国会会議録

【第161臨時国会】

衆議院・国土交通委員会
(2004年10月26日)

 新潟中越地震と台風23号の被災者支援について質問「被災者の支援のため、地方自治体は国の施策を超えて様々な支援策を実行している。政府も同様の立場に立ち、個人補償という制度に踏み込むべきではないか」と災害被災者生活支援法の見直しを含め、北側一雄国土交通大臣に迫った。大臣も「同様の認識を持っている」と答えた。

○橘委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 私は、新潟県の中越地震で亡くなられた方々、また、この間の台風や豪雨で亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げ、被災者の皆さんに心からお見舞いを申し上げたいと思います。政府挙げて救援の態勢をとっていただきたいと考えます。
 私は、きょうは、被災者支援の問題についてまず最初にお聞きします。
 新潟の集中豪雨以来、地方自治体の被災者支援の対策は、国の基準を超えて独自の支援を行い、被災者に随分喜ばれています。
 私、調べましたところ、大別しますと、第一に、支援補助金を出す対象を広げたこと。例えば、福井県などのように住宅の新築、購入、補修まで拡大した例があります。
 二つ目に、支給対象世帯の範囲を拡大したこと。半壊、床上浸水、一部損壊まで広げた。福井県や鯖江市、新潟県、徳島県、愛媛県、岡山県など、もちろん所得制限など要件はさまざまありますが、しかし、畳を初め被災した世帯が生活の再建に必要と判断したものはすべて対象とする、こういう決定がいろいろな地域で施策として出されたことは、どれほど被災者を勇気づけたことでありましょうか。
 そして三番目に、打撃を受けた地元の産業に対して再生のための新しく直接支援を行ったこと、これがあります。福井県は漆器、和紙、そして福井市は眼鏡産業などでした。
 今まで政府は、個人の財産の形成に税金は投入できないと。私、ちょうど阪神大震災の折に個人補償という問題を提起しましたけれども、そういう答弁がいつも返ってきた。今でも忘れません。しかし、これらの自治体の施策というのは、被災の実態を目の当たりにして、被災者の生活と再建を支援するための援助の手だてを差し伸べている。ところが、政府が被災者の実態や願いにこたえる対策ではおくれているというのが私は現実じゃないかと思うんです。
 そこで、大きな角度でお聞きしたいのは、今こそこういう点を乗り越えて、個人補償という問題について踏み切るべき時期じゃないかということを思うわけです。その点での大臣の考えをお聞きしたいのです。

○北側国務大臣 先ほどから議論なされておるわけでございますが、これは国土交通省の所管ではございません。ございませんが、被災者の再建支援のための法律というのがございます。これの適用についても、うんと柔軟な対応が必要ではないか。これは与党の中でも、また閣議でもそういう議論が相当なされまして、先ほど答弁があったとおり、しっかりその辺の運用を柔軟にしていこうというふうな形になっているところでございます。

○穀田委員 生活再建支援法の弾力的運用、大体いつもこう言わはるんですね。
 問題は、法律の趣旨にのっとってといった場合には、例えば、先ほど中小企業に対する施策を自治体が行っているという例がありましたね。これは、国はやっていないんですよ。やっていないんです。融資はやっているんですけれども、直接支援はやっていないんです。それから、例えば、今言ったように、国の施策で見るならば、新築をするだとか再建するだとか修復するというのには出していないんです。本体に対しては出していないんです。
 地方自治体がやっているものについても同じように努力すべき時期に来ているじゃないか、その思想の中心、考え方の中心というのは、先ほど述べたように、個人の財産の形成に税金を投入することはできないという考え方が壁になっている、そういうのをそろそろ改めるべき時期に来ているじゃないか、大きな考え方について大臣にお聞きしているんです。大臣がそういう施策をやるかやらないかというような話じゃないんです。
 そういう角度で物事を考えるべき時期に来ているんじゃないか、政治家として、目の当たりにして、そういった問題についていよいよ答えを出すべき時期ではないか、どう考えるか、こういうことです。

○北側国務大臣 今、穀田委員の御質問、よくわかりました。要するに、これまでの政府側が、それは個人の財産の問題ではないか、そういう個人の財産について政府側から税金を使って補償することはできない、こういうことについて見直すべきではないのか、こういう御趣旨ですね。
 これは、これも国土交通省で判断できる問題ではございません。むしろ、もう内閣府帰ってしまいましたが、内閣全体で議論しないといけないんですが、私も、もともとそういう問題意識は持っております。
 ですから、ケースによって、常にそういう、門前払いするのではなくて、検討しなきゃならない場合もあるんじゃないのか、そういう問題意識は以前から持っておるところでございます。

○穀田委員 今るる私お話ししましたように、現実に被災者を目の当たりにしている地方自治体というのは、家がつぶれている、それは建て直さなくちゃならない、家がなくして生活再建はできないわけですから。そして、例えば今まで、行政でいうならば、中小企業に対しては融資しかなかったものを、直接の支援制度もする、これは明らかに、今までと踏み越えた内容に地方自治体はなっているんですよ。そういうのを踏まえて、それを、頑張ると言うのか、よし任せておけと言うのかという時代に来ているぞということを、時代認識としてきちっと持たないとだめだと思うんですね。せっかく問題意識を持っていただいているんだから、実行に移すべき時期に来ているということを改めて私は言いたいと思うんです。
 そこで、弾力的運用という問題をすぐ言うんですけれども、私は二つあると思うんですよ。
 一つは、地方に対して弾力的運用ということを言った際に、この間由良川のところを含めて行っていただいて、安心してやれ、国土交通省が責任を持つからと言っていただいたやに聞いていますので、問題は、結局のところ、そういう施策を実行する場合に、責任を持つという態度が明らかかどうかというのが問われるんですね。
 もう一つ問われるのは、弾力的運用というのは法の趣旨にのっとって、必ず先ほどもあったように言うんですよ。そうすると、生活再建支援法の法の趣旨は何かという問題が問われるんですね。いわゆる弾力的運用という一般論じゃなくて、例えば、先ほど同僚の議員が質問しましたが、細田官房長官は既に、弾力的運用を認める、対象を拡大するということを言っているんですね。ただ、言っているときに、それを示達し、その精神は、再建に役立つものはやろうじゃないかということがわかるようなことでなければ、現場というのはやはり、阪神大震災のときもそうですよ。一日何円のお金を例えば食費に出す以外にはならない、こう規定があるとそれに縛られちゃうという現実があるわけなんですね。それを大臣のところで、厚生大臣でもなければ防災担当大臣でもないわけですから、そういうことを言うのは、私と違うというようなことを言われたらまた困るんだけれども、そういうことをはらんでいるんだということをよくわかっていただきたい。わかっていただけますよね。

○北側国務大臣 いずれにしましても、これは国土交通省の所管ではございません。ございませんが、ただ、今穀田委員のおっしゃった趣旨は理解をしております。

○穀田委員 私も、京都をずっと回ってまいりまして、大江町、福知山市、舞鶴、宮津と行ってきました。本当に水害というのはひどいということがわかりました。
 大臣は、「従前からの災害対策を総点検し、中小河川の整備と管理のあり方や水防体制を抜本的に見直すなど、水害・土砂災害対策を強化して、」と発言をしています。また、治水対策に関して言うならば、従来予想していた雨量、水量で本当にいいのか点検する必要があると記者会見で述べています。
 まさに、ことしの風水害の被害というのは、従来型の治水対策ではだめだ、抜本的な対策が必要だ、これは先ほどおっしゃっているんで、そのとおりだと思うんです。そこで、とりわけ重要だと思うのは、河川の堤防決壊、地すべり、がけ崩れ、先日は海岸の防波堤が壊れて三名が亡くなっているなど、管理施設が壊れて被害が拡大する事態が相次いでいる、そこだと思うんですね。
 そこで、ことし発生した集中豪雨、台風によって幾つの河川や海岸の堤防が破壊されたのかお聞きしたい。

○清治政府参考人 本年の災害の発生件数についてでございますが、河川と海岸についてお答えさせていただきます。
 十月十五日現在まででございますが、被害報告件数、直轄それから補助合わせて、河川が一万三千六百二十五件でございます。海岸につきましては、同じく直轄、補助合計で四百三十二件でございまして、参考までに、昨年、暦年でございますが、昨年に比べて倍ぐらいの件数になっている現状にございます。

○穀田委員 やはり大変な実態ですよね。
 私も見てまいりましたが、由良川。あれはバスで有名になりましたけれども、本当は、あれは問題はバスよりも、バスも大変ですけれども、地域の被害実態というのは本当に大変でして、バスが立ち往生したところも含めて、整備計画はあるが整備が進んでいないという事実なんですよ。まあ、いずれも国直轄の河川なわけです。
 私はそういう点で、先ほども議論になりましたけれども、河川の堤防総点検についてお聞きしたいと思います。
 緊急点検を国交省が行いました。その中で、私は重要だなと思った点があったんですね。国交省は、日常の管理が不十分なこと、とりわけ都道府県管理が弱く管理方法に問題があること。そして二つ目に、完成した堤防区間でも破損、劣化等が見られ改修が必要なこと。三、改修など対策をとるにしても予算の制約がネックになっていること。これらが報告されています。
 これに関して、二つ聞きたいと思います。
 緊急点検は目視によるものです。これでは十分とは言えない。しかしそれでも、時間をかけた精査も進めながら常時に点検、改修を進める必要があるわけですが、この緊急点検で問題箇所とされていた以外の箇所が九月以降の台風により堤防破壊などしているんです。先週の二十三号の被害は顕著です。しかも、国直轄の円山川や由良川など、点検箇所以外の場所が壊れ、被害を受けています。
 確認したいんですが、総点検後、総点検で問題箇所とされた箇所以外の場所が台風等により破堤などの被害を受けた件数、場所はどうなっているか、御報告ください。

○清治政府参考人 七月の梅雨豪雨を受けまして、御指摘のように、目視の点検を一カ月で緊急に実施いたしました。これは、ことしの出水期を前にして、とにかく全体を点検しようという趣旨でございました。直轄の区間等につきましては、毎年春先に点検をするなり、行っているわけでございますが、全般的な総点検を行ったのは今回初めてというような感じであるわけです。
 その中で、直轄で七十カ所、都道府県の管理河川では九百五カ所というところが緊急に対応する必要があるということになって出てまいったわけでありますが、これらについて逐次対応を進めてきたわけでございます。
 そういう中で、その後の出水によりまして被災を受けたところがございますが、これらにつきましては、点検で問題となったところとの対比という数字の整理の仕方はできていないわけですが、今回の被災に遭ったところはいずれも、今までにないような大きい雨とか、それから水位が上がったとか、そういうところが多いわけでございまして、これらに対しても、御指摘のように、日ごろの管理をしっかりすることによって機能の十全を期すことは非常に重要だというふうに考えておりますので、以降、全体の管理水準をどの辺に置いてやっていくべきかという話とあわせて、点検の強化、対策の強化を図ってまいりたいと思います。

○穀田委員 長々とこういう一般論をしちゃ、本当、困るんだよね。要するに、わかっていないということでしょう。そう言ってくれればいいんですよ。それが問題だというんですよ、そういうのがね。そうでしょう、大臣。だって、総点検して危ないと言った以外のところで起こっているということは事実なわけだから。
 それで、例えば京都だって、この報告書ですよ、報告書で見ればゼロなんですよね。しかし、きのう私、いただきましたけれども、「台風第二十三号による被害等の現状について(二十報)」京都府のものを見ますと、河川で護岸決壊というのは二十二河川あると言っているんですね。ゼロだということは二十二カ所あるはずないわけで、二十二カ所だということがわかると思うんですね。
 そこで、管理ができていた直轄区間でもこれほどの大被害が起こっているわけだから、やはり国交省の責任は大きいと思うんですよね。
 そこで、円山川というのは、前の国土交通大臣も参加をして、ことしの五月の二十九日に円山川流域・但馬合同水防演習というのまでやっているんですね。だから、それが果たして機能していたのかということも問われるということを、私、一言言っておきたいと思うんです。
 時間がありませんから、最後に、要するに、改修をやりたくても、来年の出水期までにまた頑張りなさいと指示を出しているんですよ、そちらは。だけれども、これだけたくさんのものをどないしてやるのかということで、金がないというのが問題なんですね。地すべりなどなんかで起きている問題も、これは重要なんですね。したがって、国交省が中心的にかかわる急傾斜地崩壊対策事業についてお聞きしたいんです。その指定区域、若干の経過とそれから予算の推移についてだけ、一言、簡単にでいいですから、述べてください。

○清治政府参考人 急傾斜地への対応でございますが、十年間でどのようなふうに変わってきたかということをお話ししたいと思います。
 現在十一万カ所ございますが、十年前には八万カ所ということでございました。これは、市街地が拡大したこと、あるいは調査手法が高度化したということが要因でございます。それから、急傾斜地崩壊危険区域につきましては、同じように十五年度末では二万七千カ所となっておりますが、十年前には二万一千カ所でございました。
 それから、その対策の事業費でございますが、平成六年度時点で八百四十二億円でございましたが、平成十六年度、今年度は七百十億円ということで、少なくなっている現状にございます。

○穀田委員 今ありましたように、大事な問題はここなんですよ。急傾斜地崩壊危険区域数は、平成六年といいますから九四年ですよね、ずうっと毎年毎年ふえているんですね。当時二万一千カ所だったものが二万七千カ所になっている。当時八百四十二億円のお金を使っていたのに、四年後の一千三百四十億円使って以後ずうっと減っているんですよね。これだけ急傾斜地崩壊危険区域がふえているのに予算は減っている、ここに今大きな問題がある。
 私は、先ほど言いましたように、地方自治体の中でもこれを来年の出水期までに直しなさいというものはたくさんになっている、ところが問題は金がない、こういうことが出ている。そこで、大臣が抜本的にということを言った際に、さまざまな予算の使い方があるでしょう、だけれども、こういうみずからが指定した問題や危ないと言った問題について、きちんとお金を使うということが大事だということを指摘して、終わりたいと思います。