国会会議録

【第163特別国会】

衆議院・国土交通委員会
(2005年12月21日)

 耐震強度偽装問題での政府質疑。質問に先立ち、ヒューザーの小嶋社長の証人喚問、総研の四ヶ所氏、平成設計の山口・徳永両氏、伊藤公介衆院議員の参考人質疑をあらためて要求。
 その後、まず金融庁に銀行の関与・対応について質問「『銀行にもリスク負担』は同感、検討する」と国土交通大臣が答弁した。


○林委員長 穀田恵二君。
○穀田委員 私も、ヒューザーの小嶋社長、総研の四ケ所、平成設計山口、徳永各氏、そして伊藤公介衆議院議員の参考人招致、これを要求したいと思います。
 これは既に最大会派の党が要求をしていますし、あとすべての党が要求、これは絶対するはずですから、必ず実現できるものだと思っています。
 委員長にお諮りを願いたい。
○林委員長 理事会にて協議いたします。
○穀田委員 きょうは被害者への賠償の問題について若干質問します。
 まず、金融庁にお聞きします。
 今回の耐震強度偽造事件で、いわゆるホテルルートでは、総研がかかわったホテル開業に銀行の関与が明らかになっています。
 私はこの間、十四日の証人喚問で取り上げまして、愛知県の岡崎市のホテルの場合、旧東海銀行が総研とともにホテルの開業に関与していた、その際、内河証人も認めました。また、木村建設倒産の背景にも、メーン銀行の貸しはがしともいうべき関与がありました。十四日の証人喚問で木村建設元社長は、十一月十七日の偽造発表直後に銀行が押しかけてきて当座預金が凍結され、十分な資金を準備していたのに手形を決済できなくなったと証言しました。主要取引銀行の熊本ファミリー銀行は、債権保全のための約十三億三千万円の木村建設の当座預金を拘束、凍結した。これが木村建設倒産の引き金となりました。いわば、銀行は耐震偽造発覚で木村建設の経営の先行きが不安となったために、有無を言わさず貸しはがしを行ったということであります。
 そこで聞きたい。今回の木村建設倒産に至った貸しはがしについて、金融庁は事情を聞きましたか。
○佐藤政府参考人 御指摘のような報道があることは承知いたしておりますが、個別金融機関の取引に関することでございますし、また、法的手続が開始されているということもございますので、この個別事案について当局としてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論として申し上げますれば、私ども、監督上の主要な着眼点というのをあらかじめ監督指針というものに定めてございますけれども、金融機関が問題債権の回収等取引関係の見直しを行う場合には、これまでの取引関係であるとか、顧客の知識、経験、財産の状況に応じて法令にのっとり一連の各種手続を段階的かつ適切に執行する体制が整備されているか等、こういう点を示しておるところでございまして、こういった観点で監督していくということは重要であろうと思っております。
○穀田委員 熊本ファミリー銀行というのは、公的資金注入銀行なんですよ。いわば国が株主なんですよね。だから、今問題が起こっている内容について、個別のという話で済ますような話じゃなくて、これだけ大問題になっていることについてどないすんねんという話をまともにせなあきませんよ。大体、銀行経営についても、今言ったように、言える立場にあるんですよね。事情すら聞かないというのは、私はどうかと思いますよ。
 そこで、木村建設の倒産が被害者に大きな影響を及ぼしたことは、だれでもこれはわかるんですよ。そこで、多くの偽装、欠陥マンションをつくった木村建設が倒産したことによって、住宅ローンを抱える被害者住民への損害賠償請求による被害回復の道が狭まっているわけですわな。被害者救済の観点から、自分の債権だけを先取りするやり方というのはまさに道義的に問題だと言わざるを得ないと私は思います。
 そこで、国交大臣に聞きます。
 賠償の一端を担うべき木村建設の倒産は、今お話ししたように、その希望を縮小させました。倒産に至る過程は、メーン銀行がみずからの債権回収を優先させ、貸しはがししたことに間違いない。それはこの間の証言でも明らかになっています。夜中の二時までやられたという話まで出ました。それが私はけしからぬと思うんですね。何も別に木村建設を擁護する気はさっぱりありませんで。だけれども、被害者が明確にいる、加害企業は損害賠償の責任がある、こういう関係があるわけですから、銀行は、いわゆる加害企業の事業活動のために融資をした、にもかかわらず自分の分だけを回収する。おかしいと思わないか、一定の額の拠出を要請するなどが必要じゃないか、こういう点について大臣に問いたい。
○北側国務大臣 木村建設と金融機関との間でのやりとりの詳細というのは、私も報道以上は承知をしておりません。国交省として、今回の金融機関の行動についてコメントするのは差し控えさせていただきたいと考えております。
 今回の事案における木村建設の関与の内容が非常に重要であることは、もう全くそのとおりでございまして、事実関係を明らかにしていかなければならないと考えております。
○穀田委員 私は、二つ問題があると思うんですね。承知していない、そんなことないですよ。だって、あそこの証人喚問で出されたのは、リアルな事実があったということなんです。そしてもう一つは、やはり事実関係を解明したいというんじゃなくて、こういう事実のもとでどないするかということを問うているわけじゃありませんか。それは余りにも、だれがつくったか知らぬけれども、大臣として、政治家として、今我々がなすべきことについての答弁とはおよそ思えないと指摘しておきたいと思うんです。
 では、一番多くいわゆる被害者をもたらした建築主、販売会社であるヒューザーと銀行の関係について聞きたいと思います。
 ヒューザーの取引先銀行はどこか。東日本銀行、みずほ、りそな銀行などです。これらの銀行は当然、ヒューザーに融資する際に、事業内容について審査しているわけです。広くて安いという宣伝文句、その事業手法、急速に業績を伸ばしていたことは承知していたはずです。今回のように販売したマンションが偽造、欠陥があれば販売業者に瑕疵担保責任があることなど、融資先に何らかのトラブルが起こるというリスクを承知の上で審査していると思うわけですが、それは当然ですよね、金融庁。
○佐藤政府参考人 個別金融機関の個別取引については差し控えさせていただきますけれども、一般論として申し上げますと、金融機関は、顧客からの借り入れの申し込みに当たりましては、資金使途、返済能力、担保価値等を考慮して融資判断を行っているというふうに承知いたしております。
 また、個別の融資案件の審査や融資の可否の判断については、金融機関みずからの責任において行われるべきものであると認識をいたしております。
 他方、金融庁といたしましては、金融機関の適切な業務運営を確保するという目的で、金融検査等において事後的に融資先のサンプルを抽出し、その内容を確認するといったことは行っておりまして、そういったことで審査管理体制の適切性について検証しているということでございます。(穀田委員「いいです、もうそこは。そんな質問していないです。委員長」と呼ぶ)
 いずれにいたしましても、金融庁としては、検査監督を通じて、適切な審査管理に基づく融資判断が行われるよう、金融機関の適切な業務運営の確保に努めてまいりたいと思っております。
○林委員長 答弁は簡潔にお願いします。
○穀田委員 聞いていることにきちんと答えてくれりゃええのや。別にそんな、あなたのところの話をしてるちゃうねんからさ。一般論をするんやったらええて。
 それで、では、もう一遍違うことを聞きますよ。住宅ローンを融資する際に、住宅金融公庫は地方自治体などに依頼して建築物の一定の評価に基づく審査を実施している。銀行の審査はそれと比べてどうなのかということについてだけ、端的に言ってください。
○佐藤政府参考人 民間金融機関が住宅ローンの供与の判断をするに当たりましては、主として借り手の資力を踏まえた返済能力というのを勘案して融資判断を行っているというふうに承知をいたしております。この点におきまして、民間金融機関が住宅公庫と比べて審査が甘いといったことはないというふうに理解しております。
 なお、住宅公庫におきましては、その融資判断に際しまして、借り手の返済能力とは別に、一定以上の広さとか耐久性が確保されているかといった住宅政策上の観点も考慮されているというふうに承知をいたしております。
○穀田委員 要するに、建築確認が通った物件であれば通すということなんですよ。そこを言っているんですよ。世の中、そうなっているんですよ。そういう肝心かなめのことを言ってくれなあかんわけやね。
 それで、要するに、今回の事件というのは、建築確認が通ったマンションであるわけですね。したがって、建築確認制度の不備が一連のこういう議論の中で問われたわけですわね。したがって、銀行の審査にとって想定外であることは確かだけれども、審査物件に瑕疵があって、瑕疵があった場合のリスクは、ある意味では当然考えているわけですわね。つまり、銀行は、事業の関係の資金であっても、なおかつ住宅ローンであっても、融資する際の審査にそれのリスクを想定してやっている。したがって、そのリスクを、当然、結果としてのリスクを負わざるを得ないと私は考えているわけです。
 そこで、参議院の委員会で、ヒューザーが販売した偽装マンションに係る住宅ローンの状況については二十五金融機関で百九十件と答弁しているけれども、それは変わりありませんか。簡単に言って。
○佐藤政府参考人 私ども金融庁といたしましては、国土交通省から欠陥住宅についての公表があるたびに、それに応じて順次、金融機関に依頼して、住宅ローンの供与をしている金融機関についての調査を進めておるところでございますが、現在も進行中の調査はございますけれども、現在までにまとまっておりますデータは、今委員が御指摘いただいたとおりのものでございます。
○穀田委員 そのうち、ヒューザーの取引銀行から住宅ローンを借りている方も少なくないんですよ。この構図なんですよ、問題は。要するに、ヒューザーが建てる、そして、ローンを設定する方は自分との取引先にやる、この構図が問題なんですよね。だから、住宅販売というのは、販売会社と提携している銀行が審査し、そのまま住宅ローンを契約するケースが多いわけですね。だから、調べてみると、ヒューザーについてもそういうことだったわけです。
 これらの銀行は、こうしたケースの場合、いわゆる加害企業であるヒューザーに融資した利子で利益を上げる。一方、被害者に融資した住宅ローンの利子で利益を上げる。要するに、加害者からも被害者からも、これは二重取りしているということの構図なんですよ。ここをけしからぬと私は言っているわけです。
 だから、先ほど銀行業界の、内閣府の説明によりますと、一時繰り延べなど真摯な対応に努める。何が真摯だと。住宅ローンの利子分の債権放棄すら踏み込まない、こんなことでどうしてやっていられるのかと私は思っています。だから、こういう事態なのに銀行はひとり、加害企業、被害者からきっちりもうける、こういうやり方については私はけしからぬと思っています。
 大臣に、行政責任として銀行に対する応分の負担要請を積極的に行うべきじゃないか、そういう点の考えというか、お聞きしたいと思います。
○北側国務大臣 そこのところはずっと私も頭を悩ませている論点でございます。国会でも御指摘もいただいておりまして、私は、やはり金融機関についてもそうした一定のリスクをきちんと負担していただくようなことが検討できないのかどうか。これはなかなか難しいところがあるんですね、法律上は。法律上はなかなか難しいところがありますし、また個別の金融機関がさまざまですし、そこで一律にこうという形もなかなか容易じゃないなと。
 ずっと議論はしておりますし、問題意識はしっかり持っております。金融庁ともその辺のところはしっかりと連携を今とらせていただいているところでございまして、金融機関におけるさらなる対応につきまして、やはり大事なことは居住者の安定確保でございますので、その観点から、必要に応じて金融庁とも連携、調整を今まさしく図っているところでございます。
○穀田委員 今、もう一歩新しい踏み込みをさらにしていただける要素ができたなと思うんです。一定の共通の基盤があると思うんです。やはりそれを、しかも一つ一つの金融機関に全部やらせるというのはなかなか無理があると思う。だけれども、これは金融業界全体としてそういう新しい考え方に基づいて負担をしてもらうという点も、これは要求すべき時点に来ていると私は思います。その点での検討をさらに深めていただくことを希望して、質問を終わります。