国会会議録

【第159通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2004年5月11日)

本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 景観法案(内閣提出第三八号)
 景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第三九号)
 都市緑地保全法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)

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○赤羽委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 法案に沿って質問します。
 最初に、景観とは何かという定義がされていないように私は思うのです。そもそも景観とは何を指すか。そして、良好な景観とはいかなるものか。そして、良好と判断する基準は何か、判断する主体は何か。この基本的な、一番最初の取っかかりになるところについて、まずはっきりさせていただきたいと思います。

○竹歳政府参考人(国土交通省都市・地域整備局長) 良好な景観と申しますのは、それぞれの地域に固有の自然、歴史、文化等に基づき判断されるべきものであることから、景観法では、何が良好な景観であるかについて、地域の実情に最も精通した公共団体の判断にゆだねるということにしております。
 そして、各地域において目指すべき景観のあり方を決める上で、地域住民の合意を図っていくということは非常に重要でございますから、基本理念におきまして「地域住民の意向を踏まえ、それぞれの地域の個性及び特色の伸長に資するよう、その多様な形成が図られなければならない。」と規定した上で、景観計画や景観地区を決定するための手続として、公聴会の開催等の民意を反映する手続を経ることを義務づけております。
 また、地域における良好な景観の形成について、より積極的かつ主体的に住民が参加する機会を確保するため、都市計画と同様に、景観計画についても住民やNPO等からの提案制度も設けているということでございまして、これらの制度が適切に活用されることによって、地域固有の特性に根差し、地域住民の合意に支えられた良好な景観がそれぞれの地域で形成されていく、このように考えているわけでございます。

○穀田委員 後半の方は形成される過程の話をしているんですね。ちょっと私、今の話を聞いていると、一体景観とは何かということを聞いているんですね。だから、形成される過程において住民の合意だとか、それは当たり前の話であって、後ろの方の話は少し違うんじゃないかと思うんですね、私の基本的な質問で。
 何で私、聞いているかというと、第二条の「基本理念」というのを見ますと、例えば三項に、今お話があったように、「良好な景観は、地域の固有の特性と密接に関連するものである」、こうした上で、「地域住民の意向を踏まえ、」とあるわけですね。そして、合意だとか根差したとかということを一生懸命局長は言うてはるんだけれども、その後ろの方、今から質問する話を先に言われても、ちょっと違うんだけれども。
 問題は、そこでやはり今合意ということをわざわざ言ってはった意味が私はあると思うんですが、地域住民というのは、意向を踏まえるというんじゃなくて、一体だれがそれでは良好な景観と判断するのかという疑問が出てくるから言っているんですね。
 それで、判断の基準については、今一番最初の方でお話があったように、こう言っていましたね、それぞれの地域の自然、景観、歴史、文化等の事情により、それは異なるのは当然だと思うんです。問題は、良好な景観を判断する主体はその地域で生活している住民であるべきではないか、ここを聞いているんです。それでいいんですね。

○竹歳政府参考人 なぜ外国でこういう景観に対する法律が前からあるのに日本でできなかったかというのは、まさに、良好な景観とはだれが判断するのかということで、国の法律で定められるかということについて非常に迷ってきたということだと思うんです。ただ、そういう中で、景観というのは地域地域でつくられていくものだということで、各地域で条例でやってきたわけですけれども、やはり条例では限界があるということで、地域から声が高まって、国がバックアップしてほしいということで初めてこの法律に踏み出したということでございます。
 したがって、地域の良好な景観、定義がないじゃないかということでございますけれども、まさにそういうことは地域地域で、公共団体、市町村中心でございますが、そういうものと地域の住民の方々がいろいろ考えてつくっていかれるものだ、こういうプロセスが非常に重要だということでございます。

○穀田委員 プロセスが重要なのは、それはわかり切ったことなんですよ。私は、そこで、この考え方の基本になっている法といいますか、それから計画というもの、御承知のとおり、美しい国づくり政策大綱、それから観光立国行動計画、都市再生ビジョン、こうなっているんですね。大体その三つが基本だと思うんです。
 そこで、今参考人からお話があった、地域という問題、あるというふうに言われていますけれども、私は、この三つを読んでみて、二つ共通している特徴があるなと感じるんです。
 一つは、歴史的な景観や自然環境が何ゆえに改変されてきたのか、私に言わせれば破壊されてきたのか、そういう分析が極めて不十分だ。何とかしなければならぬ、それはわかるんですよ。だけれども、なぜそうなったのかということが極めて不十分にしか私は思えない。
 それから二つ目に、生活のにおいがないということが私はあると思うんですね。つまり、景観というのは、何か建造物やその他という話じゃないんですよ。やはり、そこに住んでいる人があって景観があるんですね。私はそういう思想を持っています。だから、町並みや良好な自然だとか、農山漁村というけれども、そこ自身に本来生活がある。それがあって形成され、それが守られてきて、それが一体となって景観を形成しているという立場が大事だ、特に私はそう思っているんです。そこだけはちょっと指摘しておきたいと思うんです。
 そこで、第八条四項で、「景観計画」に、全国総合開発計画、各圏整備計画等、国の計画との調和が保たれるものでなければならない、こう書かれていますので、その点についての説明を求めたいと思います。

○竹歳政府参考人 今御指摘の景観法第八条四項は、景観計画は、国土計画等との調和が保たれたものでなければならないとしておりますけれども、この規定は、景観計画を定めようとする際、法律に基づいて既に先行的にいろいろな広域的な計画が定められております。その場合に、国土計画とかいろいろな地方計画とか、内容は、どこまで即地的、具体的か、景観計画とどういう関係になるのかということは、いろいろな計画ごとに異なってくると思いますけれども、先行的に法律に基づいて定められた広域的な計画と景観の計画というものは調和しなくてはいけないということが求められております。
 特に、より具体的なケースで考えますと、公共施設の計画について、国民にとって必要な公共施設と景観との調和を図るということが必要なわけでございまして、その公共施設に関する先行的な計画があるというときに、景観計画に景観重要公共施設として位置づけるということで、景観上よりよいものにするなどの配慮、こういうことができるようにしている規定でございます。

○穀田委員 私、この条項は少し、いろいろ問題があるんじゃないかと考えているんです。
 といいますのは、今、参考人は調和と言いましたね。広域的な計画が先行しているものがあるから、それとの調和が必要だ、こう来ます。
 そこで先ほどの私が言った反省がないというところに出るわけなんですね。つまり、今まで、国づくりの方針や計画が必ずしも自然環境や景観を守ることになっていない。この間、ずっと私どもこの国土交通委員会で道路問題を議論してきました際に、私はそういう立場から物を言ってきたことは御承知だと思うんです。
 国づくりというマクロで考えた場合、私がこの間指摘してきたのは、五全総に言う二十一世紀の国土のグランドデザインなど、いわば高規格幹線道路建設や大規模開発計画を中心にした国土計画が基本に据わっているのが今の現状と違うか、これでよいのかということが随分いろいろ問題になっていて、参考人の方々も含めて、そこまではいろいろあるけれどもという前提つきでいろいろ話をしてきたわけですよ、この間。
 そうしますと、私は、調和というのではなくて、ある意味では、地域の景観計画と国の計画の双方が歩み寄り、調整するという考え方が筋ではないかと思うんですね。何か調和したら、要するに、何とかしてくれというんじゃなくて、やはり、今の新しい考え方のもとで、前のそういう先行計画も含めて、それは、公共施設の計画についていろいろ議論するのは当たり前ですよ。そうじゃなくて、そのような計画全体についても、そういう調整という角度で物を見る必要があるんじゃないかということを言っているんです。それはいかがですか。

○竹歳政府参考人 公共施設の問題でございますが、公共施設、むだな公共事業をやらないということで、効率的、効果的な社会資本整備を進めるということを行っているわけでございますが、結局、そういう公共施設によっては、広域的な効果があるもの、市町村だけではなくて都道府県、地域全体に効果のあるものがございます。それは一つの公益でございます。また、景観ということで、身の回りの景観というのも一つの公益ということがありまして、これは両方の公益の調整の問題になると思います。
 なお、一般論として申し上げますと、景観法という基本的な法律が制定されたわけでございますから、国土計画や地方計画等におきましても景観というのが従来以上に重要なものになって、いろいろな機会をとらえて、そういう観点からの見直しということも行われているものではないかと思います。

○穀田委員 そういう方向、つまり、新しい考え方をとっているわけですから、そういう意味でいいますと、私がこだわっているのは、何も調整と調和という言葉にこだわっているんじゃなくて、今の景観というものを、新しい角度から物を見るという、新しい意味からの再検討というのは必ず必要になるよということを言っておきたいと思うんです。
 もう一つだけ聞いておきたいと思うんです。住民の計画段階での参加の権利について聞きたいと思うんです。
 景観計画策定の手続、第九条では、「あらかじめ、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。」一等最初に参考人から説明がありましたけれども、同条七項において、手続に関して、「条例で必要な規定を定めることを妨げるものではない。」とあるけれども、この条文は都市計画法の十六条並びに第十七条の二と同じ表現であって、どこに住民の計画参加の権利が明示されているのか、お示しいただきたい。

○竹歳政府参考人 住民参加の権利がどこにあるのかとおっしゃいますれば、それは、第九条のやはり一番最初のところに、「公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」と義務づけているわけでございますから、これほどの住民参加の権利の確保はないと思います。
 それから、御指摘の、手続に関する事項について条例で必要な規定を定めるというのは、先ほど来から申し上げておりますように、いろいろな補完的な手続を地域地域の状況に応じて定めていいですよと書いてあるわけでございます。

○穀田委員 そう言われると言いたくなるんですよね。これほどのことはないと大見え切っている話じゃないと言っているんですよ、だったら。そういうふうに言うと、わたしもちょっとかちんとくる。
 というのは、九条の問題というのは、計画策定の段階を言っていまして、私はそこを問題にしているんですよ。大臣、そこだけちょっと、最後に聞いておいてほしいんですけれども、都市計画法のもとで、住民の計画参加の権利というのはなかなか現実は機能していないという経過があるんですよね。そこを私は今の実態問題から言っているんですよ。そうすると、同じ条文ではさして前進が見られないじゃないかと問題提起しているんですね。
 それは、先日、圏央道の地裁判決がありました。内容は、道路計画そのものに違法性を指摘したものでして、国は、この間大臣とやりましたように、控訴して、それはやっていますよ。でも、意見の違いはあっても、お上がつくる計画に対して、住民の意見は一応聞くけれども、計画はそのまま実行する、こういう上意下達のあり方そのもの自体が問われる時代になっているんじゃないか、そういう流れを踏まえる必要があるんじゃないか、私はそういった角度から物を言っているんですよね。何も胸張ってこう言って、じゃ、こういう現在の都市計画法のもとで本当に意見を聞いてやってきたか。それじゃ、何も起こらなかったはずなんです。
 そうじゃなくて、いろいろなこと、訴訟が起きたり、住民要求が起きたり、いろいろなそごが起きているから、こういう問題について、景観法という新しい問題があったときには、計画策定の段階以前からそういうことをきちっと聞くという必要があるんじゃないか、そういう立場から物を言っているので、私は、一層住民参加を明確に認める内容にすべきじゃないかという点について、もし大臣の御意見があれば、お聞きしたいと思います。

○石原国務大臣(国土交通大臣) 法定主義でございまして、そういうふうに書いてあることに対して、それで十分であるか不十分であるかという議論に尽きるのではないかと思っております。

○穀田委員 終わります。