こくた恵二
こくたが駆く

国立国会図書館法「改正」案についての意見---メールから

 昨日この欄で、国立国会図書館法「改正」案について、私の考えを述べた。
 私自身この問題は重大だと思っていたが、先日(3月20日)、国立国会図書館法改正案(恒久平和調査局設置法案)を推進する市民会議の川村一之さんからメールをいただいた。重要な指摘であると思うので、ご本人の了解を得て、掲載させていただく。


【川村さんからのメール】
 穀田恵二さんへ
 国立国会図書館法改正案(恒久平和調査局設置法案)を推進する市民会議の川村です。お世話になります。
 衆議院の議運で国会職員の給与について議論がなされていると聞いております。特に国立国会図書館館長の給与を国務大臣並みから衆議院事務総長以下に抑えるという話が進んでいることを新聞で知りました。そのためには、国立国会図書館法の改正が必要であり、国権の最高機関である国会の権威を低めることにつながると危惧します。
 私は、給与の高い低いでものの上下を問題にすることには反対ですが、世の中の仕組みはそれによって権威付けがなされていることも事実です。国会議員の歳費も議長は内閣総理大臣と同じ、副議長は国務大臣と同じということになっています。
 ここで問題にしたいのは国立国会図書館長がなぜ、国務大臣と同等とされているかということです。元国立国会図書館調査員の伊藤一彦・宇都宮大学教授は次のように述べています。

「国立国会図書館長の待遇を大臣同等としたことについての羽仁五郎氏の「 戦前の元老の制度にあたるものは国会図書館長ではないか。そして三権分立になっているから,もし政府と,国会と,裁判所の意見があわない場合に,その調整をやるのは国会図書館長よりほかにないのではないか。それを制度の上で厳格に規定しておかなければならない」(同氏『自伝的戦後史』)という説明は,国立国会図書館が国会に所属していることの意味を考える上で重要な示唆を与えてくれる。国立国会図書館でなく,国会に所属しない国立中央図書館であれば,戦前の帝国図書館がそうであったように政府の一部である文部省の管轄下におかれたであろうが,そうであれば国立国会図書館の創設に関わった人々の構想したものとは全く違った図書館となったことであろう。「日本民主化の隅の親石(コーナー・ストーン)として出発する」(松平恒雄参議院議長)国立国会図書館の館長候補として,参議院は羽仁氏の推す哲学者中井正一(なかい・まさかず,1900-52)氏を決定したが,結局衆議院が推薦する,新憲法制定時の担当国務大臣として著名な金森徳次郎(かなもり・とくじろう,1886-1959)氏が館長,中井氏は副館長となった。」

 国立国会図書館をつくった参議院図書館運営委員長の羽仁五郎氏の意見をぜひ汲み取っていただきたいと思います。国立国会図書館の権威を国会自身が低めることになれば、いずれ、憲法第41条の意味も薄れてしまうことになるでしょう。
 国立国会図書館長の給与を問題にするのであれば、議長と内閣総理大臣や副議長と国務大臣の給与もあわせて考えるべきではないでしょうか。
 よろしくお願いします。

(Update : 2005/03/24)