国会会議録

【第162通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2005年4月20日)

 日本航空の多発事故問題に関する集中質疑。日本航空の新町敏行社長に、『空の安全』問題について質す。

○橘委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 新町参考人だけに聞きます。時間がないので端的に答えてください。御巣鷹山の教訓は何だったか、ひとつ言ってください。御巣鷹山のあの事故の教訓は何だったか、どういうふうにお考えか、お答えください。

○新町参考人 御巣鷹山はまさに我々の原点であります。決して忘れてはならないすべての原点である、そういうふうにかたい信念で日々取り組んでいるところであります。

○穀田委員 理念じゃないんですよね。大事なことは、当時、こう言っています。絶対安全の確立、労使関係の安定、融和、公正明朗な人事、現場第一主義、こう言っているのを覚えておいでですか。

○新町参考人 覚えてございます。

○穀田委員 そこで、聞きたいと思います。
 私は、やはり二番目に言った労使関係の安定、融和という問題はとても大事だと思うんですね。そこで、聞きます。組合との話し合いはどうなっているかだと思っています。事故後に、この問題に、例えばドアモードのふぐあいについて交渉があったときに、組合側に対して会社側はどう答えていますか。

○松本参考人 組合に対する説明会というのは、あした、あさって行うことになっておりますが、私どもといたしましては、組合に率直に御説明し、必要な御意見を聞かせていただきたいというふうに考えております。

○穀田委員 メモを見ぬと答えたらどうやと思うけれどもね、私はまず。というのは、私はそういうふうに聞いていないじゃないですか。要するに、そのときにどう答えたかと聞いているんでしょう。

○松本参考人 直接私はまだ答えておりません。

○穀田委員 要するに、知らないということですよね。
 こう答えているんですよ。安全協議会の場でも乗員組合は問題提起をしている。変更の問題が大事な問題として起こっている、その原因の一つだという認識はあるか、こう聞いているんですね。そういうふうに聞かれたんでしょう。あなたはいいから、社長に答えてほしい。それに答えたんでしょう。そのときどう答えているか。それはありませんと答えているんですよ、会社は。
 こういうことの実態があるんだということをあなたはよく認識しておかないと、どんな話をしていたかということも答えられない、こういう話が問われたかということもわからない、このようなことではだめだということをまず最初に言っておきたい。だから、ここに原因の一つがあるということを言っておきたいと私は思います。
 では二つ目、JALグループの中期経営計画の目的は何と書いていますか。端的に。

○新町参考人 いかなる環境下におきましても、それに打ちかつ柔軟で事業基盤の強固なものにするということを目的にしておりまして、それで、この〇五年―〇七年度の中期計画は、まさにこれからJALグループの生き残る最後の構造改革と言ってもいいくらいに、今までの、従前のビジネスモデル、パラダイムを転換させたものであります。これの成否、これの実現いかんによってJALグループの将来が決まる、そういう基本の考え方をもとにしまして事業計画をつくっております。

○穀田委員 要するに、こう言っているんですよ。
 もう少しあなたが言っていないことを言えば、いかなる環境においても利益の生み出せる事業構造を構築する。ここが大事なんですよ。あなたはおっしゃらなかった。あなたが出しているJALグループニュースですよ。ことしの三月十日に出している文章の中に、「いかなる環境においても、利益の生み出せる事業構造」。ここなんですよ、あなたが言わなかったことは。利益を生み出せる構造をつくるということがポイントなんですよ。
 あなたは、きょう、そしてきのうも、繰り返し安全第一と述べています。そこで、中期経営計画との関係で、安全部門は合理化の対象としていないと発言された。会社の中期経営計画を見ると、人員見直しによる人件費効率化、生産体制の外部化、外地化などを進めて、二〇〇七年度に七百五十億円、長期的には一千億円以上の費用構造の抜本的な改革を図り、収支改善をするとあります。この人件費効率化、七百五十億円のうち三百四十五億円、四六%も占めているんですね。
 そこで、お聞きしたい。一つ、安全部門というのは一体どこか。二つ、運航乗務員、客室乗務員、整備士などはまさに安全に直接かかわる部門の人員だが、この部門での合理化は対象としていないということか。この二つをお聞きしたい。

○新町参考人 私が昨日参議院の国土交通委員会で申し上げましたのは、安全部門として特定の部門を指すというよりは、直接安全にかかわる部門、すなわち、安全を損なうような合理化はしませんということを申し上げた次第でございます。したがいまして、安全というのは、間接部門においても直接部門においても、安全にかかわっている部分がございます。しかし、直接的に安全にかかわり、なおかつ安全を損なうような、そういうものに関しては合理化の対象にしないということを申した次第でございます。
 なお、運航乗務員及び客室乗務員につきましては、二〇〇五年―二〇〇七年度の今回の中期の中においても、微増の計画というふうにしてございます。

○穀田委員 整備士だけは述べていないね。
 安全第一を具体的に実行するためにどうするか。これはやはり、先ほど来お話があったように、定時性を安全に優先させたなどの事故分析をして、安全啓発教育や訓練実施、マニュアルの見直しなど、対策を行っていくと言ったとしても、私は根本的な対策と言えないと思うんですよ。
 そこで、お聞きしたい。ハーレクィン社、持ち株会社日本航空は航空法の適用を受けますか。

○新町参考人 受けません。

○穀田委員 受けないんですよ。私、この間もこの問題について質問しました。持ち株会社の日航、それからハーレクィン社、これはいずれも航空法の適用を受けないんですね。航空法とは何か。航空法とは命の安全という問題を第一に掲げている第一条の規定、これを受けない会社なんですね。だから、今、安全第一と本当に言うんだったら、今までの体制よりもさらに強化をして、少なくとも世界水準で問題になっている保安要員の問題を初めとして、新たな決意でもって具体的に実行するということが問われているんですよね。
 だとすると、こういう航空法の適用を受けないようなところに、事実上の派遣会社をやったりすることなどを初めとした問題についても、改めて見直すべきじゃないかというのが普通の人が考える常識じゃないでしょうか。少なくとも、前へ進める。
 少なくとも整備の問題についても、きのう私どもの議員が質問しましたように、随分減っている。整備士の増員、先ほどは整備士の増員は全然言わなかったけれども、まさに整備士の増員がかぎとなっているという問題もある。こういう点について、あなたのお考えを聞きたい。

○新町参考人 整備の問題は、私ども、日本航空事業会社及びそれに関連する整備関係の会社、それをすべて合わせてトータルで、整備セグメントとして全体として考えていく、そういうような計画の中に入っております。もちろん、委託したからといって、その委託先が安全ではないということでは決してありません。国の基準にのっとって、なおかつ私どもの基準にきちっと照らし合わせて安全を確認した後に、委託会社を選び、または委託するということでございますので、私どもは整備セグメント全体として考えているところでございます。
 それから、ハーレクィンその他に関しましては、御意見として承りまして、持ち帰ってさらに勉強させていただきたいというふうに思っております。

○穀田委員 これはとっても大事な問題なんですよね。
 私は、この間も国土交通省の質疑の中でも質問したんです。やはり、人件費のコスト削減にかかわって、ここだけはしちゃならぬという問題があるんじゃないかと私は言っているわけなんですね。つまり、客室乗務員の派遣会社社員制度の導入というのはまずいと私は思っているわけです。
 国土交通省も、また今もお話あったように、それぞれ訓練をするから安全確保できると大体言うんですが、しかし、賃金に格差がある、直接雇用でもない。そして、いわば社長が違う客室乗務員が同じチームを組んでやることになる。この間国土交通省にも言いましたけれども、ドアモードの変更ミスで同じ社員同士で問題が起き、安全問題が焦点になっているときに、チームワークの形成に少しでも懸念を抱かせる派遣社員化を進めるというのは問題じゃないかと私は思っています。
 現実の意見を聞いてみますと、例えば、契約更新並びに国際線への移行の時期など、そういうものを左右する査定というのは、一緒に乗務する上位職が行っているわけですよね。だから、声を上げにくいわけですよ。それで、契約制ということで不安定な身分になっている。先ほど社長は、現場の話を聞いたと言いますわね。現場に出かけていると。ところで、それじゃ、そういう問題についての声を聞いたことがおありですか。

○新町参考人 今先生が御指摘したような編成によるコミュニケーション不足、または下の者が上に言えない、若い人が先任の客室乗務員に物が言えないというような、そういう状況があるということは私は直接は聞いておりません。
 何回も申し上げますけれども、派遣であろうと正社員であろうと契約であろうと、乗務をする以上は、乗務するだけの十分なる教育と訓練を受けた後に乗務させてございますので、安全という問題、保安という問題に関してもいささかも問題ないというふうに思っております。

○穀田委員 それは、まさに、そういう問題が指摘されているということについてのまともな検討がないということじゃないですか。そういう現実の声が起きているという問題が組合からも提起されている。それで、先ほども言ったように、組合との議論の中でそういう答えをしたことも知らないような人がよく言えるなと、私ははっきり言って思いますよ。
 つまり、あなたね、大事な問題は、社長と社員と話し合ったときに対等だと思いますか。じゃないんですよ。対等じゃないんですよ。その対等じゃないのはなぜか。物が言えないんですよ。風通しがいい、冗談じゃないですよ。テレビで見ましたよ、あなたが出かけていっているところ。あれが風通しじゃないんですよ。やはり、一番嫌な意見を言う人たちに心を開くということなんですよ。それが、対等な立場で物が言える土俵をつくるということなんです。それは、組合員の、組合としての意見を聞くということなんですよ。
 そして、そういう差をつけてはならないという問題について、新しい導入の仕方についてそれは間違っているという声があるということについても、一番嫌な意見を聞かなきゃだめですよ。そういうところにあなたの姿勢があらわれているということを私は指摘しておきたいと思うんです。
 しかも、この問題は、乗務員のチームワークという点で重大な問題をはらんでいるんです。
 九四年、日航では、契約制客室乗務員をKPNという組織にまとめて、教育担当以外のベテラン客室乗務員と分離している。こういう編成が偏っていると、スキルの伝承を妨げ、安全性の低下を招くと思う。今回のドアモードの件も、新人多数編成だったと言われています。
 では、聞きますけれども、このような編成をしているのは会社にとってどんなメリットがあるんですか。

○松本参考人 契約社員等の問題でございますが、国内線を担当するセクションに契約社員が多く所属しているということは事実でございます。ただ、契約社員とベテラン社員を分けて乗務させているということではございません。国内線で契約社員が多いというのは新人の育成が目的でございまして、ベテラン社員も適宜配置したグループを編成し乗務させておりまして、ノウハウの伝承を目指した組織と考えております。
 また、新人につきましてはOJTを行いまして、保安要員としてもその能力を見きわめ、十分な教育を行うことによって客室乗務員として任用しているところでございます。

○穀田委員 あなたね、よく人の話を聞いて答えなあかんよ。どんなメリットがあるのかと言っているんですよ。あなた方の実際の現場について、そんな悠長な話していないですよ。十二名の客室乗務員の中に九人がそういうことをやれるような事態に変更しているじゃないですか。そういうことをやっておいて、よくそういうことが言えるものだなと思う、私。
 要するに、私が一番最初に言ったのは、あの御巣鷹山の教訓は何だったのかということを言ったわけですよね。それで、二番目の労使関係の安定、融和という問題をわざわざ、あなた方言わへんから、言うてあげたわけですよ。この問題は、少なくとも、やはり前近代的な労務対策としてしか考えられないということを組合の方々が言っておられるわけですね。二十年前の日航の事故のときも、組合を分裂させ、差別によって職場を支配する労務政策が今も続けられている、本にまでなっているんですよ。
 だから、今回のトラブルの背景となっているという問題について、私は、企業の存亡にかかわる安全問題に労務対策が影響を及ぼすことがあっては絶対ならないということを特に言っておきたいと思うんです。そのことを述べて質問を終わります。