【染織夜話・第三話】

こくたせいこ

画廊

作品

 「着物の染めのこの感性と技術で服を染めて」と言って、私を問屋との提携の無い染色活動に引き込んだのは大阪の画廊主だ。
 画廊というのは様々で、単に一定の期間場所を貸すだけの「貸し画廊」も在れば、画廊主の「観る目」によって成り立つ「企画画廊」もある。内容で分類すれば、工芸画廊もあり、絵画や彫刻だけを取り扱う美術画廊もある。その業界についてわたしはまったくの素人ではあるが、関わりの範囲だけでもなかなか面白い世界だ。
 「貸し画廊」は、一日いくらの代金を受け取って「画廊」という作品発表の場所を提供する。この場合、画廊は場所を貸すだけである。それが普通だ。どんな作品であるか、どんなグループであるかは論外である。基本は発表者自らが、宣伝も売り込みも客の接待も、更には売れた作品の集金も行うということだ。「案内状」は当人のつながりを総動員して送る。人脈がものを言う。売れようが売れまいが「画廊」は契約した金額を受け取る。
 一方「企画画廊」は、基本的に売り上げの何パーセントかを受け取ることで成り立っている。画廊の「企画」の範疇で展覧会をする。画廊は売れるかどうかを判断した上で契約をすることも在れば、売り上げを度外視して、その作品と人に惚れ込んで展覧会を行うこともある。それはひとえに画廊主の「観る目」にかかっている。「企画画廊」のオーナーによって力を引き出され、育てられた作家は数限りないはずだ。更に、案内状、集金等も画廊の仕事である。売り上げを伸ばすことが画廊の収益アップにつながり、作家にとっては自身の人脈以外の、画廊の顧客に販路を広げる機会になる。「企画画廊」の取り分は三十五パーセントから五十パーセントにもなり、これは画廊のそれなりの自信の裏付けでもある。
 当然、たくさん売れたほうが良い。しかし、今まで面倒を見てくれた画廊との縁を切って、顧客を連れて他の画廊やデパートに鞍替えすることは人の道に反する、と思っている作家は何時までも概ね貧乏だ。