国会会議録

【第162通常国会】

衆議院・本会議
(2005年6月17日)

 郵政民営化法を何が何でも成立させようとして、小泉内閣が第百六十二通常国会の会期を五十五日間もの大幅延長をすることを強行しようとしてきたのにたいし、日本共産党を代表して本会議の代表質問に立ち、反対の討論を行った。

○議長(河野洋平君) 穀田恵二君。

〔穀田恵二君登壇〕

○穀田恵二君 私は、日本共産党を代表して、第百六十二通常国会の会期を五十五日間延長することに反対の討論を行います。(拍手)
 自民、公明両党は、「議案の審議状況に鑑み」会期延長が必要だと言いますが、これが郵政民営化関連六法案を初め、障害者自立支援法と介護保険法改悪法案の成立をごり押しするためのものであることは明らかです。
 今回の大幅会期延長は、議会制民主主義と国会の会期制の原則を根本から踏みにじるものであり、断じて認められません。
 そもそも郵政民営化法案は、小泉総理が小泉改革の本丸と標榜し、今通常国会最大の課題と位置づけてきたものであります。ところが、民営化法案が国会に提出されたのは四月二十七日。審議に入る前から、欠陥が指摘され、自民党幹部が修正を公言するという極めて異例、異常な状態で提出された法案であります。
 当初から、そもそもなぜ郵政民営化が必要なのか、何のための民営化なのか、法案の根本が問われてきました。ところが、小泉総理は、郵政公社を分社化し民間会社にすればすべてよくなると繰り返すだけで、今に至るも国民が納得できる説明をしていません。それどころか、審議すればするほど、法案の欠陥ぶりが露呈しているのであります。
 郵便局は、身近で役に立つ存在です。特に、国民の零細な資金を安心して預けることができるのが郵便貯金です。民営化法案は、こうした郵便貯金、簡易保険を単なる銀行、保険会社に変質させ、全国一律の郵便局ネットワークをずたずたにするものであることが、我が党の追及で明らかになりました。
 また、政府の提出した骨格経営試算から、郵便貯金銀行が完全民営化される二〇一六年度には六百億円もの赤字になり、現行郵政公社のままなら一千三百八十三億円の黒字になることが明らかになり、民営化会社の経営が成り立たないという重大な欠陥が浮き彫りになりました。
 そして、結局のところ、郵政民営化の最大の目的が、大銀行、生保業界やアメリカ金融資本の要求にこたえて、庶民の資産である三百四十兆円の資金を日米の巨大金融資本に明け渡すものであることが、今やはっきりしているのであります。
 この三週間の審議でこうした重大な問題点が次々に明らかになり、民営化法案は、特別委員会で審議未了のまま、会期末を迎えているのであります。
 国会法は、通常国会の会期を百五十日と規定し、常任委員会、特別委員会は、会期中に限り付託案件を審査する、「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない」ことを基本原則としています。
 この会期制の原則に従って、郵政民営化法案は審議未了、廃案とし、会期を閉じるべきであります。政府と与党の都合で勝手に土俵を広げ、法案成立をごり押しするなどは、到底容認できるものではありません。
 しかも、重大なことは、今回の会期延長が、政府・与党内での法案修正協議のための時間稼ぎ、政府と自民党内反対派との妥協点を探る党内調整を目的としていることです。
 与党内の調整もついていない法案を国会に提出したこと自体、重大な問題でありますが、調整さえつけば、一気に衆院通過、参院での成立を図る方針とも言われています。これでは、国会の審議などどうでもよいという姿勢にほかなりません。国会審議を軽視し、議会政治と主権者国民を愚弄する与党の態度は、言語道断であります。
 政府がどうしても郵政民営化を図りたい、法案の成立のために与党内調整が必要だというなら、国会を一たん閉じて廃案にし、国民の声を聞いて法案を練り直し、改めて臨時国会を開くというのが、少なくとも国会の最低限のルールに立った対処ではありませんか。
 直近の世論調査を見ても、郵政法案は今国会で成立させるべきだは、一六%にすぎません。政府・与党は、この国民の声に真摯に耳を傾けるべきであります。
 さらに、大幅会期延長によって、郵政法案以外にも、国民に負担を押しつける悪法の成立を図ろうとしていることも看過できません。
 衆議院で審議中の障害者自立支援法案は、自立支援とは裏腹に、応益負担の名で新たな負担を押しつけ生活を破壊するものとして、障害者の皆さんの総反発を受けております。部分的な修正で成立させることは断じて許されません。廃案にすべきであります。(拍手)
 また、昨日の参院厚生労働委員会における介護保険法案の採決は、不可解きわまるものです。一方で大幅会期延長を企てながら、会期末を理由に、地方公聴会など与野党で合意していた審議日程すら行わず、なぜ採決を急ぐ必要があったのか。ホテルコストの名で施設入所者から高額の食費や居住費を徴収し、軽度の要介護者が利用する訪問介護サービスを制限するなどの重大な問題点をそのままにして、採決を強行し、自民、公明、民主各党の賛成多数で可決したことを厳しく批判するものであります。
 以上、大幅会期延長に断固反対する態度を表明し、討論を終わります。(拍手)