国会会議録

【第162通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2005年4月22日)

 今年から来年にかけて政府の住宅政策を大転換する方向に沿って、その一環として提出されたもの。家賃の比較的安い公営住宅は不足しているのに、政府は「住宅は足りている」として、新たにつくらない方向へと政策を転換しようとしている。

○橘委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。
 住宅金融支援機構法案を含む住宅関係三法案は、ことしから来年にかけて政府の住宅政策を大転換する方向に沿って、その一環として提出されたものです。そこで、政府の住宅政策の転換方向はいかなるものか、国民にとってどのような影響があるのか、この視点でこの一連の質疑についてはやっていきたいと思っています。
 まず、国による住宅政策は、御承知のとおり、公営住宅そして公団住宅、住宅金融公庫融資住宅を三本柱として実施されてきました。今回審議する二法案は、既に先ほどもありましたけれども、そのすべてが少しずつ入っている。それぞれが議論すべきいろいろな問題点を含んでいるのに、まとめて一緒くたに出してくる、こういうやり方は問題だということを、あらかじめ私としては最初に指摘しておきたいと思っています。
 そこでまず、国交省が昨年十二月に出した住宅政策改革要綱を見ると、これまでの住宅政策は、住宅建設計画法に基づく住宅建設五カ年計画によって進められてきたが、住宅建設計画法の制定の背景にあった住宅不足が解消して久しく、さらには、住宅の量的確保を主眼とする法の意義そのものが低下しておるなんということを言って、まるで住宅は足りている、余っているということは強調して、だから住宅政策を変えなくちゃならぬ、こういう論理なんですね。
 確かに、住宅総数は二〇〇三年度で五千三百八十九万戸、これに比べて総世帯数は四千七百十六万戸、この差を見れば六百七十三万ですから、数字上は余っている。しかし、単純にそれだけを見るわけにはいきません。住宅の総数のうち、空き家となっている住宅とその中身、内容を見なくては実際に使えるのかどうかわからないし、そういう問題をたくさんはらんでいるんですね。
 そこで、空き家の数とその中身、内容についてはどうなっているのか、お答えいただきたい。

○山本政府参考人 直近の住宅・土地統計調査、平成十五年でございますけれども、空き家は約六百六十万戸でございます。
 このうち、別荘などの二次的住宅が五十万戸、それから長期不在で取り壊し予定という住宅が二百十万戸でございます。賃貸に付したい、賃貸用ですね、貸し家です、それから売却用、これから売りたいと言っている住宅が四百万戸が、その内訳でございます。

〔委員長退席、望月委員長代理着席〕

○穀田委員 確かに、数としては空き家があるのは事実です。しかし、それをもって住宅が余っていると盛んに宣伝するほどなのか、疑問です。また、住宅の居住水準が満たされているかどうか。健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠で、すべての世帯が確保すべき水準とされる最低居住水準が充足されているかどうか、これが問われます。
 そこで、再度聞きたいんですけれども、まず最低居住水準とはいかなるものか、お答えいただきたい。

○山本政府参考人 住宅建設五カ年計画の中で、最低居住水準という住宅の規模の目標を掲げております。この考え方についてのお尋ねでございますが、健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠な水準ということで定めているわけでございます。
 具体的な考え方としましては、まず第一に、各居住室の構成及び規模は、個人のプライバシー、家族の団らんなどに配慮して、自立した生活を営む上で最低限必要な水準を確保する。第二に、専用の台所その他の家事スペース、便所、洗面所及び浴室を確保する。三番目に、世帯構成に対応した適切な収納スペースを確保する。この考え方で床面積の規模を定めております。
 なお、第六期までは部屋別の構成を示しておりました。一人だと一Kとか、そういうのを示しておりましたけれども、七期以降は規模で最低水準を示しております。

○穀田委員 本当につつましい水準だということがわかると思うんです。
 今お述べになったのは八期のでしたよね。六期もそんなに変わっていなくて、基底の考え方を少し言っている程度で、基準は変わっていないんですよね。だから、一人当たりでいいますと四畳半なんですよ。そして、三人でいっても十五畳、一人当たりでいうと五畳なんですね。さらに、当時の基準からいいまして、例えば、食事のための場所を食事室兼台所として確保するだとか、さらには単身、二世帯についてはどうのだとか、その場合についても中高年の場合には浴室を確保する、こういう程度であって、単身者の場合には浴室もないということまである実態なんですね。だから、こういう最低水準がこれを決めているわけです。これも確保できていないところがたくさんあるということが今の問題なんですね。
 だから、持ち家、借家で今人が住んでいる住宅のうち、最低居住水準以下は何世帯ありますか。

○山本政府参考人 最低居住水準に満たない世帯の割合についてお答えいたします。
 まず、四千七百万戸、人が居住する我が国の住宅ストック全体で見ますと、ただいま申し上げました最低水準に満たない世帯の割合は四・二%でございます。これを持ち家、借家別に見ますと、持ち家の場合は一・一%でございます。借家の場合は九・六%となっております。

○穀田委員 つまり、合わせると、その数を私は聞いているんだけれども、こっちから言いましょう、百九十四万三千世帯だ。間違いありませんね。
 何でこんなことを言っているかというと、健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠で、すべての世帯が確保すべき水準とされる最低居住水準以下が百九十五万世帯ある。もともと、国土交通省が目標としている誘導居住水準に至っては、それ以下が二千万世帯あるんですね。だから、いろいろな基準があります。例えば耐震基準を満たしていないなどの既存不適格住宅は、この間再三私も議論してきましたように、簡単に言えば、大体千二百万戸と言われている。この中で、リフォームでは対応できない住宅もある。
 つまり、今住んでいる世帯でさえ、健康で文化的な住生活を送るための住宅の水準にはない現実のもとで、住宅の質や水準に関係なく、数だけを見て、余っている、余っていないという議論はおかしいのだということを言いたいわけですね。ここをきちっと見なければ、余っているんだというだけの話では、それは、今、国民が本来確保されなければならないその水準に対してどうなのかという視角を欠くようになるということを言っておきたいと思います。
 そこで、民間を含めた話ですが、公営住宅など公的住宅は余っているのか。そして、公営住宅、公団住宅、地方公社住宅、特優賃、高優賃の管理戸数全体と空き家戸数、総計でいいですから、割合はどうなっていますか。

○山本政府参考人 公的賃貸住宅全体の管理戸数、三百三十万戸でございますが、空き家戸数は三万戸でございます。管理戸数に占める空き家の割合は一%となっております。

○穀田委員 今ありましたように、正確に言えば、管理戸数は三百二十八万戸、空き家戸数は三万二千四百八十四戸、割合でいいますと一%、つまり〇・九九%なんですね。民間も含めた空き家は、住宅総数の一二・二%、これは総務省が出している資料で明らかです。だから、国や地方自治体が直接、間接的にかかわる公的住宅は空き家が一%もない。つまり、公的住宅に関して言えば、空き家が多いだとか、余っているなどとは言えないということは明らかだと思うんです。
 さらに調べてみると、公営住宅に限って見ると、空き家の状況は年々減っているんじゃありませんか。九六年の法改正で公営住宅の新規建設が抑制された結果の反映であろうと私は思いますが、九六年から二〇〇三年までの管理戸数は七万戸しかふえていないんです。空き家率は、九六年に一・六%あったものが、今、〇三年は三分の一の〇・五二%になっている。だから、公営住宅の空き家というのは、その中身も問題だけれども、要は、数的に経年で見ても空き家が多く余っているなどとは言えないということがはっきりしたと思うんですね。
 そこで、もう少し公営住宅に絞って聞きましょう。
 まず、確認したいんです。公営住宅法は、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、または転貸しすることを目的としているが、これは憲法第二十五条の生存権規定を受けたものであって、その責任は国及び地方自治体にあること、つまり、住宅に困窮する低所得者には国と自治体が責任を持って低家賃の住宅を整備し、賃貸しなければならないということだろうと思うんですが、これは間違いありませんね。

○山本政府参考人 憲法二十五条に起因する制度だと認識しております。

○穀田委員 そこが大事なところなんですね。
 憲法の生存権規定に基づいて国と地方自治体が公営住宅の建設、整備に責任を持つ、これによって、これまでも全国で二百十八万戸の公営住宅が建設されてきました。今、私は、空き家がないという事実を、そんなに大して多くないという事実を述べてきました。では、別な角度から見て、問題は、この理念どおりに住宅に困窮する低所得者層に対しては足りているかどうかということについて議論してみたいと思います。
 公営住宅が足りているかどうかを見るときに、当然、その分母となるのは住宅に困窮する低所得者であります。そこで、公営住宅に入居可能な収入基準は、収入分位は二五%、高齢者などは裁量の階層ですから四〇%だが、その世帯数は全体で幾らか。入居資格のある世帯数ということについてお答えいただきたいし、あわせて、それらへの対応についてもお答えいただきたいと思います。

○山本政府参考人 法律の目的は、先ほど先生からも引用いただきましたけれども、施策の対象者が住宅に困窮する低額所得者となっております。その場合の収入の基準が、基本的に、所得で見た場合の収入分位二五%以下というふうに整理をしております。
 ですから、それが非常に広義の分母になることは事実でございますけれども、その土俵の中で、住宅に困窮するという要件をどういうふうに整理するかということがポイントとなってくるわけでございますけれども、これは現行の第八期住宅建設五カ年計画でも、施策対象世帯がどのくらいあるかということをいろいろな吟味をして計画を整理しています。
 その際には、例えば、自力では適切な居住水準を確保することが困難な世帯ということで、推計のプロセスを若干かいつまんで申し上げますと、自分で持ち家を持っておられれば、所得水準は低くても困りませんので除きます。したがって、まず、民間の借家に居住しておられる世帯が基礎になります。それを基礎にしまして、これらの世帯について、世帯人員別、所得水準別の数字を、マトリックスをつくりまして、それぞれの所得水準に応じた家賃負担の可能な家賃を設定しまして、割り戻しまして、確保可能な床面積というのを設けまして、その床面積が世帯人数に応じた、先ほど御紹介しました最低居住水準に達するか達しないかということをチェックして、その未満になる世帯数を推計するというような道筋で、自力では適切な居住水準を確保することが困難な世帯がどれだけあるかという作業をします。
 ちなみに、第八期五カ年計画の場合は、これら世帯数が百七十六万世帯と推計いたしました。

〔望月委員長代理退席、委員長着席〕

○穀田委員 二つだけ言っておきたいんですけれども、局長、あなたは、住宅に困窮する低所得者に対して、こう言うんだけれども、その前提があるんですよね。忘れちゃならないのは、もう一度言えば、健康で文化的な生活を営むに足る住宅を整備するということが前提にあるんですね。それで、後ろの方もあるんですよ。それは、低廉な家賃で貸すということを言っているんですよ。その二つの話を抜いて真ん中だけ言ってはあきません、やはりそれは。
 それで、あなたはおっしゃらなかったけれども、結局、では百七十万が対象だと。先ほど私が言ったのは、それへの対応はどないだったかということも含めてと言いましたよね。その辺の方はなかったですわな。どうですか。

○山本政府参考人 この推計作業の中で、自力では適切な居住水準を確保することが困難な世帯ということで百七十六万世帯を推計したわけですが、これまでの公的賃貸住宅の運用の実績から、五カ年間に公的賃貸住宅に生じる空き家が、経験的に数字がわかっておりまして、大体百万戸、五カ年間に発生いたします、百万世帯が入れかわるということでですね。
 そういうことを整理した上で、この第八期の五カ年計画期間中、平成十三年度から今年度まででございますが、公的賃貸住宅として七十六万戸を供給する、これは対応する必要があるというふうに計画では整理しているわけでございます。

○穀田委員 計画では整理しているけれども、なかなかあなたは言われへんから、要するに、三年間で新規にふえた戸数、つまり、管理戸数ベースでいきますと一万戸程度なんですよ。だから、不足していることは明白なんです。
 資料を見ますと、実際大阪などで今後どれだけ需要があるかということを推計してみまして、二十二万戸が必要だと。平成十二年度の大阪府の包括外部監査結果報告書、ちょっとあれですけれども、そういうふうに大体なっています。その方法は、大体、総世帯数から持ち家の戸数を差し引いた借家に住む世帯のうち、収入の二五%、すなわち四分の一が公営住宅に入居資格があるとして、そこから既設の公営住宅戸数を引けば、概数ですから非常に粗っぽい数字ですけれども、必要な住宅の戸数が出る。そして、この借家は、一方、先ほど述べた最低居住水準以下のものが多いということを分析しています。
 だから、私が言っているのは、確かに地域によって差はありますよ。でも、公営住宅の総数が足りないということを私はあえて言いたいわけです。現に、公営住宅の応募倍率は大変なものだとだれも知っています。入りたくても入れない。
 最近の応募倍率数はどうなっているのか。全国と東京、大阪の実態はどうなっているか、お聞きします。

○山本政府参考人 公営住宅の応募倍率でございますが、平成十五年度におきまして、全国で九・四倍、東京都で二十七・四倍、大阪府では十三・八倍となっております。

○穀田委員 今お話しされた実態からしても、不足していることは火を見るより明らかです。単なるミスマッチでは済まされません。
 今回、この法案の審議に当たって配付された調査室の資料によれば、「住宅困窮者の増加、多様化」という資料がありました。これは、いずれも社会資本整備審議会住宅宅地分科会に提出した資料のようです。現在も、公営住宅入居の裁量階層としている高齢者、障害者はふえていきます。これに、その資料で述べているように、子育て世代、DV被害者など、入居要件を緩和するなど公営住宅が受け入れるべき対象は今後もふえ続けるのではありませんか。その点はどのようにお考えですか。

○山本政府参考人 少子高齢化の急速な進展などの社会経済情勢が大きく変化している中で、高齢者が増加しておりますし、障害者それからドメスティック・バイオレンスの被害者など、社会的弱者が多様化しているという事実がございます。
 こういった社会的弱者の多様化、増加に対しましては、公営住宅を初めとする公的賃貸住宅におきまして適切にその居住の安定確保を図るべきでありまして、将来の世帯数の動向、経済情勢の変化などをかんがみますと、今後も公的賃貸住宅の役割はしっかりあるというふうに認識しております。
 こうした公的賃貸住宅に対する需要に対し、民間住宅も含めまして、既存ストックを有効に活用して的確に対応していくことが必要であると考えております。

○穀田委員 いつも最後の方にそっちをつけ加えるんだよね。私が聞いているのはその前半の方なんです。
 いずれにしても、需要はふえるという見込みだと。もちろん、世帯数の増加というのは二〇一五年に向けてピークを迎えますから、その伸び率は鈍化するでありましょう。しかし、ふえるということは確かだと思うんです。
 しかも、今社会状況でどうかという問題になりますと、調査室の資料も触れていますが、雇用の問題も深刻ですし、国際化によって外国人もふえているということを指摘していました。私は、それ以外に、リストラなどを背景にした問題やホームレスもふえているという現状に着目する必要があるし、同時に、この間の国民所得階層の極端な二分化といいますか二極化とか、そういう問題がありますから、低所得者層というのはふえると考えるのが一般的だと思うんです。
 そこで、民間のどうのこうのと言うよりも、まず率先して本来役割を果たさなければならない国と地方自治体が仕事としている公営住宅は、足りないということになるということが大きな結論だと思うんです。
 ここまで論じてきたわけですけれども、法案について一点だけ、じゃ、最後大臣に聞く前に聞いておきたいんですけれども、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法、この法案で、大都市で異常に高い応募倍率である公営住宅の量的な不足は解消されますか。この点、聞いておきたいと思います。

○山本政府参考人 公営住宅につきましては、住宅困窮者の居住の安定を確保するためのセーフティーネットとして供給されてきたところでありますけれども、応募倍率、先ほど御説明しましたように大都市を中心に非常に高い、需要が依然として高い状況にございます。
 このような状況に対応するために、今回の法案におきましては、地方公共団体が、地域の需要に柔軟に対応できるように、公共団体が作成した地域住宅計画に基づきまして、地域住宅交付金を活用した公営住宅あるいは高齢者向け優良賃貸住宅などの公的賃貸住宅の総合的な整備を図るという仕事、それとあわせまして、その際、民間賃貸住宅の借り上げあるいは買い取りによる民間賃貸住宅のストックの有効活用、それから、地域住宅協議会を通じた、公営住宅それから機構の住宅、特優賃も含めまして、そういった公的賃貸住宅を一体的に、有効的に活用するといったようなことが可能になっているわけでございます。
 これらによりまして、住宅困窮者に対するセーフティーネットの充実強化が図られることを期待しております。

○穀田委員 その期待どおりいくかなと私は危惧を覚えます。
 というのは、ある地方自治体では、多様な居住ニーズに対応するには市場機能を有効に活用することが最も効率的として、これまでの市営住宅等の公共賃貸住宅の供給を中心とした政策から市場の活用を重視した政策への転換が必要だといって、例えば川崎の住宅基本計画などではその住宅供給基本計画を方向づけています。
 だから、多様なニーズに応じるためには、簡単に言えば、市営住宅等の供給を手控えて市場に任せようということだと思うんですね、この考え方は。極めてそうなりかねない問題をはらんでいるという現実があるということをぜひ見てほしいと私は思うんです。
 そこで、最後に大臣にお聞きしたいんですけれども、副大臣もあわせて答えていただいても結構なんですが、ここまで私が論じてきたのは、公営住宅でいうんであれば、余っているどころかそれは足りない。その要因は、九六年の公営住宅法改悪で新規建設を抑制したからにほかならない。東京や大阪は、これ以後、新たな建設をやっていません。確かに、建てかえなど、改善で幾らか戸数がふえている、これはあります。
 しかし、最初に言いましたけれども、公営住宅を住宅困窮者に供給するのは国と地方自治体の責任であります。セーフティーネットと言うなら、公営住宅を必要とするすべての住宅困窮者を対象にして公営住宅を供給するべきだという方向は変わらないと私は思うんですが、その点の見解を伺っておきたいと思います。

○北側国務大臣 低所得者の方々を中心といたしまして、住宅に困窮されている方々の居住の安定を確保していくというのは国の大きな責務であるというふうに思っております。
 現在、この公営住宅は二百十九万戸でございます。ちょっと、これまでどれぐらい公営住宅を建設してきたのか、その経過を見てみますと、昭和四十年時点では十八万戸余りだったんですね。二十万戸も公営住宅がなかったんです。昭和四十年です、今から四十年前。これが今、約二百二十万戸に近くなっているわけですね。そういう意味で、この四十年間で十倍以上もこの公営住宅を建設してきたわけでございます。特に、昭和四十年代に一番建設しました。今ある公営住宅の三分の一強がこの昭和四十年代の十年間で建設をしています。これがもうこれから当然、建てかえを初めといたしまして、さまざま改善をしなければならないわけですね。
 一方、日本の社会は人口減少社会にいよいよ突入する、そしてさらに高齢社会。高齢社会というのは、本格的な高齢社会はこれからでございます。これから本格的な高齢社会が到来する。となると、きょうの御議論にもありました、公営住宅のバリアフリー化をしっかり進めていくだとか、また、公営住宅に、建てかえの際に、そうした高齢者の方々のケアをできるような施設を併設していくだとか、そうしたニーズなんかもたくさん出てくるわけでございます。
 そういう意味で、今、やはり住宅政策の転換期にあることは間違いないと思うんですね。やはり、この二百十九万戸という公営住宅であれば、このストックをこれから建てかえも含めましてどう有効に活用していくかということに、限られた予算の相当な部分を使っていかないといけない時代になってきたことは確かなんだろうというふうに私は思うわけでございます。そういう大きな変化の中で、今、新たな住宅政策というものを検討しようとしているところでございます。
 ただ、一方で、住宅セーフティーネットの確保というのは当然必要なわけでございます。市場重視ですけれども、一方で、住宅セーフティーネットの確保というのは国また県の大きな役割でございまして、それはしっかり果たしていかなければならないと考えているところでございます。
 また一方で、公営住宅というのは、住宅に困窮する低額所得者に供給していくということがこの公営住宅の一番の役割でございます。そういう意味では、きょうも幾つか議論ございましたけれども、入居者の方々の中に収入超過者の方々もいらっしゃるわけですね。そういう方々についても、今後それをどうしていくのか。また、先ほども御議論ございました入居承継の問題、承継の問題をどうしていくのか。そうしたことも議論をしていく必要があると考えているところでございます。
 いずれにしましても、公営住宅の役割というのは決して小さくなっているわけではない。私は、大事な役割をこれからもしっかりと担っていかないといけない。ただ、時代の大きな変化の中でその役割の果たすべき方向が、従来は、公営住宅をしっかりどんどん建設していく、開発していくということにやはり主眼を置いてきたわけでございますが、これからは、そういう意味では、既存の公営住宅を、どうこのストックを有効に活用していくかというところに重点を置いていくという方向性は、流れは、これは正しいものだというふうに思っております。

○穀田委員 私は、転換期、そういうストックが重要な側面を持っているということを否定しているわけじゃないんです。それもやはり、例えばどういう視点に立って物を考えるかということが問われているんだと私は思うんですね。国交省は必ず住宅困窮者という話はするんですけれども、前の方の、健康で文化的なというのをいつも抜かすんですよね。やはり私は、憲法二十五条の精神というのは今ほど大切な時期はないと思うんです。転換というのは、ある意味では充実ということだと思うんです。その際の視点というのは、住まいは人権だということをどうやはり我々が見るかだということは思うんですね。
 昭和四十年ごろに随分建てたという問題もそうですし、その点では、住み続けたいという思いもあれば、また、それを建て直してほしいという場合もあるし、その建て直しについても安くやってほしい、そういう方々の希望もあるわけなんですね。そういうものをいかにしてとらえるのかということだと思うんです。
 その際に、なぜ私はその前段の方を強調したかというと、やはり、生存権を住宅の面から支える、そういう精神でつくられた法律の真髄が問われているからだと思うんですね。というのは、生存権というのはあくまでも、社会や経済の水準の向上に応じて、求められる生存権の水準も上がるということだと思うんですね。これが社会の進歩であって、歴史の進歩だと思うんです。
 そういう意味で、私は、転換期という名前で事実上新しい住宅をつくることを手控える、抑制するというやり方はちょっとおかしいんじゃないか。そういう意味での、政府の住宅政策が公共住宅からの撤退という道筋で進もうとしている懸念を持たざるを得ない、その点だけ指摘をして、きょうの質疑は終わりたいと思います。