国会会議録

【第164通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2006年5月10日)

 海上物流基盤強化のための港湾法等改正法案について

○林委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 岸壁、防波堤等、港湾施設の技術基準変更の問題について、まず大臣に聞きたいと思います。

 安全問題は耐震強度偽装事件を通じて国民的関心事になっています。新しくつくる登録確認機関に対する国土交通省の指導監督の体制はどうなっているのか、明確にしていただきたいと思います。

 そしてまた、二つ目に、登録確認機関が行った確認に関し不備が起こった場合の責任の所在はどこにあるのか、明確にしていただきたいと考えています。

○北側国務大臣 今回の法改正におきまして登録確認機関制度の創設をお願いしているわけでございますが、これにつきましては、公共の安全その他の公益上影響が著しいと認められる施設のうち国土交通大臣が定める設計方法を用いない場合について、従来は港湾管理者により実施される技術基準との適合性の審査があったわけですが、これに加えまして、国または技術力のある登録確認機関が適合性を確認することとしているところでございます。これによりまして、適合性のダブルチェックを今回の法改正でさせていただくということになるわけでございまして、港湾施設の安全性が適切に確保されるものと考えているところでございます。

 また、確認行為に不備があった場合の責任はどうなんだというお話でございますが、まず、指導監督の手段としては、登録要件に適合しなくなった場合には適合命令、確認業務を適切に行っていない場合の改善命令等を発出することができるわけでございますし、また必要な報告だとか立入検査も行うことができるわけでございまして、こうした権限を今回の法律には明記をしているところでございます。こうした指導監督を通じて、確認業務が的確に行えることを担保してまいりたいと考えております。

 不備があった場合、万一不備があったとしても、登録確認機関は適合性の評価を行うのみでございまして、工事の許可を最終的に出しているのは港湾管理者でございまして、港湾管理者が一義的には責任を負うことになるというふうに考えております。

○穀田委員 二重チェックといっても、建物の場合でも、最終的には地方自治体、特定行政庁が負うという形式になっているんですよね。しかも、それは四枚のペーパーでやるということに一応なっているんですよね。ですから、私は、それだけでは保障する体制というのは安心できない。しかも、問題は、その体制と質にあるということだけは大事だと思うんです。

 これは、私どもは参議院でもその問題を質問しましたが、やはり、全体の港湾管理の職員数が減っているという問題もあわせまして、現実に、最終的には、先ほどありましたように、港湾責任者が万一の場合負うんだということになっているわけですから、そこの体制とそこの質の強化ということを根本的にやればいいわけで、新しくそれをやったからといって何になるんやという話だけは、私は改めて提起だけはしておきたいと考えています。

 次に、行政財産である特定埠頭を、重要港湾の港湾管理者が認定を受けた民間事業者に貸し付けできる措置を全国展開することなど、港湾施設の利用、そして管理運営の民間開放を促進する問題について聞きたいと思います。

 国や地方自治体が税金でもって整備した埠頭、公共コンテナターミナルは、これまで、公共性を担保するために、港湾管理者である行政が管理運営してきました。

 まず、港湾施設の公共性とは何か。第二に、管理運営を公共団体が担うべき理由は何か。第三に、今回、民間開放を促進するメリットとデメリットは何か。この点について、局長の方からお答えいただきたいと思います。

○鬼頭政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、公共性ということについてのお尋ねがございましたが、港湾法の第十三条という規定がございまして、港湾管理者は、「何人に対しても施設の利用その他港湾の管理運営に関し、不平等な取扱をしてはならない。」という法律の規定になってございます。したがいまして、公的資金で整備された港湾施設については、地方自治体等が港湾管理者として条例に基づいて適正に管理運営を行う、そういう必要があるということが一点目のお答えになります。

 もう一つは、今回、特区の全国展開ということでございますが、運営事業者に埠頭施設を一体的に貸し付ける、これによりまして、運営事業者にとっては、土地や建物の使用について法的な位置づけが明確化をされます。そういう意味で、長期的な視野に立った設備投資が可能になる、あるいは、使用頻度に応じて使用料を支払う使用許可制度と異なって、一定額の借料のもとに埠頭施設の貸し付けを港湾管理者から受けることができるようになる、そういうことから、安定的かつ効率的な埠頭の運営が促進できる。そういうことから、今回、全国展開にすることにしたわけです。

 さらに、十五年の制度化以降、岡山県の水島港、福岡県の博多港、沖縄県の那覇港、この三港において、既に特区の制度としてこの貸し付けが実施をされておりますが、特段の弊害がなく、いずれも効率的に運営されているというふうに聞いているところでございます。

○穀田委員 その一、二はわかってんけどね。その話はわかったんやけど、要するに弊害はないというだけで、メリットがあったという話も別に、効率的運用がされたという言い方だけでは、それは私は納得できないんです。

 この間の一連の考え方の中心は、昨年もスーパー中枢港湾の中で議論をしましたね。それで、簡単に言えば、国際競争力の確保ということですわな、キーワードは。そこで、先ほども大臣もそう言ってはりましたし、そう言わないと……。

 私、そのときに言ったんです。コンテナ貨物が日本の港に戻ってくるのか、それから、日本に直接入港する国際基幹航路は維持できるか、そして三番目に、巨大貨物が日本の港に入港する確約があるのかという疑問を出しました。まだ一年しかたっていませんから、その辺はまたおいおい、次の機会があれば、ほんまかいなということについて、お互いに確かめたいと思うんです。

 ただ、結局のところ、効率的運用ということで、結局、行政財産である特定埠頭を、メリットというのは、コスト削減、低減できるということだ、効率的にやれる、長期にやればそういうことができるんだ、そして、一体的に貸し付けることによってできるんだ、こういう趣旨ですわな、簡単に言えば。

 私は、だとすると、公営ではそれができない、民営ではそれができるというその理屈が、どこが違うのかということで聞きたいと思うんです。つまり、そもそも公営だとなぜコストが高くて、コストの中身は何で、何をどうすれば安くなるのか。こういうあたりについてどうお考えなのか、局長に答弁を求めます。

○鬼頭政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほどの御答弁の中でお答えをすればよかったんですが、先ほど御答弁の中でもお話をしました先行的に実施しております三港において、私が申し上げたような効果が現実の形で出てきてございます。

 例えば、水島港の場合ですけれども、ガントリークレーンの利用料の引き下げが、三十分当たり、もともと県が港湾管理者ですから、県が管理していた時代は三万円だったのが、この制度を使うことによって二万五千円に下がった。あるいは、薫蒸庫、例えばバナナなんかの消毒をする薫蒸施設ですけれども、その利用料金が、条例などで二十四時間という単位で決まっていたのが、この制度を使うことによって一時間単位に変更ができることになりました。これによりまして、二十四時間で幾らというのが、一時間だと当然安くなりますから、その薫蒸施設の利用時間によって安くできるというようなことがございました。博多港におきましては、コンテナ修理場などの整備、あるいは管理棟のテナント料の低減というようなことで、一平方メートル当たり二千円のものが千九百円というふうになってございます。

 先ほど委員が御指摘になりました、公共ではなぜできないかということですが、やはり公共の場合は、条例でこういう料金なり時間というものがしっかり決まっておりますので、なかなか弾力的にやりにくいという面があろうかと思います。

○穀田委員 それは皆聞いていてわかるように、弾力的に活用すればいいというだけの話じゃないですか。それじゃ弾力的にでけへんという話をしているだけで、何らその理屈になってへんというのは、いつもこれは思うわけね、私。そういう弾力的に運用するように話し合いをしてやればいいじゃないかと思うんですよ。ただそれだけの話ですやんか。

 そこで、いつもこういう場合に私は聞いているんだけれども、時間がないので、労働条件の影響について聞きたいと思うんです。

 埠頭の経営者が行政であろうが民であろうが、労働者の雇用条件などを守れるかどうか、それが問題なんですね。したがって、先ほどもいろいろ質問が出ました。私は、端的に言って、労働者、労働組合との事前協議等の調整が必要だと思うけれども、この辺の仕組み、手当てはどうなっているのか、簡潔にお答えください。

○鬼頭政府参考人 簡潔にお答えを申し上げます。

 今回のこの措置は、行政財産の使用形態を変更させるということにすぎませんで、行政財産を利用する立場にある船社や港運労使の間における民間同士の取り決めに対しては、何ら変更を与えるものではございません。

○穀田委員 最後に、臨海部の未利用地の有効利用について聞きます。

 それで、具体的に言いますと、例えば、大阪市港湾局が大正区鶴町に保有している鶴浜沖埋立地を株式会社のアークランドサカモトに売却して、超大型ホームセンターや外食チェーンを誘致しようとしているんです。それで、地元商店街や小売市場にとどまらず、消費者、市民も、町が死ぬということで危機感を燃やして、反対の声が広がっています。

 今、国会では、まちづくり三法見直しで、都市計画法を改正し、大型店の郊外立地を規制しようとしている。臨海臨港地区、埋立地というのは、総じて、中心市街地から見れば郊外なんですね。こういう政策転換方向と矛盾するんじゃないか。これも端的に。

○鬼頭政府参考人 今回の法律の埋立処分について、十年というものを五年に短縮をするということになってございますが、少なくとも公有水面埋立法の世界では、相手方に対してそれを縛るということは特にありません。別の、都市計画法とかそういう世界での話になると思います。

○穀田委員 十年から五年にしたというのは、約束事でこれまで十年できないというやつを、これから、それが過ぎたら自由にできる、まあ自由じゃないけれどもできる、それを五年に縮めたというだけの話だから、それはわかっているんです。

 問題は、処分の方法なんですよ。そういうことが、例えば大正区などの今言いました大型店が出てくる、それは大正区全体の商店街の八割を占めるぐらいの規模なんですよ。とてつもない規模が処理される、しかもそれが、大阪市がやるようなことになっている。こういう事態になっているわけですね。だから、私は、この処分の方法も問題だと思うんですよ。大阪市側は売却を予定しているけれども、大型店側は、買い取りはできない、賃貸しかできない、こう対立しているんですよ。だから結局、賃貸というのは、いずれ撤退するときの布石で、買い取ってまで進出すると採算がとれなくなる、こういうことなんですね。結局、こんなことをやっていたらまた未処分地になって、最終的には市民にツケが回る。だから、こういうやり方は私は問題だと思うんですね。

 これは私は、少なくとも、どこに処分してもいいだとか、それから処分のやり方については規制を加えるということも含めてしっかり見守らなくちゃならぬということだけ言っておいて、時間が来ましたので終わっておきます。

○林委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。