国会会議録

【第164通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2006年4月14日)

 STS(=要介護者、障害者など公共交通機関を利用することが困難な移動制約者を対象に、必要な輸送サービスをいう)について、「純粋なボランティア団体による移送サービスは『有償』運送の対象としないで下さい」という点について意見を求めた。


○林委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 参考人の方々、本当に御苦労さまです。お疲れさまです。

 私は、日本共産党の穀田といいます。

 まず最初に、この二つの検討小委員会、検討で御尽力された先生にお聞きしたいと思っています。

 今の、事業者それからボランティア団体、タクシー労働者の代表の方々のお話を聞いていますと、それぞれ結構まだ矛盾があるなというのが率直な実感です。

 そこで、先ほど先生がおっしゃったように、結局のところは運営協議会の設置。つまり、国がどう統一的な方向を出すにしたって、結局、先生が今おっしゃいましたように、地方自治体の役割は重要だと言っていましたが、先ほどボランティア団体からもお話ありましたように、それぞれの県などでは運営協議会はつくらないなんというところもある。そういう意味でいいますと、運営協議会の設置とそこでの議論が極めて重要だと思います。

 そうしますと、皆様方がお話ししていた話をずっとまとめてみますと、政省令自身をどうつくるのかというところが極めて重要だ、結局のところ、そこに最後は帰着するんだと思うんですね。先生がおっしゃっていましたけれども、政省令で立派なものをつくっていただくということ自身にも、やはり皆様方が参加していただいてつくられるということが望ましいんじゃないか。大体、政省令というのは省がつくるものですけれども、例えば、政治資金規正法やそれから選挙にかかわる法律などの政省令については、議員も参画してつくろうというようなこともあります。

 したがって、私は、この際にそういう方向性も含めた出し方をしないと、今のままでいきますと、結構お互いに意見がそれぞれの点で違うことがあるわけですから、そこを実らせていく意味での結節点というか、そこは大切じゃないかなと思うんです。そこを、おまとめになった先生にお伺いしたいと思います。

○山内参考人 おっしゃるとおりでありまして、こういった具体的な行政運営についての規定、これをどうつくるかというのは、まさに、本体の道路運送法の改正に加えて非常に重要な問題であると思います。特に、地域の問題が絡んでくるということであれば、そういった地域の持っている実情、そういった情報、それをいかに組み入れるか。あるいは、今回の場合ですと、これは事業ということとボランティアということも絡んでまいりますし、いろいろなところの影響もございますので、そういったところの情報を入れることは重要かというふうに思っております。

 ただ、我々二つの小委員会をやってまいりまして、その辺の情報もかなりのところまでは収集できたんではないかというふうに思っています。ですから、まずはそういった我々の議論を踏まえていただいて、その上での政省令の作成ということをお考えいただきたいということが一つ。

 それから、私は立法の過程について詳しくございませんけれども、現状では、いろいろな形での一般的な意見の募集といいますか、そういった形もあると思いますので、そういったことを参考にしながら、具体的な省令づくり等に臨んでいただきたいというふうに思っております。

 さらに言えば、これは地域によって実情はかなり違いますので、先ほどもほかの参考人の方が御発言になりましたように、いろいろな事例が出てくると思います。こういったことも非常に重要なポイントだと思いますけれども、ただ、先ほど私は、国の行政の役割として統一的な基準をと申し上げましたけれども、そのとおりなんですが、そこだけではカバーできないことが出てまいりますので、そういった意味でいえば、若干の弾力性といいますか、そういったものを持った形が望ましいのかなというふうに考えています。

 以上でございます。

○穀田委員 では、残りのお三方にお聞きしたいと思うんですが、実は、バリアフリー、ハートビル、そういういろいろな形で取り組みが強められて、STS、つまりスペシャル・トランスポート・サービスをみんなで支えていこうというのが新しい全体の流れだと思うんですね。

 それで、一つ例を見ますと、地域生活支援事業というのがありますが、その中で移動支援事業というのがあるんですね。それを見ますと、その事業の内容というのは、グループ支援型だとか、福祉バス等車両の運営だとか、車両移送型だとか、いっぱいあるんですね。こういうものを、実は利用者負担というのは実施主体の判断によるものとするとありまして、結局、実施主体の判断が大事なんですね。

 これは、お三方も皆さんお話があったように、もともと、そういう移動困難者に対する権利としてどう保障していくかという観点が大事だと私は思うんですね。同時に、先ほど労働組合の代表からもありましたように、そうすると今度は、労働者の賃金を得ていく当然の権利、また、事業者は事業者としての営業を行う権利、これらが当然あるわけですね。それらを踏まえながら、全体として移動困難者を支えていくということになりますと、それを調整する機能として、実施主体の判断によるものとするというのが、これがかなめなんですね。

 要は、それぞれが不利益にならない形で、全体としてうまくいくということが大事なんですね。だから、私は、そういう立場で御努力いただけないだろうかというふうに思っています。

 そこで、私は、つまるところ、次に三つ大事じゃないかと思うんですね。利用者が今よりも不便になるということではだめなんだ。それから二つ目には、それぞれの団体が協力をして、それぞれの団体に不利益が来ないようにするということが当然だ。三つ目に、そういう意味でいいますと、今後、単なる運送事業だけじゃなくて、これは本来、福祉の分野や社会保障の分野全体で支えるものであることは確かなんですね。そうしますと、労働組合であれ事業者であれ、いずれにしてもボランティア活動に取り組むということが大事なわけでして、ボランティア活動の取り組みが弱くなってはならない、こういうメルクマールが必要だと思うんですね。その辺が一致できれば、私はさまざまなことができるんじゃないかと思っています。

 したがいまして、今私が述べましたような点での御意見をお聞かせ願えれば幸いです。お三方に。

○田中参考人 どうもありがとうございます。田中です。

 まず、ちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、今回も議論が出ていますが、移動制約者の範囲が大分もめておりまして、私どもNPOはかなり広くとるべきだというふうに言っておりまして、事業者及び労働組合の方は狭くとるべきだ、こういう対立があるんですね。

 そこのところは、実はほかの政策、例えば介護保険事業だとか社会保障のあり方だとかに全部関連してきておりまして、大変重要なことは、私どもが主張していますのは、要介護状況になったら、簡単に言うと年間百万、二百万というお金をお使いになるわけですよね。要介護にしない方がいいわけですよね。要介護にしないためにどうするかといったら、要介護直前の方々が引きこもりと栄養失調でどんどん寝たきりになられるわけですよ、だから、介護保険の要介護になっていない人をどうやって外へ引っ張り出していくのかというところに資金を投下すれば、介護保険のお金ほどはかからないんですね。

 そういう事業をタクシー業者さんがおやりになる、NPOがやるということであれば、地域推進事業等についての予算をそういうところへどんどん振り向けるということが必要だというふうに思っております。

 もう一点、何しろ原理をちょっと強調しておきたいんですけれども、移動制約者の移動を保障する責任は一体どこにあるんですかね。僕はやはり国とか地方自治体の責任が物すごく強いと思うんですね。そこのところが、道路運送法の矛盾なんですが、事業者のコントロール、規制というふうなところで解消できるわけではないわけであって、ぜひとも別個の論理、ボランティアの件を指摘していただいてありがたいんですが、ボランティア活動が自由にできるような基本法のようなものが別個の体系でないと、実はSTSのサービスがうまくいかない。実費程度以下でしかやっていないところの有償というのはこの法律で言う有償移送じゃないというふうにぜひ確認していただいて、法律を成立させていただければというふうにお願いをしておきます。

○林委員長 関参考人、よろしいですか。

○関参考人 特に東京、大阪というような大都会におけるボランティア輸送とタクシーのかかわりというのと、地方とはもう全然違うんですね。地方というのは、もう現実に、介護保険ができたときに全部がそこへ行っちゃって、お客さんが午前中はお年寄りの通院の人ばかりだと。ところが、そういう状況で何とか息継いできたところに今度はNPOの問題が入ってきたということで、その人たちはもうかんかんなんですね。なぜ我々の最低の、運んでいるところでまたやるんだと、こうなっている。

 ですから、東京なり大阪なり、まだまだタクシーがある程度やっているところの中では、タクシーはあってもなかなかやれない部分というのもありますし、福祉タクシーがあったっていわゆる穴があいている部分もあるので、そういったものは運営協議会の中で調整していってうまくできれば、それはそれなりの論議をしたらいけると思いますけれども、やはりどこかですみ分けしておかないとだめなのかなという気がしていますね。その範囲というのを、どこかですみ分けしていく。

 そうすると、今のところでいくと、要介護一以下というのは、通常一人で乗れますし介護保険も適用されないわけですから、今回も外されておるわけですから、そういうのはタクシーでどうですかと。我々も最初に福祉に期待しておったのは、やはり重度の人たちを最初はやっていましたから、それはもう大変なんですね、重度の方というのは。ですから、そういう人たちは手伝ってもらえるというのが一番の前提なんですけれども、なかなかそれはうまくいかない。だんだんとやはりセダン化の方へ行って、通常の介護タクシーに乗せられるようなことと同じことが出てきたら、やはりそこでは抵抗が出てきて難しいんじゃないかなと。

 ですから、もう少しすみ分けをきちっとやってもらうということは、やはり法律の中でどこか、政令か省令かで規定をしてもらわないと、お互いにやりにくいと思うんですよね。その点はひとつそうした省令の改正なりをお願いしておきたいと思いますし、まあこれはもう前のときも一緒だったんですけれども、輸送の範囲のすみ分けをという話、なかなかそこは合わないんですけれどもね。

○待鳥参考人 穀田議員の指摘された三つの観点というのは一番大事なところだと、これはもう賛成をするわけでありますけれども、しかし、具体的な問題になりますと、やはりそれぞれ調整をしなければいけないところになってくるんじゃないかと思っています。

 費用負担の問題が挙げられました。費用負担は実施主体の判断に任せるべき、それが原則だということでありますけれども、お年寄りなど非常に情報が乏しい中で、そういった人たちをどう守るかという観点がやはりなければいけないんじゃないか、だから先ほど明瞭化を図るべきだということを申し上げたところです。

 今、運営協議会の中でおおむね二分の一と言っていますけれども、例えば申請の中身を見てみますと、タクシーの二分の一といったときに、通常は、タクシーというのはお客さんを乗せてからおろすまでが対価であります、距離であります。しかし、NPOの皆さんの申請の中には、車庫を出てから帰庫するまでという全体が対価になっているといったようなこともある。二分の一といったって結局はその物差しが違うということがあるわけですから、やはり省令の中でしっかりと位置づけるか、あるいは届け出制にして不当な運賃については排除できるような形をとっておかないと、利用者の利益を損なってしまうことになるんじゃないか、あるいは食い物にしてしまうようなことさえ出てくるんじゃないかということを懸念しているわけであります。

 いま一つは、輸送の対象の問題でありまして、今、田中さんから、狭くとるか広くとるかという指摘がありましたけれども、狭いか広いかの問題ではないと思います。やはり基準をしっかりしておくということは、一人では公共交通を利用することがかなわない人、自立歩行がかなわない人という基準に照らして、要介護度、要支援度あるいは障害度で判断をしていくものじゃないかなというふうに思っていますので、そこのところをはっきりしておけば問題はないかなと。それで、タクシーを利用できる方は、事業として、公共交通としてきちっと許可をされているタクシーを利用していただく、あるいは公共交通を利用していただくということが、やはり輸送体系としては健全なあり方じゃないかなというふうに考えています。

 いま一つは、タクシーについて、今日のニーズにこたえていないんじゃないか、つまり、ベッド・ツー・ベッドで病院通い等の本当のきめ細かいニーズにこたえていないんじゃないかという御意見も先ほどありましたけれども、決してそうじゃない。今のタクシーというのはもうベッド・ツー・ベッドなんですよ、はっきり言って。高齢化社会が進んでいる地方に行けばなおさら、そういったところにタクシー事業者、労使とも含めて対応していかなければ、タクシーというのは役割を果たせないという状況にあります。

 その中で、本当にお客さんをベッドからタクシーまで、あるいはタクシーからおろして病院の窓口あるいは病室まで連れていくということについては、それこそ本当にタクシーもボランティアでやっている部分があるということについては御理解をいただいておきたいなと思います。

○穀田委員 ですから、私、STSの本源的意味というのは、だれが責任を負うのかということなんですよね。だから、私は地方自治体の例を引いて、そういうところがしっかり現実はやるべき事態が欠けている、だからいろいろな矛盾が起きているということを言ったわけですね。

 同時に、それぞれ皆さんがお持ちの意見については、やはり政省令のところでほんまにこれは詰めた話をせなあかんなということがよくわかりましたし、また、皆さん自身もそういう点も参画していただくことを希望して、私の発言を終わります。おおきに。