国会会議録

【第159通常国会】

衆議院・予算委員会
(2004年1月26日)

本日の会議に付した案件
 平成十五年度一般会計補正予算(第1号)
 平成十五年度特別会計補正予算(特第1号)
 平成十五年度政府関係機関補正予算(機第1号)

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○笹川委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 本日、小泉内閣は、先日の航空自衛隊派遣命令に続いて、陸上自衛隊本隊、海上自衛隊のイラク派兵、派遣命令を下そうとしています。今なお戦争状態にある他国へ武装した自衛隊を派兵するという道に戦後初めて踏み込むものです。
 私たち日本共産党は、この自衛隊のイラク派兵が日本国憲法の平和原則を破壊し、平和の国際秩序を願う世界の大勢に逆行するものであり、直ちに中止することを要求したいと思います。
 政府が自衛隊のイラク派兵を強行しようとするもとで、改めて、イラク戦争の正当性、この戦争の大義、戦争を行うことの理由はあったのか、根本問題が問われています。
 総理は、昨年三月二十日に開始されたイラク戦争に際して、イラクが大量破壊兵器を保有していると繰り返し断言し、そのことを戦争を支持する最大の理由としました。ところが、現在に至るも、大量破壊兵器は発見されていません。
 一昨日、この問題にかかわり、アメリカで重要な証言がありました。イラクで大量破壊兵器を捜す米調査団団長であったデビッド・ケイ氏が、聞き取り、文書、実地調査に基づく捜索活動の結果、イラクに大規模な兵器生産があったという物理的証拠は見つからなかった、もともと存在しなかったと明言したことです。
 ケイ氏の発言は、イラク戦争を始めた最大の理由であった大量破壊兵器の存在を根本から否定したもので、米英が始めた戦争の出発点そのものを問う非常に重大な発言だと私は思います。
 小泉総理は、昨年三月、イラクが大量破壊兵器を持っており、フセイン政権がこれらの兵器を廃棄する意思がない以上放置できない、だからアメリカの決断を支持する以外に解決の道はないとメールマガジンにはっきりと述べられました。イラクの大量破壊兵器保有を断定し、アメリカ、イギリスのイラク戦争開始を支持してきました。ケイ氏の発言は、総理の言明を根本から覆すものだと思います。
 総理は、みずからイラクは大量破壊兵器を保有していると断定してきたことの誤りを率直にお認めになりますか。

○小泉内閣総理大臣 認めることはいたしません。
 先ほども答弁いたしましたように、イラクは、過去、大量破壊兵器を使用しておりました。なおかつ、国連の決議によって、大量破壊兵器を持っていないことを立証せよという国連決議に対して、全く無視して、愚弄してきました。そういうことから、私は、このフセイン政権が大量破壊兵器を持っていても不思議ではないと考えるのは自然なことだと思っております。
 現在もイラクの監視グループが捜索を続けております。今後も注視していきたい。そして、日本がイラク戦争を支持したということは、国連決議にのっとって支持したわけであります。

○穀田委員 アメリカ、イギリスのイラク攻撃は、国連安保理の承認したものではありません。それは、最終盤の、アメリカが武力行使を行う際に当たって新たな決議を用意したことで既に明らかです。
 問題は、国連安保理の多数が反対をし、しかも、国連安保理決議一四四一などは、イラクの大量破壊兵器疑惑を明らかにするために査察を決めたものであります。そして、国連の査察の継続を議論している最中に一方的にアメリカが開戦に踏み切ったわけであります。今、総理はそのことを何度も繰り返していますが、注視したいということで済まされる問題では決してありません。
 国連のアナン事務総長は、ケイ氏は経験豊かな査察官である、以前に国連でこの問題に取り組んでいた、したがって、彼の報告や発言は重く受けとめるべきだと述べています。
 私は、総理がこの問題について、あると断定したところを聞いているわけです。したがって、重く受けとめて、このことをどう考えているのかということをお聞きしているわけです。

○小泉内閣総理大臣 今も申し上げたとおり、支持は正しかったと言っているんです。

○穀田委員 総理、私が聞いているのは、最初に言いましたよね、あなたは、その保有を断定をして、断言をして、だからこのイラク戦争を支持するのだと、メールマガジンでも二度も明言されているんです。保有をしていると断定した根拠を我々は何度も聞きました。あなたも今おっしゃったように、国連決議が支持しているとかなんとかいう話をしているが、実際に、あるということについて、いまだにあなた自身も確かめられていない。それは、先ほど言いましたように、こう言っていましたよね、今後も注視したいと。注視したいで済む問題じゃないということを私は言っているんですよ。しかも、イラクが大量破壊兵器を保有しているということまで、それを根拠にして言ったことを私は今繰り返し言っているんです。
 また、では違う話をしましょう。
 パウエル国務長官は、あの一年前に、この問題が議論になったときに、わざわざ一時間半も、この問題について、証拠があるということを言いましたよね。そして、テレビも使って、大きな画面も使って、その証拠写真も出して、やりました。それは御承知のとおりです。あのときに、その安保理の公開討論で、イラクが生物兵器を持っていることは疑いないと断言したんですよ。その方が、そういういわば全世界に対して断定した当事者が、今の段階で、昨年の三月の開戦時にイラクに大量破壊兵器があったのかなかったのか疑問のまま残っている、未解決のままだと述べているんです。
 その今のパウエル、断定して証拠まで示した方が未解決だと言っている問題について、あなたもそういう立場に立つのですか。

○小泉内閣総理大臣 未解決だということは事実です。しかし、当時の状況を考えて、過去にイラクが大量破壊兵器を行使した、使った、これは事実。大量の人間を殺害した、これも事実。なおかつ、国連の決議によって、イラクは大量破壊兵器を持っていないということを立証しなければならなかった。国連の決議を無視したことも妨害したことも事実。そういう状況を考えれば、私は、持っていると当時パウエル長官が考えても不思議ではないと。今、未解決、持っていないとも断定できない、持っているとも断定できない、だから、イラク監視グループが今捜索しているのを注視していると言っているんです。
 なおかつ、日本が支持したのは、国連決議にのっとって、国連憲章に合致するから支持したんです。今でも正しかったと私は思っております。
 また、イラクがこのまま国連決議を無視してフセイン大統領は健在だった場合にどういう可能性になったか、これも考えなきゃいかぬ。

○穀田委員 話を広げちゃいけませんよ。
 しかし、今、あなたは重要な発言をしました。未解決だったということは事実だとおっしゃいましたね。だとすると、あのときに保有を断定したということは間違いだったということになるじゃありませんか。明らかじゃありませんか。
 今お話ししましたよね、パウエル国務長官は、いいですか、生物兵器を持っていたかなかったのか疑問のまま残っている、未解決の問題だ、つまり、当時あったかなかったかわからないということを言っているんですよ。あなたは断定したんですよ、保有を。それは間違いだったということを認めなさいよ、それじゃ。

○小泉内閣総理大臣 将来見つかる可能性もある。今、全くないと断定はできない。

○穀田委員 しかし、今お話あったように、将来見つかるかもしれないという発言は、二つの点で問題だと思います。
 今、未解決をお認めになった。つまり、当時はあったかなかったかわからなかったということなんですよ。そして、今後も今の時点ではわからないということなんですよ。それが私は大問題だと思います。
 つまり……(発言する者あり)それね、私はないと断定しているんじゃないんですよ。あなたがあると断定した問題で、戦争に突っ込んでいった。しかも、当時、イラク戦争の開戦を前にして、国連、国際社会で一体全体何が問題になっていたかということなんですね。
 今、総理もおっしゃいましたが、そういうイラクが大量破壊兵器を持っているんじゃないかという疑惑に対して、国連の査察を継続するべきか、そして、それを継続すべきだという方が国連では多数だった。しかも、ブリクス委員長は、あと数カ月あればその査察は完了すると国連に報告していた。ところが、アメリカとイギリスは、イラクが大量破壊兵器を持っている、そして、それを隠ぺいしていると。
 ブッシュ大統領は、開戦の演説の中でそのことを言っています。「イラクが最も破壊的な武器の幾つかを保有し隠ぺいし続けていることは疑いがない。」彼も、「疑いがない。」こう言って戦争に行かざるを得ない。しかも、「イラクの支援により手に入れた生物化学兵器や核兵器を使用することにより、米国その他の国々の数千あるいは数十万の罪のない市民を殺害するという野望を遂げる可能性がある。」こういうことを言って戦争に突っ込んでいったんですよ。
 あなたは、同じようにこう言っています。そのときに、武力行使が始まると犠牲者なしでは済まされません、しかし、大量破壊兵器、これが独裁者によって使われたら何万人あるいは何十万人という生命が脅かされます、こう言って、そして、危機感を持って戦争支持に突っ込んだわけですよ。
 だから、その結果はどうでした。一万人を超えるイラク国民が犠牲となり、しかも、今日では戦争の深刻な泥沼化になっている。そういう状況になっているからこそ、今、イラク戦争の根本が問われていると私は思うのであります。
 総理は、何度も私は言いますけれども、こう言っていました、イラクは大量破壊兵器を現に保有していると。断言して支持した。そういう点は崩れ去ったと言って私は差し支えないと思います。つまり、当時、あったかなかったか未解決の問題だったとすれば、その前提が崩れる。世界もその問題について前提が崩れるだけでなく、日本でさえもそういう行為を行った前提が崩れたということを意味するじゃありませんか。
 ですから、まさに結果として何が起こったかという問題を私は問いたいんです。無法なそういうことを、戦争を行った、まさにそれは侵略戦争以外の何物でもないということを見事に証明しているじゃありませんか。そう思いませんか、総理。

○小泉内閣総理大臣 共産党の意見、全くそうは思っておりません。
 今のイラク国民がいろいろ自由な意見を発言できるのも、フセイン政権が打倒されたからであります。また、テロリストが動いている事実もありますが、同時に、イラク国民が、フセイン政権では考えられない、希望を持って立ち上がろうという意欲も多々出ております。
 そういうことを考えると、日本が戦争に突っ込んだと言いますけれども、日本は戦争に突っ込んではおりません。戦争に行っているわけではありません。アメリカの立場を支持してはおりますけれども、日本が戦争に突っ込んだというのは誤解であります。日本は、自衛隊を派遣するにしても、戦争に行くわけではございません。
 そういう点から考えて、共産党が言う考え方とは全く違います。

○穀田委員 立場が違うことは明らかです。そのことを前提にしているんじゃなくて、その事実について私は問うているわけです。総理が、あなたが、あの戦争を支持することを決める際に、重要な判断として、ブッシュ大統領も保有をしていると断言し、あなたも断言し、そして、戦争に突っ込み、あなたは戦争を支持することにいった、これが誤りだったと言っているわけです。
 ですから、事実は一つしかないんです。立場が違おうと、その問題について明確だったことを私は明らかにしておきたいと思います。
 そこで、もう一つお聞きしたいと思います。
 総理は、私どものこの間の二十二日の志位委員長の質問に対して、人道復興支援との関係で、占領行政の一翼を担うものではないかということを質問したのに対し、総理は、「主体的にイラクの人道復興支援を中心とした活動に従事するものであり、米英などの占領行政の一翼を担うとの指摘は当たりません。」こうお答えになりました。私どもは、早速、その問題について連合軍当局に問い合わせました。
 委員長、その問い合わせの資料と回答の資料を首相に見ていただいて構いませんか。

○笹川委員長 結構です。

○穀田委員 今お渡ししましたが、私どものしんぶん赤旗が連合軍司令部報道情報センターに問い合わせた質問です。
 それは、「陸上自衛隊はイラク南東部のサマワ周辺に駐留し、彼らはオランダ軍と協力関係を持つ。彼らは、CJTF7の指揮下に入るのでしょうか。あるいは独立した活動を行うのでしょうか。」ということを尋ねた文書です。それに対して、連合軍司令部報道情報センターは、「自衛隊は、連合軍第七統合任務軍(CJTF7)の指揮下に入ることになる。」こう回答をよこしていただきました。
 総理が答えた、「占領行政の一翼を担うとの指摘は当たりません。」こう言っていますが、現実は指揮下に入るということを連合軍の司令部は回答してきている。その問題について、どういう説明をされますか。

○小泉内閣総理大臣 これは、本会議でも答弁したとおりであります。
 占領軍の一員としての法的地位を持つことが認定されているわけではないと、はっきりと答弁しております。占領軍の一員として認定されているわけではないと、はっきり答弁しております。

○穀田委員 総理はその際にこう言っているんですね、「米英などの占領行政の一翼を担うとの指摘は当たりません。」と。一翼を担うどころか、連合軍のいわば指揮下に入るということを明確に言っているんですよ。そういう事実なんですよ。それは、私どもがきちんと連合軍の司令部の報道情報センターに問い合わせをして、それに基づいて明確な答えをいただいているわけなんですよ。
 もし、あなたが、総理がそんなふうに、連合軍の指揮下に入らない、占領行政にくみしないと言うんだったら、そういう証文でもあるんだったら出してみなさいよ。

○小泉内閣総理大臣 証文とか、そういう問題じゃないですよ。我が国の自衛隊は我が国の指揮下に入るんです。

○川口国務大臣(外務大臣) 今おっしゃった、先方から来た文書ということでおっしゃっていらっしゃいますけれども、私どもは、その文書を見たこともなければ、どういう文書か承知しておりませんので、それについてはコメントいたすことができませんけれども、先ほど来総理がおっしゃっていらっしゃるように、我が国としては、武力紛争の当事国ではないわけです。いかなる意味でも当事国ではないということです。
 したがって、占領国でもないわけです。あくまでも我が国の自衛隊は我が国の指揮下において活動をする。占領をしに行くわけでもない、そして武力紛争の当事国ではないということでございますから、これは、我が国の指揮下で活動をするというのは明白なことであります。

○穀田委員 何の答えにもなっていないんですね。自分のところの指揮下で自衛隊が動くのは当たり前じゃないですか、こんなこと。
 問題は、その自衛隊が海外で活動し、しかもイラクで活動する、そして、イラクで活動する際に――見ていないと言うんなら、先ほど渡しましたように、見ていただいて確かめてもらったらいいですよ。そして、問題は、あなた方が、政府全体が、そういう占領行政の一翼を担わないと言っているけれども、事実上その指揮下に入るということを相手の方は言っているじゃないか。だとすると、自分の軍隊を自分の指揮下に置くのは当たり前、その上に米英軍がおるじゃないか、それは明らかに占領行政に組み込まれることになる。
 またあしたでも、それ以後については事実についてさらに詰めて、それぞれの、空自や、さらには陸自がどういう活動をするのかについてさらに詰めていきたいと思いますけれども、やはり、そういう外国の領土とそこにおける占領行政などは憲法九条の二項の禁止する交戦権に当たるということは明らかだと思うんです。
 したがって、私は、その問題について、最後に、連合司令部の指揮下に入るということについては憲法違反だということを明らかにして、私の質問を終わります。

○笹川委員長 これにて穀田君の質疑は終了しました。