国会会議録

【第162通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2005年4月20日)

 一般質疑で、滋賀県の彦根に計画されている場外舟券売り場“ボートピア”について質問。設置が計画されている土地は、地元自治会長などの土地で、しかも抵当物件になっていて「総額50億円もの抵当権が設定され、同じ自治会の人びとの多くがこの会長の連帯保証人に名を連ねており、会長が借金を返せなければ差し押さえの危険があることから、計画に同意したとみられる」というヤミの構図を明らかにした。

○橘委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 滋賀県彦根市の名神高速彦根インター出口付近に場外舟券・車券売り場の建設が計画されている問題について聞きます。
 宮城県の大郷に舟券と馬券の売り場の併設の例がありますけれども、舟券と車券が併設されるのは例がなくて、設置されれば全国初の巨大ギャンブル施設となります。利用者数の推定は、舟券売り場が一日平均一千人強、年間三百六十日稼働、車券の方が一日八百人、年間二百四十日稼働を見込んでいて、合計すると五十五万人のギャンブルを目的とした不特定多数の人々がこの施設を訪れるという計画です。
 彦根市といえば、彦根城が有名な観光地であるわけですが、この彦根城の年間の入場者数は約五十万人なので、この数を一気に上回るということになって、観光地彦根、歴史と文化の町彦根がギャンブルの町彦根に変わってしまう、これは大問題だということで、地元の方々も反対運動を起こしているわけです。
 住民の皆さんの指摘している不安は、治安の悪化、そして、交通渋滞がひどくなる、観光地としての彦根のイメージがダウンする、子供の教育上よくないなど、極めて当然な要求であって、こういった不安に対して、彦根市ではまだ正式な住民説明会は開かれていません。十分な住民への説明が行われず、十分な住民同意がないままこの計画が進んでいることに、私は非常に危惧を感じています。
 地元調整の手続は、地元の自治会の同意がとれていること、市町村長の同意がとれていること、市町村議会が反対していないこと、この三つが必要ですよね。確認したい。

○矢部政府参考人 お答えを申し上げます。
 ただいま議員御指摘のとおり、ボートピアを設置する場合には、地元調整について三つ条件がございまして、一つは、当該設置場所の自治会の同意がとれていること、それから二つ目に、市町村の長の同意がとれていること、それから三つ目に、市町村の議会が反対していないこと、これを確認することになっております。

○穀田委員 ここの計画はちょっとむちゃくちゃでして、地元の方々の訴えでは、二〇〇三年十一月二十六日、施設を設置する株式会社トランスワードと鳥居本学区自治連合会の原多喜弥会長ほかが、競輪場外発売場の設置に関する基本協定書を締結。翌十二月十八日には、競艇場外発売場の設置に関する基本協定書を締結している。同月、原開発委員会が彦根市に場外舟券・車券売り場建設について概要を説明する。しかし、地元住民がこの計画を知ったのは、半年も後の二〇〇四年六月十四日、彦根市議会における議員の質問によってです。そこで、市長が合意していたことも明らかになる。地元住民への説明会を一切開かず、まして住民の意見も聞かずに、市長が合意文書だけ交わしているという実態なんですね。
 また、議会で我が党の議員がこの問題を質問した際に、条件つきで合意をしたその合意の中身についても、設置することの同意なのか、設置するための話し合いをする合意なのかについて、非常にあいまいな答弁をするということになりまして、住民の方からの情報公開条例に基づく文書開示で初めてこれが、設置に同意した文書を交わしたことが明らかになる、こういう経過を経ていて、およそ、十分な説明で住民の納得を得るというプロセスを踏んでいないという実態があります。
 そこで、従来、海事局も言っています。地元住民に情報を十分提供した上で、民意を反映した意思決定、つまり、住民の賛否を問うことが当然必要だという見解を述べています。地元住民に十分な説明会も開催しないで、自治会や体育振興会の会長や役員等で決定した協定書の段階でしかないということでもあるわけだから、これを同意とみなすことはできないね。確認したい。

○矢部政府参考人 今、地元調整は具体的にどういうプロセスを経て行うべきなのかという御質問だったと思いますが、委員の方からも御指摘がございましたように、十分な時間的余裕を持って説明会を開催し、そして、民意を反映した意思決定のプロセスを経る、いわゆる民主的な手続に基づいて、適正な手続に基づいて自治会の合意を得るということが必要だと思っております。
 そういう意味で、一部の方だけが参加をするとか、あるいは、地元の説明会を開催しないで、何らかの同意形成がなされたとだれかが主張するとか、いろいろな不適当な場合はあろうかと思います。

○穀田委員 これは大切でして、わざわざ海事局は同意書の形式まで書いているんですよね。それによりますと、○○自治会では、○○日に総会を開いて賛否を諮った結果、賛成何人、反対何名であったので、同意することを決議した、こういう様式書まで出しているぐらい、自治会の、地元の意思をこういうふうに大切にしているんですね。
 そこで、地元とは何かという問題について少し聞きたいと思います。
 この地図を見てほしいんですけれども、なかなか見えにくいんですけれども、ここにつくろうというんですよね、舟券・車券売り場を。ここが原町という町内なんですね。これ全体が原町なんです。ところが、この緑のところだけが原町の自治会となっているんですね。
 それはなぜかというと、これ全体が原町なんですけれども、つまり、皆さんもおわかりのように、いろいろな開発をやりますよね。そうすると、開発するたびに集落ができるものだから、これは原町の原団地自治会、こっちは原町の原西団地自治会、ここは原町の何とか何とかといって、こういうふうにして全部できていくわけですね。そうすると、原町の自治会というのは、ここに建てるからこれだ、ここのところに、場所に建てるからここの町内会だけが対象かというふうにならない、もともと町はこれ一つなんだからというふうな理解になるんだと私は思うんですよ。そこが、私としては聞きたいところだと。
 したがって、こういうふうに今見せたように、単なる一つの、ここが出てくる場所であるからここが一つの町内会だというだけでは、もともと町がこれ一つだったわけだから、同意の対象として各自治会もあるんじゃないかと思うんですが、それはどうですか。

○矢部政府参考人 ただいま、同意をとるべき自治会の範囲についてのお尋ねだったと思いますが、私どもといたしましては、原則として、その当該ボートピアの設置場所が属する自治会というふうに考えております。
 では、その他の周辺の自治会の民意はどのようにして確認するのかという問題点が残るかと思いますが、最初の御質問にございましたように、三つの事項を確認すると言っておりましたが、地元市長の判断、それから地元の議会において反対がなされていないということもあわせて確認するとなっておりますので、周辺の自治会の民意というのはその二つによって、間接的ではありますけれども、確認はされているというふうに考えております。

○穀田委員 そこで大事なのは、属する自治会と言っているんですよ。問題は、どういうふうな影響を及ぼすかということを見ながら判断をするということが大事なんですよ。そういう見方をしなきゃ、属する自治会というのは、もともと町が一つなわけだから、そこの町のところで出てくるという判断をすればそれで、属する自治会が一つでなければならないという方策はないんですよ。そういう規定をしている文書はないんですから。わかりますね。だって、属する自治会とは書いていないんですよ、属する自治会は一つだとは書いていないわけです。つまり、例えば道でふさがっている場合もあれば、同じ町内もあれば、こうあるわけですから、そこはそういう解釈をすべきであるということだけ言っておきたいと思うんです。
 そこで、問題は、そこの判こを押している、鳥居本学区自治連合会の会長である原多喜弥氏なる人物が先ほど述べたトランスワードと設置協定を結んでいるわけですが、その原多喜弥氏と原町自治会の会長である北嶋佐一郎氏なる人物が連名でその請願書を出しているんですが、実は、この原多喜弥氏も北嶋佐一郎氏も、トランスワードに対してみずからの土地を提供し、賃借料収入を得ることになる原開発委員会の代表役員。
 つまり、そもそも、場外券売り場を設置する際に地元の合意を得なければならないと言っている趣旨は、そこにいろいろな迷惑がかかるからなんでしょう。ところが、その人たち、判こを押している人たちは、利益を受ける方の側なんですよ。そういうことで、いわば影響を受ける側の代表じゃなくて、開発主体、設置主体として恩恵を受ける側の立場の人がそういうことをやって、それで同意を得たなどということが言えていいのかということについての見解を聞きたい。

○矢部政府参考人 利害関係者がその同意をとるべき自治会のメンバーの中に入っている、これはおかしいじゃないかという御趣旨の御質問だと理解しましたが、私ども、最初に申し上げましたように、地元の同意が民主的な手続を経て得られているということがまず重要だと考えております。
 ボートピアを設置するということになりますと、いろいろな方がいろいろな利害関係をお持ちになると思いますが、そのことについて、私どもとしては、地元同意を得る手続において個々人の利害の内容や度合いについて考慮するということは、これまでにはしておりませんし、これからもするつもりはございません。

○穀田委員 それは、そういうことは当たり前ですよ。しかし、こういう度外れたことがやられていていいのかということを言っているんですよ。
 では、もう一つ聞きましょう。これは大臣にちょっと資料をお届けしているんです。先ほど申しました、ここの土地に建つと言いましたよね。ここの土地は、今お渡ししている資料なんですけれども、実は、JA滋賀県信用協同組合連合会、JA東びわこ、奈良建設、滋賀銀行、材信工務店等々の抵当物件に全部入っているんですね。それは全額でいうと五十億近い金で、全部なっているんですね。だから、借財を返すためにこの土地を使おうとしている。
 さっき言ったように、個々の利益という問題については関与しないというけれども、そうじゃないんですよ。丸ごとの利益に絡んでいるんですよ。そういう土地をこうやっていて、ここの土地を丸ごと、抵当物件に入っていてやろうとしている。こういう事実についてもつかんでいるでしょうか。この事実をつかんだら、これがいいというふうに胸を張って言えるでしょうか。大臣、その辺はどうですか。

○矢部政府参考人 お答えを申し上げます。
 今御質問の、対象になっております彦根市の案件につきましては、そういう案件があるということは承知しておりますけれども、まだ地元での調整中ということでございまして、私ども国土交通省に対しては、設置の確認の申請が上がってきておりません。したがいまして、現段階では、詳細については承知していない状況でございます。
 今御質問の、抵当に入っている土地の使用というのはいかがなものかということにつきまして、一般論として申し上げますと、抵当に入っている土地を使うことができるかどうかということについては、これは、その土地の所有に関する関係者の契約あるいは協議によって定められるものだというふうに理解をしております。したがいまして、いずれかの時点で設置確認の申請が上がってきた段階で、本件について詳細に状況がわかりました場合には、そういった情報を詳しく調べた上で、結論を出したいというふうに考えます。

○穀田委員 とても重要だと思うんですね。やはりそれは調べていただいて、要するに、抵当に入っているということは、いつ召し上げられるかわからないという事態になっているんですね。
 そこで、新しい事実をもう一件だけ言いますと、さっき言いました原多喜弥氏が全部土地を持っていて、それを全部、全部じゃないですけれども、いろいろなところにお金を借りて、それを抵当に入れている。そのときの連帯保証人になっている人が実はここの町内会のほとんどなんですよ。ここに私、一連の金銭消費貸借証書をずっと持ってきました。これによりますと、この町内会にいる人たちの圧倒的多数が連帯保証人に判こを押しているということなんですね。だから、この土地を担保に入れる際の保証人になっているということなんですね。
 ところが、これは調子のいいときはいいけれども、そうじゃなくて、金が返せなくなっているものだから、差し押さえの危険性が出てくる。そうしますと、やみくもに何とかしなくちゃならぬとなりますわな、普通。大臣、そうでしょう、普通。連帯保証人になっている、これが差し押さえられるかもしれない、これは何とかせなあかんと思いますよね。そうしたら、この土地をうまく使って舟券と車券売り場に提供しようというときに反対することができると思いますか。
 だから、そういう状況のもとで、今海事局長からお話があったように、確かに調査してくれてよろしいですよ。だけれども、こういうものが上がってくるという、今私は大体物事を全部言っているわけだから、これほどのふざけた話というのを知っておって、これで胸を張って判こを押せるかということをちょっと聞きたい。

○矢部政府参考人 繰り返しの答弁になるかもしれませんけれども、やはり連帯保証人という立場というのはそういう意味で一つの大きな利害関係を持っているということだと思いますが、先ほども答弁いたしましたように、私どもとしては、地元調整が民主的な手続に従って行われたかどうかということについて十分審査をするということでございまして、個々人の利害関係の内容あるいは程度については見る予定はございません。

○北側国務大臣 これは前も御質問いただきましたですね。(穀田委員「違います。それは八幡町のボートピア。あれは京都府」と呼ぶ)失礼いたしました。別の委員の方から御質問をいただいているようでございます。(穀田委員「全然違う県。場所が違うんです」と呼ぶ)場所が違うんですか。失礼いたしました。
 いずれにしましても、これは、今海事局長が答弁をさせてもらいましたとおり、国土交通省の方に確認申請は上がっておりません。まだ具体的な情報については承知をしておらないという状況でございます。
 恐らく今地元調整をまだしているんだろうというふうに思うんですが、冒頭申し上げたように、当該自治会の同意、市町村の長の同意、そして市町村の議会が反対していないこと、この三つの要件が、先ほど来海事局長が何度も答弁しておりますように、民主的な手続できちんととれているのかどうか、そこを、仮に確認申請があったとしたら、それはきちんと見させていただかないといけないと思いますし、また、きょう委員から御指摘があったことについてはよく参考にさせていただきながら検討しないといけないというふうに思います。

○穀田委員 今お話ししたように、つまり、地元の自治会でやはりまだ賛否をしっかりとっていない事実があるよと。その上に、地元の自治会という範疇でいくと、町といった場合には全部があるんじゃないか。その上に、今の町内会のことでいえば、やはり直接の利害関係者というところになっているよ、しかも、それが担保に入っている、それがさらに大がかりにみんな巻き込んでやっている。こういうことについて、それは話としては同意だとかどうだとかという三つの原則だなんて、そんなあほな決まり文句を言っているようじゃだめですよ、それはやはり。
 要は、こういうものが周りで進行していても知らんぷりしているというわけにいかぬだろうという話をしているんですよね。これが常識というんですね。だから、私は、やはり今度の問題について、もちろん大臣が全部知っているわけじゃありませんし、海事局長も全部知っているわけじゃありません、だから、こういう裏で進行している事態を描いたわけですよ。
 こんなことがもし承認されるとしたら、それは国土交通省の汚点になるということだけはあらかじめ言っておいて、どう考えたって、そんな五十億も借りている話が、どこかで金がどこに行ったかわからぬ、担保になっている土地が出ている、そしてそれで利益を得る、しかも、それにみんな周りが一緒に判こを押している、だからそれはにっちもさっちもいかない、こんなふうな話がわかっておって判こを押したなどというようでは国土交通省が泣くぜという話だけはしておきたいと思っています。
 以上です。