国会会議録

【第164通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2006年3月10日)

 「運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案」の質疑ー今年1月にJR伯備線において保線員3人が特急列車にはねられた事故について質問。質問の中で、この事故に関して半年以上前に現場労働者が事故の危険性を指摘、対策を求めていたことを明らかにした。


○林委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 航空法の改正について聞きます。

 今大臣からヒューマンエラーの話がありまして、積極的に報告できるようにということがわざわざありました。その点と関連して、昨年八月、航空輸送安全対策委員会取りまとめで、国における安全情報の収集、分析の強化が求められました。今回の改正で、新たに事業者に対して安全上のトラブルの報告を義務づけます。ヒヤリ・ハットの報告、情報収集、分析も強化する。

 一点確認したいんです。報告の目的は事故の防止にあると思うが、どうか。報告が懲罰につながるとかえって報告されなくなり、結局、事故防止の目的に反する結果になる、こういう指摘が現場からありますが、どのような対策をとるのか、述べてください。

○岩崎政府参考人 今回、法案の中で、事故や重大インシデントに至らないものの、例えば飛行中のエンジン停止など機材のふぐあいに起因するトラブル等々、ヒューマンファクターに起因したトラブルなど航空機の運航に安全上の支障を生ずるものについて、事業者から報告を求めることを予定しております。

 こうした、今回創設する義務報告制度、それからヒヤリ・ハット等の報告徴収、報告を求めることによって、同種トラブルの再発防止、それからその予防対策を講じていくために活用していきたい、このように思っているところでございます。

○穀田委員 私は、報告は事故の再発防止を目的とし、懲罰の対象としないということを明確にすべきだと考えているんです。委員会の取りまとめでも、「国が的確に安全情報を収集していくためには、報告しやすい環境を整備し、自発的な報告が促進される仕組みにすることが重要である。」と指摘されているわけです。改めて私は要求しておきたいと思います。

 二つ目に、株式会社や大株主の投資ファンドが実質的な経営主体となるケースが生まれています、この間。持ち株会社について安全確保にどういう対応をしていくのか、お聞きします。

○岩崎政府参考人 例えば日本航空の例でございますけれども、御案内のとおり、事業会社が、現在、日本航空インターナショナル、それから日本航空ジャパンという会社がございます。そのほかに日本航空という持ち株会社がございます。

 我々が基本的に監督していますのは、日本航空インターナショナル、日本航空ジャパンである事業会社でございまして、航空法によるいろいろな許認可等々、あるいは報告を求めるのもこうした会社が対象でございます。また、事業改善命令を出しましたのも事業会社の方でございます。ただ、持ち株会社に対しましても、例えば日本航空グループ全体でより適切な安全対策を講じてもらいたいというときには、持ち株会社であります日本航空の方に指導の文書を出したこともございます。

 今後もそうした形で適切な対応をとってまいりたい、このように考えているところでございます。

○穀田委員 前回、法案の改正の際に、わざわざ附帯決議を付されまして、そういう持ち株会社に対しても指導ができるようにきちんとやれよというのがあったわけですね。だから、今ありましたように、事実上、行政指導をしているということなんですが、やはり、航空に限らず鉄道も含め、持ち株会社や投資ファンドが短期的な利益を求める結果、安全輸送に必要な投資がおろそかになるおそれがある、そういう意味で、安全監査、報告の徴収、立入検査の対象とすべきだと私は思います。

 次に、JR西の問題について少し聞きます。

 一月二十四日、三名の方が亡くなったJR伯備線の触車事故の概要については、先般八日に説明していただきました。なぜこの問題を取り上げるかということなんですね。昨年四月二十五日のJR福知山線脱線事故を受けて、JR西日本は、二度と事故を起こさないために安全性向上計画の実施中であり、国交省は、昨年の十一月十五日に「着実な実施について」ということで勧告したもとで引き起こされた事故だからです。国交省の勧告では、「監査の結果、「安全性向上計画」について一定の進捗が確認できた」と評価しています。

 まず、大臣に聞きます。この伯備線触車事故を引き起こしたJR西日本の姿勢、安全性向上計画の実施状況についての評価はどうなのか。

○北側国務大臣 この伯備線の人身事故につきましては、これは、こうした勧告がなされ、そもそも厳しく再発防止に向けて保安監査等をやっている中でこうした伯備線の事故が起こったことについては、まことに遺憾であるというふうに言わざるを得ないというふうに考えております。

 この伯備線につきましては、中国運輸局の方から職員二名を派遣いたしまして現地調査を行うとともに、JR西日本に対しまして、文書により、原因究明と再発防止をするように警告をいたしたところでございますし、また、二月の二十一日から二十四日まで四日間、今回の事故が発生したJR西日本の米子の支社に立ち入りをいたしまして、安全性向上計画の取り組み状況、伯備線の人身事故後の安全対策の状況等を確認するために保安監査を行い、再発防止対策に万全を期するよう指導をしたところでございます。

 国交省といたしましては、こうした事故を発生させないよう、今後とも引き続き、JR西日本に対しましてしっかり指導をしてまいりたいと考えております。

○穀田委員 それは、評価じゃなくて、この間の経過とやっていることを言っているだけで、もうちょっと議論をしたいなと思うんですよ。

 私、この間も、安全性向上計画が実行されている段階で、金沢でこんなことを話しているという例を出しました。そうしたら、国交大臣は、事業者が現場の声を聞いて風通しのよいようにしてもらいたい、安全性向上計画も、現場も一体となって実施してほしいと答えたわけですね。ところが、また事故を起こしてしまったわけです。

 今お話あったように、監査もしていると。監査内容は、安全性向上計画の進捗状況、二番目に、伯備線での人身障害事故の再発防止対策の取り組み状況についてということです。そもそも、安全性向上計画を着実に実施しておれば、この事故も起こらなかったはずなんですよ。だから、その当たり前の立場に立てば、事故をなぜ起こしたかという原因と安全性向上計画の徹底状況というのは一緒に見ていく必要があるわけです。

 そこで、国交省が把握した内容について聞きたいと思う。具体的に少し聞きます。

 安全性向上計画には、ヒューマンエラーについては起こり得るものであることを前提という認識に立って、先ほども前の質問者に対する答弁でもるる大臣はお話ありました、そして、事故の芽などの報告をつかみ、事故防止を図る体制を構築するとしています。この認識を米子支社のトップが持っていたかどうか。それを検証する上では、事故が発生した直後、JR西日本の米子支社長が記者会見でどんな発言をしたかということに象徴されると思うんですね。この内容を掌握していますか。そして、何らかの指摘を行いましたか。

○梅田政府参考人 先生御指摘の、伯備線の事故発生後、JRの米子支社長がマニュアルについて発言したことは承知しております。

 私ども、昨年の四月二十五日に発生しました福知山線の脱線事故を受けまして、御指摘のように、安全性向上計画を策定し、その具体化をする実施の中で、こういう作業のマニュアルについても見直しを行っているということで、私どもの監査の中で確かめつつ、たくさんのマニュアルがありますから、早くやるように指導しているところでございます。

 そうした中で、安全性向上計画の取り組み状況の確認のために、米子の支社等にも入りました。そういう際に、幹部に対しまして、いま一度原点に立ち戻って輸送の安全の確保にしっかり取り組むよう指導しているところでございまして、これは、私どもとしては、ほかのJRと違いまして、JR西日本に対しましては強く指導してきているところでございますので、まだ足らないところは多々あるかと思いますが、私どもとして、最大限徹底した指導をしながら体質を変えていきたいというふうに考えているところでございます。

○穀田委員 今局長からお話あったマニュアルの話は、確かに前半ではそう述べているんですよ。これは、おたくのところからもらった資料ですよ。そこの中で彼はこう言っているんですよ。「人間はミスをするものだという前提にたった事故防止策が必要だとおっしゃってましたが、これまでそのような発想が無かったのか。」こういう質問をされているんですよ。その質問に答えてどう言っているか。「発想が全くゼロであったということは無いと思いますが、人間はミスをするもの、危険性がある、ということを基本にいろいろなルールを積み上げてきたという歴史は、残念ながらございませんでした。」と言っているんですよ。

 肝心な話に答えてくれなくちゃ困るじゃないですか。しかも、肝心な話をしないということは、そういうところに着目していなかったということじゃないですか。二重の過失と私は思うね。そう思いませんか。どうですか。

○梅田政府参考人 具体の発言につきましては、先生の御指摘のようなことだろうというふうに私どもも報告を受けております。

 私どもといたしましては、安全につきまして、原点に立ち戻って、ミスをするものだという発想でマニュアルの見直しをやるというようなことは最初から指導してきているところでございまして、そういう点で、そういうものが今までJR西日本にはなかったという事実を述べたと思います、彼は。

 ただ、そうはあっても、この事故を起こした以上、やはり考え方を変えて、原点に立ち戻ってもう一度根本からマニュアルを見直すということが大事だろうと思っておりますし、私も、現実に、本社に入りましたときに、いろいろなマニュアルがありますけれども、このマニュアルについて、こういう事故が起こったということを、厳粛な事実を受けとめて、原点に返って徹底した見直しをやってほしいということを申し上げておりますので、まだまだ徹底さが足りなかったという点では、再度我々としても努力してまいりたいというふうに思っております。

○穀田委員 当たり前だと思うんですね。何で私そんなことを言っているかというと、十一月十五日にわざわざ、安全ミーティングなんかを通じて得られた意見に対してきちんと対応せいということまで言っているから、言っているんですよ。今お話があったヒューマンエラーという考え方というのは、その価値観、安全最優先の風土を徹底するという、真っ先に書かれた内容だったわけですね。だから、私言っているんです。

 そこで、緊急安全ミーティングというのをずっと開きましたよね。そこの中でとりわけ、支社長が全現場に赴き、趣旨の徹底を図るというのが計画だったわけです。この緊急安全ミーティングの場で、触車事故を起こす危険が現場の労働者から指摘されていたのではありませんか。この内容は把握していますか。

○梅田政府参考人 JR西日本の米子支社では、昨年の四月二十五日の列車脱線事故を受けまして、六月から八月の間でございますが、本社役員あるいは支社長が現場に赴きまして、担当者と緊急安全ミーティングを九十一回開いたという報告を受けております。私どもが把握しています情報では、緊急安全ミーティングはいろいろございますけれども、いろいろな意見が出てきております。

 例えば、他区所で事故が発生しても自分には関係がないという意識があったという風土、価値観に関する意見。それから、事故原因が安全追求から責任追及へ変わっているので事故の芽は報告したがらないなどの、事故の芽等の報告に関するもの。それから、技術系の若手社員は経験不足により異常時に不安を持っているなど、教育指導のあり方に関するもの。落石防止対策として防護網の整備が必要であるなど、設備面の安全面に関するものなど、さまざまな意見があったというふうに聞いております。

 そういうところに出ました意見につきましては、本社みずからが率先して具体的な対策を打ち出すということで、その風土、価値観の変革を推進するよう言っておりまして、例えば、その際に出ました落石防止対策として防護網の整備につきましては、私どもが把握しております限りでは、十八年三月末までに、山陰線十三カ所等、指摘されたものについては、二億以上の予算がかかるわけですけれども、整備をしている最中であるというふうに聞いておりますが、先生の御指摘の触車事故の可能性があるというようなものにつきましては、現在私どもが聞いております情報では、この安全ミーティングの中であったというようなことは聞いておりません。

○穀田委員 私は、少なくとももう一度ぐらい、どうやったと聞くぐらいのことが必要だと思うんですよね。

 私、持っているんですけれども、「本社役員による緊急安全ミーティングで出された意見に対するフィードバック」、つまり、自分たちがどういう意見を言って、どういうことをやったかというものなんです。これでいうと、米子保線区、七月二十二日と書いていますね。そして、伯備線は曲線区間が多く見通しが悪い、ヒューマンエラーを一〇〇%なくすのは困難、ハード面でカバーすべきではないか、特に列車の見張りについてはハード対策を希望すると意見が出されている。そして、本社がちゃんと答えている。どう答えているか。お金の制約はあるものの、列車接近警報装置等は検討すべきであると、指示まで出しているんですよ。だから、少なくとも、緊急ミーティングに参加した人たちはそういうことを言った、本社も答えてきたという話があったということなんですよ。

 だから、現場に聞けば、こんなこと、どうやったという話を聞けばわかることなんですよ。書類を渡してこうやってやっているから、そんな情報も入らない。私、いただきましたよ、そちらから。その資料は、分類したもの、確かに緊急ミーティングの実施状況についてという状況がありましたよ。だけれども、そういうときにそういうことはなかったのかという、いわば労働者、働く者は、実際に現場でいろいろなことが起きている問題について、いわゆるヒヤリ・ハット、そういうヒューマンエラーに関する問題を出しているときに、それをつかもうとしないというところに私はちょっといささか難儀やなと思うんですね。

 だから、私はあえて聞きたいんです。監査に入っているわけですやんか、事故があってから、二月に。その際に、現場の職員や労働組合の話を直接聞きましたか。お答えください。

○梅田政府参考人 今回の事故が発生しましたJR西日本米子支社に対する保安監査では、まず、安全性向上計画に基づき、本社や支社の役員による緊急安全ミーティングなどを通じまして、現場職員の意見の吸い上げ、あるいは事業者の風土、価値観の変革に向けた取り組みがどのように行われているかという、計画の取り組み状況について確認を行ったところでございます。また、伯備線の事故の発生後、中国運輸局が行いました警告に対します再発防止対策、これの取り組み状況について、支社がどのような対応をしているかを確認して、万全を期するように指導したところでございます。

 私ども、今後とも、こういう事故が発生しないように、JR西日本の会社、事業者側に対しましてしっかり指導をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

○穀田委員 私、一番最初に大臣に聞いたですやんか。そのときにお話ししたのは、現場の声を聞くことが大事だということをわざわざ言っているわけじゃないですか。今度の事故が起きたときにも監査に行っている、そういう話はなかったのか、現場の話を聞いたらええやないか、それがなかったらあかんで、こう言っているわけですよ。

 それで、支社長はどう言っているかというと、要するに、マニュアルどおり対応していれば事故は起きなかったとまで言っているんですよ。では、そのマニュアルはどうだったかという話を、私は持ってきましたよ。これが米子支社工務関係触車事故防止要領ですよ。大臣、これ、ポケットに入りますか。入らぬですわな。こんなにでかいものなんですよ。JR西日本の大阪支社なんかは、こういうぐらいのものでポケットに入るんですよね。これは、こんなものなんですよ。ポケットに入らぬですわな、これ、だれが考えたかて。要するに、マニュアルどおりやっていればと言うけれども、およそそういう持たすようなマニュアルがあったんかいなと思いませんか。

 だから、保線の労働者に私は聞いてみましたよ。このマニュアルには、気象状況が急変するなどの異常時には列車の見張りを増員することなんかの規定もあるんです。さらに、雪の日の作業だったが、見通しのきかない悪条件のもとでは本当に適切だったのかと、出動する際の要件まで書いている。そして、行った人たちは七人だったんです。ああいう直すための作業というのは大体十二人がセットでいうと一番いいというので、線路がありますわな、四カ所やろうと思ったらそのぐらいの人数要るんですよ。それをわざわざ七人しか行かなくていいということだったのは、それほど緊急な事態だったのかということまで出ているわけです。

 そして、これなんですね。これ、みんな持てないから、どうしているかというと、事務所に置いているだけなんですよ。だから、マニュアルどおりやっていればよかったなんという話は全く通用しないということが実態だと思っています。

 そこで、この問題について最後に、安全性向上計画では、事前に事故を防ぐために、事故の芽などを報告する予兆管理活動の定着、拡大を図るとしています。この点で、JRの取り組みがどうだったのか。本来、過去の事例を教訓にすれば今回の事故も防げたはずなわけです。

 そこで、伯備線における過去の触車事故の事例、待避不良等の発生状況はどうなっているか、また、安全性向上計画策定後のJR西日本管内における触車、待避不良等の発生状況はどうなっているか、それらについてその都度つかんでいるのか、そういう内容について短くお答えください。

○梅田政府参考人 昭和六十二年四月のJR西日本発足以来、伯備線において線路で作業していた係員が列車に触車した事故は、今回を含めて二件でございます。触車しなかったものの待避がおくれた事案、これが一件発生しております。

 今度は、昨年の五月三十一日の安全性向上計画でございますが、この策定以降、JR西日本全体でございますけれども、線路で作業していた係員が列車に触車した事故は伯備線の一件でございます。触車をしなかったものの待避がおくれた事象、これが五件発生しております。

 ちなみに、私ども、この触車の問題は、事故がありますれば、当然、事故の報告で把握することができますけれども、触車はしなかったものの待避がおくれたというようなケースにつきましては、我々、JRに問い合わせまして、どういう件数があったのか、どういう事案だったのかというので情報を収集してきたところでございます。

 今回の法律の改正が行われましたら、こういったものにつきましても、我々は、随時あるいは定期的にとってまいりたいというふうに考えているところでございます。

○穀田委員 それとの関係で、そういうものが起きたときに、必ず「軌道内等の作業における安全確保の徹底について」とかという文書を出しているんですよね。

 今回も一月二十五日に出しています。それによりますと、「接触災害防止のためのガイドラインの策定について」等により機会あるごとに注意を喚起したところだ、再発防止を図るための措置を講ずるように厳重に警告すると。これが指示、警告文書なんですね。前の事故が起きたときもそうなんですよ。機会あるごとに注意を喚起したところである、再発防止対策を講じるよう警告すると。

 これ、事態は変わっているんですよ。つまり、安全性向上計画を実施中だという問題が今あるわけですね。そういうもとで起きている。そういう指摘が何にもないという本当に情けない実態だと思っています。

 しかも、先ほど言いましたように、それが安全性向上計画の実施過程の中で、その「着実な実施について」という勧告まで出していて、その二つの、いわば風土の問題、事故の芽、そういう問題を対応方を警告しているときに起きている、そういういわば深さという問題の指摘は全くないわけですね。それでは、本当の意味での監督指導責任を果たしているとは言えないということだけ言っておきたいと思います。

 次に、飛行機の問題について少し言います。先ほど来、航空機の整備の問題がありました。私も一言、少しやりたいと思います。

 外注化が進んでいますけれども、今回の法改正で海外整備に対する規制が強化されるわけだが、その理由は何か、その点について簡単に。

○岩崎政府参考人 先ほど来御説明させていただいていますように、海外の整備事業者への外注が行われておりますけれども、比率を見ますと、自社整備の場合、あるいは国内のグループ会社に外注する場合、海外外注の場合、ふぐあいの発生件数は海外整備が特に多いというわけではありません。

 しかし、航空の安全にとって、整備というのは大変重要な安全を確保するための作業でございますので、今、エアラインの方は、海外を含めた外注整備が少しずつ進展をしております。こうした状況に対応するために、整備作業の外注先を、国が作業実施能力を認定した事業場、海外の場合も含めてでございますけれども、これに限定することによって、今までは、外注した場合には委託者、エアラインから、それを通じて受託者を監督したわけでございますけれども、国が直接外注先を認定事業場として限定することによって、立入検査などを通じて直接指導監督していきたい、このように考えておるものでございます。

○穀田委員 さっきから何か聞いていると、ふぐあいの率は変わらぬ変わらぬという話ばかりしているけれども、先ほど、左右のエンジンの取り違えの話がありましたね。これの問題でいうと、先ほど来あったように、安全に問題がない、ここまで言っていました。

 では、聞くけれども、航空局で調べて問題ないという結論を出したんですか。

○岩崎政府参考人 シンガポールの整備会社でエンジンの左右の取り違えの件でございますけれども、これにつきましては、メーカーでありますボーイング社、これに問い合わせて回答を得たものでございます。

○穀田委員 要するに、つくったところに聞いたというだけの話でしょう。安全の根拠は、メーカーが安全だと言っているからにすぎないんです。うのみにしているだけですやんか。何のための安全チェックかと言わざるを得ないと思うんです。

 そこで、ここも私、何を言おうとしているかというと、先ほど大臣に一番最初に聞きました、現場の声を聞けということなんですよ。現場の人たち、機長なんかは、安全上問題ないと言っていることに対して、冗談じゃない、危ないと言っているんですよ。しかも、ふぐあいの率はそれは変わらぬかしらぬけれども、常識では考えられない事態が起こっているというのが、この間の海外における整備の問題が大きいという話をしているんですよ。だから私は言っているんです。

 では、もう一件聞きましょう。二〇〇四年十二月に、スカイネットアジア航空で、整備ミスによりボルトが脱落し運航中に強い振動が発生するトラブルがあった、このケースも安全上問題ないんですか。

○岩崎政府参考人 平成十六年の十二月でございますけれども、スカイネットアジア航空で、降下中に機体に振動が発生するという事例がございました。

 調査の結果でございますけれども、昇降舵のタブの取りつけのボルト四本のうち一本が脱落しておりました。これは、先生今御指摘の、中国のTAECOという整備会社でございますけれども、ここの整備において部品の取りつけが十分ではなかったということが原因でございました。

 これも別に、決していいことだと言っているわけではございませんけれども、当該ふぐあいによって機体に振動が発生はいたしましたが、これによって運航に直ちに支障が生ずるものではありませんでした。

 私どもも、これについて、トラブルが発生後、スカイネットアジア航空、それから当該整備を担当いたしました中国のTAECOという会社に原因究明、再発防止の指導を徹底したところでございます。

○穀田委員 だから、中国のところの現場に対しても、これはあかんでということを言いに行ったぐらい大変だったんでしょう。

 いいことではないなんという、あなた、その同じ飛行機に乗っていて言ってごらんなさいよ、その現場でそういうことを。冗談じゃないですよ、それは。幾ら考えたかて、機長がそういうことで怖かった、危なかったと言っているときに、いいことではないなんて、そういうたぐいの問題じゃないほど大問題なんですよ。それを、そういうことを言うから、航空局というのはほんまこれは大変やなとみんな思っているんですよ。

 この件について私も現場から聞きましたけれども、ボルトの脱落なんというのは信じられないミスなんだと。例えば、日本航空の話ですけれども、シンガポールの整備会社では、定期整備、C整備というのだそうですけれども、行った747型機について一年後に日本で定期整備をしたら、構造部材の腐食や亀裂のふぐあいがひどく、九日間整備の予定を延長したというんです。また、別の航空機では、通常十三日の整備予定を多目に見積もって三十三日で計画したにもかかわらず、七十六日、倍以上もかかった。こういう状態だと、トラブルが一向になくならない原因かなと思うのは当たり前じゃないですか。

 海外整備でなぜこんな信じられないミスやトラブルが続くのか、国交省はどのように分析、解明しているんですか。

○岩崎政府参考人 先ほど申しましたように、我々、トラブルの計数的な分析を行っております。海外の整備の場合、自社整備の場合、国内の下請会社に外注した場合、それぞれのトラブルの発生率を分析いたしました。繰り返しになりますけれども、大きな差はございませんでした。

 我々、何もトラブルがあることをいいとは言っておりませんけれども、航空機の場合、一定の確率でこうした整備上のふぐあいというのが生ずることは、残念ながら、やむを得ないことだと思っております。したがって、海外の整備に出しているからといって、一概に安全上大きな問題があるというふうには考えておりません。

○穀田委員 少々のふぐあいじゃないということをまず肝に銘じてくれなあきませんよ。

 今ありましたけれども、何回も言うように、件数の問題じゃないんですよ、質を見るべき問題なんです。整備の基本認識、常識を疑う対応という点で深刻さがある、これが現場の声なんです。だから、私は現場の声をきっちり聞きなさいということを何度も言っているわけです。

 では、聞きますけれども、国内の整備と海外整備の根本的な違いがどうなっているかということを言いますと、国内と海外では作業する一人一人の整備士の意識が全く違うというふうに現場は言っています。

 日本では個々人が整備士としての意識を持って整備するけれども、海外整備工場では、整備資料を渡しても見るのはスーパーバイザーという監督者だけで、作業者は見ていないという実際の作業が現場で行われている。つまり、指示するだけで作業に責任持たないという現実があって、同時に、ミスに対する懲罰は厳しくて、ミスすれば解雇や減給に直結する、だからミスを隠す風潮が強い、こういう点も指摘されています。

 これは事実として確認できますか。

○岩崎政府参考人 海外の整備の場合でございますけれども、海外で整備を行っている場合においても、その受託を受けた整備会社で、それぞれの作業の各段階ごとにおいて、作業者とは別の検査員が作業の適切性についてチェックをしております。

 私ども、こうしたことについては、先ほど来問題となっておりますSASCOでありますとかTAECOでありますとか、これは認定事業場になっておりますので、二年に一度、認定のときに実際に我々の検査官が行きまして確認をしているところでございます。

○穀田委員 そこの問題なんですけれども、国内の整備士というのはやはり環境がちょっと違うんですね、現実は。例えば、国内の整備士の場合には、国家試験を通るために、そういう作業なんかの一つ一つの大事さをわかって、ステップアップするという形で取り組んでいる。海外ではどうなっているかというと、やはり、スキルアップしてみずからの力が上がれば給料のいいところに移っていく、大体こういう傾向にあると言われているんですね。

 だから、そういう現実をよく見て、何か言うとすぐ検査があるといって、その検査をやって見逃してこうなっているわけなんですね。だから、こんな大変な事態が起きているわけだから、そこの事実にも着目をしてしっかり私は見る必要があると思うんです。(発言する者あり)やじ飛ばすんだったら、きちんと質問したらいいじゃないか。

 そこで、最後に領収検査について言いたいと思うんです。

 先ほども他の委員からありましたように、海外委託による国内整備の空洞化の問題というのが懸念されます。現場では、海外委託が進めば運航の第一線を支える整備士の訓練の場がなくなってしまうんじゃないかと不安の声が上がっています。それは年代的にもすごく特徴的でして、五十代の人たちの後に陥没をしているという現実もあります。

 したがって、当然、領収検査する側の問題として、技術力が継承されず、不良品が持ち込まれても確認できない事態につながる不安があるわけです。航空会社任せでなくて、政府としても委託の割合を規制するなど手を打つべきでないでしょうか。そこはいかがでしょうか。

○岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、航空会社が、自社の技術水準の保持という観点からは、一定程度、自社での整備を適切に実施する能力があることが望ましいと考えております。

 ただ、これは、やはりJAL、全日空、大手会社と新規会社では規模の相違あるいは体力の相違等々がございますので、一概には何が適切かというのはなかなか難しいだろうと思っております。国としても、よく見守りながら適切に指導してまいりたい、このように考えているところでございます。

○穀田委員 私、きょうは、JR西の伯備線の事故と、そして今度のJALを初めとする整備に関係する問題を言ってきました。

 何を言いたいかというと、JRにしろ航空にしろ、やはり今起きている現場の声をよく聞けということなんですよ。大体、先ほども、事故があったときにも、製造会社の声は聞くんだけれども、実際にふぐあいがあってそれを告発して、これは大変やなと言うている人たちの声はなかなか聞かないということではだめだと思います。

 特に、整備コストについては、安さやリストラによる効率化を求める余り、致命的なミスが起こる可能性がある。そういう意味では、整備委託というのを本当に重視して、国としても、最終的な責任を負える、そういう自社の整備についての継続、技術力強化、そういった点についても留意をして進めるべきであるということを述べて、終わります。