国会会議録

【第159通常国会】

衆議院・国土交通委員会(午後)
(2004年5月26日)

本日の会議に付した案件
  旅行業法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)(参議院送付)
 海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)(参議院送付)

     ――――◇―――――

○望月委員長代理 穀田恵二君。

○穀田委員 旅行業法について聞きます。
 旅行業法というのは、消費者である旅行者の保護を旅行会社に義務づけている、これが肝心の精神ですよね。ですから、前提といいますか、基本ということになっているので、そこの精神と旅行者保護というのはどういうものかということについて、簡単にまずお聞きしておきたいと思います。

○澤井政府参考人(国土交通省総合政策局長) 御指摘のとおり、旅行情報なり旅行に関するいろいろな仕組みのプロである旅行業者対、そうした知識が多くの場合少ない個人の旅行者との関係の、情報の非対称性のようなことがベースにあって、そういったものを補って、きちんと安心して旅行に行っていただけるようにするために、旅行業法の中で規定を幾つか設けているということでございます。
 一つが、各営業所において、旅行者に対する、旅行する人に対する取引条件説明あるいは旅行者からの苦情にきちんと対応する、そういったことの管理監督事務を行うために、現行法上、国家試験に合格した旅行業務取扱主任者という者を置いているということが一点です。
 それから、旅行会社が主催する旅行につきましては、事故とかオーバーブッキングなどにきちんと対応する行程管理の責任を負わせるというのが二つ目でございます。
 それから、三つ目に、今とも関連しまして、旅行会社が主催する旅行に添乗員が参加して、その方が旅程管理業務をやる場合には、指定した研修機関が実施する研修を受けなければいけない、そういった人を置かなければいけない。
 それから、こういったことを一連に担保するために、取引の公正、旅行者の安全や利便を害する者に対し、業務改善命令あるいは営業停止命令、登録の取り消しといった不利益処分を行うことができるようにしてあるということと、それから、別途、旅行業者の債務の不履行あるいは倒産に備えまして、営業保証金の供託を義務づけている、この辺が消費者保護の主たる規定でございます。

○穀田委員 今ありましたように、根本的に、そういう業としているプロと、それを受ける側の消費者としての素人、こういうことから当然トラブルが起こってはならないし、業界の責任というものをしっかり据えておくというのが考え方の基本だと思うんですね。
 最近、旅行会社が、名勝をめぐる企画に参加するパッケージ旅行だけじゃなくて、先ほど来ずっと説明がございましたように、オーダーメード型の旅行がふえている。これも、今回の法案で消費者保護の対象に広げることになるということに、先ほどあったと思うんです。
 ただ、先ほどもあったように、そこで、旅行する者の側にとってみると、オーダーメード型旅行というのはどういう区分なのか、これをわからせるのが大変なんですね。
 つまり、今でも、先ほどありましたように、情報量の差があり、プロであり、素人だ、そういうものがあってということで、わざわざ言わなければならないぐらいになっているわけです。しかも、今回見てみますと、旅行会社がアドバイスしながら旅行計画を作成すると説明があるわけですね。
 例えば、では、自分で飛行機だとか宿だとか指定して、旅行会社には予約だけ頼む、ある意味での仲介と言っていいと思うんですね、そういうものはどうなるのか。
 こういう点、旅行者の側から見ると、先ほど来、参考人が、ある意味で区分があいまいだ、こう説明していましたように、自分が契約した旅行商品が保護の対象になるのかどうか判断が困難だと思う。こういう点で、どうしてわからせるのかというのは、単に、周知しますとか、徹底しますというんじゃなくて、物の考え方なんですね。オーダーメードといってしまうとそういうものも含めてあるんじゃないかということもありますから、その辺どのようにお考えなのか、お聞かせください。

○澤井政府参考人 先ほど、区分があいまいになってきたと申し上げましたのは、今度、結果的に、企画旅行として一本化された二つのものであります。
 主催旅行の中にも、いろいろなオプションが選べるような、そういうものが含まれたような商品が出てきた。一方で、御指摘の企画手配旅行として従来の規制の対象にはなっていなかったものについても、旅行会社が事実上、旅程管理をするようなものも出てきた。どっちだろうというあたりのあいまいさでございます。
 今回は、そういったものも含めて、明確に、法律上、旅程管理をするということにしまして、その企画旅行と、そういうことを一切しない、先生仰せの、切符をかわりにとってくるとかそういう単純手配、この二つになりますので、この区分で、旅行をしようとする方が迷われるということは多分ないと思います。
 ただ、制度的にも、この辺は、旅行会社と旅行をしようとする人が取引をする前に、書面を交付しながら、この旅行はこのタイプの旅行ですよということをきちんと言うという仕組みが法律上担保されておりますので、そういったことを通じて明確になると思いますし、また、その辺は、あいまいになって、そんなはずじゃなかったというようなことが後で起こらないように、きちんと私どもも周知を図りたいと思っております。

○穀田委員 これも、迷われることはない、こう言うんですが、例えば、実際にどんな手続があって、どういう保証があってというのを知らない方というのは圧倒的に多いんですよね。それで物事が起きているわけだから、入り口のところでこういう迷いが生じるというだけじゃなくて、本来の持っている会社がどういう点まで責任を負うのかということの関係もあるから、わざわざ私は言っているわけですね。
 現場で何が起こっているかということの関係も少し言ってみたいと思うんです。
 例えば、旅行業者として登録していない仲介業者の問題があります。昨年十二月八日の日経新聞に、「留学仲介 トラブル急増 登録義務なく 行政の監視手薄」という記事が報道されています。
 海外の語学学校への留学やホームステイなどをあっせんする仲介業者は、旅行会社とは違って、監督官庁や自治体などへの登録なしで、どうも営業ができる感じです。留学などのあっせんのサービスは、旅行会社が実はパックツアーで提供するタイプもあるんです。一方、仲介業者が現地の語学学校やホームステイ先を紹介することもできる、こうなっています。
 関東在住の二十歳代の女性は、語学留学の手続を仲介業者に依頼し、費用を支払った。後日業者から突然、留学できなくなったと連絡してきたが、費用は返金されない。業者に支払ったお金が留学先に渡っていなかったなどなど、詐欺まがいのトラブルも頻発している、こんなふうな一連の記事が載っています。
 こうした仲介業者は旅行業者でないため旅行業法の対象にならないが、こうした業者と旅行会社が提携して企画を組むケースがあると言われているんですね。だから、旅行業者としての注意は必要だと思うんですね。仲介業者は、これは自分のところの範疇ではない、こう言うに決まっているんですから、問題は、それとかかわって旅行業者としての注意はどうしたら喚起できるか、このあたりについては私は大事だと思うんですが、いかがでしょうか。

    〔望月委員長代理退席、委員長着席〕

○金澤政府参考人(国土交通省総合政策局観光部長) 委員御指摘のとおり、九〇年代の後半から留学をめぐるトラブルが急増しているという記事が昨年の十二月に日経新聞に載っておったところでございます。
 留学あっせんと申しますのは、旅行会社みずからが留学を主催旅行としてあっせんするいわゆるホームステイツアーのようなもの、こういったものと、それからもう一つは、あっせん業者と旅行会社が提携して実施をする、留学の部分は留学あっせん業者がやるけれども、旅行の部分を旅行業者がやる、そういう二つのケースが大きく分かれてございます。
 国土交通省におきましては、いずれのケースについても旅行業者が関与をいたしますものですから、旅行者の保護にできる限り万全を期したいということから、従来より現地情報の把握や参加者への情報の提供ということを求め、あるいは確実にその留学、あるいは研修ツアーといったこともあるのですが、それが行われるための措置を実施すること、並びにホームステイの受け入れ団体を適正に選ぶ、さらには正確な情報を記載したパンフレットの作成、あるいはトラブルが発生した場合の確定的な連絡体制の周知徹底、こうしたことを旅行業者の方に繰り返し指導してきております。
 また、こうした事態を受けて、JATA、日本旅行業協会におきましても、ホームステイツアーの取り扱いのガイドラインといったことを定めまして、関係する旅行業者の適正な運営を促しておるところでございます。

○穀田委員 ガイドラインもお話がありましたけれども、こんな例もあるんですね。昨年夏には、ある中堅仲介業者が突然営業を停止し、社長が会社の資金を持ち逃げしたために、顧客が支払った留学費用が返還されないというトラブルも起こっています。被害者の人数は約四十人で、総額は約千二百万円。顧客の一人は、事前に振り込んでいた約百三十万円のうち航空券分を旅行業協会から弁済してもらったが、残る八十万円は結局返らなかった。要するに、仲介業者については保証制度もないという事態です。
 倒産したりした仲介業者に旅行業者がかんでいた場合、消費者が支払った費用はどうなるのか、こういう現実のトラブルがあるわけですから、その辺についてはどうなっているんでしょうね。

○金澤政府参考人 今御指摘のケースは、旅行業者が留学あっせん業者と提携をいたしまして実施する場合に当たったためにそのようなことになったということでございまして、つまり、旅行事業者が全体的な主催旅行として留学あっせんを実施する場合には、すべての旅行代金、ホームステイ等の料金や現地のサービスに対する対価もすべて一括して払うことになりますので、その場合には、今おっしゃったように、業者が倒産したり債務不履行によって旅行者に債権が生じた場合には、これをすべて弁済業務保証金制度で補てんすることになります。
 しかし、一方で手配だけを依頼された場合、今委員の御指摘のようなケースだと思うんですが、そうした場合には、留学あっせん部分まで弁済業務保証金でカバーするということは現在されていないということでございまして、旅行業者が受けた航空券、あるいは旅行にかかわる契約に関する部分のみ補てん対象ということになっておるものでございます。

○穀田委員 いや、それは知っているんですよ。せやから、どうすんねんと言っているんですよ。
 そんな二つの違いはなかなか、さっきも言いましたように、もともと弁済だとか債務の負担だとかという問題については八割の人が知らないという実態があって、しかも仕掛けがどうなっているかということについて、こういう違いがありますよなんということをわからないことがあるから言っているので、それについてどないやと言ったら、支払われないことになりますと。支払われていないから問題にしているわけで、ちょっと違うなと思うんですね。
 旅行会社ではないんですよ。こうした仲介業者に対する監督指導もその意味では必要ではないかと私は考える。
 それで、留学生だということで、私は文部省にも聞いたんです。そうしたら、いや、業者まで掌握していないと。経済産業省はどうかというと、いや、うちとも違うと言って、呼ぼうと思ったら、関係ない関係ないと、お互いに関係ないと言い合う。ここに穴があるんじゃないかと言っているんですよね。しかも、先ほども一番最初に澤井総合政策局長が言ったように、なかなか相手の情報がそういう問題は少ない。しかも断られたときに、これはどないなっているのかということで大変になる、そういう消費者なんですね。だから、そういう穴をうまく抜けないようにする必要があるんじゃないかという角度から物を言っているんですね。
 旅行業者というような会社は登録制だけれども、未登録の事業者も頻繁にトラブルを起こしている事実もあります。例えば日本旅行業協会のホームページを見ますと、この間の五月二十四日付で、株式会社リトルスターによる被害発生についてという注意が出ていました。三月二十六日には、御注意、ANAタウンハウジング株式会社についてというのが出ています。いわゆるアウトサイダーだという違法の業者だと思います。
 消費者保護という点を私はこの問題についてずっと指摘して、何とかしなくちゃならぬという問題を一つ一つ言っているわけですけれども、こうした事業者に対する対策も重要ではないか。国交省としてどのような対策をとっていますか。

○金澤政府参考人 まず法的には、旅行業法におきましては、無登録で旅行業を営んだ者には百万円以下の罰金という規定がございまして、これによって無登録営業を防ぐ担保としておるところでございます。
 しかし、一方、今委員御指摘のとおり、最近旅行業の登録を受けずに旅行業を営んだり広告宣伝をして、代金だけ収受してそのまま消えてしまうといったケースも出ておるということで、旅行者が多大な損害をこうむったケースもございますので、私どもといたしましては、こういった行為を見過ごすことのないように、まずこうした場合の情報の入手をした場合に、直ちに旅行業者、これは業界を通じて連携してやることも多いのですが、一般消費者に対しても注意を喚起するということをしておりますし、また、直ちに警察等の捜査機関にも通報をいたしまして、詐欺罪あるいは旅行業違反における立件といったことを含めた迅速な排除に努めるように対応しております。
 この点について、従来以上に、今委員御指摘のとおり、今後取り組んでまいりたいというふうに考えております。

○穀田委員 そういうトラブルが起きている事態についてよく見ていただいて、きちんと対処をしてほしいと思います。
 では、最後に二つだけ質問したいと思うんです。
 一つは、営業保証金制度、弁済保証金制度について聞きます。
 今回の改正で、旅行業者が供託した営業保証金及び弁済業務保証金による弁済の対象から運送機関、宿泊機関などが除外され、旅行者のみに限定される。この法改正の趣旨は何ですか。

○金澤政府参考人 御指摘のとおり、今回の法改正において、営業保証金、弁済業務保証金の対象から運輸、宿泊機関を除外するということでございますが、これは、先ほども澤井局長から御答弁申し上げましたとおり、いわば旅行者にとって、運輸、宿泊機関はプロとプロ、BツーBの関係にあります。そういったところから、そうした方々は、みずから、みずからの商売相手である旅行業者の資力等、信用情報も十分に把握した上でビジネスをしておるということから、今般、そうした事業者を除外して、より手厚く消費者である旅行者に弁済保証金が充当されるようにしたいという考えで、この制度を取り入れているところでございます。

○穀田委員 ただ、確かに、プロ対プロという話があって、旅行会社が倒産したりして運送機関や宿泊機関に多額の弁済をするという、積み立てたお金が目減りして、消費者の分が少なくなるおそれがあったわけですね。そういう意味では、消費者に弁済するものを手厚くすることは必要だと思うんです。
 しかし、バス会社や旅館にも中小零細なところがあるわけで、こうした運送、宿泊業者などに対する手当てはどのように考えているのかということだけお聞きしておきたいと思います。

○金澤政府参考人 ただいま委員も仰せられましたとおり、交通業者の中には中小零細な企業がいるということも事実でございます。しかし、旅行業としては、あくまで消費者である旅行者の方々の保護を一義的に考えて、今般こうした御提案を申し上げておりまして、先ほども議論に出ておりましたとおり、中小零細な事業者である方々であっても、ふだん、旅行業界とビジネスの関係に入る場合には、当然、そうした旅行業界に関する情報、旅行業者の情報も十分に、交通業界の方では、あるいは宿泊業界の方でも認識しつつビジネスしていただくということが一つ。
 それから、これも澤井局長が御答弁申し上げましたとおり、ANTA、全国旅行業協会におきましては、クーポンというものもつくっております。こういったものを活用して、零細な宿泊事業者の方々は取りっぱぐれのないように、このクーポンの普及に一層努めていきたいというふうに考えております。

○穀田委員 終わります。