国会会議録

【第159通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2004年6月16日)

本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 閉会中審査に関する件
 国土交通行政の基本施策に関する件

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○赤羽委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 私は、三菱自動車問題について、三回目の質問をしたいと思います。
 過去二回は、三菱自動車の欠陥隠しに対して、チェックする側である国土交通省の責任について問いただしてきました。
 その後も、相次ぐ三菱自動車の欠陥隠し、隠ぺいなど、底なしの状態を見ていて、日本の企業の反社会的体質というか、国民の命より目先の利益に走る体質、そのために法令違反は当たり前でやってしまうような状況、そして都合が悪いと思えば隠してしまう隠ぺい体質など、極めて深刻だなということを私は実感しています。
 かつて、食品メーカーの雪印が同じような不祥事件を起こしました。食品というまさに国民の命と安全に直結する製造会社でしたが、今度も命と安全にかかわるこういう会社が犯罪を起こす。ですから、やはり大企業の犯罪に対して、命と安全を守る責任を果たさせるために、抜本的にチェックを強める必要があると私は考えます。したがって、きょうはその角度から議論をしたいと思います。
 大臣に聞きたい。
 今度の一連の事件で、やはり国民は、何でだろうということをずっと思っていると思うんですね。私は三つばかりあるんじゃないかと思っています。
 一つは、このような事態が次々と明るみに出るまでなぜ発見できなかったのか。
 それから二つ目に、どこをチェックすれば再発を防げるのか、今後このような事態が起きない保証はあるのか。その際、国土交通省は、この事件を契機にリコール制度の強化ということを言っていますが、それだけで大丈夫なんだろうか、こういう点があるだろう。
 三つ目に、これは三菱自動車だけなのか、他の企業は大丈夫だろうか。そして、国土交通省として何らかの点検を行ったんだろうか。この際、安全チェックなどすべきでないか。
 こういうふうな、大きく言って三つぐらいが国民の疑問としてあるんじゃないかと、私はいろいろお話をお聞きしていて思いました。
 大臣は、五月二十一日の答弁で、悪質な、反社会的と言ってもいいぐらいな行為であり、極めて遺憾でありますし、何でこんなことを放置してくるような社内体質であったのかと半ばあきれておりますと三菱の企業体質について批判をしています。
 反社会的で許せないというのは当然です。あきれるのもわかるんですが、今述べたような国民の疑問といいますか、そういったことに対して大臣としてどのように答えるのか、お聞きしたいと思います。

○石原国務大臣(国土交通大臣) 企業が社会的な責任を放棄していると言っても過言ではない事案なのではないかと思っておりましたので、五月二十一日にそのようなお話をさせていただいたんだと思います。
 その結果どういうことが起こったかというと、委員の御指摘のとおり、なぜ発見できないんだろう、リコール制度というのはどうなっているんだ、リコール制度に対する国民の皆様方の信頼が損なわれようとする事態に至った、これは非常に残念でもありますし、何とかしなきゃいけない。
 そこで、一昨日、リコール改善推進室というものを設置いたしまして、再発防止対策に着手をしたところです。
 何をするかといいますと、では、なぜこんなことが起こったかというと、やはり情報の収集システム、こういうものも、向こう側から言われるままだったんですね。それを、こちら側から聞く。私も、寄せられている電話とかインターネットで来るものを見せていただきましたけれども、あれがかなりのボリュームになってくると、どういうところにどういうふぐあいがあるといったような統計立ったものが出てまいりますし、それ専用のソフトも至急つくれと指示を出させていただきました。
 それと、やはりもう一点は、言ってきても、それを技術的に検証するシステムというものがないんですね。もちろん技術的に検証するにはそれなりのお金がかかります。ことしは五千万ぐらいかけて、来年は五億円ぐらいの予算で、本当に持ってきているものを検証していく。
 この二つを行うことによって、リコール制度の改善、運用の見直しを短期間でやらせていただきたいと思っています。
 それと、自工とふそうを合わせますと二百五十件も隠していたわけです。これもやはり、二百五十件、大変多岐にわたっておりますので、徹底的な検証を行って、今後講じる改善策でその二百五十件が洗い出せるのかできないのか、こういう点が委員の御質問のポイントだと思うんですけれども、これも、いつまでもというわけじゃなくて、量が莫大なんで、一、二カ月かかってその取りまとめをするように指示をさせていただきました。
 では、他社はどうかというお話ですけれども、これも、三菱以外の自動車メーカーについても、もう一回、リコールというのは結局届け出ですから、信頼関係の上に成り立っていますので、ちゃんとやっているかどうか点検して、今月の末までに報告をいただきたい。そこで各社が御報告をいただけるものだと思っております。
 こういうものを積み重ねて、リコール制度の信頼の回復に努めてまいりたいと考えております。

○穀田委員 今、再発防止する具体化としてのリコール制度のさまざまな改善や、また国民の疑問に対しての一定の考え方というのは披瀝されましたが、この際にちょっと、リコール制度の問題については、私ども何度も提言してきました。問題は、では、このリコール制度なんですが、これは確かに、あくまでも販売した後の事後のチェックなんですね。市場に出回っている自動車に欠陥やふぐあいがあった場合に初めてチェック対象になるんです。ユーザーが運転して事実上チェックする、これはこういうことになりますね。私は、運転して初めてわかる欠陥もあるわけですから、それは重要な制度だと思うんです。
 そこで、確認しておきたいんです。
 第一に、リコールの届け出は、五年間の推移はどうなっているか。二つ目に、リコール届け出件数の多いメーカーの上位十社。三つ目に、重大な事故につながるおそれのある案件はどうか。具体的には、走行やブレーキなどに支障を来す、こういった問題を中心にして、ちょっと報告いただきたい。

○峰久政府参考人(国土交通省自動車交通局長) 御質問のうち、まず最初のリコール届け出件数及び対象台数の推移でございますが、平成十一年度から十五年度で、件数については、国産車、輸入車合わせてでございますが、件数で十一年度が百三十二、それから百七十六、百六十九、百七十、それから十五年度は二百四ということになっております。また、台数につきましては、平成十一年度の百八十七万台から、平成十五年度は四百四十二万台ということになっております。
 それから、二番目のリコール届け出件数の多いメーカー上位十社ということでございましたが、国産車について申し上げますと、順番に、三菱自動車工業、三菱ふそうトラック・バス、日産自動車、日野自動車、川崎重工業、本田技研工業、マツダ、小松製作所、いすゞ自動車、日産ディーゼル工業。それぞれ件数は、一番多いのが十三件、それから十番目のが六件ということになっております。
 それから、三番目に、走行不能あるいは制動力の低下及び火災のおそれがあって、重大事故、事案につながる可能性がある、これは主な装置についてのリコール届けで見させていただきますと、届け出件数及び対象台数は、二〇〇三年度で国産車で二十九件、約七十六万台の届け出がございました。主な装置のところ、先ほど言われました緩衝装置ですとか動力伝達装置、走行装置、制動装置、こういうところの主な部位のところでございます。

○穀田委員 要するに、九五年以降毎年ふえ続けていて、〇三年度には、今報告がありましたように四百四十二万台という状況です。しかも、今最後に報告がありましたように、二割近くが重大な事故につながる欠陥だ。しかも、上位十社ありましたように、三菱自動車だけに限ったことでなくて、他のメーカーからのリコール届け出もある。
 やはり、こういう重大な欠陥を持った自動車、大臣もこの間おっしゃっていましたように、走る凶器ということをユーザー、消費者に販売することこそ、四百四十二万台もこんなふうになってきているわけですから、それを販売すること自体が問題ではないかと私は思うんですね。
 したがって、ユーザーが購入する以前にチェックすべきじゃないか。もちろん、起こってからそれをやるのはいいんですよ、それはそれなんだけれども、その以前に何とかならぬのか。
 現在の自動車が販売される前の事前チェック体制はどうなっているか、簡単に。

○峰久政府参考人 自動車は、保安基準に適合しないものは運行できないということで、当然、販売される自動車につきましては、保安基準に適合している必要がございます。
 それで、今の審査でございますけれども、これは、自動車製作者から提出されます試験のデータ及び保安基準への適合性を証する書面、それと、現車審査によって、制動性の性能の試験でありますとか緩衝試験、排出ガス試験、騒音試験等のさまざまな試験を行っており、これらによりまして保安基準に適合しているかどうかということを審査しております。
 しかし、このように審査を行っておりますけれども、自動車は二万点以上の部品から構成され、また、さまざまな使われ方をしますので、欠陥車が発生することを回避するというのは非常に難しい状況でございます。このためにリコール制度がありまして、このリコール制度と相まって自動車の安全対策を行うこととしております。
 なお、重大な問題が市場で発生したような場合には、それに対応して審査の厳格化を図ることとしておりまして、現に、三菱につきましては、強度試験でありますとか実車試験データを提出させるなどの審査の厳格化を図っているところでございます。

○穀田委員 だから、なかなか大変だということで、二万以上の部品があるとか、それから、実際起こったときには厳格に対応する、こういう話がありました。
 そこで、この認証制度ではハブやクラッチなどの部品の検査はするのか、これを第一に聞きたい。
 というのは、三菱ふそうは、ハブではAからFまでのハブ設計変更を行っていたわけです。変更するときには再検査しないのか。
 三つ目に、三菱は、そのハブの実証検査をやっていなかった。つまり、実証実験もやらずに、欠陥品をつけていたと言われる。したがって、車両検査のときには、交通安全環境研究所では走行装置や部品の実証実験はやらないのか。
 この三つをまず聞いておきたい。

○峰久政府参考人 保安基準におきましては、ハブなどの走行装置につきましては、堅牢で安全な運行を確保できるものであること、あるいは、クラッチなどの動力伝達装置につきましては、運行に十分耐える構造及び性能を有することというふうに規定されております。
 それで、ハブなどの強度や耐久性につきましては、さまざまな車種、構造の自動車が多様な使用方法や使用環境で走行することから、定量的な数値による規制ではなくて、自動車メーカーにおきまして、個別の車種の構造などに応じまして、多様な使用方法あるいは使用環境を考慮の上で、部品を含む装置全体に対して保安基準の適合性を検証してもらう、その上で、審査はメーカーの検討結果を記載した書面によって確認することとしております。
 今回の三菱事案につきましては、安全性に係る信頼が損なわれ、十分な検証が行われているか疑義が生じているために、強度計算書や実車試験のデータを提出させ審査するなど、より厳格化しているところでございます。
 それから、次に、ハブの変更のことでございますけれども、自動車の審査におきましては、一般的には、自動車の基本的な性能あるいは長さなどの諸元が変わるような場合に審査の対象としておりまして、ハブのみの変更については、それに該当しないため、その審査は行っておりませんでした。
 ただ、先ほど申し上げましたように、今回の三菱事案につきまして、安全性の検証についてやはり疑義が生じているということで、ハブの変更についても、より厳格な審査を実施しているところでございます。
 それから三番目に、実証実験をやらないのかということでございます。
 先ほど申し上げましたように、審査においては、ハブについては、書面審査で、メーカーなどによる保安基準適合性の検討結果を記載した書面で行っておりますけれども、今回の事案の再発防止をということで、疑義あるふぐあい案件につきましては、書類確認だけではなくて、交通安全研究所などにおきまして、現車確認、試験の実施により技術的検証を行うこととしておりまして、今後は、その結果を審査にフィードバックすることなどによりまして、重要な案件につきましてはより一層審査の厳格化に努めてまいりたいと思っております。

○穀田委員 だから、簡単に言えば、型式指定などの審査や検査というのは、メーカーが出してくる書類を見てやるんだということなんですね。こういういろいろなことが起きたときに、厳格にやる、こういう趣旨ですよね。私、そこを少し改善する必要があるんじゃないか。
 リコール届け出は、実は三菱だけじゃない。先ほどお話しされたように、上位十社の話もありましたし、それから、どこにふぐあいがあるかという問題についても、重要なところがあるということもお話がありました。
 だから、せめて、重大事故に直結する重要な部品の欠陥もたくさんあるわけで、リコールで得た貴重な情報なわけですから、重要部品については、出されたメーカーの新規申請車両について慎重審査はやるべきじゃないか、そういうふうに思うんですが、いかがですか。

○峰久政府参考人 現在、三菱ふそうトラック・バス株式会社の自動車につきましては、ハブの強度に関する試験成績書などを提出させて、より厳格な審査を行っているということは先ほど申し上げたとおりでございます。
 また、今回、リコール制度の改善、運用の見直しのために、一昨日にリコール改善推進室を設置して、自動車メーカーからの情報収集・分析システムの強化や技術的検証スキームの構築等の改善策を早期に実現することに着手したところでございます。
 今後、これらの改善策を通じまして、ふぐあい情報の把握の充実に努めることとしておりますが、その過程で得られた重要な情報につきましては、型式認証の審査に有効活用して、重大な事故につながるおそれのある部分を特に注意して審査するなど、事前事後のチェックを通じて安全対策に万全を期していきたいと思っております。

○穀田委員 それは私どもは、このリコールが起きたときから、自前でできるそういう検証体制というようなことと、重要な問題についての解明という点は提起してきたわけですけれども、今ありましたように、私は、もう一度販売前のチェック体制の強化を図る必要があると思うんです。何度聞いても、要するに、型式認証における審査や検査の改善が必要だと言わざるを得ないと私は思うんです。
 ここは大臣に、政治論として、安全基準の見直し、さらには検査方法の改善、検査体制の強化、技術面での安全性の事前チェック体制も一度検討いただく必要があるんじゃないか。先ほどお話を聞いたように、リコールの問題についての体制を二つの面でやるというのもわかりました。それはそれでやっていただきながら、もう一歩踏み込んだ形でのそういう検討が必要じゃないかと思うんです。その辺はいかがでしょうかね、大臣。

○石原国務大臣 政府参考人からお話もさせていただきましたように、自動車というものが二万点の部品から構成されておりますので、それを全部事前に見て、安心か安全じゃないか、そして実証して走らせてみるといいましても、サーキットを何十周も何百周もするようなことはメーカーでもう既に行っておりますので、そのデータというものをしっかりと出させていただいてチェックするということにならざるを得ないと思いますが、今後は、改善策を通じて得た情報を型式認証に有効活用して、委員御指摘の事前事後のチェックを通じた安全対策というものをより一層強化していく、そういうふうに考えております。

○穀田委員 それは、ぜひ私どもとしても、もう少し突っ込んだ議論を今後していきたいと考えているところです。
 最後に、もう一つだけ言っておきたいと思うんですけれども、大企業のそういう犯罪に対しては、やはり、目先の利益に走る体質を改めさせ、社会的に責任を果たす経営の促進が大事だと思うんです。行政として独自の対策を立てる必要がある。例えば、内閣府は、「消費者に信頼される事業者となるために」ということで、自主行動基準の指針などを提言しています。EUなどでは、御承知のように、企業の社会的責任を政府が主導して企業に求めています。日本の経済団体なども強めています。
 大事なのは、企業任せにすれば残念ながら今回みたいな犯罪、不祥事がなくならないという立場から、いろいろなことでもっと積極的に提言をし、イニシアチブを発揮していくことが求められていると思うんです。
 したがって、政府として、また国土交通省としての具体化、独自にガイドラインを作成するなど、こういう点でも、私は、企業の社会的責任という問題についての国土交通省としての独自ガイドラインなんかの作成について検討すべきじゃないかと考えているんです。その辺はいかがでしょうか。最後にそれだけ質問して、大臣にお答えいただければと思っています。

○石原国務大臣 ただいま委員が御指摘されたのは、多分平成十四年十二月の国民生活審議会の自主行動基準の策定というものをおっしゃられていると思うんですけれども、こういうものを経営の透明性を高める道具の一つとして企業の側が扱っていくことは私も一つの方策だと思っておりますし、三菱二社については、その企業風土の変革、透明性の確保にやはりみずからが取り組んでいっていただくことを期待する次第であります。

○穀田委員 終わります。


【「しんぶん赤旗」2004年6月17日】

自動車事前審査強めよ
三菱問題
穀田議員、国交省に迫る

 “走る凶器”欠陥車をユーザーに販売することこそ重大問題だ――。日本共産党の穀田恵二国対委員長は十六日の衆院国土交通委員会で、三菱自動車の悪質な欠陥隠しを教訓に自動車の事前審査体制の強化が必要だと迫りました。
 国土交通省は、穀田氏の求めに応じ重大事故につながる部位のリコール届け出件数を発表。二〇〇三年度は、走行不能二十二件、制動低下六件、火災一件の計二十九件で全体の二割(七十五万八千台)を占めることがわかりました。
 自動車の事前審査には保安基準への適合をみる「型式認証制度」があります。現状は、メーカー提出の書類審査と装置検査で、個々の部品は検査されません。
 そのため三菱は、車輪と車軸をつなぐハブやクラッチ系統部品の欠陥をリコール(回収・無償修理)せず、ひそかに設計変更を繰り返し「ヤミ改修」していました。
 穀田氏は「リコールの届け出は三菱以外のメーカーでもある。重大事故に直結する重要な部品の欠陥もたくさんある。リコールで得た重要部品についての貴重な情報を新規申請車両について生かし慎重審査すべきだ」と要求。石原伸晃国交相は「不具合情報を型式認証に有効活用し、事故への積極的な安全対策を強化していきたい」と答弁しました。
 穀田氏は人命より目先の利益に走る大企業犯罪は「企業任せではなくならない」と主張。EU(欧州連合)が政府主導で、企業に社会的責任を求めている例などを挙げ、行政としての独自ガイドラインの作成などを提案しました。