国会会議録

【第162通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2005年2月23日)

 国土交通大臣の所信表明に対する質疑。ムダな大型ダム事業は予算が増えているのに、国民の安全に関わる河川整備などの予算は減っている問題を指摘、公共事業のあり方を改めるように主張した。

○橘委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 日本共産党の穀田です。
 きょうは、大臣に、ダム事業の問題と関連した、また河川の問題について、二つその関連で質問したいと思います。
 私は、国民の命と安全、生活を守るための公共事業というのは当然政治と行政の責任として確保しなくちゃならぬと考えています。しかし、大事な問題は、むだな事業、また緊急性のないもの、こういうものについては根本的見直しを行う必要があると考えますし、そこで、公共事業改革の内容、そのあり方について、ダムと河川という問題と関連して少し質疑を行いたいと思います。
 まず、自然環境などに悪影響を及ぼすことなどから、ダム事業はこれまでも見直しされてきました。毎年それでも三千億円を超える事業予算がつぎ込まれているのが今の現状です。
 そこで、現在事業中、建設中のダムの事業数、その総事業費、残事業費、建設後の維持修繕費について数字をお答えいただきたいと思います。

○清治政府参考人 ただいまお尋ねのございました、ダム事業についての数字的な御説明を申し上げたいと思います。
 現在、平成十六年度におきまして事業中の国土交通省所管のダム事業でございますが、直轄事業、水資源機構の事業、それから都道府県が行う補助事業、これら合わせまして合計二百六の事業を現在実施しております。このうち、現時点での総事業費が計画等に位置づけられている事業が百四十五の事業でございまして、これら合計いたしますと約九兆二千億になります。そのうち、平成十六年度までの事業実施分を除きまして、平成十七年度以降の残事業費につきましては約三兆八千億円でございます。
 また、完成後のダムの管理費用についてのお話がございましたが、これらにつきましては、直轄のダム、水資源機構のダムにつきましては、直近の十カ年で完成した十八のダム事業で調査しましたが、総事業費の約〇・四三%となってございます。補助ダムにつきましても同様にして、実際に自治体が管理に要している実績等から推測いたしますと、今申し上げました百四十五の事業の完成後の管理費用につきましては合計で約三百億円というふうに見積もってございます。

○穀田委員 今答弁ありましたように、総事業費が九兆二千億円、そしてその残事業費が三兆八千億円、そして完成後でいっても三百億円近く依然としてかかる。
 今まで総事業費、なかなか言われたことがなかったわけですけれども、相当膨大な数字だということがこれでまずおわかりいただける。だから、今まで私どもがずっと言ってきたし、また国土交通省も政府も公共事業の見直しと言ってきている点からしますと、膨大な額、ここにこそメスを入れる必要があると私は考えています。
 その中で、ダム計画というのはもともと河川流域全体の整備計画の中で、河川法の中で位置づけられていますね。その河川法が九七年に改正され、それまでの工事実施基本計画から河川整備計画に順次切りかえていくことになりました。
 当時、その趣旨について、提案した亀井大臣は、次のように述べています。自然環境保全等の時代の要請から、利水、治水目的に環境の保全を加え、後ちょっと中略をしますが、地域の実情に沿った計画をつくるため、学識経験者、住民等の意見を反映する仕組み、こういうものをつくる必要も含めて訴えています。
 つまり、環境保全を目的に加えたということ、そして計画段階から住民参加の手法を強めたこと、これが大事だと思うんですね。だから、政府自身が、これまでの計画では不十分だとして、環境保全や住民参加を強めて、そして河川の整備計画につくりかえることを義務づけたわけですよね。ここが極めて肝心なことだと思うんです。
 そこで、国直轄河川百九水系のうち、河川整備計画が策定済みは幾つあるか、また、策定に着手していると思われる水系、淀川などでは流域委員会が組織されているが、流域委員会などは幾つ組織されているのか、そこについてもお答えいただけますか。

○清治政府参考人 今、委員からお話ございましたように、一九九七年、平成九年に河川法を改正してございまして、大きい改正点は今御指摘のとおりでございます。
 現在、その法改正を受けまして、全国に一級水系は百九ございますが、そのうちどのぐらい策定が進んでいるかということでございますが、現在、二十九の水系につきまして河川整備基本方針を策定済みでございます。その中の十一河川につきまして河川整備計画が策定済みでございます。
 これらの基本方針あるいは整備計画を早期に策定するということは重要であるというふうに認識しておりますので、未策定の河川につきましても、早期に策定できるように調査検討を鋭意進めてまいる所存でございます。
 流域委員会についてのお話がございましたが、流域委員会は河川法で規定されているものではございませんが、河川整備計画を策定するに当たりまして、御指摘のように、学識経験者の意見、それから住民の意見等を反映していくために、流域委員会、こういう委員会の形をとっているものが幾つかございます。現在、この河川整備計画を策定した十一河川、それに加えまして、既に委員会形式をとりまして準備を進めている河川が二十五ございますので、合わせて三十六の河川につきまして委員会形式による学識経験者からの意見聴取を行っているところでございます。

○穀田委員 今お話あったように、法改正から七年たっているのに、河川整備計画があるのは十一、一割しかないわけですよね。流域委員会というのは、今お話あったとおりで、そういうものを総称して言っているわけですが、それを含めて大体三十六。
 だから、一体何年たったら計画ができるのか。しかも、淀川の場合、淀川流域委員会、これはつくられてから四年たっているんですよね。それでさえまだ整備計画ができていないわけですから、一体全体、これは全部できるのにいつまでかかるんだということになるんですね。私、ここに重大な問題があると思うんです。それが一つある。だから、七割も今河川がそういう流域委員会がないわけですから、それをつくるだけでも十年以上かかると私は思うんです。
 具体的にもう少し聞きましょう。
 八ツ場ダムの利根川、徳山ダムの木曽川、そして川辺川ダムの球磨川については、河川整備計画並びに流域委員会はありますか。

○清治政府参考人 今、例示されました利根川、木曽川、それから熊本の球磨川でございますが、いずれの水系につきましても、現在、流域委員会等を設置してございません。
 これは、御指摘のありました基本方針、整備計画を策定するということは非常に重要なことでありますし、また急がなければならないという認識は十分持っておりまして、急ぎたいというふうに思っております。例えば昨年の豪雨、こういうような資料も含めまして、整理解析を進めておりまして、また、環境等も含めて幅広く調査検討を行っているところでございまして、これからも早期策定に向けて努力を重ねたいというふうに思っているわけでございます。
 また、この三水系もそうでございますが、各水系ごとにいろいろな特徴を持っておりますので、流域の方々あるいは学識経験者の方々の意見を反映する手法につきましても、各水系の特性に応じまして、効果的、効率的な方法を用いて意見聴取を行ってまいりたいというふうに考えております。

○穀田委員 意見聴取は当たり前なんですよ。それは当然の話であって、それが、自分たちで九七年に決めた河川法で、環境の問題を重視しようということと、住民の意見を聞こうじゃないか、それによって計画をつくろうじゃないか、こう決めているんですよ。そのみずから決めたことを、大臣、ここをちょっと、みずから決めてやろうとしたことについて、いろいろな手法を用いてやります、それは当たり前の話であって、問題は、決めたことがやれないのは何でかということを言っているんです。
 しかも、なぜ私そういうことを言っているかというと、結局、わざわざあのときに、時代の流れが変わっているんだということまで大きく打ち出したわけですよね。世界ではどうなのかというと、大体、計画なくして建設なしというのが当たり前ですよね。計画はないんだけれども、先ほどお話があったように、その三つのダムについてはいろいろなことが進行している。いろいろな意見を聞きまっさというような話をして、適当な話をしている。それじゃだめだと言っているんですよ。
 しかも、私、大事だと思うのは、今、総事業費四千六百億円の八ツ場ダムについては、来年度は三百億円、今年度の一・五倍。それから、総事業費三千五百億円の徳山ダムに至りますと、実に三百十一億円、今年度の三・三倍もの重点投資を行っているわけですね。つまり、計画なくして建設は進む。しかも、特化して金を注ぎ込む。こんなやり方がいいのか。だから、こういうやり方自身が、政府自身の方針からしても改めるべきと違うか。最低限、新たな河川整備計画ができるまで事業については凍結すべきじゃないか。
 このことについて大臣にお伺いしたいと思います。

○北側国務大臣 この河川整備計画というのは、委員の御地元であると淀川ですよね、淀川の河川整備計画をつくらないといけないわけです。
 しかし、例えば、現実の治水の必要性というのは、そんな、計画ができてしまわないと一切やっちゃいけないとなったら、それは治水が進まないわけでございます。例えば徳山ダムのような場合でも、そうした整備をすることによって、あの流域の木曽というのは、先般、私も行ってまいりましたけれども、木曽三川というのがございまして、それは三つの大きな川が一遍に一カ所に集まるという大変な、これまで歴史的にも洪水があった地域でございまして、徳山ダムをつくることによって治水面で大きなプラス面があるという側面があるわけでございます。
 整備計画ができていないからダムをつくってはならないんだ、また、一切の河川整備をしてはならないんだということにはならないと思っております。

○穀田委員 そこは間違えないでいただきたいんですね。ダムをつくることにかけちゃそういうことをやって進めているという話を一つの例として出したわけです。河川の治水のためのさまざまな河川改修、これはするのは当たり前なんですよ。
 では、しているのか、そこを聞きましょう。
 私、昨年の豪雨の中で見ますと、いろいろなことが起きています。時間がありませんから単純に聞きますけれども、河川改修費や修繕費など、最近五年間、二〇〇〇年度と二〇〇四年度の予算はどうなっていますか。簡単に。

○清治政府参考人 河川の関係の計画につきましては、御存じだと思いますが、新しい整備計画ができるまでは経過措置がございまして、工事実施基本計画に基づいてやるということでありまして、工事実施基本計画には今実施中のダムは位置づけられております。
 それから、お尋ねの河川の改修費等についての数字でございますが、ここ五年間のデータを調べてみましたが、当初予算でございますが、五年間で四兆七千五百十九億円の河川改修あるいは河川修繕費等の事業を実施してございます。
 平成十二年度の予算では一兆七百八十四億円でございましたが、これが平成十六年度の予算では八千百九十二億円ということになっておりまして、当時の予算に比べると約七六%ぐらいに縮小してきているという実情にございます。

○穀田委員 今お話があったように、では、そういう話で、ダムの話はばあんと進んでいるけれども、実際は河川という問題については、事実上は減少している。しかも、お話があったように七六%、二四%は減っているという現状なんですよね。こういう使い方をやられているところに私は大きな問題があると言っているんですよ。
 そこで、そのもとでどういう事態が生まれているか、それを少し言っておきたいと思うんです。
 昨年八月調査して発表したのは九月ですが、河川堤防の点検を国土交通省が実施し、九百七十五カ所の危険箇所を見つけました。それに基づいて、国交省は、都道府県が管理する中小河川の点検、改善などについてのガイドラインを出して、堤防を質的に強化するような指示も出しています。
 これも、指示を出すだけならだれでもできるんですよ。なぜ改修が進んでいないかということが問題なんですね。
 「堤防等の河川管理施設の緊急点検結果について」、結果について国土交通省は発表をしています。その中で、「要対策箇所への対応状況」、要するに危険なところですよね、危険な箇所に対する対応状況ということで何が問題か、何がこれができてへん理由かということでこう言っているんですよ。この対策の実施に当たり都道府県管理区間では予算の制約が最大のネックだ、約八割に当たる三十の自治体が、予算制約があり、十分な対応ができていないと回答している、河川関係の地方単独事業費の推移を見てもその状況がうかがえて、予算の制約が河川の管理に支障を来していると考えられる、こういうふうに書いているんじゃないですか。
 局長、事実だけ確認してください。

○清治政府参考人 今御指摘の目視による緊急点検の箇所につきましては、九百七十五カ所ございましたが、これについては鋭意取り組んでおりまして、県の方の管理の区間で問題がございました、百五カ所ございますが、これらについては、ことしの出水期前に対応を全部終了するというような見込みで、現在対応を進めております。
 また、ガイドラインをつくって、それに基づいて堤防の点検あるいは強化を進めていくことについてのお話がありましたが、確かに御指摘のように、県の方の単費で対応するというのは、箇所も多うございますし、なかなか大変だというのが、実情でございます。
 そういうような中で、補助事業の改善といいますか、使いやすいような形にしていきたいということで、来年度の予算の中で総合流域防災事業というメニューをつくってございますが、その中で、堤防の強化については機動的に対応できるような措置を講じたところでございまして、都道府県には、この事業によってしっかり対応していただけるように、また打ち合わせをしてまいりたいというふうに思います。

○穀田委員 今お話あったように、全部で九百七十五カ所あるんですよね。そして、一定の数を百なんぼかということで言いましたけれども、それじゃ間尺に合わないんですよ。それこそ放置していたら大変なことになるということなんですよね。
 しかも、大臣、一言言っておきますと、九百七十五カ所というところは台風十九号のところで調査したわけですよ。その後、実はさらに、九百七十五カ所でないところも含めて起きているんですよね。決壊を含めてやっているんですよ。
 だから、いわば財源不足でこういうことが起きているという事態、今お話があったように、総合流域防災事業で手当てすると言うけれども、それは総合的な話であって、現実はどうかというと、そういう問題でいくと、来年度予算で中小河川の堤防改善などに充てる河川改修補助や河川修繕費補助については増額されるんですか。そのことだけ最後、簡単でいいから答えてくださいよ、一言。

○清治政府参考人 来年度の予算につきましては、いろいろな制約といいますか、ございまして、改修費は対前年比〇・九二というのが実情でございます。
 それから、修繕費のお話がございましたが、これについても、小規模な補助金ということで廃止の方向になっておりまして、これらの問題を解消するためにも、今お話ありました総合流域防災事業というような形での柔軟な対応をしていく必要があろうかと思います。
 また、補正予算につきましてでございますが、この中では約二百四十億円の補助事業を実施することになっておりまして、これらとあわせて効果的な対応になるように心がけてまいりたいと思っております。

○穀田委員 要するに、減らしてなくしたということについてはっきり言わなくちゃだめですよ。
 総合流域防災事業費補助、これだって十二億四千五百万円、今年度より減らすんですよ。すぐそういう話をして、何かつくったり、使いやすいみたいな話をしているけれども、減らしておいて何を言っているんだと私は改めて言いたい。
 しかも、現実は需要が多くなっている、しかし、減らしているという事実は、どうあがいたって変わらないんですよ。現実はそういう問題をはらんでいるにもかかわらず、やっている事態はそうじゃない。だから、改修のためのお金がないと地方自治体は言っているのに、その予算はへずる。
 今話があったように、補正予算で組んでいる。それは、一時期はそれで間に合うでしょう。一時期の問題なんですよ、それは。だから、今までつくられた補助金をばさばさ削り、言った名前のものも減額する。こんなことでどうしてできるかということを私は言いたいわけです。だから、歳出の見直しというものを改めてする必要があると思います。
 四年連続で公共事業を削減したと何かいつも小泉さんは言いますけれども、国際的に見ても高い公共事業費を削減するのは当然だけれども、問題は中身なんです。だから私は言ったわけです。不要不急のダムについては、この際凍結しなさいと。そして、現実の今起こっている、しかも昨年災害が起こって、年末の字ということでいいますと、「災」という字まで書かれるような事態になっている事態に着目をして、緊急課題である河川の改修や修繕に対してきっちり予算を回すべきだということを主張して、私の質問を終わります。