国会会議録

【第159通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2004年3月12日)

本日の会議に付した案件
 奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)

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○赤羽委員長 穀田恵二君。

○穀田委員 硫黄島の墓参の宿泊施設問題について、まず質問します。
 九四年の三月二十九日に、我が党の上田耕一郎議員は、硫黄島の墓参者用の宿泊施設の建設を提起しました。つくられたということは本当に喜ばしいことだと思います。
 宿泊施設の利用状況についてお聞きしたいと思います。

○竹歳政府参考人(国土交通省都市・地域整備局長) 硫黄島の旧島民の方々がゆとりを持って島を訪れる機会を提供するという観点から、小笠原村が建設、施設として、平成十四年六月から、硫黄島平和祈念会館ということで供用を開始しております。
 この施設は、墓参事業のほか、厚生労働省主催の戦没者の遺骨収集事業や旧島民の墓地である平和祈念公園の管理のために島を訪れた方々に利用されており、平成十四年度は八十三名、平成十五年度は六十二名、延べ百四十五名の方々に御利用をいただいていると伺っております。

○穀田委員 当時、私どもが問題にしましたのは、硫黄島の帰島促進協議会の墓参は、現地での墓参などの行動に実際上制限が加えられちゃう、そして、在島時間がわずか二、三時間程度だということになるわけなんですね。
 今お話があった数字は、多分船で行く方々の数字だと思うんです。問題は、今お話ししたように、帰島促進協議会の墓参、こういう方々が二、三時間しか島にいることができない。特に、墓参者にすれば、自分たちの先祖や肉親あるいは同僚、こういう方々が眠っておられる土地で少しでも一緒に過ごしたい、さらには、年配の方もおられるでしょうから、今お話があったように、ゆとりといいますか、余裕を持って一緒にいたいという気持ちがあるんだと思うんです。
 だから、せっかく建設したのだから、そういう方々も含めて泊まれるように援助すべきだと思うのは当然だと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。

○竹歳政府参考人 硫黄島の旧島民の方々で構成されております硫黄島帰島促進協議会の皆様の施設の利用状況でございますが、協議会として利用されたことはないようでございますが、個々には、平成十四年度は五名、平成十五年度には一名、それぞれ施設を利用されたと聞いております。

○穀田委員 それは当然ですよ。みんなが行くときに、船で行く人の中にいるということは事実なんですよ。だけれども、東京都が出している飛行機で墓参をするというのがたくさん行っているわけでして、そういう方々が、十年前に八千名を超える方の署名を集めて、そういうことをしようじゃないかと提起して、そういう方々が依然として使われていないという実態なんですよ。だから、そういうことに対してもまともに援助をしたらどうだと言っているんです。
 大臣、ここら辺は極めて政治的決断の問題なんですよ。一言、大臣。

○石原国務大臣(国土交通大臣) 実態につきましてはただいま局長からお話をさせていただきましたが、旧島民の皆様方がさまざまな理由においてこの施設を有効に利用できるように推進してまいりたいと考えております。

○穀田委員 一般論はそうなんですけれども、要するに、飛行機で四十名、五十名、毎年春と秋に行っているわけで、それは泊まれていないよといった話をしているんですよ。それは大臣御存じだと思うんです。
 「硫黄島開拓之碑」、その碑文にはこう書いてあるんですね。
  昭和十六年十二月八日太平洋戦争勃発
  大戦の激化とともに、豊かで平和な地は本土防衛の最前線となり、昭和十九年住民は強制疎開を余儀なくされ、父祖の地は玉砕の島となった。
  硫黄島の日本領土編入百年にあたり、島の開拓に勤しんだ先人の功績を讃えるとともに、いまだにかなわぬ帰島の夢を託し、この碑を建立する。
とある。この気持ちをわかっていただいてそういうことをすべきだということを改めて申し述べておきたいと思います。
 次に、振興開発の手法について聞きます。
 奄美群島、小笠原諸島というのは、御承知のとおり、本土から遠いという地理的条件、また自然的条件の厳しさを考えても、自立的発展のためにさまざまな支援は継続していく必要はあると思うんです。問題は、その手法なんです。
 本改正案は、当該市町村、村が振興開発の案を作成するというように、地元の自主性を最大限尊重するということをうたっています。私どもはこの問題を議論する際に、五年前も参議院で提起しまして、奄振の延長に向けて地元の市町村がつくった要望書案には、具体的な措置として、特定優良賃貸住宅などへの特別助成、定住促進助成金制度、消防・防災設備整備、含みつ糖確保対策事業などが盛り込まれていたけれども、上がる過程で軒並み削られてしまったという経過を指摘しました。こういうことがあっては絶対ならないと思うんですね。やはり、地元に密着し、実情をよく知っている方をあらゆる場に配置することが私は大事だと考えています。
 その点で、この法律にもあります審議会と、そのもとにある実務レベルの幹事会に地元の代表をきちんと入れるべきではないかと思うんですが、その辺の見解を伺いたいと思います。

○竹歳政府参考人 地元の問題についてだから地元の方を入れるというお話でございます。
 現在、奄美の審議会におきましては、大島郡の町村会長さん、それから奄美群島出身者、居住者である民間の方に入っていただいております。それから、鹿児島県の知事、議長さんにも入っていただいております。小笠原につきましては、小笠原の村長さん、議長さん、それから、小笠原諸島での勤務経験のある民間の方に入っていただいておりまして、地元の御意見が、こういう計画づくり、法案づくりの参考になるように、十分御意見を伺っているところでございます。

○穀田委員 それは知っているんですよ。だけれども、今、局長お話ありましたけれども、幹事会の名簿には、全部役所の人間だけですよ。都合のいい話だけせずに、幹事会も私言ったわけだから。幹事のところは、全部そういう役所の方々だけですよ。
 そして、地元の問題だから地元の人を入れろという趣旨で言ったんじゃないんですよ。自主性を尊重しようと思うと、地元の市町村が言った話が県で軒並み削られたという経過もある、そういうことからしたらだめなんじゃないかということをまず私は一つ提起したんです。
 その上で、審議会の役割というところで、今度の法でいいますと、開発計画の前に基本方針というのをつくったんですね、新しく設置したんですよ。その中に、大臣はこの審議会の議を経ることが条件となっているわけなんですね。これほど重大なんですよ、この問題は。だから私は、そういうところにきちんとした方々を、もちろん、今お話あったように、鹿児島県知事や県議会議長、それから村会議長は入っていますよ、村長も入っていますよ。だけれども、今わざわざ、今度の法改正に対する提案の中で、何度も言っているように、農業の問題それから漁業の問題、地域や地場産業という問題を、あまねくこれは自立的発展に欠かすことができないということで、そういう項目を、前回そして前々回は配慮規定ということでわざわざ入れたわけでしょう。そういうものを、実際に言っている人たちを入れるべきじゃないかということを私は言っているんですよ。
 だから、少なくとも、政府関係の官僚がほとんどを占めている審議会の幹事会については、せめて、そういう農業や漁業、さらには自然環境という問題を含めたところをできるようなところに置くべきじゃないか、そういう抜本的な改革が必要じゃないかということを私は言っているんですが、いかがですか。

○竹歳政府参考人 お答えいたします。
 幹事会には、鹿児島県の教育長、総務部長、企画部長それと大島支庁長という方で、地元の方も入っていただいております。そして、大事なことは、審議会がメーンでございまして、幹事会はいろいろな行政とのつなぎとか連絡役でございまして、十分私どもとしては、地元の御意見は反映させ得るものだと考えております。

○穀田委員 メーンは審議会というのはわかっているんですよ、そんなこと。だけれども、今までの経過からすれば、市町村から出る要望案について県がけっているという事実がある、そういうことを指摘したのが前回なんですよ。そういう問題をやろうと思うと、必ず審議会の前に幹事会もやられて、いろいろ調整も行う。そういう、一番つくり上げていくプロセスに大事なところに入れるべきだと言っているんです。そういうことを改めて言っておきたいと思います。
 あと二つだけ言っておきたいと思うんです。
 私は、今度の法改正の中にも、その精神というのは、自立発展に欠かせないソフト面の支援というのが今度の法案としても大事な問題だと思うんです。今まで、ハード中心、公共事業優先の支援だけでは自立支援にならないと私どもは考えています。
 例えば奄美でいえば、和泊港の一万トンバースだとか名瀬港の防波堤だとか、さらには和瀬トンネルだとか地蔵トンネルだとか、鹿児島県内のトンネルの半数が奄美大島に集中しているという実態があるんですね。ですから、どう考えても、いろいろな点で、住民から見てもむだではないかという意見が出ているのが現実です。
 当時、質問をしますと、関谷大臣は、今までは公共事業といいましょうかハードの面が非常に多かったわけでございます。今後はそういう域を脱しまして、ソフト面といいましょうか、例えば交通・情報通信体系の一層の整備だとか生活環境の改善、社会福祉、保健医療の充実、そしてまたリゾート、観光というものに力を入れていきたい、こう言っているんですね。だから、この五年間、住民生活に密着、直結したどういう成果があったのかということをお聞きしたいと思っています。
 最後に、私は小笠原の問題についても一言だけ言っておきたいと思うんです。不在地主の問題なんです。
 これは、資料をいただきましても、小笠原の島では不在地主が島の全体の面積の半分以上を占めているんですね。これは時がたてばたつほど、現実はその不在地主の方々の、掌握しにくくなる、権利関係が複雑になっていく、そういう問題は何度も私ども指摘してきました。
 ですから、どこが一番問題になっている点かといいますと、やはり島の振興対策によって土地の利用がなかなか困難になるという問題があります。しかし、これは都や村もいろいろ努力しているんですが、結局はこれはもともとどこに発端があったかというと、強制疎開という問題があるわけなんですね。ですから、国の責任は免れないわけですよ。しかも、この問題は五年たびに私どもは質問しているんですが、杳として解決をしないでずるずる来ている。
 ところが、もはやこれは次の五年を待っているわけにはいかないという問題意識を私どもは持っています。だから、抜本的な解決のための道を開くべき時期に来ている。ですから、私は、どのような解決策を持って臨んでいるのか、この二つだけちょっとお願いしたい。

○竹歳政府参考人 まず、奄美の振興開発について、どういうようなソフトな政策を推進してきているかということでございます。
 幾つか申し上げますと、例えば医療の確保につきましては、これは配慮規定が設けられたわけでございますが、県立大島病院、群島内診療所との間の医療情報ネットワークの構築が行われております。この結果、平成十年度からは、画像連携装置を新たに配備するなどして、群島内のネットワークが構築されてきているということが一つございます。
 それから、高齢者の福祉の増進という点では、加計呂麻島の特別養護老人ホームや、徳之島町、与論町の地域福祉センターなど福祉施設の整備が進められ、平成七年十月から名瀬市で二十四時間ホームヘルプサービスが開始されているというように、配慮規定に、立法趣旨に沿いまして、政府として各方面のソフトな対策を充実させてきております。
 次に、小笠原の不在地主問題でございます。
 先生御指摘のとおり、強制疎開ということで、その後も二十余年間も帰島ができなかったということで、不在地主の土地が大変多く存在しております。特に農業適地の半分が不在地主だということなので、この活用ということも非常に重要でございます。
 そこで、国土交通省では、土地の実態調査に対する補助を行うなどして、地元の取り組みに対して支援を行ってきております。
 また、農用地利用集積計画ということで、実は、本土から新しく小笠原に移住されて農業をされるというようなこともございまして、平成九年に、五十八ヘクタールあった遊休地のうち、五年間で新たに五・二ヘクタールが、新たに不在地主の問題が解決されて利用されているということでございます。
 この問題、土地登記簿等がなくなっていたりして大変難しい問題でございますけれども、今申しましたように五年間で進歩もしているということで、地道に我々もこの努力を続けてまいりたい、このように考えております。

○穀田委員 終わります。

○赤羽委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

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○赤羽委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

○赤羽委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

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○赤羽委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、衛藤征士郎君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。室井邦彦君。

○室井委員 ただいま議題となりました奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。
    奄美群島振興開発特別措置法及び小笠原諸島振興開発特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。
 一 奄美群島振興開発基本方針及び小笠原諸島振興開発基本方針については、地元の創意や工夫が十分に発揮できる内容となるよう留意すること。また、奄美群島振興開発計画及び小笠原諸島振興開発計画についての協議では、都県が作成した計画内容を十分尊重すること。
 二 地元の意志を地域振興に反映させるため、地域住民、関係団体等多様な主体の積極的な参画の下で奄美群島振興開発計画及び小笠原諸島振興開発計画が策定されるよう十分配慮すること。
 三 地域の個性と魅力を生かした自主的かつ主体的な振興開発に資するため、その担い手となる人材の育成に関する施策を積極的に支援すること。
 四 奄美群島の特性に即した産業の振興を図るため、大島紬等地場産業の育成に努めるとともに、自然環境の保全にも留意しつつ農林水産業、観光・リゾート産業等の開発・推進及び流通の改善に資するよう、ハードとソフトを一体的に活用した総合的・戦略的な施策の展開に特段の配慮をすること。
 五 奄美群島振興開発基金の独立行政法人への移行に当たっては、自律的かつ効率的に運営を行うという独立行政法人制度の趣旨が十分発揮されるよう、その運用に万全を期すとともに、産業の振興のために必要な業務が確実に行われるようその充実強化に努めること。
 六 小笠原諸島の産業の振興を図るため、観光産業を中心とした産業間の連携を強化するとともに、自然環境の保全にも留意しつつハードとソフトを一体的に活用した総合的・戦略的な施策の展開に特段の配慮をすること。特に、平成十七年春に就航が予定されているTSLを最大限活用した観光振興を図るとともに、空港整備等本土との交通利便性の確保に努めること。
 七 振興開発事業については、沖縄との均衡を考慮しつつ、本土等との格差の是正のための対策を講じるとともに、財政の弾力的支援など自立的発展を支援するための施策を講じること。
以上であります。
 委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

○赤羽委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

○赤羽委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。