国会会議録

【第159通常国会】

衆議院・国土交通委員会(午後)
(2004年5月21日)

本日の会議に付した案件
  建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)(参議院送付)
 不動産取引の円滑化のための地価公示法及び不動産の鑑定評価に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)(参議院送付)

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○今村委員長代理 穀田恵二君。

○穀田委員 初めに、昨日、三菱自動車のクラッチ欠陥を八年間放置していたという事実が明らかになったことに関連して聞きます。
 私は、一昨日もこの三菱のハブ欠陥事件についてお尋ねをしました。そのとき、国交省がどう言ったかといいますと、この問題で、現行制度の中でできる限りの対応をしてきたと答弁しました。
 きょうは、そういうものだったかということで、政治家としての大臣に直接お聞きしたいと思います。
 私は、第一に、タイヤの脱輪事故について、当時の省当局者が、事実上、三菱側と同じ立場に立って答弁していた事実をずっと明らかにしてきました。
 そして、二つ目に、リコール命令をするにふさわしい三菱側の過失を見つけるチャンスがありながら、逃した不十分さについて指摘をしました。例えば、原因不明の十三件のハブ問題に関する故障の後追いをしなかった点、さらには、クレーム台帳を直接点検しなかった点、さらに、運送会社からの、ハブに欠陥があるのではという文書を担当官に回さなかった等々指摘をしたところです。
 そして、第三に、法改正に伴うリコールの命令権限を持ちながら、こう言っているんですね。「リコール隠しのような行為は極めて社会的に大きなダメージを受けて、企業の存立さえも危うくするような、経済的には引き合わない」、間はちょっと略しますが、こういうような認識が非常に浸透した、こう言って答弁しているんですね。何を言っているかというと、要するに、そういうことは割に合わなくなった事態になっているから大丈夫だ、こういうことまで言っていたわけですね。だから、肝心の命令権限を持ちながら、やるべきことをやろうとしなかった。

 こういう、大体、私がいろいろ、あっちこっち言いましたけれども、三つぐらいの筋に分けて言ってきたわけですやんか。そういう一貫して指摘してきたことを、私は政府参考人にずっと聞いてきましたけれども、大臣もお聞き及びだと思うんですね。
 したがって、以上の点を踏まえても、大臣は、先ほど述べました、できる限りの対応はしてきたというふうに言い切れますでしょうか。お答えいただきたい。

○石原国務大臣(国土交通大臣) ただいま穀田委員が御指摘されました、いわゆる三菱自動車のリコール隠しの問題は、基本的には、安全対策を最優先とすべき自動車メーカーが、これ今回が初めてではございません、平成十二年度に引き続きまして虚偽報告を行った、悪質な、私は、反社会的と言ってもいいぐらいな行為であり、極めて遺憾でありますし、何でこんなことを放置してくるような社内体質であったのかと半ばあきれております。
 その一方で、国土交通省は、再三御答弁を政府参考人からさせていただいておりますように、現行の制度あるいは体制の中でできる限りのことはやってきたとは思いますが、結果としては、委員が御指摘のとおり、だまされていたと思われても仕方がないような事実があったということは事実ではないかと思っております。私は、リコール制度の運用について、これからも不断の改善を行っていく必要性というものを、率直に申しまして痛感しているところでございます。
 何を変えればだまされないのか、また、何を変えればもっとこういう問題を早期に露見させることができるのか、早急に改善すべき点を洗い出すように、事務方にもう既に強く指示を出させていただいているところでございます。
 それで、今事務方が何をやっているのか聞かせていただきましたが、ふぐあい情報の収集と分析の充実強化、技術的検証体制の強化、リコール業務体制の強化など、各般にわたりまして改善策というものを検討しておるということで、まだ詳細が詰まっておりませんのでこの場で明らかにすることはできませんが、今後、早急に取りまとめて、リコール制度の運用に万全を期し、ましてや、今度の件ではまた新たな死亡者のことも確認されておりますので、安全、安心という観点からも万全を期する所存でございます。

○穀田委員 だまされた事実は認めると言われまして、当時のリコール隠し事件で、大臣は、当時、見抜けなかったということに関しては、大変申しわけないという謝罪の言葉があったんですね。今度、私は、いろいろ政府参考人に聞きましたけれども、遺憾だという言葉はあったけれども、申しわけなかったという言葉は一度もなかったですよ。それだけは指摘しておきたいと思うんです。
 同時に、今、だまされぬよう改善のと言いましたけれども、私どもは、当時、そういうことについて危険だとわざわざ指摘したんですよね。そういうことでだまされちゃならぬということにもやはり、国民なりまた議会の指摘にも耳を傾けるべきであるということを申し述べておきたいと思うんです。
 一昨日、政府参考人が、現行制度の中でできる限りの対応をしてきたという発言と、遺憾だという程度の発言を、遺族の皆さんの前で一度、それでしゃべってみたらどうだと私は思います。それで絶対に納得できないということだけは、多くの国民の心持ちだということについて見る必要があると思います。
 安全という問題についての心がけの一番大事なことは、そういう人たちの死に追いやられた悔しい思いやそういった思いに対して真摯にこたえるという姿勢がまず大事だということを私は申しておきたいと思うんです。
 もちろん、大臣はそういう点について既に御承知かとは思いますけれども、あえて私は、政治家としてそういう立場に立っていただくことによって、事務方が一昨日述べたような点では、およそ、幾ら具体的な改善策を、それはもちろん必要ですよ、それをるる述べたからといって、根本精神を注入するといいますか、そういうことが必要だということを申し述べておきたいと思います。
 次に、不動産鑑定士補について聞きます。
 不動産鑑定士の資格取得制度を簡素化することについて、一点だけお聞きします。この簡素化により不動産鑑定士補制度はどうなるのか、現在もいる方々についてはどういう措置を講じるのか、お聞きします。

○伊藤政府参考人(国土交通省土地・水資源局長) 不動産鑑定士補の制度でありますが、今回の改正により不動産鑑定士補の資格制度は廃止されます。しかしながら、廃止の時点で不動産鑑定士補の地位を有する方については、その地位を保ち、不動産鑑定士補としてこれまでどおり不動産鑑定等の業務を行うことができるよう経過措置で措置しているところでございます。
 また、旧第二次試験合格者は、今回簡素合理化によって新たに衣がえする新試験の合格者とみなすことといたしておりますので、不動産鑑定士補は、不動産鑑定士を目指す際に新試験の受験は免除され、実務修習から始めればよいということになります。そしてまた、その実務修習を修了すれば不動産鑑定士の資格が付与されることになります。
 なお、以上のほか、旧制度下で既に一年間の実務補習というものを修了している、そういう不動産鑑定士補の方につきましては、新制度移行後も旧三次試験を三回実施することといたしております。そして、これに合格すれば、新制度での実務修習を受けることなく、不動産鑑定士の資格を付与することも可能となっているわけでございます。
 このように、今回の新制度への移行に当たりましては、不動産鑑定士補の地位の保全ということについて必要な経過措置を十分に講じているところでございます。
 以上でございます。

○穀田委員 わかりました。
 では次に、地価公示法について一点だけ。地価公示の対象地域を都市計画区域外の地域にも広げるということについて聞きます。
 都市計画の区域外の開発というのは、今までも随分問題になってきました。開発自体による自然環境破壊の問題や、さらには中心市街地など既成市街地の空洞化、そしてまちづくりへの影響などさまざまな問題がこれまでも起こってきました。
 今回、地価公示の対象地域を拡大しますね。それによって都市計画区域外の開発を事実上促進したり加速するということになりはしないか、その点を危惧しています。地価公示の役割との関係を含めて答弁をお願いしたい。

○伊藤政府参考人 今回の改正は、都市計画区域外の開発行為を促進したり抑制したり、そういうことを目的とするというものではございませんで、都市計画区域外であっても、既に相当程度都市的な土地利用が行われているか、または行われつつある地域について地価公示を行い、取引価格の目安を示すことで適正な地価の形成を図る、そういうことを目的としたものでございます。
 したがって、今回の改正により、直接、土地利用に影響を与えて、郊外部の乱開発が進むといった問題は生じないというふうに考えているところでございます。
 むしろ、都市計画区域内外の土地価格の情報が広く提供されるということになりますので、広域的な観点からの地価の比較ということも可能になるわけでございます。そういう意味では、全体として、適正あるいは合理的なと申しましょうか、そういう土地取引の促進ということにはつながるというふうに思っておりますし、そういうことを通じて適正な土地利用の実現にも資することになるのではないかというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

    〔今村委員長代理退席、委員長着席〕

○穀田委員 次に、地価公示法にかかわって、公示地価を算定の根拠とする相続税問題について少し聞きます。
 私が住んでいます京都を初め、全国に三百五十件ほどの重要文化財に指定されている民家があります。いわゆる重文民家と言います。現在もお住まいになられて、先祖代々貴重な住居を維持しておられます。このうち百六十件ほどが相続税がかかわってくるそうです。こうした方々が毎年全国重文民家の集いというのを開いて、文部科学省や財務省に要望書を出しています。
 皆さんはこう述べておられます。文化財の保護、保存という国家的事業に貢献することを常に心がけていますが、実情は大変厳しく、多くの会員の方々が日常の維持、保存に関して辛苦を重ね、保存修理等の大規模維持事業に伴う物心両面の負担には到底耐えがたいほどの極限状況に置かれていますと訴えています。
 京都にも例えば二条陣屋というのがありまして、重要文化財ですが、この御主人の話を聞きました。通称小川家住宅とも言うんですが、一六七〇年に創建されて、江戸時代に大名の上洛の際に陣屋として、宿舎ですね、利用されてきた建物です。戦前、一九四四年に国宝に指定され、一九五〇年に国指定の重要文化財に指定されました。全国で二番目だそうです。
 財務省に聞きます。個人所有の重文民家の相続税に関して、どのような評価をされているか。

○西江政府参考人(国税庁課税部長) お答えさせていただきます。
 相続税等における財産の価額は、相続税法二十二条におきまして、財産取得のときにおける時価によることとされております。
 重要文化財に指定されている民家及びその敷地につきましては、文化財保護法により現状変更等について厳しい制限が課せられていますことから、その使用収益制限を考慮し、それが重要文化財でないものとして評価した価額から、その価額に六〇%を乗じて計算した金額を控除した金額、すなわち、通常の評価額の四割相当額によって評価をいたしております。(発言する者あり)

○穀田委員 今、不規則発言がどこからか聞こえまして、四割も取っているのかというのがありましたが、平たく言えば六〇%減免していると。何も優遇しているというわけじゃないというふうにいつも財務当局は言うわけですが、事実上六〇%減免してあげるということで、全体として助けてあげている。それ自体は貴重なんです。
 だけれども、全く深刻でして、例えば、こういう事実もぜひ見ていただきたいんですけれども、二条陣屋は約四百坪ありまして、現在の評価だけでも相続税は二千万円ほどかかると言われています。例えば、一千坪ある重文民家の方々は代々、いろいろ代はかわりますから、年金で暮らしている、細々とやっているということで、相続税が払えないというのは、結構いらっしゃるんですね。
 しかも、二条陣屋というのは今大改修時期に入っていて、こういう古い、一六七〇年代なんかにつくられた建物というのは幾らそれを直すのにかかるかといいますと、大体一億五千万円かかると言われているんですね。もちろん国庫補助はあるんですよ。八〇%の国庫補助があって、それ以外に京都府から三百万円の補助があるんです。しかし、残り二千七百万円が自己負担になるわけですね。(発言する者あり)
 そして、日常の細々とした修理、管理、維持、気遣いなどは大変とおっしゃっておられました。しかし、こういう方々の心意気というのがありまして、重要文化財の番人として頑張っているということがその方々のお話です。だから、この役割を認めるべきではないかと私は思っているところです。
 したがって、先ほどの財務省の話はバブルの時代の通達のものでして、今もお話があったように、そんなものただにせいやというぐらいの声が大臣経験者からも出るぐらい当たり前の話でして、昨今の不況や景気低迷の中で、相続税算定の基礎となる地価公示価格も実勢価格よりも高いとの指摘もあるわけです。したがって、支援のあり方もさまざまな見直しの状況にあると考えています。
 そこで、重文民家の方々は、相続税の軽減措置として、先ほどの、不規則発言でただというような話がありましたけれども、九〇%までせめて控除をしてほしいと希望されていますが、財務省としての検討を要望したいんですが、いかがでしょうか。

○西江政府参考人 財産の評価というのは、通常、売買実例等を参考に評価を行っているところでありますけれども、重要文化財民家等のように売買実例が把握できない場合には、その財産にかかる制限の程度を踏まえて、他の使用収益制限がある財産の評価とのバランスを考慮して減額割合を定めているところでありまして、実態に即した適正な評価に努めているところであります。
 御指摘の重要文化財民家等に係る評価通達というのは、これは昭和六十年に定めたものでありますけれども、通達制定当時と比較いたしますと、他に類似する個人所有文化財である民家、登録有形文化財でありますとか伝統的建造物とか、いろいろありますけれども、そうしたものも含めた指定件数が増加する傾向にございます。また、他に類似する使用収益制限のある財産の評価の動向、その後の状況変化ということもございます。そうしたことから、文化財建造物及びその敷地の評価のあり方について、現在検討を進めているところでございます。
 いずれにしても、文化財の種類に応じた法的規制の程度、利用上の制約等を考慮して、実態に即した適正な評価に努めてまいりたいと考えております。

○穀田委員 最後に一言、大臣、政府は観光立国などといって、日本の歴史、伝統文化のよさを大いに諸外国に広めようと言っているわけですよね。まさに、日本のよさをこうした重文民家の方々が懸命に支えていただいている。だから、それを担当している大臣として、政府として挙げてこうした方々を支援、援助すべきだと思います。
 その点、大臣、政府全体に働きかけていただくことを要望したいんですが、いかがでしょうか。

○石原国務大臣 ただいまの議論は財務大臣にしっかりと伝えさせていただきたいと思います。

○穀田委員 終わります。

○赤羽委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。