国会会議録

【第159通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2004年3月17日)

本日の会議に付した案件
 国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律案(内閣提出第五三号)

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○赤羽委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 私は、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律、この条文に則して若干まず最初にお聞きしたいと思います。
 この法案は、〇一年九月のアメリカでの同時多発テロを受けて、海上での保安対策の強化を目指したSOLAS条約の法制化だ、端的に言ってそういうことだと思うんです。海上でのテロ対策全般を対象にした法案ではないと思いますが、本法案は、どのような保安対策、テロ対策を目的にしているのか、まず最初にお聞きしたいと思います。

○矢部政府参考人(国土交通省政策統括官) お答えを申し上げます。
 二つございまして、一つは、直接船舶あるいは港湾施設に対して危害を与える危害行為でございます。したがいまして、これは、爆発物を持ち込んで直接船舶を爆破する、あるいは港湾施設に危害を与える、こういったものが想定されると思います。
 二つ目は、直接船舶あるいは港湾施設に危害は加えませんけれども、間接的にテロ行為につながるようなものを危害行為として考えておりまして、これは、船舶にテロリストが侵入するとか、あるいは武器弾薬が不法に積み込まれる、こういった行為を想定しております。

○穀田委員 今、最初に船舶と港湾という話がありましたけれども、この法案によって船舶と港湾施設について保安対策がこれまでとどのように変わるのか、これも端的でいいです。

○矢部政府参考人 お答えを申し上げます。
 まず、船舶につきましては、先ほど来議論になっております海上保安庁に通報いたします船舶警報装置の設置が義務づけられます。それから、保安の責任者というものをあらかじめ選任をしていくということが義務づけられますし、また、船上で講ずべき保安措置につきまして、あらかじめ計画をつくってこれを実施するということが義務づけられます。
 港湾施設につきましてもほぼ同様でございますけれども、設備につきましては、港湾施設の保安を確保するためのフェンスあるいは照明、監視装置といった設備の義務づけがございまして、あと、保安計画をつくり実施するということと責任者を選任しておくということは、船と同じでございます。

○穀田委員 今、フェンス等いろいろな港湾でいうと施設をつくるわけですが、問題は、例えば港湾の保安体制に関して、SOLAS条約に基づく海事分野の保安強化は当然世界共通でなければならないと思うんですね、それによってチェックをお互いにするわけですから。各国のそういう世界的スタンダードといいますか、基準といいますか、どうなっているのか。
 そして、その際、日本と外国の港では同じものだと言えるのかどうか。特に日本に向けて出港してきた、相手国、当然その港を出てきますよね。その出てきたときに、世界的基準を守っているという保証はあるのかどうか、それをどうやって担保するのか。
 そういう点が、日本の港湾をこういうふうに改善し、対策を打つということはわかるんですが、それがSOLAS条約に基づいて世界的にはどうなっていくのかというあたりについて、今言った点をお答えいただければと思います。

○矢部政府参考人 お答えを申し上げます。
 ただいまの御質問は、世界の港湾施設につきまして、基準が完全に統一されないのではないかという御質問だったと思いますけれども、この条約は、先ほど申しましたように、保安対策を講ずる上での基本的な枠組みを決めておりまして、その枠組みに基づいて、かつ、具体的に実施すべき保安措置の内容も、できる範囲きめ細かく、条約に添付しております強制コードに記載をされております。
 各レベルに応じてどういう対策をとるかということがある程度細かく定められておりまして、その範囲で国際的な基準の統一というものが図られるわけでございまして、世界のそれぞれの港がどのようなレベルで対策をとっているかということにつきましては、それぞれの港湾の保安評価というものを行って、要するに危険の評価を行いまして、それに基づいて対策をとるということでございますから、必ずしも外から見た場合に、物理的にといいますか、全く同じことをやるということにはならないわけでございますが、各港湾のある国が責任を持って保安対策が十分にとられているかどうかということを評価して国が承認をするということになっております。
 そして、この承認をされた港につきましては、国際海事機関、IMOの場に、どの港が国としてきちっと評価をしたかということが通報されまして、そのIMOを通じて世界の各国にすべての情報が行き渡ることになりますから、日本に入ってくる船がどの港を経由してきたかということがわかれば、安全な港に寄ってきたのか、あるいは安全でない港も経由してきているのかということがわかります。
 したがいまして、その入港に際しましては、そういった前の寄港地に関する情報をあらかじめ保安情報として入手いたしまして、まず判断をし、必要があればさらなる質問や立入検査を行って、入港規制をして、日本に入ってくる船舶についての保安面からの安全性をチェックする、こういうことになるわけでございます。

○穀田委員 最後の方はいいんですよ。そうじゃなくて、前の方だけで、後ろは全然、ちょっと違う問題なんですよね、それは質問していないんですけれども。
 そこで、法案の第四章にある国際航海船舶の入港に係る規制について聞きたいと思うんです。
 現行の海上保安庁法には、すべての船舶を対象にした同趣旨の条文があります。例えば海上保安庁法の第十七条と十八条では、所管する法令の励行や犯罪の予防、海上安全の確保のために必要があるときには、立入検査を行うことができる。また、人命への危害などの犯罪や爆発などの危険な事態の発生が認められる場合には、停船や出港停止などさまざまな強制措置をとることができるようになっています。
 本法案による入港に係る規制は、現行法に比べて何がどう変わるのか、この点は大事だと思うので、明らかにしていただきたいと思います。

○深谷政府参考人(海上保安庁長官) 御説明を申し上げます。
 今先生御指摘のように、海上保安庁法では、一般的に、海上保安官が不審な船舶を発見した場合、そういったような場合には、今御指摘の同法十七条により船舶に立入検査を行いまして、犯罪が行われることが明らかというふうなことが認められるような場合、もうちょっと具体的に申し上げますと、海上保安庁法十八条では、海上における犯罪がまさに行われようとするのを認めた場合、あるいは人の生命ですとか身体あるいは財産、こういったことに危険あるいは損害が及ぶおそれがあって、それが急を要する、こういうふうなときに、これを防止するために同条の規定に基づいて船舶に航路の変更をさせるなどの措置がとれるというふうになってございます。
 一方で、今先生御指摘の第四章でございますけれども、ここにおきます措置は、SOLAS条約の改正を受けまして、外国から我が国の港に入港しようとする船舶を網羅的に審査し、危険な船舶が我が国に入港することを防止する仕組みを設けようというものでございます。
 そのため、具体的には、入港船舶による事前入港通報制度、これを新たに設けまして、例えば保安措置を適確に講じていないために危険を生じさせるおそれがあるかどうか、この有無を確認するための立入検査権限といったものを第四章に規定しておりまして、したがいまして、立入検査等を忌避した船舶につきましては、入港も禁止ができるというふうなこと。また、危険のおそれが認められるなど一定の場合につきましては、船舶に対する入港禁止等の強制措置をとることができることとされているような差がございます。

○穀田委員 いろいろありましたけれども、要するに一連のプロセスが入ってきたということなんですよね、それをちょっと言ってほしかったんですけれども。
 次に、二つ目の大きな問題として、この埠頭施設での保安施設の整備費について、負担問題について一言だけ、一つだけ質問したいと思うんです。
 これは結構巨額な費用がかかるんですよね。それで、今年度補正予算では事業費が四百十五億円、そのうち国費が二百三十二億円となっています。ただ、昨年の夏ごろは総額一千億円という金額もいろいろ取りざたされていました。これは、実際やるのは六十八の港なんですけれども、特に私、聞きますと、県とか市でやっている場合はいいんですけれども、単独で市でやる場合はとても大変だということで、例えば小樽では、SOLAS関連で小樽港の保安施設設備で実質的に一億八千万の負担が生まれる。あわせて、維持費等のランニングコストなどで一億円近くかかるんじゃないかと心配されている模様で、議会でも議論になっています。
 小樽の港は小樽市だけが管理者で、すべて小樽の負担になるわけですよね。それで、そもそもこの小樽市は、国の地方交付税の削減でこれ以上切り詰められない事態に追い込まれて、問題になっています。その中で出費がふえるのというのは、実は北海道の意見書がありますように、突然これが出てきたという問題を指摘していまして、それは、意見書があることは当局も御存じだと思うんですが、非常に苦悩している。
 だから、もともと国の全額負担で、テロ対策ですから、ある意味では全額でやってくれるんだろうと思っていた節もあるわけです。したがって、こういう実情を十分に考えて、こうした小さい自治体に対しては特別の財源手当てを含めた措置を考えるべきではないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

○鬼頭政府参考人(国土交通省港湾局長) 港湾施設の保安設備の設置につきましては、今委員からお話のありましたように、今年度の補正予算において手当てをさせていただきました。その手当てに対して、当然港湾管理者の負担分も出てまいりますが、それにつきましては後ほど地方交付税で対応するようなことになってございますし、さらに、維持、運営のコストにつきましても十六年度から普通交付税の基準財政需要額に算入をするというような形で、我々としてはできる限りの財源措置を講じたつもりでございます。

○穀田委員 それは、確かにそういうことを言っているんですけれども、補正予算で措置するという後にでも、実は北海道の道議会は、やはりきちんとしたことをやってほしいとわざわざ言っているんですよね。
 あわせて、私は、今問題になっている小樽の点について最後に一言だけ言わせていただこうと思うんですけれども、小樽港というのは市の有力な観光資源であり、市民の財産です。地元にお聞きしますと、第三埠頭が対象となると言われています。
 ここの第三埠頭というのは、大体ロシア船が八割ぐらい入ってくる。そして、近辺全体は都市計画の計画もあって、それに対する影響もどうなるかと考えているということもあるそうです。しかも、ここがフェンスで囲まれたり監視カメラで監視されることになれば、貴重な財産や資源の維持に支障を来すんじゃないかという心配も出ている模様です。したがって、そうならないような調和のとれた保安施設となるような工夫もこれは大事だと思うんですね。
 ですから、港々、それからそれぞれの地方自治体の財政やそれの負担の状況、こういったものを加味しながらやらないと本物にならぬと思うんですね。こういう点は、とりわけテロ対策ということで大事な問題ですから、なおかつ、そういうことも配慮してやることが私は必要じゃないかと思うんです。その点だけお聞きして、私の質問を終わります。

○鬼頭政府参考人 先ほど御答弁をいたしました地方の負担分については、交付税の措置ではなくて、起債の措置が認められているということですので、おわびをして訂正させていただきたいというふうに思います。
 それと、今委員のお話のありました利用に障害が出るのではないかという御指摘につきましてでございますが、今回設置をいたしますフェンスにつきましては、港全体を囲うということではなくて、国際航海船舶が一定程度以上利用する埠頭において必要最小限の区域を限定してフェンスを設けるということでございます。
 したがいまして、今回、この法律におきまして義務づけることとしております保安対策につきまして、港湾の保安を確保するとともに、あわせて、当該港湾を安全に利用していただくという観点で必要最小限のものだというふうに私どもは考えておる次第でございます。

○穀田委員 今お話ししたように、やはり実際の実情というのをよく考えてこれはやらないとだめだ。
 財政の方も、先ほど言おうと思ったんですけれども、みずから訂正されましたのでいいですけれども、現実はなかなか厳しいんですよね。
 だから、それなりの出費というのは、突然これは来ているわけですから、現実は。しかも、今お話があったけれども、小樽港の場合は第三埠頭なんですよ。現実、私はわかっているわけですから、そういう点もよく考慮してやっていただきたいということで、終わります。

○赤羽委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

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○赤羽委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕