大阪のマンションで耐震強度不足が判明した点について、大阪市城東区の内容なんですが、この概要と原因を簡単にお知らせください。

○山本政府参考人 指定確認検査機関が確認を行いました大阪市内の一物件でございますが、建築基準法上必要な耐震強度が確保されていないということが確認されました。

 大阪市からの報告によりますと、当該物件は、必要保有水平耐力の計算過程で誤って適正でない数値が入力されたことなどによりまして、大規模地震時の強度の指標値Qu/Qunが〇・六一程度となっており、また、指定確認機関もその誤りを見抜くことができなかったと聞いております。

 大阪市におきましては、既に、建築主などに対しまして、建築物の耐震性を確保するために早急に是正措置を講ずるよう指示したというふうに聞いております。

○穀田委員 簡単に言うと、原因というのは二つあると。建築士の数値入力ミス、それからERIのミスの見落としということなわけですな。

 建築主の日本リートは、住民説明会でこう言っているんですね。全く単純なミスだと言っています。ただ、説明を受けた住民からは、単純な入力ミスと言うけれども、素人にはわかりにくいという声が当然上がったわけです。単純な入力ミスがなぜ起こるのか、そのミスがなぜ見逃されるのか。今度の事態の中で、国交省はその内容をつかんでいますか。

○山本政府参考人 大阪市の物件の確認検査は日本ERIがやったわけですけれども、基本的に、なぜこれを見過ごしてしまったかという部分について、今の段階でつまびらかになっていないといいますか、要するに審査のポイントを踏まえていなかったということに尽きるというふうに受けとめております。

○穀田委員 そこで、一番最初に戻るんですけれども、そういうミスというのを見逃されるということで、これは、検査を強化したり立ち入りをやっただけでは、そう簡単にはなかなか直らないよということを私は一つ言いたかったわけですよね。

 あわせて、私が前に指摘した横浜のケースもありますよね。これも報道でいうと、田中構造計画研究所の確認申請をERIが審査した。耐震壁などが基準を満たしていないと指摘した。基準を満たすにはコンクリートと鉄筋の強度補強が必要だったが、同研究所は鉄筋だけを補強し、ERIに再提出した。ERIは見落として建築確認を出した。こういうことでしたよね。それで、構造計算は建築士資格のない社員が行って、建築士のチェックも受けていなかった。確認検査機関の日本ERIに不備を指摘された後のやり直しも同じ社員が行っていた。こういう経過だと。

 つまり、資格のない社員が構造設計を行い、建築士のチェックなしでERIに確認申請を出した。ERIは一たん不備を指摘したけれども、やり直しが不十分な再申請をチェックせずに確認した。全く初歩的ミスと言えるけれども、間違いありませんね。

○山本政府参考人 横浜のケースの事実関係は御指摘のとおりでございます。

 特に、建築確認機関におけるミスは、指摘して再び上がってきたものについてこれをチェックできなかったということですので、ミスとしても重大であるというふうに考えております。

○穀田委員 だから、こういう初歩的で、しかも重大なミスが起こるというのが今の現実であるわけです。

 なぜ無資格者が構造計算ができるのか。有資格者である一級建築士がきちんとチェックして、みずからの責任で申請書を出す必要があったわけだけれども、それをしなかった。しなかっただけではないんですね。担当所員は何と言っているかというと、以前から強度不足を認識しながら、指定確認検査機関に確認申請をしていた。所員は市の聴取に、時間に追われ、ミスを指摘された後で修正すればいいと思ったとまで言っているんですよ。だから、まさに法令違反、やるべきことをやっていない、これが広く常態化していたというところに問題がある。

 ですから、今回の法改正で、こうした初歩的ミスと思われる事例は改善されるんでしょうか。端的にお答えいただきたい。

○山本政府参考人 御指摘いただきました二つの事案は二つとも、今回の改正案によりまして、第三者の構造適合性判定を受けるべき物件でございます。したがいまして、この第三者による構造安全性についての厳密な審査を受けることになりますので、両事案とも、新しい制度のもとで審査を行えばチェックはできるというふうに考えております。

○穀田委員 そこはちょっと異論があるところで、そう簡単にはならぬと。

 それが発見されるという場合、またいろいろなことが起きる可能性はあるわけですけれども、問題は、構造設計者側の責任そして自覚、これの欠如が一つあるわけで、もう一つは、検査機関の無責任さ、検査のずさんさ、こういう二つの、いわばつくる側と検査する側の両方の内容が改善されてこそ法改正の意味があるというふうに私は一貫して考えているわけです。問題は、こうした事例が特殊じゃなくて常態化しているということについて、ぜひ私は注意を喚起しておきたいと思っています。

 そこで、初歩的ミスには、簡単に言うと、チェック体制、機能、これのほころびや不備があって、それの改善が必要だ。問題は、そういうときに何が背景にあるのかについて問われてくると考えます。

 そこで、国交省が実施したサンプル調査についてお聞きしたいと思っています。

 民間検査機関十三社からの、抜き取り調査五百件のうち設計条件の厳しい物件百三件、そのうち十五件が強度不足の可能性があるとされています。確認したい。一つは、このうち、偽装が確認されたものはないということだけれども、強度不足の疑問がある物件がなぜ確認検査を通ったのか。検査側は確認していないか、それか見落としミスか、こういうことですわね、聞きたい。二つ目に、強度不足の疑問がある物件の設計者は資格、技術能力はあったのか。これは大事な問題ですから、もう既に調べていると思いますが、お聞きしたい。

○山本政府参考人 今御指摘いただきましたサンプリング調査は、今回事案を契機といたしまして、国が指定しております五十機関の民間の機関に対しまして、昨年末に立入検査をいたしました。この検査に際しまして、各機関ごとにあらかじめ抽出された直近の確認済みの物件、これは階数十階以上のものを優先して出していただいていたわけですけれども、この中から、鉄筋コンクリート造を優先して、まず五十件を各機関ごとに抽出しました。

 その五十件の中から、今回の事案の問題であります柱、はりの断面積あるいは鉄筋の本数、鉄筋の径などをチェックしまして、設計条件が相対的に厳しいと思われるものを十件抽出しまして、これについては、実際に確認検査をした検査員と検査官がやりとりをしまして、いろいろ問題点を整理したものでございます。その上で、この十件の中から、さらに、今言いましたいろいろな条件をチェックした上で、設計条件が一番厳しいと思われるものを二つ取り出しまして、設計図書を全部私どもは持ち帰りました。これが百三件でございます、全部合わせまして。この百三件に対して専門家に調査をしていただいたわけでございます。

 いろいろ問題点の対応はあるんですが、例えば構造図あるいは構造計算書相互の不整合といったような形で疑問点があるわけでございまして、五月十六日に、確認を行った指定確認検査機関、それから特定行政庁に結果を伝えて、改めて問題点等、法適合性について今精査を求めているところでございます。

 それから、二番目に御指摘いただきました民間機関の検査員の能力の問題でございますけれども、これは立入検査で今言いましたものを材料に検査員とやりとりをした上で、問題点がある検査員につきましては、整理した上で指導しているところでございます。

○穀田委員 その前半の話は、私は、今も言いましたように設計条件の厳しいということで、わかっているわけですよね。それは言っていただかなくても大体わかっているんです。

 今言ったように、なぜ検査機関を、確認検査を通ったのかということなんですよ、それらが。もう一つは、強度不足の疑問がある物件の設計者は資格だとか技術能力はあったのか。検査する側と違って、強度不足の疑問がある物件の設計者、それは資格、技術能力というのはあったんかいなということを聞いているんですけれどもね。もう一度、簡単に。

○山本政府参考人 その部分を、十五の物件についてすべて確認をした確認機関とそれから特定行政庁に戻しまして、特定行政庁において設計者とか所有者とやりとりをして、今のような問題点について精査をしているところでございます。

○穀田委員 だから、精査しているから今はわからないということやね、簡単に言えば。

 だけれども、これはとても大事なことで、私が言ったのは、なぜ確認を通ったのか。それから、やったところは、つまり二つですわな、つくる側と検査する側があるわけやから、そっちがどっちも資格があるのか、能力があるのかという二つを調べなければ、現実の建物の評価に伴っていろいろ問題が起きている内容を、何が問題かということについては、少なくとも最低限の条件として、それは資料として押さえなきゃだめだということを私は言っているわけですね。それを至急やってくれということです。

 今お聞きした中で、簡単に言うと、設計条件の厳しいというのは、今、柱だとか、はりだとか鉄筋だとかとありましたように、要するに余裕が少ないということですわな。簡単に言えば、耐震基準ぎりぎりでの設計。これは、一番最初に思い出します、小嶋社長などが経済設計が何が悪いというようなことを平気で言っていましたけれども、要するに、一般的に言う経済設計ということなんですかね。

○山本政府参考人 一概にレッテルを張るのはなかなか難しいと思うんですが、要するにコストを下げているということでございます。

○穀田委員 そちら流に言えば、コストを下げている。これは、ただ、私が大事だなと思うのは、局長、コストを下げていると言っているのは、やはり小嶋さんも言っているんですよ、何が悪いと言って。だから、これが経済設計なんだと言っているわけだから、世に言う経済設計であるということは認めておられる、しかも、それがコストを下げているというところまで来たというところが大事だと。

 だとすると、私は、その構造物というか建物というのが、つくった人たち、つまり建築士または事務所が経済設計を手がけていた可能性もあって、他の構造設計は大丈夫かどうか調べる必要があるわけですね。当然、そういうぎりぎり、最初にありましたようにいわゆる設計条件の厳しい物件としてどうも出てきている、その人たちがやった、建築士または事務所がそのほかのところでも経済設計を手がけていた可能性もある、そこを調べることが相当大事だと思うんですね。さらに、設計の依頼主は、ヒューザーのように経済設計を要求していなかったのかどうか、これも調べる必要がありますよね。私が言っているのはわかりますわな。

 そこでやったところと、それを注文したところがそこでやっていなかったかというのが、この間の一連の中で起きている事象からして、今後の事態からしても、安全性を確かめる上でも一つの幹となるという意味から言っているわけですが、この点はどこまで進んでいますか。

○山本政府参考人 具体的な事例で御報告いたしますと、まず、横浜市内で構造計算に誤りが判明しました物件は、構造設計者である田中テル也一級建築士が関与した物件でございます。これについては、特定行政庁と協力しまして、この田中テル也一級建築士が関与した物件について同様な誤りがないかどうか、個別の物件について調査を行っているところでございます。八物件が特定されておりまして、七件が調査済みでございます。調査済みについてはいずれも偽装はなく、耐震性にも問題がない旨報告を受けております。

 それから、もう一つの例を申し上げますと、熊本県内で、木村建設に関連する物件で、構造計算に誤りが判明した二物件がございまして、これも構造設計者である設計事業者の関与物件について熊本県において調査を進めております。今、これまでの報告では、耐震性等に問題がある物件の報告は受けておりません。

 同じように、大阪市についても、先ほど今精査していると申し上げましたけれども、同じような考え方でやってまいります。

 ただ、御指摘がありましたその発注者について、発注者がほかに関与したものについてというところまでは今やっておりません。

○穀田委員 先ほど私、横浜の例を出したわけですね。皆さんお聞き及びかと思います。それが実はこの例なんですよね。

 だから、わかっている範疇は、それは特定的なものはそうなんですよ。明らかにそれぞれの特定行政庁でミスをした、それから、これを検査で通して失敗をしたというものは、それは大体やっているんですよ。それはわかっているんです。

 問題は、先ほど言った百三件のうち十五件が強度不足の可能性があるとされた、そういう事態のもとで、そのほかに四百件もやっていますね。もちろんやっていますよ、そちらは。それは知っているんです。問題は、そういうところから二つの例を出したけれどもあとはないというのが実際だと思うんだけれども、やはり私は、全部きちんと調べて、そういうものが一つの、一番わかりやすいところなんだから、きちんとしていく必要があるんじゃないか。

 つまり、この調査から、皆さんがせっかく調査なすったところから言えることは、余裕が少ない構造設計の百三のうち十五件、簡単に言うと一五%は強度に疑問があるという可能性が高いということなわけですね。

 だから、五百件の抽出方法は、先ほどありましたように五十件それぞれの機関ごとに抽出していただいて、その中から二件選んだ方法なわけだから、もちろん単純に五百件のうち十五件とならないのは、それは当たり前ですよね。でも、余裕の少ない設計が全体の中でどれくらいあるか、いわゆる経済設計と言われる物件がどれだけあるのか、これがもしわかれば、先ほど言いましたようにこの物件を集中的に検証すればよくて、経済設計と言われるそういうものの中で少なくとも一五%の確率で疑問物件があるということは、今の数値上は考えられるわけですね。

 だから、検査機関によっては経済設計物件が多いところも少ないところもあるだろうから、その意味で、監視、監督する上でも効率的であります。こういうサンプル調査も検討すべきではないでしょうか。率直な御意見をお聞きしたいと思います。

○山本政府参考人 経済設計の定義が非常に難しいものですから、建築基準法上の最低基準をとにかく満たしていればいいんだという考え方で、そういう思想で設計されたものがどれだけあるかという観点から調査するのはなかなか難しいものですから、今、その百三の調査は定性的に申し上げたんですが。

 そのほかにも、マンションについて、四百件の調査に今取り組んでおります。これは、現実に、過去五年間に六千棟中高層のマンションが建っておりますけれども、その六千棟から無作為に四百件を抽出して調査をしようというものでして、これは既に三百二十件を抽出し、居住者、管理組合の同意も得て調査に入っておりますけれども、そういうふうなことから統計的な意味のある形で抽出して調査し、結果を公表したいというふうに考えているところです。

○穀田委員 私、今無理を言っているわけじゃないんです。経済設計という定義づけでいいますと、なかなか難しいというのはありますよ。でも、お互いにわかっていることで、これは最後大臣にお聞きしたいわけですけれども、それは定義づけという問題を言っているんじゃなくて、それぞれの特定行政庁や民間検査機関に対して抽出してくれということを最初から言うわけでして、先ほどあったように、あらかじめ設計条件の厳しい物件という形でお互いに認識が一致するわけですね。そこからはかれるわけですから、私は、そういうサンプル調査もきちんとしていく必要があるだろうと考えています。

 そこで、結果的に、私がるる述べました経済設計というのが、やはり偽装や強度不足の背景要因になっている証左とも言えるだろうと考えます。この経済設計を推進したり持ち上げたりする業界のコスト削減第一の風潮に対する警鐘を私は鳴らす必要があるんじゃないかと。先ほど経済設計ということを、定義づけの一つとして、もちろんいろいろな考え方はあるでしょうけれども、簡単に言えばコスト削減ということを言っていましたが、こういうコスト削減一辺倒の経済設計を技術進歩だとして吹聴する向きもあるが、私は履き違えたらだめだと思っています。安全第一こそ建築技術の進歩のかなめであることを、今回の事件をきっかけに徹底する必要があると思います。

 したがいまして、私の今述べた点での大臣の見解をお伺いして、質問としたいと思います。

○北側国務大臣 穀田委員の今の御趣旨は、非常に大事な視点だと思います。

 住宅取得者からしますと、建物の構造の部分、これは安全第一に、安全性を重視してつくってもらいたいというのがやはり住宅取得する側の思いだと私は思います。

 建築基準法というのはあくまで最低基準を定めたものでございまして、私は、やはりそういう消費者、住宅取得者の観点から考えた場合には、安全度の方に余裕を持った建築設計が特に構造部分においてはなされることが大切であるというふうに思っておりまして、ぜひ、そういう安全面についての物差しといいますか、そういうのが住宅取得者や消費者にわかるように、きちんとしていくべきなんだろうなというふうに思っているところでございます。

 いずれにしましても、一部の方々の中に、経済設計といいますかコスト削減を競争していくような、そういう風潮については、私は決してよくないというふうに考えております。

○穀田委員 私は、何回も建築基準法の改正の議論だとかそれからこの間の偽装事件で提起してきましたように、ただ、このコスト削減という背景の中には、九五年以来の、政府のやはり全体としてコスト削減が第一だ、規制緩和は当然だという背景があったことだけは何度も指摘していますので、その点はお忘れなく認識しておいてほしい。このことを述べて、終わります。