国会会議録

【第162通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2005年5月17日)

 住宅金融公庫を廃止して、独立行政法人住宅金融支援機構を設立する。そして機構が、銀行の住宅ローン業務を支援する業務を主要な仕事にする一方で、これまで公庫が行ってきた直接融資を原則廃止する。災害関連、都市居住再生等の民間銀行が採算の取れない、融通が困難な分野に限って、融資するというもの「銀行の利益獲得手段になり、貸しはがし・選別融資が起こらないという担保はない」と指摘し、反対した。

○橘委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 きょうは、公庫融資の果たしてきた役割について、まず最初に聞きたいと思います。
 今回の法案で、住宅金融公庫を廃止し独立行政法人住宅金融支援機構を設立する、そして、機構は、銀行の住宅ローン業務を支援する証券化支援業務を主要な仕事にする一方で、これまで公庫が行ってきた直接融資を原則廃止する。もちろん、今お話がたびたびありましたように、災害関連や都市居住再生等の、民間銀行が採算のとれない、融通が困難な分野に限って融資するものだということになります。
 簡単に縮めてというか、一言で言えば、国民や消費者の住宅取得要望にこたえて国の機関として住宅資金を融通してきたけれども、それをやめる、これからは国は銀行支援をするという形にしましょうということだと思うんですね。だから、国民や消費者の側からすれば、何でそんなことをするのかわからぬというのが率直な気持ちだと思うんですよ。
 二〇〇三年五月、国土交通委員会の参考人質疑で、当時の参考人がこのように述べています。「住宅金融公庫自体は、別に要らない道を造ったり使わない施設を造ったり、そういう悪いことをしてきたわけではなく」「国民の住宅取得という一生の夢のためにずっと役立ってきた」、こう述べていた発言を今でも忘れられません。だから、直接融資を何でやめるのかよくわからないし、納得もいかへん、いつの間にかそうなっているのかというのが多くの方々の実感ではないかと思っています。
 そこで、まず、公庫が果たしてきた役割について聞きたいと思っています。公庫の融資を受けている所得階層はどうなっているのか、お答えいただければと思います。

○吉井政府参考人 お答え申し上げます。
 公庫の融資、いろいろございますが、例えばということで平成十五年度のマイホーム新築融資について見ますと、いわゆる家計調査で中低所得者と言われております第一分位から第三分位まで、年収でいいますと六百七十五万円まででございますが、この方々が全体の七一%を占めております。

○穀田委員 マンションの融資、建て売り住宅の融資も含めて、そんな現実、七一%という話がありましたけれども、同じように七割に近い現状ですし、それから、年収八百万円以下ということでいいますと八五・一%になります。つまり、中低所得者の住宅取得ニーズにこたえた制度だったということが一つあります。先ほど来議論されてきたように、住宅の質の向上の点での誘導をしてきた役割ということは、もう言うまでもありません。
 重要なのは、国の機関であった住宅金融公庫が、直接的に融資することでその役割を果たしてきたということが大事だと私は考えています。
 今回、公庫を廃止して新しくつくる住宅支援機構は、直接融資は原則的に廃止することになります。この直接融資を廃止することによって生じる、国民、消費者に与えるデメリットということを考えたことはあるでしょうか、お答えいただきたいと思います。

○山本政府参考人 今回の改革でございますけれども、特殊法人等整理合理化計画に基づきまして、証券化支援を業務の柱とする独立行政法人を設立しようとしております。
 御指摘のように、今回改革に伴いまして、財投を財源に直接融資をするという制度は原則廃止するということにしておりますけれども、独立行政法人が、民間金融機関が長期固定ローンを供給することを支援する証券化支援事業によりまして財源を調達して、長期固定ローンを民間金融機関が円滑に実施することができるようにするということでございます、やろうとしていることは。結局、直接融資でやってきたことと同じように、中低所得者も含めまして、引き続き長期固定ローンを安定的に供給するということが可能でございますので、御指摘のような、国民にデメリットを与えるというような性格のものではないと考えております。

○穀田委員 まあ、これは歴史が検証するでありましょう。少なくともこの間でそういう事態でなかったことについては明らかであって、もちろん、この四月、五月、順調だという話、先ほど一生懸命北側大臣は言ってはりましたけれども、この問題について言うならば、必ず、一定の年限が来れば、それらの問題について、どちらが正しかったかというのは歴史が証明するということだけは言っておきたいと思うんです。
 問題は、そもそも国が責任を持って直接融資などを実施してきて、公的な資金による支援だったわけですよね。その目的というのは、国民の住宅要求への支援であって、政策的支援だと。これは営利を目的とした銀行などと根本的に違う問題なんです。ゆえに、国民、消費者の安心、信頼度も百八十度違う。先ほど、認知の問題だとか金利リスクについての認識はまだあれだからなんという話をしていましたけれども、そういう根本の問題があるんだということを私は指摘しておきたいと思っています。だから、国民からすれば、住宅要求に対する政策的支援対象から銀行の利益獲得手段の対象になるということは紛れもないことだと思います。
 銀行の住宅ローンに関する実情を書いたものがあります。こう書いています。「近年、当面の金利が低い変動・短期固定のローンを選択する利用者の割合が高くなっているが、金融機関に限らず、住宅・不動産業者においても、利用者の当面の返済負担額を抑制できる変動・短期固定の商品を販売促進上利用者に勧めがちな現状にある。」と言って、銀行について述べているんですね。続いて、「しかしながら、民間ローンの主力商品である変動・短期固定の住宅ローンについては、金利上昇に伴って返済額が大きく増加し、利用者の負担増をもたらし、社会問題化する可能性がある。特に、三十歳代の若年層はリスクが大きいと考えられる。」
 この文書、どこの文書か。これは、実は昨年十一月十九日の自由民主党の政務調査会の住宅金融改革小委員会の提言なんですね。こういう危険があるぞということを言っている。
 もちろん、この提言の結論というのは、公庫を廃止して住宅ローンは民間にゆだねるというものですから、全く正反対の結論を出しているということになるわけですけれども、民間にゆだねたら金利上昇に伴って利用者の負担増が社会問題化するという懸念は表明しているわけですね。だから、長期、固定、低利の公庫融資が必要なんじゃないでしょうか。その点についての見解を問いたい。

○北側国務大臣 だからこそ、証券化支援業務をやろうとしているわけでございます。住宅事情が戦後の状況とは大きく変化していることは委員も御理解をいただけるのじゃないかと思います。民間の金融機関もさまざまな住宅ローンを、かつてはそんなにやっていませんでしたけれども、そういう住宅ローンの商品を販売するようにもなってまいりました。
 そういう中で、住宅金融公庫については、直接融資につきましては原則としてもうやらない。そして、一歩下がりまして、民間の住宅金融の証券化を支援していく。そこで長期固定という非常にニーズの高い、安定した、また計画的な住宅取得ができる、そうした証券化支援業務をしっかりとやっていこうということでございまして、ぜひ御理解をお願いしたいと思っているところでございます。

○穀田委員 なかなか理解できないことでして、何でそれが証券化になるのか、直接融資を廃止するのかという理由が相変わらずわからないんですね。大体、リスクがある民間銀行からしか結果としては、支援するとかなんとか言うんだけれども、借りられなくなるということ自体が問題だと思っています。
 先ほど来、証券化ローンの実態については出ていました。結論からいえば、私は、住宅ローンの貸出総額に占める証券化ローンのシェアというのは〇・一%しかないという現実をしっかり見ていく必要があると思うんです。
 それで、変動リスクに関して、先ほど来私が指摘して、自民党も懸念と言っているように、金利上昇に伴って利用者の負担増が社会問題化するという点、これが決定的だと思うんですね。民間金融機関が貸し出している住宅ローン百二十二兆円のうち、そのほとんどが変動金利であることは明らかです。そういう意味で、国民負担増を避けるために何らかの対策を考えているんでしょうか。それについてお聞きしたい。

○山本政府参考人 国民の皆様の住宅ローンに対するニーズの中身ですね。
 住宅ローンに対するニーズはいろいろなものがあると思いますけれども、政策的に非常に大事な中堅所得者の若年世帯が非常に長い間にわたってローンを利用する、三十年の長きにわたって使うということであれば、固定金利である必要があると政策的に考えております。それが、今回、独立行政法人住宅金融支援機構を用意して、民間金融機関の長期固定のローンの供給を支援しようと考えた一番のゆえんでございます。民間金融の現状は、変動か非常に短い期間の固定金利のタイプが多いことは事実でございますので、何とかして、この新しい証券化支援業務のスキームを使って長期固定のローンが安定的に供給されるようにしたいということが非常に大事だと思います。
 これは民間の金融機関に協力をお願いする努力とあわせまして、実際に住宅ローンを御利用になる方、国民の皆様が住宅ローンについて的確な知識を持って、長期固定の安定的なローンを御利用になられるような形に持っていくということが非常に大事だと考えておりまして、先ほどちょっと御説明しましたけれども、新法人の業務として、消費者に対する住宅情報の提供を本来の仕事として位置づけました。さらに、消費者に対してさまざまなアドバイスをする住宅関連事業者に対しても、住宅ローンについての講習会を推進するというふうなことに努めようと考えているのはそのためでございまして、引き続き消費者に対する適切な情報提供に努めてまいりたいと考えております。

○穀田委員 情報提供は、それは最低限の当たり前のことであって、私は、金利上昇に伴って社会問題化するということに対して、何をのんきなことを言っているのかなと思うんです。
 これは、きょう入ったマンションの宣伝チラシなんですね。これを見ますと、モニター制度利用ということで、月々七万円台で購入できると書いてあるんですね。これを見るとなかなかよいでしょう。しかも、渋谷区恵比寿、港区白金高輪と、こう来ますからね。これはもう驚くばかりですよ。
 ところが、細かい字を見ますとなかなかでして、「ご返済例は、当初二年間のものであり三年目以降のご返済額は異なります。」「年利〇・九%(二年固定)、期間三十五年、一・一%の金利優遇適用」、金融情勢の変化により融資条件に変更を生じることがございますと、ほんま小さい小さい字で書いてますねんで、これ。ここは七は大きいんですよ。あとはこんな字で見えしませんねんで。まあ、こういうことが起こる。
 だから、結局金利が上がればどうなるのかという、社会問題化するという点について言うならば、いずれもここのところが焦点だということがどこから見てもおわかりいただけると思うんです。
 そこで、ローンが返済できず、いわゆる焦げつきが生まれるローン破綻についてだけ聞きたい。確認したいけれども、第一に、公庫のローン破綻に陥った債権額。二つ目に、返済が六カ月以上滞った債権額。三つ目が、返済が三カ月から五カ月滞った債権額。どうなっているか、二〇〇二年と二〇〇三年の例でお答えいただきたいと思います。

○吉井政府参考人 お答え申し上げます。
 破綻先債権でございますが、平成十四年度千百三十一億円、十五年度千四百六十三億円。六カ月以上の延滞債権、十四年度五千八百八十二億円、十五年度六千六百四十七億円。三カ月以上六カ月未満の延滞債権、十四年度三千八百七十七億円、十五年度三千八十六億円となっております。

○穀田委員 これを見ましても、一番目と二番目はふえている。公庫だけでも、前回の審議になったときに明らかですが、大体二万二千人近くの方々が家を手放していると報告がありました。今後金利の上昇で一層ふえることは、何回も言っているように懸念される。
 先ほど局長から、そういう丁寧なことでやるんだということを言っていましたけれども、今、公庫は確かに返済困難者に関して返済特例などによって手厚く相談に乗っています。ところが民間銀行というのは、返済が滞れば担保にした住宅をすぐ競売にかけるなど、貸しはがしのひどさは国民みんなが知っているんですよね。ローン返済困難者に対して親身になった対応をしないという現実があります。
 時間もあれですから、まとめて三つ聞きたいと思うんです。
 こういう銀行に対して、どういうふうに指導ができるのか。
 二つ目に、融資する際も問題です。今話に出た人たちもそうなんでしょうけれども、みんなが心配しているのは、選別融資が行われるんじゃないかと心配しているんです。現実に、自営業者に対しては貸さない。民間でいうならば、労働者についても派遣社員がふえているけれども、そういう人たちについては初めから融資対象から外す、ないしは金利を上乗せさせられる。こういう現実があることは一番よく大臣も御存じだと思うんですね。こういう選別融資をさせない仕組み、担保はあるのか。二つ目。
 最後に、では、こういうぐらいで、証券化ローンとしては、直接の融資がなくなることによって、町場の工務店、中小建設業者の多くの方々が心配されているのは、銀行が大手住宅メーカーとの提携を強めて、小さな工務店などが排除されるんじゃないか、こういう点の心配があるんですね。私は、こういう点は、本当にこれをやらないとえらいことになる。そういう点をどう考えているのかだけ最後に聞いておきたいと思います。

○山本政府参考人 証券化支援事業の一番のポイントは、金融機関が設定しました住宅ローン債権を買い取るということでございます。したがいまして、今ありました債務者が返済困難になったときのいろいろな対応は、従来の直接融資と全く同様に、新法人が責任を持って返済条件の変更等きめ細かい対応をしていく。それは既往債権が新法人に移ったものについてもそうですし、そういうふうにしていくということでございます。
 それから、二番目の選別融資の問題は、これも金融機関が設定したローンを買い取るわけでございますので、協定に基づいて新法人が設定した要件を超えていろいろな選別をすれば協定違反になりますので、的確に、そういうことをしないようにということをやってまいります。
 それから、民間金融機関による住宅ローンの供給を支援する証券化支援業務をやってまいりますけれども、証券化ローンにつきましては、新法人が民間金融機関から債権の買い取りを行うに当たりまして、従来の公庫直接融資と同様に、客観的な基準に基づき審査を行うことを条件にします。したがって、いろいろなことは選別をしませんし、従来の直接融資と同じように利用できますので、町場の工務店が阻害されるというような御心配はないものと考えております。

○穀田委員 それぐらいの対策で銀行の貸し渋りや貸しはがしがなくなるんだったらだれも心配しないし、外国だったら、そういう選別、差別を禁止した地域再投資法などあるわけですからね。そういうものがない日本ではおよそそうならぬだろうということだけ言って、終わります。

○橘委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

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○橘委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

○穀田委員 政府は、これまでの公営住宅、公団住宅、金融公庫融資住宅を三本柱とした住宅政策を大転換しようとしています。その方向は、住宅市場の条件整備など一層住宅の市場化を促進し、公共住宅政策から撤退しようとするものであります。
 本法案は、三本柱の一つである住宅金融公庫を廃止するもので、政府が公共住宅政策から撤退する具体化にほかなりません。これが、反対する第一の理由です。
 第二に、公庫の直接融資業務は、長期、固定、低金利の住宅ローンとして、国民の住宅取得、住生活の安定、居住水準の向上等にそれなりの役割を果たしてきました。これを廃止縮小することは、住宅取得を願う国民に対する国の支援の後退です。
 また、住宅ローンが民間主体となることで、銀行による融資抑制や選別融資などが広がり、住宅の質の向上誘導が低下することや、町場の住宅需要を縮小させ、工務店等の経営に悪影響を及ぼすおそれもあります。
 反対理由の第三は、公庫の廃止、独立法人住宅金融支援機構の設立は、民業圧迫を理由に、安定的な投資先を求めた大手銀行の要求を全面的に受け入れ、証券化支援業務を中心とすることで住宅ローンのリスクを回避し、民間金融機関の利潤追求を応援するものであるからです。
 民間にできることは民間になどとして、本来国が責任を持って実施すべき国民への支援を投げ捨てる政府のやり方を根本的に改めることを求め、討論とします。