国会会議録

【第161臨時国会】

衆議院・国土交通委員会
(2004年11月9日)

 住宅品質確保法案で質疑と反対討論。住宅耐震改修補助制度に関して補助要件緩和など改善を要求。国土交通大臣が「自治体支援を検討」と答弁。

○橘委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 住宅品質確保法そのものは、欠陥住宅など住宅トラブルから消費者を保護し、住宅の品質向上を目的とする制度として有効活用が望まれます。その目的である消費者保護、住宅の品質向上などは、国と行政が責任を持って深く関与してこそ効果が上がるものだと私は思います。
 営利が目的の民間任せにしたり、市場原理任せにするということは、制度に対する国民の信頼性、公平性が損なわれると考えます。住宅トラブルが発生しても、国や行政が民間同士の問題だと知らぬ顔をする、こうなってはいけません。ちゃんと関与すべきだと考えます。公益法人改革の名で国の関与を弱める改正案には問題があると考えます。むしろ、公益法人改革というならば、天下りや高額な役員報酬など、国民が批判してきた問題にきっちりとメスを入れてこそ改革と言えます。
 そこで、現在の指定法人への天下り、公務員の再就職の現状はどうなっているのか、今回の指定制から登録制になって登録法人への天下りは減るのか、減るとすればその担保は何か、御回答いただきたいと思います。

○山本政府参考人 住宅品質確保法におきまして国土交通省所管の公益法人十法人を指定しております。これは今回登録法人にもちろん、法律上当然になりますけれども。これは、住宅品質確保法の普及のために既存の公益法人を指定したものでございます。全十法人中合計二十三人、この中には非常勤の重複している者を含みますけれども、二十三人の国家公務員出身者が理事に就任しております。
 平成八年に閣議決定されました公益法人の設立許可及び指導監督基準におきまして、所管省庁出身者の割合は理事現在数の三分の一以下とすることが示されております。住宅品質確保法における指定公益法人十法人につきましては、すべてこの基準を満たしております。
 指定制から登録制への移行は、これまで以上に民間企業の参入が円滑なものとなります。一層の民間企業が参入するということが想定されるわけでございます。それとともに、住宅性能表示制度の普及促進が期待されるわけでありまして、公益法人においても、住宅性能評価機関として一定の役割を担うものであることから、引き続き閣議決定に基づき適正に指導してまいる考えであります。

○穀田委員 要するに、登録制になったからといって天下りが減るわけじゃないということは明確だと思うんです。だから、結局どこが改革かと私は言いたいと思うんです。
 先ほど来お話があったように、住宅に関するトラブルは年々ふえています。住宅リフォーム・紛争処理支援センターの統計年報によると、消費者とトラブルを起こす主たる相手方は、施工業者、販売業者が八〇%を占めています。住宅性能評価等機関には、消費者が不利にならないよう住宅の性能を公正に評価する義務があるし、したがって住宅販売会社や建設会社など、住宅関連業者の息がかかった会社はふさわしくないというのが私は考え方の基本に置かなくちゃならぬと思っています。したがって、公正中立の第三者機関という役割が求めているゆえんはそこにある。
 民間の評価機関の大手、日本ERI株式会社など、資本関係を見ますと、積水ハウス、大和ハウス、ミサワホームなど、住宅販売会社が出資会社に名を連ね、先月顧客データ紛失事件を起こした東日本住宅評価センターでは、評価担当常務に積水ハウスの元幹部が就任している。このように、登録制になったからといって評価機関の公正中立性ということが担保されるのかどうかは疑問だということを指摘しておきたいと思います。
 次に、耐震問題について聞きたいと思います。
 近年のうちに発生すると想定されている東海、南海、東南海地震を初め地震災害に対する緊急対策はとても大事です。住宅の震災対策は、甚大な被害が予想されるだけに、待ったなしの課題です。既に先進各国では、耐震診断の義務化、さらに活断層上の建築規制などが常識となっていると言われています。私も、そういう段階にいよいよ踏み込むべき時期に来ていると考えております。
 そこで、耐震性能が既存住宅の中でどうなっているかということが大事だと思うんです。先ほど来お話ありましたように、耐震性に問題があるとされている住宅は千百五十万戸あります。その中で、耐震改修の進捗状況だけに限って報告をされたい。

○山本政府参考人 平成十五年に実施しました住宅統計調査によれば、新耐震基準が施行されました昭和五十六年以前の住宅について、約三十二万戸が耐震改修を実施したという結果が示されております。

○穀田委員 今お話あったように、一千百五十万戸のうち三十二万戸が実施された、たった三%未満の進捗状況です。いつ地震が起こるかわからない、時間的余裕がないわけです。その意味で、間尺に合わないと言わなければなりません。政府として、進まない原因、要因を真剣に検討して、緊急な対策を打たなければならないと思います。
 国交省として、住宅の耐震診断、耐震改修を支援する制度を設けていますが、特に耐震改修について国の補助制度の実績はどうなっているか、お答えいただきたいと思います。

○山本政府参考人 国土交通省におきましては、耐震基準を満たしていない住宅の耐震改修を促進するという観点から、住宅の耐震診断の費用、それから耐震改修の費用につきまして、地方公共団体と連携して補助事業を実施しております。
 この補助の実績でございますけれども、まず、耐震診断でございますが、平成十年から、戸建てが九万二千戸、共同住宅が七万七千戸、合わせて十七万戸の実績がございます。耐震改修に補助をしたのは、制度としては七年度から制度化しておりますけれども、十二年、十三年に共同住宅をそれぞれ一棟ずつ、戸数で合わせて四十戸実施しております。
 耐震改修の補助実績、伸びておりませんけれども、耐震化を推進するために、これまで老朽住宅の多い密集市街地に対象を限定していた制度を、今年度から、東海地震、東南海地震、南海地震、その他大規模な地震の被害が想定される地域の市街地に拡大するなど、拡充してきているところでございます。

○穀田委員 後ろの方は別に聞いていないんですけれども、それはわかっているんです。
 要するに、国の支援制度として実行されているのでいくと、改修補助事業は四十戸だということなんです。もちろん、先ほどありましたように、耐震診断はありますよ、その数字はわかっていますよ。だから、これでは国の支援事業制度というのが何のためにあるのかと。戸建て住宅に対する改修支援制度は、今年度もまだ一件しかないと聞いています。要するに、使い勝手が悪いからなんですね。
 今お話あったように、対象地区として広げた、東海地震や、それから東南海、南海地震、そして南関東直下の地震対策地域、地震予知連が指定した区域であること、さらに、密集区域で住宅数が三百戸以上などの要件がある。
 そこで、その上に、さらに戸建て住宅についていえば、驚くことに、密集市街地など対象地区の要件を満たしていても、耐震改修の支援を受けられる住宅と受けられない住宅があるんです。同じような未改修の家で、お隣さん同士でも、一方は受けられる、片方は受けられないという、要件、受けられない。
 どういう要件があるかというと、一つは、震災時に倒壊によって道路閉塞を生じさせ、避難や消火活動等を困難にさせるおそれのある地区内であること。これを前提に、かつ二番目に、耐震診断で倒壊の危険性があると行政から指摘を受けた住宅。かつ三番目に、地震などによって避難通路や救急車両の進入ルートのある道路沿いに建っている住宅。かつ四番目に、道路との距離が平家は二メートル以内、二階建ては四メートル以内の住宅。これはみんなかつなんですよ。
 だから、こういう住宅は、では、全国で一体何軒あるのか。耐震診断をしないとわからない二番目の項目はおいたとしても、外見で調べればわかると思うけれども、国交省は調査しているのか、調査してこういう対象住宅の要件を認めたのか、これについてお聞きしたいと思います。

○山本政府参考人 日本全国に、この制度によって改修費補助を投入できる住宅が何戸あるかということは調査しておりません。
 ただ、そもそも出発点からして、今御指摘いただきましたように、戸建て住宅の耐震改修費に国庫から補助するというための要件、非常に厳しい要件がございます。それは、要するに、倒れたときに、警戒しなければいけない道路を閉塞させるという危険があるものについて、そうならないようにするために必要な経費は国庫から補助しようという思想で整理されているからです。それを、一生懸命努力をしながら今の制度ができ上がっているということでございます。

○穀田委員 そこで、ここからは大臣にお聞きしたいんです。
 今お話あったように、まず、調べていないということが一つわかりましたよね。これは、私、どれぐらいあるのかということを見て、それでやるのが普通じゃないかと思うんです。だから、何のための補助制度かということを言わざるを得ないということを言っておきたいんですけれども。
 仮にそういう条件の住宅があったとしても、近所、お隣同士で区別される。そして、地震が来て家屋が倒壊して、人の命が、安全が脅かされる。そうならないように改修するということからすれば、道路際とそうでない家の間に区別があっていいのかと。公共性というのであれば、私は、すべての住民の安全と命を守ることが行政の責任、仕事、そしてまさに究極の公共性だと私は考えます。
 そこで、こういう要件というのは、その意味では、不合理、不条理、問題があると私は考えます。大臣は、この要件は当然だというふうに判断をしておられますか。

○北側国務大臣 まず、耐震改修というものの促進が非常に重要だというのは、全くそのとおりだと思います。私どもも、しっかりと耐震改修が進むように努力をしないといけないと思っております。
 今御指摘の話は改修費の話の方ですね、改修費補助の方です。診断費の補助の方の実績はしっかり上がっているということもぜひ御理解をお願いしたいと思っております。
 問題は、その耐震改修費の補助の方をもっと使いやすくしろよというお話を多分おっしゃっておられると思うんですけれども、この改修費の補助というのを一般的にもっと緩やかに認めていくようなことが本当にいいのかどうかというのは、これはよく検討しないといけないと思うんです。どこまで公がやるんですか、どこからみずからやるんですか、やはり公助と自助のところは、その線引きの問題だと思うんですね。
 私は、一般的には、この改修費の補助というのはかなり例外的な話でございまして、今後やはり検討すべきは、耐震診断は今後ともしっかり補助をしていくにしても、その後の改修については、むしろ一般的には税の世界で検討できないのかということを、私はぜひ議論をこれからさせていただきたいなと。むしろ補助よりも税の方で検討できないか、税のインセンティブを与えられないかということをぜひ検討すべきじゃないのかなというふうに思っています。

○穀田委員 私は当然の要件だと思っておられるのかと聞いたので、そこは余り答えなかったんですけれども、それは少し違うと思うんですね。北側大臣が政調会長を務めておられた公明党の政策でいえば、マニフェストでいうと、「耐震改修費等の補助拡充」こう言っておられるので、その点は少し違うんじゃないかということだけは言っておきたいと思うんですね。
 国の制度という問題で、今、税という問題がありましたけれども、実は、こういう制度が使いにくいということで、これまで、地方自治体では地方単独事業として耐震診断や改修制度を設けて、各地に広がっています。この制度を持つ自治体はどのくらいあるか、実績の報告をされたいと思います。

○山本政府参考人 本年、地方自治体に対して実施しましたアンケートによりますと、戸建て住宅について耐震診断の助成制度を設けている地方自治体、全国で五百八十市町村ございます。そのうち単独事業で制度を設けているのは八十四市町村、これによる耐震診断の実績は七千七百九十戸でございます。
 また、戸建て住宅について耐震改修の助成制度を設けている地方自治体は、全国で二百五十四市町村ございます。そのうち単独事業で制度を設けているのは二百五十二市町村でございます。これによる耐震改修の実績は二千五百六十五戸でございます。
 次に、共同住宅についてでございますが、耐震診断の助成制度を設けている地方自治体は、全国で三百二十市町村、そのうち単独事業で制度を設けているのは三十八市町村、これによる耐震診断の実績は百二十四棟、二千三百九十戸でございました。
 また、共同住宅について耐震改修の助成制度を設けている地方自治体は、全国で百三十六市町村でありまして、そのうち単独事業で制度を設けているのは百三十四市町村、これによる耐震改修の実績は十二棟でございました。
 以上でございます。

○穀田委員 今ありましたように、例えば耐震改修などでいえば、地方自治体が単独でやっているのがすごく多くなっているということがわかったと思います。だから、国庫補助は、耐震診断では使われているが耐震改修ではわずか一%ほど。要するに、市町村は頑張って耐震の改修を進めているわけですね。
 横浜市では、木造住宅耐震改修促進事業として、耐震診断の結果倒壊の危険がありますと判定された住宅を対象に、耐震改修工事費の補助を〇一年度から行っています。工事費の上限は五百万円、補助費は所得に応じて工事費用の三分の一等々でありまして、補助額は十二億四千万円、国の補助は一切受けていないんですね。
 私は、例外的ではなくて、まさに、いかにしたらこのことを早くできるかということでいいますと、地方自治体が進めている制度をさらに促進させ、バックアップしていくという必要があると思うんです。こう見ますと、こうした自治体と国交省の補助制度の差は、根本的には私有財産への補助はできないという国の制度が、考え方が、態度があると思います。
 当委員会で大臣に私は質問した際に、個人補助に踏み込むべきじゃないかという質問に対して、そういう問題意識を持っている、検討しなければならない場合もあるのではと答弁されました。私は、原理、考え方を実行に移すことが省の所管の仕事としてあるわけだから、ここに一歩具体的な問題として提起したい。住民の命と安全を守る使命、責任を果たそうと耐震改修事業で独自に制度を設けている自治体やこれから制度を設ける自治体に、先ほど述べた要件を前提にするのではなく、積極的に支援することをぜひ考えていただきたいと思っています。その点での御決意を最後にお伺いして、質問とします。

○北側国務大臣 被災者の生活再建支援法の関連でおっしゃったんだと思うんですが、これは所管は内閣府でございますので……(穀田委員「そんな話していません。この問題でいえば」と呼ぶ)いやいや、その前のお話をされたので。
 それは、だから、我が国土交通省で単独でできる話じゃないということは、ぜひ御理解お願いしたいと思います。
 それで、この耐震診断で、市町村で頑張っているところあるじゃないか、そういう頑張っているところの耐震改修制度、各市町村のそういうものについて何らかの国としてサポートができないのか、それは私は検討課題であると思います。

○穀田委員 終わります。

○橘委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

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○橘委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

○穀田委員 日本共産党を代表し、本法案に対する反対討論を述べます。
 住宅品確法に基づく住宅性能評価制度等は、住宅の品質向上とともに、欠陥住宅など不良住宅を販売、施工する事業者から住宅購入者など消費者を保護するための制度であり、国民の信頼性、公平性が十分確保されなければなりません。その実現には、国や行政が深く関与し、最終的に責任を持ち運用してこそ効果が上がるものです。
 規制改革によって、住宅性能評価等制度における評価機関等を指定制から登録制にすることは、国等の関与を縮小し、行政責任を弱めることにつながるからであります。これが本法案に反対する第一の理由です。
 第二の反対理由は、登録制にすることによって、評価制度の信頼性、公正性を担保する保証である評価機関の第三者性を弱めることになるからであります。
 評価制度の信頼性、公正性を担保するには、評価機関が住宅関連事業者と支配関係にないことは最低限の条件です。ところが、支配関係の登録要件は、親子会社とされる資本の持ち分や役員兼任要件をいずれも半数以上としており、緩いものとなっています。
 現在、指定機関となっている株式会社等を見ても、住宅販売メーカー等の出資等により設立された法人が多く、評価担当役員が住宅販売会社出身というケースもあります。こうした点こそ改めるべきです。
 最後に、現行指定法人である財団法人十機関に二十三人も天下っています。本法案は、公益法人改革と称しながら、こうした天下りの温床など問題の解決に何らメスを入れるものとなっていません。これでは国民の批判、期待にこたえる改革には値しないことを指摘して、反対討論といたします。