国会会議録

【第162通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2005年4月15日)

 港湾法等改正案が審議され、「スーパー中枢港湾問題」について質問。、"巨大な釣り堀"と揶揄されたこれまでのムダな港湾整備事業の例をあげ、「港湾法の改正は、国民の命・安全など生活関連を削り、スーパー中枢港湾など、不用不急の事業に重点投資することに他ならならない」と指摘し、反対した。

○橘委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 港湾の整備事業は、〇二年までに港湾整備五カ年計画などで進められてきました。
 九六年から二〇〇二年までの第九次港湾整備七カ年計画は、どういった内容で、総事業費は幾らだったか、まずお答えいただきたいと思います。

○鬼頭政府参考人 第九次の港湾整備五カ年計画、結局二年延びまして七カ年計画になりましたが、その内容と事業規模についてでございます。
 まず、内容につきましては、国際競争力を有する物流ネットワークの形成、信頼性の高い空間の創造、活力に満ちた地域づくりの推進、この三つの目標と、それぞれにそれらを達成するための六つの施策を掲げて、港湾整備事業を緊急かつ計画的に実施することにされたわけでございます。
 その事業規模につきましては、総額で七兆四千九百億円、うち、いわゆる公共事業でございます港湾整備事業につきましては、総額四兆三千百億円、これを投資規模としております。
 以上であります。

○穀田委員 当時もやはり国際競争力ということで言われて、今お話あったように七兆四千九百億円が使われて、中枢・中核国際港湾などが計画されていた。当時、日米包括経済協議や平岩レポートによって四百三十兆円から六百三十兆円に跳ね上がった公共投資計画に基づいて、公共事業への莫大な投資が背景にありました。
 当時の運輸省はこう言っています。「大交流時代を支える港湾」、これを構想し、今述べた中枢・中核国際港湾はアジアの国際ハブ港湾にするというふれ込みだったんですね。
 同時に、そういうハブ港湾をつくるというだけじゃなくて、それ以外にも地方港湾で国際海上コンテナを取り扱う港湾の整備が進められ、今では六十三の港もつくられているわけです。
 これら地方港湾の整備については、会計検査院を初めさまざまな方面から、過大な需要予測に基づくものとか、当時、百億円とか一千億円とか言われている釣り堀など、むだな公共事業の典型としてこの国会でも私どもさんざん取り上げてきました。
 私は、全国各地を回ってきて整備された港を見ますけれども、規模に見合った船、つまり、この港湾をつくるときに入ってくるというふれ込みの船などというのはおよそ月に一回程度しか入ってこないという実態など、さらには、福井港などの場合には、四百億円の釣り堀と言われ、地元紙では既に釣り情報の中にまで入れられるという、何というのか、笑い話にもならない事態までできている。だから、よくまあこれほどむだを重ねたことだなということを私はあきれます。
 国交省として、むだと指摘された港湾整備事業を進めてきたことについてどのように考えているか、この際、お聞きしておきたいと思います。

○鬼頭政府参考人 今お話のありました地方の港湾につきましても、我が国における効率的な国際、国内の海上輸送を担う拠点として、また、地域の経済と雇用を支える基盤として、重要な役割を担っているというふうに私ども思ってございます。
 そういう意味で、国土交通省といたしましては、これらの需要に応じた適切な港湾整備を厳格な事業評価を実施しながら行ってきたところでございます。その結果、地域の物流コストの削減あるいは経済の活性化に大きく寄与しているものと考えています。
 例えばの例で申し上げますと、物流コストの削減という点では、国際海上輸送されるコンテナ貨物あるいはばら積み貨物の輸送コストは、この五カ年計画スタート時点の平成八年に比べて、平成十四年には六%減少しているという結果が得られてございます。
 また、近年は、先ほど来お話のありますように、我が国港湾の国際競争力の向上が喫緊の課題になっているということもございまして、スーパー中枢港湾のプロジェクトなど全国的ネットワークの視点に立った施策に重点を置くこととしておりますが、一方で、例えば、地方港湾の事業実施港数については、平成八年の四百二十一港から、十七年度、本年度は二百十港に半減をさせておりますし、また、重要港湾につきましても、その実施箇所数について、平成八年度に千三百五十六カ所あったものを本年度は四五%減の七百四十カ所にしてございます。
 このように、施策にめり張りをつけ、限られた財源を選択と集中によって有効に活用しているところでございます。

○穀田委員 こういう点でいいますと、いつも選択と集中とか重点化、こういう話でいくんですよね。今までこれほど港に事実上つぎ込んできた金をどうするのかということがないわけなんですね。
 私は、この間、大臣所信の中で、ダム事業と河川整備事業を例に質問をしました。その際に、不要不急のダム事業を一方でふやしている。一方では、河川改修そして修繕費などの今すぐ国民に直結する、命と安全にかかわる緊急に必要な事業費を削っているということを対比しまして指摘しました。この港湾整備事業でも同じことが言えるということを私は指摘しておきたいと思うんです。
 〇五年に、スーパー中枢港湾関係予算を一・二一倍に重点化する。確認しますけれども、スーパー中枢港湾指定港に対する総事業費は、二〇〇五年度に新たに採択された大阪港、名古屋港を含め、今後どれだけ投資するんですか。

○鬼頭政府参考人 お答えを申し上げます。
 ただいまお尋ねのありましたスーパー中枢港湾プロジェクトでございますが、昨年指定をいたしました京浜港、伊勢湾並びに阪神港の三港で国際海上コンテナターミナルを構成する岸壁あるいは航路、そういったもののほか、防波堤あるいはターミナルと港湾の背後地域を結ぶ臨港道路の整備、これを一体として実施するということにしておりまして、現在採択をされております今申し上げました事業をトータルいたしますと、四千三百十二億円になってございます。
 また、もう一点お尋ねのございました、本年度から新規に着工する名古屋港の国際海上コンテナターミナル、これにつきましては総事業費が三百六十五億円。同じく新規に着工いたします大阪港の国際海上コンテナターミナルの総事業費については四百四十五億円というふうになってございます。

○穀田委員 これらの港には既に、九六年以降だけでも九千七百四億円の事業費が投入されているという、膨大な費用を使っているんですよね。
 片や、スマトラ沖地震などで津波災害などに対する備えは今緊急性を増しています。そこで、調べてみると、こうした災害に備えた予算のほとんどを占める海岸事業の国交省関係の総事業費は、二〇〇五年で八百五十四億円ですよ。前年の〇四年は九百三十四億円から、八十億円も減っていて、〇・九一倍なんですね。二〇〇三年で千三十八億円でしたから、比べますと二割も減っているんですね。
 だから、選択と集中、重点化というのは、結局、この間の例にとりましたように、この港湾関係でも、実際にまず守らなければならない、そういう海岸の事業費によって国民の命を守る整備というのには金を減らす、それでこの大型のところはふやす、こういう、結局同じ構図が明らかになったと私は思っています。
 そこで、スーパー中枢港湾とは何かという問題について少しだけ議論しておきたいと思うんです。
 一言で言って、貨物船の巨大化ということに対応して、八千TEUのコンテナ貨物が可能な貨物船の入港ができる、岸壁を一千メートル、それから奥行きが五百メートル、水深が十五メートル以上のターミナルの新たな整備ということですよね。そして、香港、上海、釜山などアジアのハブ港湾に対応できる使用料の低額化、そのためのコスト削減を実現できる港づくりだということだと思うんです。
 そこで、三つ一緒に聞きますので、こういう大きなターミナル、安い使用料の港をつくることによって、第一に、現在、香港、シンガポール、上海、釜山などアジアの巨大港に集まっているコンテナ貨物が日本の港に戻ってくるのか。第二は、日本に直接入港する国際基幹航路は確実に維持できるのか。そして三点目は、巨大貨物が必ず日本の港に入港するという確約があるのか。ここをお聞きしておきたいと思います。

○鬼頭政府参考人 先ほど来の御議論にございますように、近年急速にコンテナ取扱量を増加させております香港でありますとかシンガポール港等のアジアの主要港におきましては、大規模な国際コンテナ埠頭を民間事業者に一体的に運用させることにより、埠頭の利用でありますとか設備投資などの効率化を図るなど、規模の経済性を生かしつつ、国際競争力を高めているという実態にございます。
 我が国におきましても、今議題になっておりますスーパー中枢港湾におきまして、民間事業者による大規模な埠頭の一体的な運営を実現することによりまして、機能の高度化を図って、アジアの主要港をしのぐ港湾のコスト、サービスを実現したいというふうに考えてございます。
 今お話のありましたように、これを実施することによって、基幹航路に従事する大きな船についても引き続き日本に寄港をするということは維持できるというふうに考えてございますし、さらに、我が国の国際海上コンテナ輸送が釜山とかそういうところに海外トランシップされている率がふえていますが、そういうことがさらに拍車がかからないように、過度に海外の港湾に依存することがないようにできるものというふうに思っておりまして、そういう意味で、こういったスーパー中枢港湾のプロジェクトを進めることによる港湾の国際競争力の強化は大変重要だというふうに思ってございます。

○穀田委員 重要だという話をしているだけで、今お話あったように、高度化したいとか、今アジアに全体の、釜山や香港やシンガポールに行っているものが拍車がかからないという程度で言っているだけで、期待を表明しているにすぎないんですね。結局、確実に入港するという保証はないわけです。
 今、大きな規模の港をつくれば入港するというんだったら、上海はとてつもない大きな計画をつくっているわけですね。千二百万とか千六百万とかというTEUの処理能力を持つコンテナターミナルの整備を進めていると言われているわけですよ。だから、それだとすれば、大きなものをつくればいいというんだったら、それ以上にどでかいやつをつくる、しかも国策としてやっているようなああいうところに行ってしまうということに単純に言えば、論理的に言えばなってしまうんです。
 つまり、私は、スーパー中枢港湾を整備しても、船会社が入港、使用するとは限らない、アジアのハブ港湾から日本の港湾に切りかえることも考えにくい。国際基幹航路を維持するだけというのであれば、三つも五つも要らない。だから、結局のところ、ターミナルを大きくしただけでは解決しないという問題を指摘しておきたいと思うんです。
 私は、次のように考えるんです。日本の主要港のコンテナ取扱量の低迷の主要な要因は、国内的には大企業などの生産拠点の海外移転による産業空洞化、対外的には中国を初めアジアの経済成長だと思っています。こういった主要要因を無視してスーパー中枢港湾を推し進めても根本的な解決にはならない。そこで、私は、港湾政策の発想を根本的に転換する必要があると考えます。
 問題の考え方の根本は、では国際競争力とは何かという問題だと思うんですね。つまり、国際競争によって自国の貿易がふえる。ふえたとしても、それが国民の暮らしが豊かになるということに結びつかなければ、ただやったとしても意味がないわけですね。だから、主要港の貨物がアジアのハブ港に大きく引き離されたことをもって日本の地位が低下したというのは、本当にそうだろうかと。そもそも、日本に集まるコンテナ貨物は、全体も減っているのかどうか見る必要があると考えます。
 この間の資料を調べますと、日本全体でコンテナ貨物の需要予測がどうなっているかというと、二〇〇三年で一千六百万TEU、予測は、二〇一五年に大体二千万から二千三百万TEU。まさに中国などアジアに向けての急増を期待しているわけです、そういう予測を立てているわけですね。だから、そういうことをしっかり見た上で考えなきゃならぬ。
 したがって、では、最後にこの点を聞きながら次の質問だけはしておきたいと思うんですが、一バース当たりどの程度のコンテナ取扱量が可能なのか、ふやすことが可能なのか、この点についてお聞きしたいと思います。

○鬼頭政府参考人 現状の全国におけるコンテナターミナルにおきますコンテナの取扱可能量でございますが、この数字自身は、利用船舶の大きさを決める岸壁の水深でありますとか、荷役効率に影響する背後ヤードの広さ、あるいは荷役の方式、ターミナルの運営時間、背後の道路事情などさまざまな要因がございまして、そういったものがトータルとしてこの数字に反映されるということですので、一概に申し上げにくいわけでありますが、現実に、個々のコンテナターミナルにおきますコンテナ貨物の取扱量につきましては、そういう意味ではいろいろばらつきがございます。
 そういう意味で、取扱量が多い港湾で一バース当たり年間平均約二十五万TEU、少ない港湾ではそれが一万弱という数字になってございます。

○穀田委員 今あったように、確かにさまざまな要因があって特定できないというのはありますよ。だけれども、いただいた資料でも明らかなように、お話もあったように、平均すれば、計算してみますと、中枢・中核国際港湾の十九港の平均で見ますと、一バース当たり約十七万が平均なんですね。そうすると、これを二、三割ふやせば、少なくとも、二〇一五年の需要予測、二千万TEUを受け入れられるバースは新たにふやさなくても十分やっていけるんじゃないかということなんですね。
 といいますのは、スーパー中枢港湾選定委員会に提出された資料で見ますと、東京は一バース当たり三十万から三十二万TEUに引き上げて、二〇〇七年には三百四十万から三百六十万TEUの取り扱いにしたいとしているわけですね。だから、現在の取扱量から二割以上ふやすということまで計画しているわけなんですよ。だから、それぞれのところがそういう形でふやせば十分対応できる。つまり、今あるストックを十分に活用して、それを有効に活用する方向を検討すべきじゃないかということを私は提起しているわけなんです。
 前段で地方港へのむだな投資を指摘しましたが、その趣旨は、さらにむだな投資を重ねるべきでないということなんです。一定の地方港への分散配送こそ合理的で、モーダルシフトや物流コスト削減にもつながるというのが国交省自身の説明ではなかったでしょうか。しかも、貨物の相手先は半数以上がアジア向けで、そんなに大きな船は必要ありません。今ある地方港も活用し、分散配送の方が効率的になる。したがって、私は、スーパー中枢港湾ではなくて、今あるストックを活用することに港湾の行政を転換すべきだ、この点を指摘して質問を終わります。

○橘委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。